プロローグ
初投稿です
お手柔らかに
うわあ、なんだここ。
静かな空気。どこまでも続くかのような澄み渡る空。
下にはどこまでも透明で見てわかるほどに清洌な海が地平線まで広がっていた。
なんか俺空中に浮いてるんだけど…大丈夫なのかこれ
いや、浮いているという表現は少し語弊がある。正確には空中に立っていた。
恐る恐るすり足をして5mほど移動したが特になんともない。
垂直跳びでもなんなら寝転んで見たけど大丈夫みたいだ。
こんなとこから海に落ちたらほんとシャレにならん。
そうして安全確認をしている間に30分ほどたっただろうか。
流石にそれだけ時間が経つと心も落ち着いてくるわけで。
ひとまずこの空間に来てはじめに思ったことをぶちまけようと思う。
「ここ、どこ?」
「審判の場である」
「のわあ!」
思いもよらぬ返答が帰って来たせいで変な声が出てしまった。
俺は周囲を急いで見渡した。しかし見えるのは先ほどと変わらない景色のみで、俺の情けない悲鳴はこだまもなく消えていく。
「げ、幻聴だよな」
「幻聴ではない、神の啓示である。」
「のわあ!」
同じことを繰り返してしまった。
「な、なんなんだよこのふざけた状況は!おっさんの声が頭に響くとか悪夢だろこれ…」
「夢と思っとるようで非常に申し訳ないが…これは現実である。いや、お主の思う現実とはまた違うものなんだがな。
さて、どこから話したものか…お主が死んだところからか?はて、お主が無神論者ってとこからか?もしくは…」
「もう何が何だかわからんのにおっさんの話を聞いているとさらにわけわかんなくなりそうだ。三行にまとめろ!」
「『お主は死んだ』、『無神論者撲滅』、『転生お試しサービス』」
「?????????」
三行にまとめるの下手すぎんかこのおっさん
まあ、ここからは俺が頑張ってまとめた話をつらつらと述べていこうと思う。
ごく普通の高校生活を送っていた俺こと高橋優太はどうやら事故で死んでしまったらしい。
それも、朝に横断歩道を渡っていた老人をおぶって向かいまで運んでいると横断歩道の真ん中辺りで老人の靴が脱げたので老人を向かいまで運んだ後に取りに行くと犬に拾われ、それを追いかけているときにおばさんの打ち水が俺の顔面に直撃。水を受けてふらついた俺が打ち水のために用意されたバケツに水を組むためのホースを踏み真上のマンションの二階で植木鉢をいじっていたお姉さんにホースからの水が直撃。俺と同じようにお姉さんの体にぶつかり落下した植木鉢が不運にも俺の頭頂部にヒット。そのときにふらついた体が運悪く道路に出てしまいたまたま通りかかったトラックに轢かれてしまうという運が悪いでは済まされないし済ませたくない出来事が俺を襲ったらしい。
要するに、俺は不運のピタゴラスイッチにハマり、トラックに轢かれて死んだってことだ。
もともと神の存在なんて信じていなかった俺だが、その時になって魂に「神などいない」という思いが染み込んでしまったらしい。
それが神様的に非常に問題だという。
神などいないと思い込んでいる魂が増え続けると、自分たちの存在が非常に危うくなるそうなのだ。
転生によって魂は循環を繰り返しているため
神を信仰していない魂が増え続ける=神を進行していない人数が増加していく
というわけらしい。
人間の信仰によって神は生かされているとかなんとか言ってたけど正直よくわからん
まあ、まとめると人間が神様を信じなければ信じないほど神様の存在は危うくなるというものらしい。
しかし、俺のいた地球では非常に神を信仰する人が減っているらしい。ここらでその問題に一つ策を投じようというわけで考えられたのが「異世界転生」というわけだ。
異世界で神様からの恩恵をたくさんもらってうはうはな人生を送って、神への信仰を高めてもらおうという、まあ、なんとも人間をよく理解している現金なシステムである。
その映えある第一号として選ばれたのが、不運な死を遂げ神様的に無神論者と成り下がってしまった俺であったというわけだ。
と、ここまでが俺の聞いた話である。
「まあ、話はよくわかりました。俺はお前ら神様とやらの力を使って好き勝手生きればいいんですよね?
めちゃくちゃ魅力的な提案だとは正直思うんだけど、例えばここで俺がその提案を拒否するっていうのはできますか?」
「できぬ。そもそも転生というものは神の審判によって下されるものであるからして、お主個人が操作できるものではないのだ。
今回は特例中の特例でこのように転生についての説明がされている。」
第一号ということもあって随分と丁重に扱われているらしい。だけど…
「正直、俺はあなたが神様だってことを信じきれてはいません。」
「良い。それを身をもって体感することが転生の目的である。
さてと、前置きが長くなってしまったか。それではそろそろ私の加護を授け、転生をしてもらおうか。」
「え?いきなりすぎませんか?まだまだ聞き足りないこととか結構あるんですけど」
「お主の問いに全て返答するとなると、人間たちの信仰がなくなってしまうでな。許せ。」
「いや、ちょま」
「さらばであるユウタよ。神名オグマがそなたに【異世界言語知識】【筋力強化】を授けよう。では行け!人の子。機会があれば再び語り合おうぞ」
足元が急に緩み、内臓が上に上がるような不快感とともに俺の体は海へと落下していき、どこまでもどこまでも沈んでいった。
なんだか話を切り上げられてしまった感じで不安も募りまくりだけどしょうがない。
こうなりゃもう、異世界を神の力使って遊び倒してやるしかねえ!