俺の、我々の正体は
「チート能力、世界へのデバフ、」
世界が、静止しようとしていたその刹那、
「今、勇者の能力が馴染んだ、チート能力ソードマスター、」
俺はそう叫び、静止した世界の中を、魔力で無理やり体を動かし、女神の体を切り飛ばす。
「何故、止まった世界で動くことが出来る?そうか、チート能力魔力増産を持つ、私の魔力以上の魔力が有れば対抗できる。けれども、どこからそんな魔力を、」
「クハハハハ、我々の肉体は俺の物ではない、我々の魂は、異世界なるこの地で無念の死を遂げた転生者の思念によって形成された、故にその魂を消費して魔力を生んでいる。」
「な、何だって、」
女神が驚いたように叫ぶ、
「俺は確かに異世界に召喚された、だが、我々は転移者の縁を通じ、召喚の術式に潜り込み、奴の魂と混ざりあった。
ハハハ、我らはイミナの体の制御権の全てを奪い取った。」
「何だと、なんて邪悪な奴なんだ、吐き気を催す邪悪、その様な物を認める物か、」
「クク、そうだ、我等は邪悪だ、お前が産み出したのだからな、」
我々は、草薙の剣と聖剣を構えながら女神を睨む。
「今の俺は召喚された者の中でも、最も勇者に相応しい力を備えている。お前を殺すためにな、苦労したぞ、さぁ約定を果たそう。」
死者の怨念が、イミナの眼を深紅に染め、死者の魂を消費して莫大な魔力を生産する。
「勇者よ、魔王よ、何より女神よ、お前たちに運命をねじ曲げられた無念の戦士の怨念を聞かせてやろう。」
俺はこの世界に来て、彼らに抵抗しようかとも考えた、
「この舞台から降りてもらうぞ、我々の全てを捨て去ってでも、」
俺は彼等の叫びの中に、この世界を哀れむ声を聞いた、故に今回は譲ってやった。
「死んでなお、死ねよ、私に逆らうなー、」
何度も剣を振るが、女神の腕から放たれるビームが動きを阻害する。
「くっ、殺しきれなかった、」
彼らの嘆きが聞こえる。
「我々の魔力が、」
女神の魔力は莫大で、無数の魂を消費してなお抗えるのは僅かな時間だけだった。
「魔力切れか、そうであろう私の魔力を超えるほどの魔力を用意するなど、不可能に近いことを行ってきたのだ、」
女神は、自分を安心させるように、徐々に動きが鈍くなる俺に向かいそう叫ぶ。
女神は、禍々しい大鎌を呼び出し、その鎌を二つの腕で操り、まるで体の一部のように操って見せる。
俺はその大鎌と撃ち合ううちに理解した、これは勇者の聖剣とソードマスターと同じ系統のチート能力だと、いかに優れていても、他人の体、他人の力を使うこちらが不利となるだろう。
「俺が倒そう。奴を殺したければ、俺に魔力を託せ、」
怨念は俺の言葉に驚くが、仕方ないとばかりに、俺に肉体の制御権を放棄した。
「俺は英雄を目指した、ゆえに彼らの無念の声に手を貸した、これはその延長終わりだ女神よ、」