表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第五章
64/65

第四十六話 騒動の終わり

 ───突如勃発した獣陣営(アカド)女神陣営(ニルス)同士の戦い。予期せぬ戦い

 を制したのは───女神、空色の青年たちだった。

 今や地に伏せるは猛禽の足持つ巨大なライオン。その身体へ泣き

 縋るは子ブタと子イヌのビーストマン。

 傍らに立つライオンを下した空色の青年、トドメを促す少女。

 空色の青年は剣をそっとライオンへと翳し。見守るは獣達と美し

 き少女のみ。




 ギリギリもギリギリ、と言うか急に目覚めた正体不明なスキルと

 超バフのお陰で、無理ゲーだった獣陣営トップ、アカドと呼ばれ

 た相手を瀕死にする事に成功、成功しちゃった。うーんミラクル

 的。


「(ミラクルもミラクル過ぎるよなぁ。)」

「さあ。もう誰もおまえの行いを止めない、止めれないわ!

 サクッとやったちゃいなさい、サクッと!」

「(おっとヤバイヤバイ。自分身に起きた事を冷静に分析する場

 合じゃないね)」


 冷静になったら恐怖心が芽生えそうだもん。

 さて。トドメ促すしてくるのは胸を反らすロリ様で。


『『『……』』』

「「アカド、アカドぉ……」」


 ロリ様の言う通り既に四獣と呼ばれた大型モンスターは此方に手

 を出す気はないらしい。まあオレが脅したんですけど。

 泣きながらライオンへ抱きついてるビーストマン二人はびっくり

 するぐらいに戦意を消失してる。アカドを焚き付けて来た時の強

 気と言うかは何処へやら。それとも冷静になったのかな?

 この状況でオレは迷う事無く、瀕死の相手、()()()()ヒールを連

 発してやる。スキルレベルが低いからコスト安いしね~。大木の

 根本へ水を撒く様に、或いは乾いたスポンジに水を吸わせる様

 に。瀕死の相手へのヒール連打は気持ちがい~いなぁ~。

 辻ヒールとかしてくる連中の気持ち分かるかも。ワハハ。


「───は?え?ちょ、ババババカ!おまえ何してるわけ!?折

 角倒した相手を癒やしてどうすんのよッ!おばかぁ!」

「んー? オレぁ一言だって相手を倒すとか、トドメだ何だ何て

 物騒な事、口にした覚えがないしなー」

「はあッ!? この状況が分かんないわけ?このウスラトンカ

 チ!」

「何語だよウスラトンカチって」


 勿論オレは今この状況を完璧~に分かってる。

 現状此処でこのライオンにトドメを刺すって事は、同時に頭を無

 くした獣陣営を傘下へ、支配できると言う意味で。それはそれは

 チャンスなのかも知れない。た・だ・し。それってばロリ様とそ

 の陣営にとってのお話し。オレにとっては別も別。

 当事者であるロリ様程でないにしろ、相関図がまだ想像もできな

 いにしろ。睨み合い、牽制、抑止って単語で考えるなら分かる。

 そこへロリ様のあの発言。『このエリアで“わたし”が倒れない

 限りはいーの!』ってのが加われば少しの察しぐらいはね。

 多分だけどロリ様は中世エリアの代表格。もしくは窓口と言った

 ところかな? エリア内同士とエリア外での敵対はまたちょっと

 違うんだろう。……推測だけどね。でも推測通りなら不味い。

 今此処、中世エリアで獣陣営のトップが消えれば、当然それまで

 の勢力は全てこのロリ様の預かりと成ってしまう。離反拒否も勿

 論あるだろうけど、皆の大前提には“この仮想世界を離れたくな

 い”ってのがある。多分生き物が“死にたく無い”って思うのと

 一緒、もしくは同種の価値観で。

 だから彼らの多くはロリ様陣営に下る、領土戦勝利ってのは大抵

 がそうなるしね。土地物資人員と言った資源は全て勝者へ。

 協力関係(仮)なロリ様が力を付けるのは、オレ個人としては別

 に構わない。最悪関係が拗れたら他所のエリアへ逃げればいい

 し。まあそれは最終手段。この中世エリア内で、他の勢力が衰

 退、滅ぶってのが避けられるのなら、極力は避けたい所。

 ロリ様の戦える戦力は館一個分。対して此方は四獣にそこそこの

 部下たち。今吸収されたらロリ様は絶対に調子に乗って、あるか

 どうかもまだ分からない他の同エリア勢力にちょっかいを掛けた

 り。もしくはオレを標的にするかも知れない。曲りなりにもアカ

 ド、獣陣営トップをこうして倒しちゃったからね。

 ちょっかい出しでしっぺ返しを食らうのも、オレへのヘイトを集

 めないって為にも。このアカド君にはまだまだ存在しててもらっ

 た方が色々助かるのさ。オレは此方の代表とも是非話をしてみた

 いし。

 ロリ様達ソウルズって存在の一般的情報、意見、視野の共有がま

 だロリ様陣営だけだからね。オレって。だから何に置いても情報

 って物の価値は高い。

 なのでオレはロリ様が望む結果、思惑にはまぁ~ったく気が付か

 なった振りを装い。序に相手側に売れたら儲けもんって事で恩で

 も売れないかと、目論見でのヒールを連発だったのだ。ワハハ。


「此方には拐われた、襲われたって!大義名分があるの!

