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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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2-4 古書の語り噺(4)

申し訳ありません。

長文になってしまいましたが、こちらも投稿させていただきます。

 村長は、巫女と側で話しを聞いていた尼様に深々と謝罪とお辞儀をし…寺を後にした。


 村長を見送ると巫女は、急な眩暈を起こし倒れかけるが…つきっきりに側に居てくれた尼様が、支えた。

 尼様は、巫女に方を貸し支えながら巫女の自室に運んだ。


 部屋を開けると、既に布団が敷いてあった。


 目を丸くする巫女に尼様が巫女が帰ってくる前に「疲れてるから。」と、思い巫女の部屋に勝手ではあったが敷いたのと事だった。


 尼様の話しに巫女は、恐縮してしまったが…尼様に頭を撫でながら「今日のお勤めは、ゆっくり休む事です。」と、言い付かせた。


 尼様の言い付かせは、絶対であったため巫女は「分かりました、従います。」と、尼様に深々とお辞儀をした。


 尼様は、部屋を後にし…祭りの手伝いに向かった。


 尼様を見送ると巫女は、何気に床の間の桜を見た。

 儚げだが、元気に咲いていた事を安心し、尼様が敷いてくれた布団に横になった。


 静かだが…軽く耳を済ませると村の方は、祭りで賑わう太鼓や笛の音色、はしゃぐ子供達の声が行き来していた。

 今日の祭りの参加は、叶わなかったが仕方が無いと諦め休んだ。


・・・・・


 巫女は、思い出す限りを話した。

 一つ一つの出来事の事。


 今でも巫女自身を『土地神様』の“生贄”として捧げた村長や村の人達に対して怒っていない事を含め全ての事。


 その事を話しながら巫女は「村長様は、知っていたのかもしれません…私が土地神様の“生贄”として相応しい事と、先日の出来事に対する怒りを静められるという事を…。」と、静かに語った。


 巫女の話しが終えると…開拓工事中の関係者達は、絶句していた。


 この村に…迷信と思っていた『土地神様』の偉大であり存在する事を…関係者達は、思い出していた。

 依頼者である富豪の急な依頼で裏山に入って早々、大規模な土砂崩れ等の天災や行方不明者の続出した事を…そう考えると不可思議だが合点がいった。


 ――そして、返って困ってしまった。

 依頼者である富豪の事だ。


 村長から聞いたばかりの事故の事を報告しても取り扱わない事を知っている。

 どうしよう?どうしたら?と、焦りながらも考えをめぐらせていると、留守番をしていた作業員が慌てて訪ねてきた。


 作業員は、部屋に入るや否や「裏山の件は、白紙にしたいと電話がありました!」と、大声で知らせた。


 その知らせに一同は「えっ?」と、目を丸くした。


 責任者は、作業員に「ほ、本当…なのか?本当に白紙…?」と、恐る恐る聞くと「はい!白紙です!」と、元気よく力いっぱいに返事をした。


 作業員の返答に関係者は、糸が切れたようにガクッ…と、へたり込み動かなくなってしまった。

 突然の事に驚いた作業員に事の経緯を聞くと漠然としていた。


 その後の事は、何とか動けるようになったため事実確認のために尼寺を後にした。


 関係者は、散々、悩みながら解決策や対策を考え尽くし、頼みの綱と尼様の所にお邪魔したものの話しを聞くにつれ現実に打ちのめされ途方に暮れたが…何があったのか、白紙だ。


 急展開し過ぎて、ついていけないが「とりあえず、事実確認。」と、急ぎ自分達のが作業している仮休憩場に足を急がせた。


 足を急がせたが、どっぷりと日が暮れ…夜になっていた。

 仮休憩場に着いて早々、もう夜で気が引けたが依頼者である富豪に電話をした。


 何回かの呼び出し音に出たのは、執事さんだったので…理由と事情を話し依頼人と話したいと伝えたが「旦那様は、過労のため伏せております。」の繰り返しだった。

 執事さんに次の朝に訪問する事を話しをし、受話器を置いた。


・・・・・


 ――そして、翌朝。

 朝早くだったが、富豪の家に訪ねた…のだが、部屋に通された開拓工事の責任者と関係者は、驚いた。


 昨日まであったはずの…豪華な装飾品や骨董品、飾り細工の木工茶箪笥等が…ごっそり無くなっていた。


 呆気に取られていると…車椅子に乗った初老の男性と松葉杖を付きながら右足を引きずっている二十代後半くらいの青年が、部屋に入ってきた。

 責任者は、恐る恐る聞くと…二人は、()()()()()()()()()()()依頼者の父と兄であった。


 依頼者の父に「こんな姿をさらしてしまい、申し訳ない。」と、言いながら兄と共に深々と謝罪した。

 その謝罪に恐縮しながらも…恐る恐る理由を聞くと、裏山の工事を取り止めた理由と重なっていた。


 ――何でも、依頼者である富豪の『お家騒動』が“原因”らしい。


 戦争で亡くなったはずの富豪の父と兄が、帰還したのだ。

 本来であれば、喜ぶべき日だが――…二人に掛けられていた多額の戦死保険金を依頼主である次男が、受け取るや否や…大豪遊をしたせいで、借金が風船のように膨らんでいた事も判明し激怒した父に勘当し家から叩き出したらしい。


 また呆気に取られていると依頼者の父から「あの馬鹿が提案した裏山の別荘の事は、無かった事にしてもらえないだろうか?勿論、違反金を払います。」と、申し訳なさそうに言ってきた。


 そして、恥ずかしそうに「亡くなった妻と出会った思い出の場所のため残したい。」と、懐かしげに言う姿に胸を打たれた責任者と関係者は「はい、承知いたしました。」と、深々とお辞儀をし承知した。


 その事を急ぎ、村に向かい村長に白紙になったことを報告も兼ねて訪ねた。

 報告を聞いた村長は、うんうんと頷きながら「そうでしたか、あの方が…あの戦場から…。」と、涙を堪えながら懐かしそうに嬉しそうに答えた。


 不思議に思い話しを聞くと、偶然にも村長と元依頼者の父は、同じ隊で一緒になった戦友だった。

 懐かしげに思い出話をポツリポツリと語るが「もう戦争は、二度とやってほしくない。」と、頑として力説した。


 意外な接点を目の当たりにし、またしても呆気に取られたが尼様と巫女に報告しないといけない事を思い出し、再び騒がせた今までの事を謝罪し村長宅を後にした。


 そして、急ぎ尼様と巫女のいる尼寺に足を運んだ。


 村長と同様の報告をするためと昨日の謝罪をするためだ。

 訪ねると丁度、巫女が土地神様のお供えをする花と果物の入った篭を持っていくところを出くわした。


 話しを聞いた巫女は、直ぐに尼様のいる部屋を通した。

 尼様と巫女に先程まで村長に報告した事を全て話した。


 話しを聞いた尼様と巫女は、ホッと胸を撫で下ろした――。


・・・・・


 ――その文字列を見終えた後、後悔しました。


 僕自身の悪い癖を発動してしまう事と叱られてしまう事を…頭の中では、理解しているというのに…。


 ――静かに本を閉じると、直ぐに大きく背伸びをしてしまった。

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