1-1 少女、卒業後の“帰郷”
よろしくお願いいたします。
※読みにくかったら申し訳ありません。
「な、にを…何をしてっ…!」
――ああ…。
そんな顔をしないでください。
これは――。
これは、貴方に対する謝罪なのです。
「何をしていると、聞いているんだ!」
今にも泣き出しそうな顔をしないでください。
でも…痛い…。
痛い…。
私は、夫である彼の目の前で…切腹をした。
自分のお腹を刺したから当たり前だけど…お腹が、痛い…。
「聞いているのかっ?!いや、それよりもっ…早く治療を――。」
その言葉を聞いた私は、差し伸ばされた彼の手を払った。
――触られたくなかったからだ。
自分の不注意によって、汚されてしまった私を…貴方は、私に何時ものように優しく…愛しく…触れようとしていたから…。
私の行動に驚いたのか、彼の差し伸ばされた手は硬直したまま…綺麗な紅い眼が、見開き「何が、起こった?」と、言わんばかりの目で、私に訴えかける。
「…申し訳ご、ざいま…せん…旦那様…私の…身勝手を…お許しを…。」
私は、腹部の痛みに耐えながら…なんとか言い切ることができた。
しかし、その後の会話が…覚えていない。
憶えているのは、夫の手の温もりと「分かったっ…待っているっ…!」と、悲願の籠もった言葉と…桜の優しい馨りだった。
その言葉を聞き終えると…私は、静かに目を閉じた。
・・・・・
――西暦2XXX年、春。
まだ、桜がチラホラと咲き始めた頃に私『古城冬霞』は、この4月に公立小学校を卒業した。
今日になるまでの道のりは、長かった…本当に…長かった…。
私は、日本人とロシア人のクオーターで、外交関係の仕事をしている父と日本人で、ブーケデザイン作家として活躍している母との間に二つ年上の姉と次女として生まれた。
――私の容姿は、特徴的だ。
日本人譲りの黒髪と混血児の特有なのか、容姿端麗に加え…父の曽祖父の遺伝が強いのだろう…人より白い肌とダークブルーの目を持って誕生した。
その私の特徴的な容姿に幼稚園からの幼馴染であり二人の親友や小学校で、出会い卒業まで共に学んだクラスメイト達から注目の的だった…知らなかったが、ファンクラブが存在していたという…卒業の時に教えてもらった。
――私は、家族と友達に話していない“秘密”を持っている。
過去の記憶――…前世の記憶を持っていた。
小説やマンガのような話しだが、事実…日々の日常を過ごしていく中で、過去の記憶が本を捲るように鮮明に呼び起こしていった。
過去の記憶を思い出していったため、思わず慎重に物事を進めていったせいか…年齢に似合わず、大人びたというか…ぎこちない子供に成長した。
過去の“私”も日本人であったが、戦争孤児の一人だった。
戦争孤児の養護施設である孤児院にて、物書きと同時に『手に職!』の考え方だったため、学問より手芸等の家事を学んだ後…直ぐに就職活動をしないといけない時代だった…そして、就職率が今より極めて低い時代だった。
しかし、新たな時代に『生』を受けた時の私は…嬉しかった。
孤児院では、体験と経験できなかった勉強と運動が楽しくて友達と共に笑える日々を大事にした。
だが、在校中の思い出は…五分五分だった。
良い思い出は、友達と過ごした楽しい思い出なのだが…嫌な思い出も体験している。
この容姿に加えて、勉強と運動の成績は、上の中くらいなのだが…そのせいか不明だが、男子によるイジメを受けていた。
直ぐに治まったが…治まった原因は、何となく…心当たりがあるが、まだ確信を持っていない。
無事に卒業を終えた私は、そのままの急ぎ足になりつつもバスから新幹線にと乗り込んだ。
本当は、迎えに来てくれた叔母さんと一緒のはずだったのだが…アクシデントが遭ったらしく、私一人での“帰郷”となった。
そして今…進学する予定だった都内の公立中学には入学せず、母方の祖父と叔母と従姉妹が住んでいる『紅染村』に向かっている。
そして、春休みに入る前に祖父と叔母に連絡を済ませており、村に着いたら正式に祖父の養子になる予定だ。
※今更ながら『あらすじ』を新しく書き加え、書き足しました。