 お互い不可侵不干渉だって建前を崩せる最良の条件、相手が揃

 った状態なのにッ!」


 うさちゃんなオレを見上げロリ様が言う。

 ははーん。やっぱ互いに干渉せず争わずってのは、ある程度の条

 件さえ揃えば無視できるのか。てかこんなロリ様でも隙きっての

 窺ってはいたんだなぁ。


「いやぁでもオレ~そんな~一方的に暴力とか~。まず相手とし

 っかり話しがしたいな~なんて~」

「話なんかしなくていいの! 後なにそのイラつく喋り方!て

 言うかただでさえしつこい獣、回復何かしたら───」

『……メガミの言う通りだな』

「「アカド!」」


 ライオンさん瀕死の状態から復帰。ゆっくりと、ビーストマン二

 人を気遣うように立ち上がり、その身体、足を二人が寄り添うよ

 うに支える。

 立ち上がったアカドは頭上よりオレとロリ様を見据え。


『愚かしい行い、理解できない行いだ。ケモノを癒やしたとし

 て、返って来るのは牙や刃に他ならない。

 ああ今すぐ、今すぐだ。お前達をこの爪で、牙で、容易く引き

 裂こうか」

「ぴゃあ!」


 地面へ食い込む猛禽類の爪。それを見てロリ様が慌ててオレの胸

 に飛び付く中。


「っすよね~。だから此方もアンタが完全回復しない程度に回復

 を調整したし、その残りライフなら瀕死を通り越して一発キル可

 能なラインで止めて。こうしてスキルをちゃーんと構えてるんす

 よ」


 ライオンへ向けてショートソード差し向ける。その刀身には煮え

 たぎった様な毒液が、毒々しいすんごいエフェクトが纏わり付い

 ている。これならエフェクトスキン変えなくても良いな。

 ぶっちゃけハッタリ。目的は脅しと、オレヘの注目集め。

 トドメが飛んで来るとすれば、それは相棒が静かに狙い定めてい

 るスナイパーライフルから。距離はそこそこあるけど相棒ならハ

 ズさんしょ。……多分。


「それに。一度勝った相手に有利で挑めるのも此方っすからね(

 襲われるの怖いからダメ押しにハッタリ入れとこ)」

『……ただの間抜けとは違うか。いや、メガミを大した事ない

 と、そんな話を鵜呑みにした私が愚かだったのか』


 お。何かハッタリ通ったらしい! 巨大なライオンは前傾姿勢を

 やめ、可愛そうな地面から爪を引き抜く。見た目だけなら臨戦態

 勢の解除。話しを聞く姿勢だ。


「ふふんッ。今更気が付いたのかしら? 後全てはわたしの采配

 通りの結果だから。大した事全然あるから!」


 襲われる心配がないと見るや、ロリ様はオレから離れまた胸を反

 っては偉ぶっている。コイツはいけしゃあしゃあと……。まあい

 いや。上機嫌であれば面倒も少ないだろうしね。

 一旦ロリ様には上機嫌でいてもらって、オレはアカドと呼ばれる

 ライオン、それとに寄り添うビーストマン二人の方へと視線を移

 し。


「そんで? 此方は最初から話しがしたいんだけど?」

『私は───』

「いや悪い。オレが聞いてるのはライオンさんだけじゃなくて、

 そっちのお二人も含めてね」

『『『!』』』

「?」


 驚く三人、いや匹? と。ロリ神様が不服そうにオレの身体、着

 ぐるみの腹を“ポンポン”と肉球ハンドで叩き。


「あによ? オレの独断はまだ終わってないけど?」

「おまえの独断はもう良いわ。好きしなさいよバカ。

 その事でなくて、おまえは今からトップと話すつもりなのでし

 ょう? それに何でプレイヤーを交えてるのよ。この獣、アカド

 が間違いなく此処の支配者で統治者よ? 前顔合わせした事もあ

 るもの」

「そりゃ正しいと思うよ。ただしオレが見るにそれは一部だけだ

 ね(顔合わせとかあるのかよ。サークルか何かなのか?)」

「? わかんないんだけど?」

「さっきの覚えてるか? このライオンに戦う事指示した、いや

 お願いしたのかな? まあどっちでも良いけど。それをしたのは

 あの二人だったろ?」

「うー……?」


 少ない時間でもロリ様の事で分かった事はある。興味ない事は覚

 えてない、覚えないタイプだって事だ、コイツは。

 ロリ様に話をするなら結論から言った方が良さそうだな。


「はぁ。オレが思うにこの王国は、陣営はあの()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()。いや、ライオンにお願いできる

