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勇者殺しの英雄譚  作者: テンユウ
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略奪の手段

俺が書庫で見つけた資料を片付けていると、外が騒がしい、少し興味がわき俺は城の窓から外をを覗く、あの武者姿、勇者か、


「通報を受けてきました、キチガイが暴れている酒場というのはここか、」


「あの人(勇者)です。」


衛兵の姿を見付けた一同は、一斉に店主の首根っこをつかむ勇者を指をさす。


すると勇者は何やら神妙な顔をし、口を開く。


「むっ!?いかん!拙者は用事を思い出した、」


「くそ、賊め、でたらめを言いおって、ここでひっとらえてやる。」


正義感あふれる衛兵が、目の前の蛮行を償わせようと、槍を構える。


「具体的に言うと、今から魔王に会いに行くでござる。」


勇者は巨大な時計塔を足場に、垂直に駆け上がり、空中へと踊り出て、刀を抜き、その刀からビームを出しながら、雲の上を航行する、無数の骨から造られた、まがまがしい巨船へと乗り込んだ。


王都の遥か上空に、たたずむ魔王の船、


「魔王は王都の上空にいるぞ、合戦の時間だおらぁ!!」


「フフフ、よくぞここまで来たな勇者よ、別にこれは急に飛び込んできたあ勇者にびっくりして、こぼした赤ワインではない、ここに来た哀れな犠牲者の血のシミだ、そのほうが魔王らしいであろう。」


魔王の居場所を叫びながら、勇者の戦いが始まった。


「呪え、」


魔王は、呪詛をつぶやき腕を振るう。勇者は、持ち前の鋭い直観に頼り、後方へと飛ぶ。


「外したか、」


忌々しそうに、勇者を眺めながら、魔王は複数の術式を起動させ始めた。


「援護してやるか、」


俺は、そう呟き、叫ぶ。


「そうだな、高天原の神々よ、刮目せよ。」


仮面の下から一言で唱えられた祝詞が、勇者に恩恵を与える。


「むっ、瓦礫が、」


いつの間にか魔王の船の上にいたショキが、本を開き書き込むと、崩れた瓦礫が魔王へせまる。


「ショキのやつ、あれほどチート能力を使いこなすとは、奴は俺の共犯者にふさわしいやもしれないな、」


魔王は迫る瓦礫を、軽く払い飛ばす。だが勇者はすでに目の前だ、


「もはや、この船をきずかう意味はなくなった、消えてなくなれ、異世界の者たち、汝らに降り注ぐは竜、地へと向かう星々の輝きは流星、流星群だ。」


空を見上げれば、降り注ぐ隕石が見えた、


「あれでは、魔王の船どころか、王都に被害が出る。さて共犯者にふさわしいか見極めてやろう。さあ、どうする、」


俺の期待に応えてか、彼は本を開き、ペンを動かす。魔王が技を繰り出す瞬間、何かに足をつかまれる。


「ム、この邪気は、」


勇者が、反応する。俺も感じた、当たり前だ、それは魔王の邪気、それに反応しない勇者などいるわけがない。


「それはお前だ魔王、お前自身、その影と呼ぶのが正しい、」


ショキは、自身のチート能力を発動し、魔王に食って掛かる。


「なん…だと…、カッコいやつがいると思っていたら、我か、」


影から飛び出した流星群が、魔王の流星群を打ち消した。


「終わりだ魔王、汝がのぞいた影は、貴様と同化し、侵食し、そしてすべてを溶かす。」


「ぐ、ぐおおお!」


撤退を決める魔王、魔王の船を本の中に収納するショキ、お尋ね者として、追われる勇者、


外からは、鎧を着た大勢の足音がガチャガチャと聞こえ、勇者の「拙者はいい人(切り)でござる」という声が聞こえてくる。すっかりお尋ね者に転職したようだ、


そして、もはや勇者以外の勇者一行のたまり場と化した酒場、そこに入るショキを俺は出迎える。


「来たか、魔王とやらの強さはどの程度の物だった?」


あの戦いは、遥か上空で行われ、俺はそれに関わらなかった、


「勇者と同じレベルと言えばわかる?頭の方が、警戒するのはその戦闘力だけ、魔物の護衛がいない状態を選べば、仲間を呼ぼうとはしない、」


「クク、面白い…、話を聞こう。」


簡単に、情報を共有する。魔王の手の内や無差別に降り注ぐ流星の脅威など、共有するべき事柄は少なくなかった。


「ショキといったか?」


俺は、彼を共犯者に決めた、


「どうした、イミナ、」


彼は席を立とうとして、再び座り直す。


「チート能力について、取引がしたい。」


彼はペンとメモ帳を取り出し、俺の目を見る。


「理由も教えてくれ、取材という名目で、純粋に興味がある。」


俺は考え、少し黙った後に、話始める。


「取材か、まあいいだろう、寂れた神社に生を受け、育てられた。

俺はそれなりに優秀で、見た目も悪くは無い、将来は神社を継がず、自分で企業し、俺の実力が何れだけ通じるかを試そうと思っていた。

この身に宿る草薙の剣の存在に気が付くまでは、」


淡々とした口調から、だんだんと感情的になっているのが自分でもわかる。


「だがそんなことはどうでもいい、現代のような、地球連邦となることで平和になった世界に、草薙の剣のような神剣をふるう機会はない、俺にとって、異世界召喚はあこがれだった、異世界であるならば、神剣にふさわしい舞台であるのではと、期待していたのだ。」


「それで、勇者の聖剣と、チート能力が欲しいと、」


ショキはそう聞き返す。


「両雄並び立たず、などという言葉があるだろう、俺こそが勇者にふさわしい、それに……それが最低限の挑戦権だ我等の憎悪は、いやなんでもない、」


ただ、栄光の為に勇者になりたいとほざく人間が、そんな憎悪に満ちた言葉を漏らすだろうか、ショキは、最後のイミナの言葉を聞きそう考えたが、それについて指摘することはなかった。


「成る程、チート能力は相手を殺すことで奪えると、では私は魔王のチート能力がほしい、イミナ、君に勇者のチート能力を譲ろう。」


勇者のチート能力以外に興味の無い俺は、それを了承した。


「一言言っておく、何者かの視線を感じた、何かわかったら、いや、この王国が俺らの監視をしていると言う証拠を見付けたら、教えてくれ、」


「わかった、」


俺は店を後にしたショキを見送りながら、手元の酒を飲み干す。


「我等は、必ず、貴様を引きずり落とす。」

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