18歳、最初の冬
ショート・ショートです。
しんしんと降りはじめた雪。
光が反射して19時と思えないほど明るかった。
寒さなんか関係ないと言わんばかりの人混み。
いつもの交差点。
ふと、周りを見渡す僕。
僕は気付いてしまったんだ。
君が僕の前から姿を消そうとしていることに。
嘘であって欲しい。
なんとか君を目で追いかけた。
信号が点滅する。
僕は、足に力をいれて、スピードをあげた。
なんとか間に合いますように。
君を探さなくていいように。
神様へ祈ったんだ。
祈りは届かない……。
無情にも信号の色は赤。
君が見えなくなって、青ざめる僕。
僕の目の前を車が通る。
僕は、スピードを落とすしかなかった。
スピードを緩めながら、僕は、君を探す。
隠れずにいてくれているのではないかという淡い期待をこめて。
期待は、裏切られた。
君は僕から隠れるつもりだ。
背筋がぞっとした。
君は僕の心をかき乱す。
僕の中で、黒い感情が渦巻く。
僕の感情とは正反対に、思い出の中の君は、いつも白かった。
そう、雪のように白かった。
日に焼けて、小麦色でもよかったのに、君は白さを保ち続けていた。
それが君のアイデンティティ。
今でも白いままだろう。
君の白さを頼りに、探すしかない。
当たり前だと思っていた。いつも君がいることが。
でも、そうじゃなくなる時が来た。
来るべき時が来たのかもしれない。
先ほどより強く、降りつける雪。
この状況で、君を見つけられるだろうか?
不安だった。
参っていた。
君を視認できなくなって、君の大切さに、はじめて気づいた。
なんとか、君を探さなきゃ。
でも、気を付けなければならない。
一線だけは越えてはいけないのだ。
越えたところをドライブレコーダーにでも撮られてしまえば、僕は犯罪者。
記憶を頼りに、僕は君を必死に探した。
君は、いつだって、いつも同じところにいるはずだから。
落ち着け。
きっと君を見つけ出す。
幸運にも、強風が吹いた。
その時、君がチラリと視えたんだ。
僕は、その一瞬を見逃さなかった。
君を捉えたんだ。
そう、停止線を。
読んでいただき、ありがとうございました。