 分あっちのが優先権上かも?」

「……え?何それホント!? ただのプレイヤーなのにそこまで関

 与許しちゃってるの!?」

「多分な。だって可笑しいだろ?普通のプレイヤーがソウルズ、

 それもトップに寄り添ってるとか。オレみたいな特殊な事情があ

 感じじゃないし。

 それに誰も此処まで、()()()()()()()()()()()()()しね~。後拠

 点内の改悪具合を見るに操作がわかってる奴がやってる感じだっ

 た。

 ワンチャン王様が建築、拠点レイアウト技術を持ってるかも知れ

 ないけど。今となってはその可能性も低そう」


 オレの説明にロリ様が驚いた表情でライオンとビーストマンを見

 遣り、彼らはオレの説明へ否定を挟まない。

 そんな中。オレは離れた場所で蘇生の終わったらしい相棒達を側

 へと手招きしながら。


「でさ、オレらの事情っての聞いてくれる気はあるの?」


 問われたアカドがビーストマン二人へ頷きを見せ。


「ふん。勝手に話なよ」

「……そうだよ。どうせボクらに拒否権は無いんでしょ?」


 不貞腐れた子供の様に言葉を吐き捨てるビーストマン。


「いやいやあるよ? ただその場合オレは力ずくで帰らせてもら

 うし、交渉の余地を捨てたって判断してロリ様───いや。此

 方の代表様へ全部丸投げするけどね。で、そうなったら?」


 ウサちゃん頭を僅かに下へ傾ければ。


「喜んで大鉈を振るうでしょうね。わたしに逆らうモノ全ての

 首が落ちる、その時まで」

「「!?」」


 不貞腐れるのは勝手だけど、投げやりに此方の話を聞かれてちゃ

 困っちゃうのよね。なので少し、ほんの少ーし圧を掛けてみたの

 だけど。


「……ア、アカドを」

「んー?」

「アカド、と。他の子をもうこれ以上傷付けないなら、その、

 お話を聞く、聞きます」

「うん。もうこの子たちに怪我をさせないで……ください」

「もーオッケーオッケー!オレってば暴力全然好きじゃないか

 らねッ!(ま。そっちの態度次第なのだけど)」


 態度をしおらしくてきた相手には優しくしないとねー。てか襲っ

 てきたのはあっちなのに、何か此方が悪者みたーい。まあ善悪と

 か今此処には微塵もねーけど。

 両陣営他は、代表同士の意見交換へ口を出すつもり、いや出せな

 いらしく。オオワシ、オオカミ、オオグマの四獣達は遠目に此方

 を監視、観察している。オオザルさんもいつの間にかあっちに並

 んでるね。協力は此処まで、と思ったほうが良いかも。

 四獣それぞれが行儀よく座ってる方向から、僅かに動かした視線

 を正面へ戻す。


「な~ら。まずオレ達ってこの場所に好きで来た訳じゃないんだ

 って事。そっから説明でもさせてもらいましょうかね。うん。

 そもそもオレら───」


 オレはやっと落ち着いて話せる獣陣営トップへ、此処へ来た経緯

 を説明する事に。何を話すにも其処からじゃないとね。

 ロリ様の、昼行灯で偵察を見つけた事。そそのかされる形でこの

 場所へと無理やりと連れて来られた事。そしてそのままいきなり

 襲われあわや、と言った事柄を全て彼らに話す。

 後で回収されるであろう偵察ビーストマン達に彼らが事情を聞い

 たとしても食い違わないように、盛大に誇張はしても嘘は混ぜな

 い。


「襲われた?」

「いきなり?」


 説明をする中、何故か事情を知ってるはずのビーストマンの二人

 が驚いた様子を見せた。話を途切れさせる程の事とは思えなかっ

 たし、まだ終わってないからそのまま話を続けたけどね。

 偵察の二人を返り討ちにして拘束した事、現地協力者の存在、そ

 してオオザルの下へ向かいこの場所へと脱出の為、鎖国システム

 が運営に勘付かれるのはマズイって事を、彼らへ丁寧に伝えたつ

 もりだ。


「───って感じかな。ざっとだけど」


 話を終える頃には側に相棒と、蘇生されたリストゥルンさん達の

 姿も。


「それじゃあホント、ホントに貴方達は望まず此処へ来たんです

 ね……」

「その通り!」

「女神拐いよ女神拐い。不敬も不敬よ」


 オレ達の言葉に驚いた様子の子ブタと子イヌは、自分たちの背後

 に控える四獣の方をを見ては。


「偵察の事はボクたちも知ってたよ。だけど、拐って襲うなんて

 誰の指示だったの?」

「見てくるだけって。バレても逃げるだけって話しだった、よ

 ね?」

『『『……』』』


 四獣と言われた獣たちは何も言わない。いや。


『王よ。指示をしたのは誰でもありません』

「! マシラオウ」


 傷だらけの身体を引きずるオオザルだけが二人の問に答えた。


『此処は良い場所です』

「分かってる。この場所は最高だもん!」

「うんうん!最高にするために作ったんだから!」


 ビーストマン二人の言葉にオオザルは寂しそうな表情を見せ。


『違う、違うのですそれは。この場所とは国で無く、世界なの

 です』

「「?」」

『儂たちはもっと世界を知りたい、世界を見たいのです』

「それは……外へって事? で、でも!外は危険がいっぱいなん

 だよ?」

「そうだよ。皆正体がバレたらダメなんでしょ? だからここが

 一番安全で、安全にするからッ! もう二度と、誰も!」

『分かっております。しかしそれでは真の自由が無いのです。

 だから彼らも、儂らも自由を求めてしまう』


 唖然とした様子のビーストマン。


「わかんない。わかんないよ。皆……皆此処が嫌いになったって

 事なの?」

『そ、そうでは無い。そうでは!』

「ああそれじゃあボクらの事が嫌いになったんだね。だって

 自由が欲しいって事は、此処をから出ていきたいって事なん

 でしょ?」

『んな!??』


 彼らのやり取りにオレは口を挟まない。険悪なムード、微妙な空

 気って苦手だし。


「王よ」


 何かを言おうと必死になり、慌てふためくオオザルの次に話しだ

 したのは、あの協力者。トロラオさんだ。


「? ……君の事は知ってるよ。後から来た子でしょ?」

「え、あ、ああ。覚えていたのか……。

 いや、私が王と会うのはこれが初めてなはずだが?」

「「ボク達は自分たちの子の事なら全部知ってるんだよ」」

「む、むう。そう、なのか」


 驚いた様子のトロラオさんは一度頭を振っては。


「んん! だとしても私にとっては初対面だ、いやです。そし

 てその、初対面でのご無礼を許されたい。庇護を受けて来た身

 で言うのも何なのだが……。私は外に出たいと思っている」

「ああ、ああ君も“皆”なんだね」

「そうだ、いえです。それと、私の所で預かっている子たち

 にも外を是非見せたい、触れさせたい」

「そっか。皆皆此処が嫌いなんだね」

「それは違う。彼らも私達も、そして四獣も此処を故郷と──

 ─」

「いいもう。嫌いになったなら出てけばいいよ」

「でも……ふふ。ふふふ。ずっと出ては、居られないもん」

「なに?」


 ビーストマン二人が一度互いを見合い。


「うんうん。その内にね、この世界、エリュシオンは全ー部動

 物さんと、彼らを傷付けないケモナーさん達だけの、そんな素

 晴らしい世界に生まれ変わるんだ!」

「そうなったらもう皆自由。だって仲間だけの箱庭の完成だか

 ら!」

「まさか。まさか戦争を仕掛けるつもりなのか……?」


 愕然とするトロラオさん。

 ふーん。静観をと決めていたのだけど。これは聞いとかないと

 とかな。


「へーい。其処のガキ二人ッ」

「なッ!?」

「ガガ、ガキ!?」

「そだよ。オレはエリュシオンでは、てかオンラインではオンラ

 インで見えた、見せられたモノだけで相手を判断するからね。

 見た目が子供のアバターなら子供と扱うし。ガキならガキらしく

 もね」

「「生意気ッ!」」

「はは、それお前らも。

 んで。お前らってばエリュシオンをどうとかって言ってたけ

 ど、それはどう言う?」


 子イヌと子ブタは自慢げな様子で。


「知らないの?お兄さん。 アカドやボク達が他の奴らを倒した

 らね、このエリュシオンを好きにできるんだよ!」

「へぇーマジ? そんで?好きにできたらどすんの?」

「勿論動物さんと、仲間のケモナー達の、ケモナーによるケモ

 ナーの為の箱庭を此処に作るんだ!」

「エルフもヒューマンも居ない。動物を傷つける人の居ない、

 全部がビーストマンだけの、ケモナーと動物さんだけの理想世

 界!」

「作るんだ!ボク達は!」


 わーお、だな。


「はは。スッゲー!」

「! お兄さんもそう思うの?」

「ボク達の理想が分かるんだね! だったらお兄さんも種族を

 ビーストマンにしてくれるなら───」

「おお!スッゲー───つまんない世界を思いつくよな!」

「「!?」」


 この多様性の塊みたいな仮想世界、最高峰のVRMMOエリュシオ

 ンで全種族統一とか、よく思いつくよなホント。


「何だよ種族ビーストマン一択って」

「このエリュシオンで理想の、動物達と理想の世界を作るんだ」

「そうすればもう誰も出ていかない、誰も入れない!」

「ぶっ飛びすぎてわかんねー。笑うわ」

「やっぱりお前も!」

「もうボクらはお前とは話しなんて───」

「まあ聞けって」


 つまらない考えの二人を見下ろしながら。


「別にさ、コイツらってば変な事を言ってる訳じゃねーじゃん?

 ただおんもに出たいです~って、色々な物が見たいです~って普

 ー通な事を言ってるけだけだろ?」

「おい。何勝手に話てるんだよ!」

「そうだそうだ。ボクら───」

「うるせえな。まだオレが喋ってるだろうがッ」


 毒々しいエフェクトのショートソードを一度振ってみせる。


「「お!横暴だ!」」

「はは。だからそれもさっきのお前らの事な。

 っと。それでな、外野のオレが茶々入れるのも可笑しな話だろう

 けどさ。こんだけデカくて、PC達に愛されてるコミュニティを

 育てたんだったらさ。もそっとマシな管理をした方がいいんじゃ

 ねーの?」

「「愛されてる……?」」


 ビーストマンの二人は不貞腐れるのやめ。外していた視線をオレ

 に合わせてくる。


「おおそうよ。オレは此処に来る前でにこの拠点を見て回らせて

 もらったんだけど、話を聞いたPCは此処を大好きだって言っ

 てたぜ? これってかなりスゴイ事じゃん?

 此処はただのオンラインゲームの世界じゃねえ。大人気のエリュ

 シオンだぜ? そんな場所でこれだけ趣味の場所を作って、愛さ

 れて何て。そんなの中々無い事だ」


 人気のない拠点は廃墟って呼ばれちゃうしね。そして往々にして

 拠点ってのは廃墟に成りがちだ。それらと比べれば此処はかなり

 成功している部類だろう。町並みは最悪だけどね。

 話に二人はまんざらでも無いって表情を浮かべ。


「だからさ。此処まで愛される場所を作ったなら、作って管理し

 て行くつもりなら、あるんじゃねーの?」

「「ある?」」

「ああ。場所を守る義理、責任とかって奴がよ」

「あるよ! だからこうして皆を守るために!」

「壁や囲いを作って、そのまま世界を管理してやるんだ!」

「分かってねーなー。エリュシオンケモナー化計画だとか、そん

 なのはジャンルへの特化じゃない。単一化だよ。

 それじゃあケモナーが好きって言えるジャンルは流行らねえ

 よ」

「な、なんだよ!ケモナーでもない癖に!」

「動物の良さも知らないだろ!」

「だ・か・ら。そんな奴らを無理やりケモナーにしても、ケモナ

 ー全体の質は下がっちゃうし。何より皆このエリュシオンをやめ

 ちゃうって話なのよ」

「そんな奴ら、そんな奴らはいらない」

「ボク達だけが残れば───」


 オレは分かりやすく自分の感情を伝えるため、肩を竦ませ両手を

 上げて見せ。


「な、なんだよ!」

「此処まで言って分かんねーの? お前らがやった、やろうとして

 るのは“自分たち”の場所を守ろうとしただけ」

「だからそれが───」

「“皆の場所”は欠片も守ってねーっつってんの」

「「ッ!」」


 オオザルを指差してやりながら。


「この、ああー……コイツらが何なのかはオレは知らねえ。け

 どコイツらがこの場所を守ってる一人なら、話を聞いたりはし

 たのかよ?

 囲いだ何だって建物を作る時とかは? あ?どうなんだ?」

「そ、それは。してない、けど」

「してないのかよ。はーあ、そんなだから皆が出ていくんだよな

 ぁ~。

 ケモナーとか以前に、ジャンルに拘り過ぎる奴らってのは、良さ

 を引き出さずに押し付け、他ジャンルを認めずに否定して。そん

 なばっかだよなぁ~。そう言う奴らがマイナーをマイナーに貶め

 続けてるんだよ。しかも仲間(ケモナー)の質まで落としちゃってさ」

「「ッ。……」」


 ま。ジャンルそのモノを楽しんでいる人達には、マイナーもメジ

 ャーも気にするモンじゃ無いんだけどね。気持ちよく楽しめりゃ

 それが正義。勿論他に迷惑かけずに、ね。

 反応的にどうやら、オレは二人の痛い所を突いたらしく、子ブタ

 と子イヌのビーストマンがうつ向き、両手で服の裾を握っている

 のが見えた。別にそれに対し罪悪感とか微塵も無いけど。


『………』

「(うわッ怖!)」


 ふと気がつけば。かつて無いほどに、ライオンさんの鼻ってあん

 なにもシワが寄るんだーって程に、鼻へとシワを寄せ。此方を食

 い殺さんばかりに見下ろす、殺意マシマシなライオンさんの顔が

 頭上にあった。何あれ怖い!


『『『……』』』

「……」


 オオザルを含んだ四獣、後何故かトロラオさんからも突き刺さり

 ました。

 あぁ~うん。ちょ~っと言いすぎちゃったかも!かな!これ!


「ま、まあだから。世界を征服するよりも、まずはこう言うコミ

 ュニティちゃんと守るとか、此処へ住んでくれるソウルズ達とか

 に配慮をするとかね。そうそう!住人とか名産品等の質悪化を防

 いだり、提案したりね、うん、あのー……」

「「……」」


 漁ったせいでロリ様達への呼び方ポロッちゃったけども!


