最後の英雄譚
「俺の冒険は終わり、元の世界へと帰る。」
今頃ながら、怨念どもに体を譲ったのは少し惜しいと思う。
ふと、世界が書き換わり、それは無数の星が煌めく世界に、色も明るさも違う様々な炎の柱が編み上げた大地、そこに鎮座する歴史を感じられる厳めしい図書館、そう、
「私が書き換えた、チート能力アカシックレコードの断片、そして悪いなイミナ、私は魔王君は勇者だ、折角異世界に来たんだ、魔王との戦いぐらい体験してから帰るといい、」
ショキの肩には、幼い少女が腰掛けていた、姿は違えどその気配から女神だと気が付いた。
「女神から聞いたぞ、異世界で死んだ魂に、体を譲っていたってな、最初に私が聞いたとき、英雄になりたいと言っていたな、あれはお前の言葉だろ、魔王と邪神を倒せばそれはまさしく英雄にふさわしい偉業だろ?まあ負けるつもりもないがね、ティアナ万魔の王の管理を、龍王のブレスで動きを阻害するように、当てようと思う必要はない。」
「わかったは、」
俺はただ、その会話を聞き、聖剣を構え、魔力を貯める。
「自己オール強化、」
俺は、迫る魔術を聖剣の光線で薙ぎ払おうとして、違和感に気が付く。
「動きが、遅い、」
まるで水中の中で、普段着のまま剣を振るような感覚、
「世界へのデバフ最低出力強みは常時発動、すさまじい感覚だなイミナ、普通なら相手の動き、君から見れば私が速く動いているようにしか感じないはずなんだが、」
不思議そうに笑うショキを無視して、強引に聖剣を振るい、放たれた魔術を打ち消した。
「殺気が、」
俺は、聖剣で巻き上げられた粉塵のしてから殺気を感じ、ギリギリで首をそらす。これはペン?鋭い万年筆ペン先が首をかすめる。俺は牽制代わりに、空中に物質作成で小刀を生み出し、重力に従い落下させる。
「よけろ、ショキ、」
幼女ティアナの言葉の後に、聖剣の光線を思い浮かばせるビームが飛来する。
「ティアナちゃ~ン、私に当たってしまうよ、」
「どうしたんだ、ショキ、」
俺は、一瞬腑抜けた顔になったショキの姿に、唖然となった。
「ああ、ティアナちゃんは、頑張り屋さんでまじめな子なんだよ、自分が弱いからと、強くなるために頑張ってフゲゴホッ」
顔を真っ赤にしたティアナに蹴り飛ばされるショキ、けれどもそこに隙は無く、魔法の龍がアギトをひらきながら牽制のブレスを放つ。
「草薙の剣展開、射出、」
「それは見飽きたは、」
ティアナが、ショキの首根っこをつかみ回避する。
「クク、ああここまでは知っているだろう。」
俺が草薙の剣を投擲しても、必ずこの手に戻ってくる、魂と同化しているからだ、ならば逆に、草薙の剣の元に俺がいるのもおかしくないだろう。
俺は投擲した草薙の剣の元に現れ、その柄を掴み切りかかる。
「ここに来て新技とは恐れ入る。」
ショキは狂人のように叫び、
「やっぱりお前、まだ憑りつかれているだろ、」
女神は文句を言うが、対応できないだろう。
「ここで終わりだ、」
「まだだよ、」
俺の草薙剣を受け止めたのは、二本の万年筆のペン先だった、無数の魔術がかけられているようで、草薙の剣も聖剣も受け止めて見せた、彼の後ろから手のひらを向けたティアナ、
「ビームか、」
俺はとっさに、物質生成で盾を生み出そうとするが、チート能力が使えないことに気が付く。
「悪いな、私とて君のような英雄に勝利したいと思うのだよ、イミナ、」
聖剣の光線をゼロ距離で発動させ、自分もろとも吹き飛ばす。
「まずい、イミナが来る。」
粉塵が視界を防ぎ、その中で俺は聖剣のダメージを無視して、跳躍する。
「やはり、こうなりましたか、やはり強い、」
粉塵が晴れるころには、俺は聖剣をショキの首元に充てていた。
「降参です。ええ、」
その隣で、ティアナが頬を膨らませて、また負けたとショキを軽くける。
「ハハハ、パット力を手に入れた私より、彼が強いのはわかっていたはずだよ、」
「いや、俺はお前を強いと思う。また、地球で出会うこともあるかもしれない、その時は食事をおごろう。」
「では、私はケーキでもお土産に持っていきましょうか、家の近くにおいしいケーキ屋さんがあるんですよ。」
俺は、軽く二三事は無し、何度か負けて、勝手の試合を繰り返すうちに、強烈な眠気に襲われ意識を手放した。