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勇者殺しの英雄譚  作者: テンユウ
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違和感と渇望

寂れた神社に生を受け、育てられた、今こそ寂れているが、遥か昔、奈良時代頃にはそれは立派な神社で、天皇の家系から別れた由緒正しい家なのだと言う。


その記録は火事で紛失してしまったが、


俺はそれなりに優秀で、見た目も悪くは無い、将来は神社を継がず、自分で企業し、俺の実力が何れだけ通じるかを試そうと思っていた。


この身に宿る草薙の剣の存在に気が付くまでは、それからは、修行に憧れた、祝詞を唱え剣を振り、神主としての仕事を父の代わりにこなす。


「俺は強くなった、」


剣を呼び出し、木々を斬り倒し、祝詞を唱え雷を落とす。


「だが、今の時代には不要な力だ、」


現代のような、地球連邦となることで平和になった世界に、草薙の剣のような神剣をふるう機会はない、俺にとって、異世界召喚はあこがれだった、異世界であるならば、神剣にふさわしい舞台であるのではと、期待していた。


どす黒い空間、トンネルといっても良いかもしれない、そんな場所を漂っていると、何処からか女性の声が聞こえてきた。


『異…の…よ、…を救って…、助けて、』


そんな声を聞き訪れたのは、待ち望む異世界、用意していた狐のお面をつけ、草薙の剣を腰にさげ、着物を纏い俺は英雄となるはずだった。


「ここは、おぬしらにとって異なる世界、【ティヤポタニア】である。」


この場に召喚されたのは、俺と、女武者、そして本を片手にあくびをする少年、三名だ。


「魔王は強く、同時に長い修行により、神に認められこの世界のすべての生き物から害を受けないという加護を受けた、それはほかの神も例外ではない、ゆえに異世界から強い戦士を召喚し助けてもらうことにしておるのじゃ、それで何とかなった。」


平和を望む世界、


「クク、なるほど、合点がいった、俺の英雄譚にふさわしい、」


俺は笑い、期待する。


「召喚された異世界人はみな、魂に変革が起きて、高い身体能力と、ちーと能力?なるものを手に入れるそうじゃ、」


「ほう、」


「どうかその力で、魔王を倒してこの世界を救ってくれ、」


「魔王、」


女武士が反応した、奴も俺と同じように召喚されたのだろう。


「魔王なるものがいるのか、血がたぎる。必ずやその首とって見せましょう。」


国王は満足そうに頷き、口を開く


「ちなみに定番なのじゃが、召喚された中に必ず一人勇者という称号を持つものがおるらしい、その者が推奨に手をかざせば、輝くじゃろう。」


「ほう、」


「勇者の称号を持つものは、魔王に対し、絶大な力を発揮すると聞く。」


「勇者か、俺にふさわしい称号だ、いいだろう、その称号…」


「拙者か、光ったぞ、」


女武者がそう叫ぶ、


「……お前がか?」


俺は困惑するように呟いた。


「おお、そなたが今回の勇者か、」


国王は、女武者を見てそう言い、


「この世界を救うには、どんな手を使っても魔王の首を狩ってくればいいのだろう、そういうことは得意中の得意だフフフ、」


勇者に選ばれた女武者は、微笑を浮かべながら刀をなめる。


デジャブを感じた、俺は、いや我々は知っている。


何度も経験した、このやり取りを、我々の末路を、勇者我々は奴を知っている。


「つまり拙者たちは、魔王討伐の仲間になるというわけか、」


「クク、そうなるな、」


「では、自己紹介といこう。拙者はニシキノ・ミコト、勇者として必ず魔王の首を捕ろう。」


女武者は、言い出しっぺとして、最初に名乗りを上げる。


「次だ、私はモノガタリ・ショキ、作家を目指している。戦力としては数えないほうがいいかもしれない、肉体労働断固反対を掲げている。もう遊んでていいかい?」


気に食わない奴だが、協力する必要がある。


「否、おまえにも働いてもらう。」


「適材適所という言葉を知らないのかね、君たちは魔王討伐に、私は情報収集という名の観光に、それでいいのではないかね、」


ショキは、飄々と言ってのける。


「まあいい、俺も形にのっとり自己紹介させてもらおう。ノチノミヤ・イミナ、」


簡単な自己紹介のあと、情報集めに俺達は別れ、俺は城へと侵入した、過去の記録を漁る。


「誰だ、」


何者かの気配を感じ振り返る。気のせいでは無さそうだが、今の俺には些事、俺の感じた、我々の違和感、その正体を探る方が重要だ。

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