「んんッ。んでだ、お前らが皆の場所を作りたいって、そう思う

 ならまず住人達と話すと良いって事。話すの苦手なら意識調査や

 アンケートでも配りゃ良いさ。こうして欲しいだ、ああして欲し

 いってのは誰にも何処でも必ずあるもんだからな。

 叶えられるかどうかは別にして、聞けば指針の参考にはなるはず

 だし、何より皆が“あ、此処の運営はコミュニティの事ちゃんと

 考えてくれてるんだ”って思ってもくれるはずだぜ?

 それと。一緒にコミュニティを守ってくる相手への、仲間への尊

 重ってのも忘れずにね」


 再びオレはライオン達をチラ見。うわ、まだ怒ってるよ……。


「話す……」

「尊重……」

「そそ。此処がマイナー性癖───いやゴメ、趣向にしとくか。そ

 のたまり場だって言うなら、同じ趣味の、仲間との憩いの場だっ

 てしたいならなおの事。ちょっとは努力しないとね。

 自分ら二人“だけ”の理想じゃ無くて、来る者を入れ続ける“だ

 け”の箱でも無くて。其処目指した、其処から旅立つ皆が良くし

 ようと思えるような。そんな場所を目指すんだよ。

 まあ夢みたいな事で、実現できるかって言われると難しい話なん

 だろうけどね」


 二人の“ぽかん”としているビーストマンを真っ直ぐ見据え。


「けれど理想を目指し続けるってのはそう言う事なんだろ?

 死ぬほどダルくて、蹴飛ばしたいぐらい面倒臭くて。努力が嫌い

 で此処に来た奴も、結局は努力する。それが常な様にさ。難しい

 って事は何処にでもあるんだよ。んで、お前らはその難しいに挑

 まなくちゃいけねーの。お前ら自身が愛した場所に愛される為に

 は。

 んで、それは今のエリュシオンでできる事だ。他を排さずにね。

 出来る事もできねーなら、世界をどう変えたって無意味だと思う

 ね。オレは」

「「………」」


 うーん我ながらスゴイ適当な事を語っちまったじゃん。背筋とか

 寒くなるよねー。って感じに。

 ただ、このエリュシオン最大の売り、自由度を奪おうって改変に

 は賛成できない。この適当話で考えを変えないなら、マジに戦う

 しか道は無いかなぁ。戦いたくはないけど。

 考えていると。先程よりもずっと口を大きく開けて、アホ面晒し

 ちゃってる二人へ。


『シープ。マルカ』

「「アカド……」」


 声を掛けたのはオレで無く、あのライオン。それはもう、びっく

 りするぐらい優しい声色でね。

 オレは二人から二歩ほど離れ、彼らの空間から退避。


『私が初めて会った時に言ったように。お前達の苦しみや乾きは

 理解し難い」

「「……」」

『目指す理想も、語るに留められない夢も、全てが私からすれば

 どうでも良い。

「「……。………」」

『何故ならお前達が居る場所こそが私の好きな場所、理想の地だ

 からだ。

 しかし私がそうであった様に、このモノ達にもそれぞれの居場所

 と言う物が必要なのだろう。彼らが求める安らぎ、それを探す事

 を邪魔しては行けない』

「……アカドは、アカドはずっとそう思っていたの?」

「皆も同じ考えなら、何でボク達に何も言ってくれなかったの?」

『分からぬか? お前達が私達を愛している様に、私達もお前達

 を愛しているのだ。深く。

 間違っていても、正しくなくとも。言い出せないほどに。

 好きなお前達だからこそ、その顔を曇らせたくはなかった』


 巨大なライオンが背後へ見やれば、傅く四獣達も皆優しく、ゆっ

 くりと頷いて見せる。ライオンへ、二人へ。


『我らは皆、お前たちを愛している、愛でている。好きだから、

 だからこそ言うべきも言えなかった。愛深き故に』

「そっか……そっが……」

「皆はボク達を思ってくれてた、でも、なのに、ボクらは……」


 ビーストマン二人が互いを見合い。


「皆を怖い事から守りたくて、でも怖い事から逃げて」

「一番好きな子たちに、一番嫌いな事を敷いてたんだね」

「「皆がのびのびと休める穏やかな場所」」

「それを目指してたはずなのに、いつの間にか“王国”なんて

 作ってて」

「何時から間違っちゃたんだろう。ボクら」


 二人が膝を地に付け。


「ごめん、なさい、ごめんなさいみんな……」

「ボクらが悪───」

『それは言うな。我らは誰もお前たちを恨んでいない。全て愛

 故の行いで、深すぎる愛故だ。嫌いにもなるはずがない。

 お前達が我らを心から愛する様に、我らも愛しているのだか

 ら』

「「! ごめん、ごめんねみんなあーぁああああああー!」」

『何を謝ると言うのか。初めから誰も怒りを持ってないと言う

 のに』


 ライオンは二人の間に頭を下ろしては二人へ優しく言葉を落と

 し。


『そうです!私達も同じです!』

『話難しい!長い! 分からないけど王様好き!』

『……。………』

『ああそうだ。儂らが王を嫌いになど!』


 オオワシ、オオカミ、オオグマ。そしてオオザルが側へと近付き

 身を寄せ言葉を飛ばして行く。

 二人のビーストマンはライオンにしがみつき、無音の平原へ泣き

 声を大きく響かせる───


 ───何故か目の前で子供、と言っても姿だけだけど。そのビー

 ストマン二人が泣き出すとか、気不味さマックスな状況ができあ

 がり。

 声を掛ける事も。逃げ出す事もできないとかって言う地獄。


「(何で急に和解、と言うか平和な空気になったんだ?)」

「意外」

「あ?」


 見据える先で四獣とか、巨大モンスター達に抱きついて歩くと言

 う奇行、しかも泣きながらって言うビーストマンを視界へ収めつ

 つ。身体を少し隣へ傾ける。


「何がよロリ様(いい加減脱ぎたいなー……。着ぐるみ)」

「おまえは自分が好きで、そして自分の好き以外には興味がない

 ものだとばっかり思っていたわ。

 だからおまえがあんな助言をする何て意外だと思ったの」

「微妙に失礼な言い方してない?。まあ、間違ってないなけど。

 オレはオレが好きなモノが一番だよ」

「なら何であんな助言……! まさかおまえ、わたしを好きなの

 は、小さい子なら誰───」

「やめろ自分を勝手にオレの好きに入れるの。後オレにその趣味

 は無いぞ」


 ロリ様は“疑ってます”って感じに睨み、頬に手を当て視線を

 ビーストマンとオレとで激しく行き交わせている。何だコイ

 ツ。


「でも確かに珍しい事だ」

「何だよ相棒まで」

「ルプスはこう言う人の集まり、特に感情の絡む事柄は避けて

 来ただろう? 何処だろうとギルドにもクランにも入らず作ら

 ず、コミュニティ関係には総じて首を突っ込みたがらなかった

 はずだ」


 面倒事を避ける傾向は誰にだって在る。オレにだってね。

 まあその傾向を過去のオンゲ経歴を共にする相棒はよくご存知

 で。


「あぁじゃあやっぱり!わたし───」

「うるせえ。どちらかと言うとロリ様よりリストゥルンさんのが

 好みじゃい」

「!?」

「え? え?え?え!」


 おっと思わず好みが口から出ちゃった。槍を抱き此方を見詰める

 リストゥルンさんには構わず、構えず。


「あー……まー……珍しいかもね。口出すのは。

 ただ別に今回だけが超特別って訳じゃないよ?」

「「「?」」」

「ほら。此処が廃れたら中世エリア、ひいてはエリュシオンがち

 ょっと寂しくなっちゃうと思わない?

