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想ヒ人 -指切-  作者: ツカサシキ
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7-23 舞台裏の後片付けと追憶の整理(15)

三つ目の投稿です。

よろしくお願いいたします。

 確か、冬霞殿達が…目的地である『紅染村』に着いた時の話し――…だった。


 何度目かの…戦後というのに『紅染村』は、奇跡的に戦火の被弾に免れていた。

 目に入る物は、どれも…まだ、普及段階だというのに“実験”という名目で、当時の新技術として塗装された『ケーズル工法』という“滑り止め”が、された道路だった。


 この――…ケーズル工法とは、どんな道路か?

 路面が、固まった状態の既設アスファルト・コンクリート舗装路面に施工できる『画期的な路面滑り止め』の新工法です。

 種類は、二種類ほど確認されている。


 一つは、高速道路…特にカーブ部分では、均等に細い横線状の溝が、施されている。

 二つは、スーパーマーケットの駐車場の出入口付近。

 こちらは、横線状ではなく、ドーナツ…いや、リング状の輪っかを“そのまま”くりぬかれた溝が、施されている。


 一方、村の道路は『高速道路』と同じ形状なのだが…徒歩でも疲れないように漢字の“八”のような緩やかな形状になっている。


 理由は、簡単だ。

 その溝の先は、側溝が繋がっており…雨や雪が、降ったとしても雨水と雪解け水は、自然と側溝に流れる仕組みになっており、通常の道路よりも乾きやすい。


 そして、水溜りが出来づらい形状だ。


 道路だけでも凄いというのに…実験とはいえ、まだ蠟燭を扱った街灯やガス街灯が主流だったが、地震の天災を含む理由に『最低限の安全性』として、こちらも実験段階だが“電気”を主流にした街灯電柱が、立ち並んでいた。


 しかし、今現在と比べて明るさは…アルコールランプの明るさ――…いや、各家庭のリビングや寝室等に取りつつけてある照明電灯の機能にある『常夜灯』の明るさと言ったら分かりやすいだろうか。

 暗いと感じる人が、多いだろうが…この当時は、これが“精一杯”の明るさだった。


 冬霞殿は、あまりの新技術のオンパレードに驚きが、あったが…その前に気になった事があったそうだ。

 村に到着するや否や…冬霞殿目掛けて、優しく、包み込むように温かな風に抱きしめられた感覚に溺れている自分に驚いていた。


 ――まるで『歓迎』をするかのようだった。


 突然の事に驚きを隠せない冬霞殿に不審に思った“いのり”は「大丈夫?もう少しで、お家だからね」と、優しく声をかけると冬霞殿は「は、はい」と、白昼夢から目覚めたような態度と緊張した赴きにしてしまった事を“いのり”は「ごめんなさい、驚かせてしまったわね」と、直ぐに謝罪した。


 その後、二言三言の会話を済ませ…村の広場で待ち合わせをしていた村長さんと案内役の女中さんとの挨拶を済ませた。


 挨拶を済ませると村長さんから「長い旅路で、疲れているだろう」と、言ってくれたため…お言葉に甘えて用意してくれた『我が家』となる尼寺に足を運んだ。


 村長さんからの話しだと――…紅染村を建て直した、とある商人として活躍していた武家の当主が、自身への『贖罪』目的に建てた寺に似せた晩年を過ごした家屋だった。

 家屋の大きさは、ほぼだが…奈良県の『東大寺』をイメージしやすいだろうか。


 こちらの尼寺も新たな家主を心待ちにしていたかのように周囲も屋敷内も綺麗に整えられていた。


 ――特に庭は、圧巻だ。

 無月の亡き父である元の家主の『思い出』の季節の品々である庭に植えられた“草木”は、生前は、自らの手で世話をしていたが…亡くなった今では交代制だが、手入れをされている。


 村に着いた当初は、春から夏になる前だった。

 村のシンボルとも呼べる裏山には、まだ梅が咲いていたが…桃と桜は、残念ながら時期が終わってしまった後だった

 代わりに…と、言ったら可笑しいが…木瓜(ぼけ)という梅に似た花が咲き乱れていた。


 木瓜というのは、バラ科の落葉低木――…中国原産で、日本では観賞用に庭などに植えられている。

 高さは、約1~2メートルで、小枝に棘がある…葉は有柄、長楕円形または卵形で縁に細鋸歯がある。

 見ごろは、4~5月頃に径三センチメートルぐらいの梅のような愛らしい五弁花が咲き…梅のような“香花”だ。

 花の色は、紅・淡紅・白色またはそれらの絞り。


 果実は、卵形か球形で長さ約五センチメートル…一回り大きい500円玉を思い浮かんでくれれば、分かりやすいだろうか。

 その実は、黄緑色に熟すと“生薬”になる。


 服用の方法は、簡単だ――…成熟果実を縦割りか輪切りにして、乾燥させたものを生薬木瓜と呼び、水腫、関節および筋肉痛、脚気、胃痙攣、嘔吐や下痢を伴う痙攣、咳にその煎液を服用するといいそうだ。

 疲労回復、不眠症、低血圧、冷え性、リウマチには果実酒(ボケ酒)を飲むと良いとされているそうだ。


 和名は、中国産のマボケの漢名「木瓜(ぼくか・ぼっか)」からだが…その“ぼけ”の呼び方の他にも“もけ”や“もっか”や“ぼっか”とも呼ばれている。

 そして、漢名は『貼梗海棠』と、呼ばれている。


 木瓜の花が、終わると夏の始まりである…初夏には、花菖蒲が咲き誇る。

 花菖蒲の次に暑さが、上昇するにつれて姫睡蓮。

 秋は、彼岸花こと曼珠沙華。

 冬は、寒椿。


 四季を知らせるの花々を魅せてくれる庭であった。

 しかし、ひと昔には『しだれ梅』が、あったそうだが…残念な事に寿命により取り除かれたそうだ。

 村の住人達も見せたかったそうだが…落ち着いたら苗木を取り寄せるそうだ。


 こうして、新たな場所にて義母である“いのり(姉)”と一緒の暮らしが、始まったのだった。

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