 前にうぜえPKやった時にも似た話ししたかもだけど。オンゲっ

 てのはやっぱ向こう側、遊んでくれる人が居てこそ成立してるコ

 ンテンツだし。だからプレイ人口がイコール活気だとオレは思っ

 てるのよ」

「ふむ。まあそれはそうだろう。

 人が居なくなった、それは詰まり終焉だからな」

「でそ? んで此処ってケモナーって人達には知る人ぞ知る拠点ら

 しいじゃん。そう言う隠れてる人ってかマニアックってか、少数

 派とされてる人達の憩いの場所ってのはさ。あると無いとでは結

 構活気に差が出ると思うのよ。

 受け入れてくれる、受け入れられる場所があるのかどうかって所

 でさ」


 オンゲは相手がいるから成立している。既プレイで中堅ど頃をた

 むろってる一プレイヤーなオレからすれば、初心者新規は常に大

 歓迎だし、遊んでいるコンテンツに人が集まるのは良い事の方が

 大きい。勿論小さな集まりも、全体で集まれば大きな活気の一つ

 に成り得る。多種多彩が売り出しね、此処。

 プレイ人口が多ければ多いほどオンゲは長く続いてくれる。だか

 ら其処で遊ぶオレらは彼らを(新規・少数派)排しちゃ行けない。


「ふーん……。おまえの言いたい事は分かったし、理解もできた

 わ」

「情けは人の為ならずって事よ。別に情けを掛けた訳じゃあ無い

 んだけど。意味合いとしてはってね」

「良いんじゃない? おまえが言った事は場所を愛する者の言葉

 として正しかったと思うわ」

「はあ?そりゃどう、も?」

「なんで疑問気なのよ」


 そりゃ相手のトップ。アカドを助けた事を怒っていると思ってい

 たから。だけど今のロリ様からは怒りってのを感じない。

 熱しやすくて冷めやすいのか、それとも感情に振り回せれてる様

 で冷静なのか。んー……。


「……お?」


 何て。プレイヤーがガチ泣きして叫んでる気まずい光景を見つ

 つ、実のない雑談を繰り広げて居ると。

 見遣る先で四獣と呼ばれた巨大モンスター、彼らと話し合ってい

 たビーストマンとライオンが側を離れ此方へと向かって来るのが

 見えた。


「んーでッ。そちらさんのお話しは終わった感じですか?」

「えっと、はい。皆が自由に外へ出られる様にしました。プレイ

 ヤーさんや彼ら、勿論貴方達も」

「もう皆には壁も囲いも必要ない。それがボク達の、ボク達の今

 の考えです」


 二人はライオンと四獣を見遣り。視線を受けたライオンが優しい

 目を、四獣が各々の敬意の姿を見せた。


「なるほどー。ま鎖国システムは運営ちゃんに悟られると困っち

 ゃうから解除安定っすねー……」


 言いながら相棒へと“チラリ”。すると此方へ小さく頷きが帰っ

 て来たので、多分もう転移の利用が可能って事。この二人の言っ

 てる事は嘘じゃないらしい。よしよし。


「皆、皆が言ってくれたんです」

「ああ?」

「『自分達は外へ出たとしても、何処へ行こうとも。必ず帰って

 くる場所がある、それは此処。二人の居る場所だ』って。

 皆皆、ね」

「へー(どうしてこの二人が其処まで好かれてんのか分かんねー

 な。今もこうして百八十度意見変えちゃってるし。

 んま、他所のコミュニティ何てのは大概外から見たらそんなもん

 か。何が良いなんてのは其処の奴らが知ってれば問題なんいんだ

 ろう)」


 取り敢えず彼らの、てか未だにこの二人とライオンで陣営トップ

 なのかは知らないのだけど。陣営内での話しは良い方へと纏まっ

 たらしい。

 いやぁホント、このエリア内でロリ様以外のソウルズ組織が分解

 されなくて良かったわー。慣れない助け舟も、出した甲斐がある

 ってもんしょ。助けになったかは別として。


「うんうん。良い感じに纏まったみたいで良かったじゃん。オレ

 としても嬉しいよ」

「はい! 全部、全部皆さんのお陰、いえ違いますね」

「うん。迷惑を掛けたボクらを止めて、あのアカドにも勝ってア

 ドバイスまでくれたのは……」

「あらあらなに? 誰のお陰かちゃ~んと分かってるみたいね。

 そうよ?全部当然確実にわた───」

「「はいッ!全部ルプスお兄さんのお陰ですよね!」」

「───おいガキ?」

「ニルス様!? いけませんよニルス様その様な言葉使、い?

 ……ああ!余りの事に意識を!?」

「ほう。器用だな」


 立ったまま気を失ったロリ様、気遣うリストゥルンさん、不思議

 がる相棒らを押し退け。ビーストマンの二人はオレへと詰め寄っ

 ては。


「ボク達此処に、エリュシオンにログインして。叱ってもらえた

 のも、考え方を諭してもらえたのも。全部全部初めてでした!」

「うんうん! ちゃんと見なきゃ行けない事、聞かなきゃいけな

 い事を教えてもらえた気がします!」


 オレの目の前でまー大興奮するビーストマン二人。二人は互いを

 見合い。


「仮想世界、オンライで自由に振る舞う事と、自分勝手に振る舞

 う事は全く違うんだって」

「ボク達は分かってなかったと思う。話をしてくれる、向こう側

 への意識、相手にも心があるって事を。ちゃんとは分かってな

 かったんだ」

「もしもずっと気が付かなかったら、ずっとずっと動物さん達に

 酷い事を強いていたかも知れない」

「うん。気が付けてよかった、本当に良かった……」

「そうだね。オンラインの向こうには血の通った存在が居る事を

 忘れちゃあ行けない。うんうん」


 んまっ!オレってばもう血い通って無いんですけど! 何なら肉

 体もありませんけども!ワハハ。


「……楽しいか?おい」

「ッぶほ!?」


 オレの内心でのブラックジョークを見透かしたような様子で相棒

 が“ボソリ”と言いやがった。此奴オレの心が読めるッ!? と

 かまあ付き合いが長けりゃ分かるよねって話しは良いとして、

 だ。

 今は此方、本命に意識を向けないとね。


「いやいや。でもオレは何もしてないよ?君たち二人が大事な事

 を最初から知っていて、それを思い出しただけの事じゃん?

 そう。動物が大好きだって事を、さ」


 勝手に色々盛り上がってる二人へ、オレ渾身の爽やかスマイルを

 披露。


「わあ! 気が付いてたんですか!」

「ボクらが動物さんを愛しているって!」

「ああ勿論。二人の四獣とかへの視線、思いやりが見えた気がし

 てね」

「「わー!」」


 嘘。他人の思いやりとか分からんし知らん。ぶっちゃけこんだけ

 動物系集めてる拠点で、トップ二人もビーストマン姿なら。誰だ

 って動物好きだって分かる。ここケモナーの集まりが多い場所と

 か聞いたし。戦闘中もやんや言ってたしね。

 動物好きには動物を褒めときゃ良い。知り合いの猫グルイとか犬

 グルイ達は皆そうだったし。ま、素直に褒められたワンちゃんネ

 コちゃんと違って、此処のはどれを褒めれば良いか分からんね。

 とりま家族褒められるのは大抵誰でも嬉しいだろうって事で。


「うんうん。所でさ」

「「はい?」」

「オレらってさ、敵対は……してない、よね?」

「「!」」


 子イヌと子ブタが勢いよく頭を何度も頷かせ。


「もちろんです!」

「あ、でもそっちから見たら───」

「いやいや!此方だってそんな事ないよー。行き違いや思い込み

 があったって、ちゃーんと分かってるって~」

「「ルプス、ルプスお兄さん……!」」


 オレの発言に絶対茶々が入る所だったけど。ロリ様は未だフリー

 ズ中。良いタイミングで自滅してくれてる。


「あ、それとちょっと聞きたかったんだけどさ」

「「?」」

「二人はソウルズ。アカドとかって言うそのライオンさん、そ

 れとうちのロリ様達の事だけど。そう言うのはどやって知ったの

 かな?」


 尋ねると二人のビーストはアカドへと視線を向け、頷きが返って

 来ると此方へ向き直り。


「その。ボク達。あ、ボクは『シープ』で、此方が『マルカ』っ

 て言うんです」

「ふんふん。因みにオレはルプスね」


 子イヌのシープ、子豚のマルカが笑顔で頷き。


「それでその、ボク達ちょっと……。凄く、凄く嫌な事がリアル

 であったんです」

「うん。とっても……とっても嫌な事だったね」

「ほうほう(ヤダ。表情一気にくらーい)」


 現実から逃げてきた系。だけにしては重そうな空気。オレはその

 辺り苦手だし。リアルを此処へ持ち込まないがルール。なので。


「辛い事情、リアルの嫌な所はカットで良いよ。ムリにその辺り

 を話す必要って無いから。此処。

 オレも聞き出したいとは思ってないしね~」

「はい……。その、だからちょっと落ち込んでいて、そんな時に

 このゲームの事をマルカが知って、二人で仮想の世界、此処で動

 物さん達を愛でて元気を取り戻そうって、そう言う事になったん

 です」

「ふんふん(あるあるなきっかけだな)」


 エリュシオンを療養の場にするってのは結構聞く話し。ペットシ

 ステムは人型と同じレベルのAIじゃないけど、けれどそれでも他

 の仮想世界サービスの物より質は高いし。自然や人工物も大きな

 違和感は無いからね。それらを眺めると実際に自然を見た時に

 感じる、なんちゃら波が脳にどうとかって話。そんなんを記事で

 見た気がする。この二人も似たような記事を見たのかも。

 VR技術の革新的進歩、その初期段階では医療目的が主だったっ

 てのは有名。確か怪我、病気、障害で不自由をしてる人へ仮想で

 夢を見せる~……とかだったけ? 昔調べたからあやふやな記憶

 だけどまあそんなん。

 この二人の場合は、マイナーとされてる趣味趣向の持ち主っぽい

 し、多分その事でリアルのグループ、コミュニティからハブ、衝

 突したとかかな? 何にせよリアルの事情。そんなのはどうでも

 いいか。

 リアルの事情は此処に持ち込まないが鉄則だし。誰も他人のリア

 ル何て興味無いさ。此処へは皆遊びに来てるんだから。


「落ち込みながら始めたこの仮想世界で」

「大好きな自然の中を歩いていたら」


 始まりから語りだした二人は揃ってアカドへ視線を向け。


「「岩の上で寝ていたアカドに出会えたんです」」

「最初は話しかけても近付いても、何の反応もしてはくれなかっ

 たけど。それでもボクらアカドにずっと会いに来て」

「岩で寛ぐアカドに毎日毎日会いに行っていたら」

「「最後には一緒に居てくれる様になったんですよ!」」

『………』


 ボスライオン、アカドは何も言わない。て事は。


「其処から仲良くなって、ソウルズってのを知ったのも会った

 のも偶然からって事?」

「「はい」」


 二人は少し話辛そうにしながら。


「実はボク達、アカド達に魂がある事は知ってる、教えてもら

 ったんですけど。アカド達の事情までは良くは分かって無いん

 です」

「うん……。アカドはその辺りの事は詳しくなくても良いって

 言うし」

「ふーん?(その辺りは知らないと)」

「だが彼らが特別な存在、ソウルズだったか?」


 相棒が此方を確認するので頷く。いやオレが勝手に呼んでいるだ

 けなんですけどね。


「だと言うのは知っていたと言うが、仕様外に近い力を持ってい

 る事も知っていたな? それに世界、エリュシオン全体をケモナ

 ーだけの世界にするとも。その辺りはどうなんだ?」


 相棒の指摘。


「それな。

 中身が本当に入ってる事。彼らの力の存在は知ってる。なら他に

 もアカドみたいなトップの存在、陣営についても?」

「はい。その事ならボク達も知っています」

「うん。だけど場所や、誰がって言うのは知らなかったんです。

 だから皆さんが来た時侵略だと、そう思ってしまって。

 それに他を全て滅ぼせたら此処を自由にできる、他も皆それを狙

 ってるって、その事だけはアカドが話してくれました」

『だが互いに牽制しあい誰も好きにはできないだろう。とも言っ

 たぞ』

「「! ……ごめん」」

「ふーんふんふんふん」


 なるほどね。同じ境遇かとも思ったけど、流石にそれは無いっぽ

 いねこの感じ。いやま良かったけどね、オレの大好きなゲームで

 人が死んでなくてさ。マジ。

 ソウルズが一般プレイヤーに姿を明かして交流とか珍しいみたい

 だし、何か有益な情報が得られればと思ったけども。聞かされる

 情報を制限されてたのなら知らない事のが多いかなー。

 けれど世界革命、その辺りの事は記憶に留めておこう。

 考えながらオレは時計を確認。おっと。リアルはそろそろ良いお

 時間じゃないですか。


「んじゃま───」


 オレは静観するライオン、アカドさんへと視線を向け。


「後はトップ同士で話を纏めてもらおうかな? 今回の事に関し

 てさ」


 正直オレにこの話全部が修められるとは思ってない。なので、ト

 ップが居るならトップに任せるべきだろう。こんな面倒事はさ。


『……』


 言葉と視線を受け取ったアカドさんは頷きも何もなく。ただゆっ

 くりとロリ様の前へと立つ。

 途中何か言おうとしたリストゥルンさんをシークレットチャット

 で制止。

 オレ達はロリ様とライオンを、周りと一緒に見守る。


『メガミ』

「……。………」

『おいメガミ。聞いているのか?』


 頭上から見下ろすアカドさんの言葉を受け。


「───ハッ! あ?なに? 今わたし失礼なクソガキへの怒り

 でちょっとぼーっとしてたんだけど?」

「そのクソガキと言うのは私の可愛い可愛い坊や達では無いだ

 ろうな?」

「はぁ? お前に愛しい坊やぁ? それはとっても寒いジョーク

 ね。ああそう、風邪でもひいてしまいそうよ」


 おっといきなり険悪なムードから始まっちゃたなおい。


『ふん。全てに愛されるお前には分かるまい。愛せずと言う事

 の苦しみ、嘆きが』

「ええ全く。愛されてしまうわたしには分かんないわね、愛す

 る為の努力をしない、恋を諦めるそんな言い訳わね」

『………フ。フフ』

「なによ? 笑わせる気は無かったのだけど?」


 アカドさんが空、空に似せて作られた天井を見上げ。


『此処は良い。どんなに望んでも得られる事の無かったモノが、

 定められた役割には不必要と取り上げられたモノが。此処ではい

 とも絶やす得られてしまうのだから』

「そうね。お前にとってはあっち以前から望んだ───かは知ら

 ないけど。永遠期の世界、それ以前でも持てなかったモノでしょ

 うし」

『フフ。得ようと望めば何時も彼、そして世界の全てが邪魔をし

 たものさ』

「どっちの存在も私にはどうでも良いわ。

 でもそう、此処は神だったモノですら、望んでも得られなかった

 モノが与えられる。得られる真の楽園。だから皆自分の思い、望

 み、渇望に従って全てを得ようとしているわ。

 かつて神と呼ばれ崇められ、貶められ忘れられた私達に。役目を

 終え移された多くの者達。誰も彼もが自分勝手にね」

『かも知れない。私はケモノだから特に望みへは忠実だったろ

 う』

「誇るな。欲望に忠実すぎて身の破滅を招くところだったわよ。

 世界と自分を守りたいのならもっと自制を学びなさい」


 上を見上げていたライオンがビーストマン二人を見ては。


『確かにな。今回の件、感謝する。私にはこの世界とあの子達が

 何より大切なのだ。今は』

「うわ。お前お礼とか言うのね」

『ああ。メガミ程思い上がりがないのでね』

「まあ皮肉も言えたの。賢い猫」

『ふん。……メガミ、我らケモノに敵対の意思は無い。いつか言

 った様に』

「此方だってそんなの元々無かったわよ。ただ、子に現を抜かす

 のもいいけど部下の躾ぐらいはしてもらいたいわね。そうすれば

 わたしも乙女も要らぬ見回りなんて無駄な事しなくて済むのだか

 ら。

 どうせお前、何も起きないならで好きにさせてたんでしょ?」

『ああそうだ。私は少し、僅か、欠片程度には子に構いすぎてい

 たのかも知れない』


 ロリ様とアカドさんの会話は普通に此方へも聞こえてくる。

 まあだからと言って内容の意味が分かるかって言われると、分か

 らないのだけど! マジ人外の話は意味不明。

 何だかよくは分かんないけど、雰囲気的に二人の話しは良い方に

 向かってるのかな? あくまで雰囲気的にだけど。


「取り敢えずあんた達はわたしの眷属に負けた。それはつまりわ

 たしに負けたも同然。だから、今後はわたしに全面的に協力しな

 さいよ?わかった?」

『む。それは───』

「別にわたし、他の上辺だけの連中と違ってお前たちを害すつも

 りは本当に無いわよ。わたしの方針は、この理想世界の“現状維

 持”を推してるの。

 もっと正確に言うのなら世界の変化へ私達の様な終わった、終わ

 らされた一部の“例外的存在の関与”が無いなら良しってね。ま

 あある程度なら認めてもあげるけど。

 だからお前たちが領土を悪戯に増やすとか、このわたしのエリア

 を乗っ取るとか。そう言う気がないなら私達は敵対しえないわ」

『……そうか。そうだったのなら、最初から警戒もしなかった』

「あんたねえ。わたしはエリア内での他勢力全員へ同じ意思を伝

 えたはずなのだけど? 加えて言えば最初の顔合わせにも」

『覚えがないな。そもそも何をする気も無かったのだから』

「あんたねぇ……」


 首をかしげるアカドさんにロリ様が溜息を吐いては。


「はあ。まあいいわ。あんたはそのガキと一生此処で戯れてれば

 いいのよ。

 わたしの眷属も此処には興味ないだろうし」

『……』


 アカドさんがロリ様を見据え。


『変わったのは私だけかと思ったが。そうでも無いらしい』

「は?わたしが人間の影響をうけてるとか思ってる?

 違うから。最初から全部計算で、あの眷属もわたしの手腕で手に

 入れたモノだから」

『かも知れないな。だがあの悪戯小僧が言っていた事は嘘だった

 ようだな』

「?」

『“あの陣営は最弱も最弱、潰す価値も無いほどの最弱っぷりです

 よ。おまけにトップが出不精、アレ一生外に出ませんから”と。

 そう言っていたが、眷属一人にわたしが倒されるとは。やはり信用

 できないな、あの小僧は』

「うげ。最低なヤツの話しはやめてくれる?

 後絶対ぶち転がし案件ね、それ」


 雰囲気しか全く分からないけど、和やかな感じと。あのクエスト終

 わりにも似た空気は、話し合いが平和的に終わったと見てもいいだ

 ろうか? 最後ちょっと物騒な気配感じたけども。

 よし。オレはライオンとロリ様の方へと向かう事に。他の皆も一緒

 だ。


「ロリ様終わった?」

「ええ話しは着いたわ。今回の件を私の陣営は問題にしない」

『だが借りだ。何かあれば我らはお前たちに力を貸そう』

「あら?いいの? そんな約束」

『ああ。ただし力を貸すのはそっちに請われたらだ』

「え?コイツ!? わたしが一番偉いのに!?」

『恩も義理も、何より我が子がなついているのはそっちだから

 な』

「あざーっす!(これは嬉しい副産物!)」

「納得できないんですけどッ!」


 思わぬ切り札を手に入れてしまったかなー!これー!


「まとめると。牽制相手が同盟関係に成ったって事で良いか?」


 落とし所、事態の収束結果はとても良いものだと思う。


「んじゃオレ好きに此処へ来たりしても良い訳? オレってば完全

 な女神陣営って訳でもないしさ」

「そうなんですか!」

「そそ。関係性で言えば協力者って所なのよ」

「そうだったんですね。なら是非!」


 懐いたビーストマン二人。いきなり襲われもしたけど、懐かれれ

 ば可愛気もあるってもんよな。

 しかしこの二人。さっきまでと全然態度が違うと言うか、人が違

 うと言うか。何故あんなにも攻撃的だったのか少し気になる。

 ぶっちゃけ精神衛生的恐怖が拭えないよね。


「ちょい気になったんだけど」

「「はい?」」

「戦ってる最中ってか、何か最初スゴイ疑いと言うか聞く耳持た

 ずだったんだけど、何時もそんな感じでプレイしてんの?」


 返答次第で此処へ通うかは考えよう。うん。


「え、あ、いや。あの時はその、何だか怪しい、信じられないっ

 て思いが抑えられなくて」

「うん。それにお兄さん達が悪い人だって、コッソリ教えてもも

 らってたし」

「はーん?誰に誰にー?」


 オレはトロラオさんの事を見ながら聞いたのだけど。


「はいッ。アカドのお友達で“仮面のお兄さん”からです!」

「ね」

「仮面のお兄さん?」


 予想と違う言葉を二人が口にした瞬間。


『喋ったのかッ!?アレと!』

「え?う、うん」

『一体何時だ!』

「わわ、えっとずっと前の一回と、最近の一回。ついこの前マシ

 ラオウを叱った後かな。アカドが散歩している間に此処へ来

 て、“小さい少女、女神の陣営は侵略を考えてるかも知れません

 よ?”って。で、でもあの時、仮面のお兄さんはアカドも話して

 も良いって、自分は大親友だからって……」

「あの。アカド?怒ってる?」

『………むう』


 アカドと呼ばれたライオンはオレと戦っていた時の様に、完全に

 敵意を剥き出してる。序に牙も。

 怒りを顕にするライオンへロリ様が半笑いで。


「やられたわね~お前ってば。お前がもっと気を配ってれば防げ

 た事よ、きっと」

『……これは確かにぬかった。ああぬかったのだろう』

「お前の部下にもちゃーんと聞いときなさいよ? 後そっちの小

 さいの」


 ロリ様が言ったのはビーストマン二人。


「貴方だって小さいです」

「そうです」

「はん。わたしへのそのクソ生意気な態度も今は我慢してあげる

 わ。

 忠告よ。今後仮面を付けたバカには近付かない、話をしない事

 ね。アレは他人を化かしまやかす、誰それを貶めて楽しむ歪んだ

 嗜虐心の権化よ。だから気を付けなさい。さもないと……」


 ロリ様が二人へ向けて手を差し出し。何も乗っていないはずのそ

 の手の上へ一息吹きかけると、僅かに光のようなモノが二人を吹

 き抜け。


『『……~~~~!』』


 ビーストマン二人の背後から黒い靄の様なエフェクトが現れたか

 と思えば、それは苦悶の表情と金切り声を上げ吹き消されて行

 く。何だ今の!


「……え!めっちゃホラーなんですけど!?」

「何だったんだ、今のは?」


 オレと相棒の問にロリ様は事も無げに。


「今のは不安を煽り疑心を産む為の精霊モドキね。嫌な奴から

 の嫌な置き土産よ。多分今の奴の所為で情緒が乱されたんじゃ

 ない? ニンゲンとか心揺れやすいでしょうし」


 問われたビーストマン二人は。


「……良く分からないけど。さっきより今の方が気分がいい、

 です」

「うん。ずっと感じてた空腹が消えたみたいな、イライラがす

 っと収まったと言うのかな……。不思議な感覚で、でもイヤじ

 ゃない感じ」


 二人が互いを見合い。


「見直しました!少し!」

「うんうん!ホントにスゴイんですね!」

「……」

「ニルス様。私が代わりにやりましょうか?」


 おっと。おっとりな見た目にそぐわない、不穏な空気がリストゥ

 ルンさんから漏れて来ちゃってるぞ。


「いえ、いいの。子供のした事よ、落ち着きなさい。

 それよりも気を付けなさいな。コッチに来てからアレは特に拗ら

 せてるし。次もわたしに剥がしてもらえるとは思わないでね」

「「……分かりました。ありがとう、ございます」」

「ん」


 ロリ様の真面目トーンに二人のビーストマンは素直に忠告を受け

 取り。

 そのままアカドさんがロリ様へ。


『本当に恩に着る事になったな』

「重くて高いわよ~。この貸しは」

『ああ』


 それだけ言ってアカドさんはビーストマン二人へと振り返り。


「アカド。怒って……る?」


 俯向き、したから覗き込むようにする二人へアカドさんは首を横

 へ振り。


『お前達は何も悪くない。すべてはその小僧が仕組んだのだろ

 う。

 アレは弱み、心の傷に鼻が利く。恐らく利用されたのだろう、ア

 レの暇潰しに。……そうか、だからお前たちはずっと………』

「う、うん」

「ごめんね、ごめんアカド……」

『もう謝るな。それより、もう少し一緒に彼らと話そう。久しぶ

 りだろう? ゆっくりと話すのは』

「「うん!」」


 二人のビーストマンとアカドさんが此方を見ては。


「じゃあまたね!ルプスのお兄さん!」

「絶対また来てください!ルプスお兄ちゃん!」

「あ? おー!気が向いたらねー!(やっぱ情緒怖ぇー)」


 適当な言葉と共に手を降っておく。懐かれるのは悪い気がしない

 けどね。敵でも何でも。

 まあ今のこれって。


「ようはオレらはオレらで適当に帰っていいよ~……。って事だ

 ろうね(お。今の二人からフレコ来てる)」

「獣に出迎え見送り、礼儀を期待するだけムダよムダ」

「はは。んじゃま、取り敢えず一旦此処を出て街の方へ戻ります

 かねー」


 誤解や行き違いのあったらしい彼ら、今や和やかに笑い合う彼ら

 からそっと離れ。壁を超えて町の入り口へと向かう───


 ───この拠点の出入り口、大扉がある第一の壁の辺りまで戻っ

 て来た。


「……一応謝罪しておこう。裏切って悪かった、と」


 此処まで無言で歩いてたトロラオさんからの急な謝罪。


「そうよお前!やっぱり裏切ってたじゃ───」

「あーいいっすよいいっすよ。オレも裏切ると思って接してまし

 たし」

「は? わたし初耳なんですけど?後絶対許せないんですけど?」

「いや敵地の協力者がオレらに全面協力する訳ないだろ?

 どっかで裏切るだろうと思ってたし、情報後出し言い忘れが多か

 ったしねぇ。

 だからこそ目一杯優しく親切に接したんだよ。裏切る事への罪悪

 感、その瞬間にでも動揺してもらえるたチャンスーって」

「はぁー……。おまえそんな狡い事考えてたのね」

「うるせえ。せめて戦術家と言え」


 オレの話を聞いたトロラオさんは一度頷き。


「成程。大した奴だよお前らは」

「お。やったなロリ様も含まれてるぞ」

「え?ホント? っても小物に褒められてもノラないわね」

「……お前たちのお陰でまた俺は外へ出られる。感謝と礼を

 贈ろう。異邦異国に生まれ、けれど今は同じ世界を生きる同胞

 へ」


 トロラオさんは言葉通り此方に頭を下げて見せては。


「子供たちが待っているので俺は行く。この恩は忘れない」


 それだけ言ってその場を去って行ってしまう。うーん彼とも

 フレンドに成っておくべきだったかな?


「なにアイツ。裏切った事わたし許してないのに」

「追いかけて精算させますか?ニルス様」

「やんないやんない。もう、リストゥルンさん物騒すぎ」

「! そ、そう、なのでしょうか。でもあの、気を付け、ます…

 …」


 恥じらうリストゥルンさんへロリ様が『なんでそんな弱腰なの

 よ?』などと声を掛ける中。


「つい此処まで来ちまったけど、別に転移で帰れば良い事だっ

 たなぁー」

「今更だな」

「今更だよ。って事で相棒、ポータル開いてくんね?」

「? 自分で開けばいいだろう?」

「いやムリ。オレ今実は超絶に疲れが溜まってるから」


 体力と言うか精神と言うか。兎に角大事なモノが減ってる感。

 普通に疲れたで済む話でもあるけど。

 そんな事を言うオレに相棒が顔を、シブ顔を近付け。


「それはさっきのバトルで見せた事と関係しているのか?」

「う?」

「自分の記憶が確かならルプスには自前のリザレクション系は

 一つも無かったはずだ。それもあれ程高性能なリザレクション

 系は。速度、攻撃スキル。どれも自分は今まで見た事もない。

 あれは……一体何だったんだ?」


 ポータルを開く傍ら相棒がオレを問い詰める。

 冷静に考えればおかしいよね。リスポーンせず、気が付けば自己

 蘇生してたし、妙なスキルも発現しちゃって。うん。全部普通じ

 ゃないよねぇ。


「ね。何だったんだろうね」

「おい。真面目に答えろ」

「いや分からんよ。オレだって急に目覚めた的パウワーな訳な

 んだからさ。ぶっちゃけ帰ってからゆっくり自分のステを確認

 したいと思ってます。スキルも含め。

 今疲れた頭で考えたらパンクしちゃうよ、オレ」

「む。確かに疲れてるかも知れない……。今はそれでいいだろ

 う。

 だが後で必ず話し合いだぞ。いいな?」

「はーいパパー」

「パパじゃない」


 相棒の視線がオレから外れる。

 初めに此処へ飛ばされた時はもう帰れないかも、とか。最悪陣営

 寝返りとかも考えていたのだけど。終わって見れば最悪な形はど

 れも回避されたと思う。

 有効的な話し合いで情報を引き出すのは難しかったけど、それで

 も新しい情報を得られたし。実りの方が多かったかも。

 終わってみれば中々有益なイベントだったのでは?

 まあ色々考えなくちゃな事もできたのだけど、取り敢えずはさっ

 さと帰ってゆっくりしたい!自室で癒やされたい! クエストや

 イベントが終わったら一休みしないとね。


「開いたぞ」


 考えている間にポータルが開く。相棒が開いてくれた家路への

 扉。まず最初に相棒自らポータルをくぐり。オレが続く。


「あー帰ったら寝てえな。あ、じゃあ森に───へぶしッ!?」


 ポータルを潜ろうとした所で。身体がポータルから弾かれてしま

 う。


「え? え?え?え?」

「何やってんのよおまえってば。プー───クスァ!?」

「ゴッヘ!」

「ルプス様、ニルス様!」


 ポータルに弾かれたロリ様がオレにぶつかってきた。

 どうやらオレとロリ様、それにリストゥルンさんも通れないらし

 い。

 相棒は先に町へと転移できたのに、何故?

 オレは直ぐに名前を覚えていた、どさくさでフレンドになったあ

 のビーストマン二人へ連絡を取ってみると。


『はい? あ!ルプスお兄さん!』


 繋がった。


「いや実は───」


 オレは今の状況を話すのだが。


『えっとそれは多分アカドの方が詳しいと思います。今アカドに

 代わりますね』


 開いたチャットウィンドウにあのライオンの───デフォルメさ

 れた顔が表示されては。


『メガミの』

「なによ。お前わたし達を帰す気ないわけ!?」


 ロリ様はオレが開いた窓へ顔を覗かせ文句を一つ。


『違う。我々は互いに誓い合った約束の下、他所の陣営領地へ最

 初から一足飛びには行かない。そう言う決まりだったはずだ。忘

 れたのか?』


 ロリ様の顔を見ると“ハッ”としている。コイツ何かやらかして

 るな。

 チャットウィンドウへ顔を戻すと向こう、アカドさんは何かを察

 した様子で話を続けてくれる。


『……各陣営は大規模な衝突を避けるために、互いが管理する領

 地へは直接転移できない、跳べない仕組みを組んだのだ。お互い

 のトップ、そして眷属を含めてな。

 これは各陣営合意の下世界へと適用させたルール。作用している

 と言うだけの。たったそれだけの事だ』

「ちょっと待った。オレらロリ様の所から此処へ来たけど?」

『それはルールを無視できる、特別な道具を用いたからだ。

 だが道具は緊急時、私の眷属が敵から逃げるらめのモノで、一回

 限りの品物だ』


 ルールがあるとか言われて、でもそのルール無視しましたとかと

 んでもない情報が齎されたのだけど。今は咀嚼できる余裕は無

 い。

 つまりだ。上澄みで理解するなら通常状態では互いの支配領土へ

 は跳べないって事かよ。

 ああ!だからあの違法ゲートで……あのお椀みたいなのか!

 クソ!何普通に違法アイテム使ってんだよちくしょう!


「いやいや、でもやっぱそれでもさ、ロリ様が跳べないのは分か

 ったよ。 オレは?オレってば一般プレイヤーよ!?」


 応えはウィンドウ、からでは無く。直ぐ側ロリ様から。


「……そー……れは、おまえも私の陣営って事にしたから、世界

 がその認識をもったからおまえも跳べないの。全部の陣営にもう

 そう言っちゃったし。世界がおまえにルールを適応したって事

 は、そう言う事よね。うん」


 お!このロリ様ってばとんでもない事言いだしたぞー。なるほど

 なるほど。


「ははーん。おまえの所為でオレってば、もう、もうまともに転

 移もできねーのかこのやろろおおおおおおおおおおお!!!」

「あぁあ、あああああああああああ!」

「ああルプス様、ルプス様! ニルス様をそのように振っては行

 けません、行けませんよー!」




 転移ができないこと。既にオレと言う存在を他陣営へ勝手に情報

 が流されている事。全てに怒り、敵地で泣きながらネコいロリ様

 を揺する───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