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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第五章
62/65

第四十四話 対峙

 ───四獣が管理すると言われる壁。その四枚目を通り抜け、い

 よいよ次は王と呼ばれる獣陣営代表の所だと。そう思い壁を抜け

 た空色の青年たち。彼らは驚いただろう。その眼前に広がる景色

 に。

 これまで壁を超える度に増え続けた意図不明の壁、空虚さだけを

 住人としていた空き家の数々。それらで乱雑としていた今までの

 景色とは大きく変わっていたのだから。

 四枚目を越えた先。其処は虫の音色も鳥の囀りも無く。頬撫でる

 風、揺れる草花、流れ続けるはずの雲も動きを止めた平原。何の

 環境音も聞こえない静寂の地。目ぼしい物と言えば遠くに大きな

 岩が一つ横たえるだけの、不自然の景色。

 岩の上にはナニカが乗っているのだが、景色もそれも今の彼らに

 取って皆些細な事なのだ。何故なら、空色の背年達は心の準備も

 ままならぬままに、大きな獣達と向き合わねばならなかったのだ

 から。




 四枚目の壁を越えた後は、コントロールへ入るための建物とかが

 町中のどっか、分かりやすい塔とか城とかって場所にあるんだろ

 うなぁ~って。んでそこで鍵使って中に入る~……。とか、思い

 考えていたらだ。四枚目の壁を超えた先はいきなし未知で、どう

 やら王の御わす所って感じ事だったみたいです。いや、いやいや

 いや。こんなのありー?


「自分たちが出てきた出口が見当たらないな。なるほど、無理や

 り此処へ繋げられたか」

「む~……。私の“広間”には足元にも及ばないけど。獣の癖に

 生意気ではあるわね」


 相棒とロリ様が呟いた通り。此処へは多分()()()()()来た。

 逃げようにも今出てきたはずの出口はもう存在しない、と言うか

 背後にもずーっと平原が続いちゃってます。壁なんて見当たらず

 でし・か・も。


『『『!』』』


 背後から此方を飛び越える存在、楽勝にスルーしてきたオオワ

 シ、オオグマ、オオカミの巨大モンスター。四獣さんがいらっし

 ゃいますからね! どれも皆バカでかいのなんのって……。

 鍵を複製して、楽をして相手のコントロールルームへこっそり乗

 り込もうとしたら、いきなり幹部連中の出待ちを受けちゃった訳

 なのよね、今のオレたちってば。


『許し難いき侵入者共! 貴様らは大岩の、王の下へは行かせん

 ぞ!我らが許さぬ!』

『そうだそうだ! トリの言う通りだ!』

『……。………』


 オオワシとオオカミが此方を見据え超敵対的に吠えて来る。オオ

 グマは不気味な程静かな目で此方を見てるだけ。見た目的にアイ

 ツがいっちゃんヤバそうかも。目が座っちゃってるし、涎も滝の

 ように流してるし。ご馳走を前にしたクマ、って題名付きそう。

 まあ三匹ともが“好きな食べ物は人間です”って名札下げてて

 も不思議じゃない程厳つい見た目してるけどね。

 オレは此処へ来た瞬間から今まで、退路を頭の中で必死に探して

 いるのだけど、背後の扉は存在してないし広い平地には出口っぽ

 いものが一つも見えないしで。逃げ道は絶望的。

 こっそり建物脱出系アイテムも使えないか試してるけど、この場

 所は建物と判定されてないっぽいです。召喚アイテムも今此処で

 使ってもね……。うーん。

 オレ一人って条件設定ならこの状況も逃げれるかもだけど、皆で

 は逃げ切れないだろうなぁ。どのみち。

 相手がオオザル程度なら戦えなくもないけど、オオワシが厄介。

 アレから、空からの攻撃からロリ様を守りながら三体を全部を相

 手にするのは……難しいかなぁ。範囲連打とかされたら詰み。

 これだと現状此方が振りか。

 何とか現状を変える方法は無いか、考えを巡らせながらオレは。


「あのー……。話し合いとかって言うのは可能ですかー?」

『無理だ!』

『無駄です!』


 オオカミが背中の毛を“ぶわっ”と逆立たせ、オオワシさんが翼

 を横へ大きく広げながら。否定の言葉を威嚇と共に打ち返す。

 ううーん。


「っすよねー」

「ちょ、ちょっとなんとかしなさいよ!」

「そんな事言われてもなぁー」

「おま、おまえは何でそうも冷静なの!?少しは焦りなさいよバ

 カ!」


 って言われても。現状積んでるっぽいんだよなぁ。

 少し前ならトップ同士とか合わせたくなかった。けれどこの状況

 が変わった今は合わせたい。なぜならトップとトップの直接対決

 なら政治的活路がまだあったからだ。けれどその前にこうして止

 められてしまうとアウトだ。何故なら。


「ちなみに皆さん、ここの小さいの。これって君達がメガミって

 呼ぶ陣営のトップだったりするんですけど?」

『嗅いだ事の無い臭いだ!知らない臭いは知らない奴だ!』

『其処のイヌはさて置き。私もメガミと言うのを見た事がありま

 せん。

 貴方達は侵入者で、それは侵入者の嘘かもしれない。王の身の安

 全を考えれば、聞く耳を持つ必要は無いでしょう?

 悪いのは侵入した貴様らなのだから』


 オオカミさんてば素直ー。オオワシさんてば悪い顔。

 彼らから視線をロリへ移し。


「ね? こんな感じなのよ」

「はあ!? 獣の癖に浅知恵を働かせるじゃない!」

「ルプス様、ニルス様?」


 不思議がっているリストゥルンさんへ。


「わたしをわたしと知らなければ戦争にならない。わたしと言う

 存在を無視できないのは面識のあるトップ同士だけ。何も知らな

 い部下の不始末なら、部下で済ませればいいって話しなんでし

 ょ」

「そんな!」


 王とか呼ばれるトップの所を目指していた一番の理由が、ロリ様

 と合わせる事にあった。勿論他の目的も途中で出来たんだけど、

 政治、外交を頼りだったんだけどなぁ。

 でもまあ相棒は最悪ログアウトすれば問題ない。拠点から出られ

 ないけど、相棒にとってはただのゲームだしね。

 オレに関して言えば永遠と此処で逃げ回るか……禁断で禁忌で最

 悪な最終手段が一応残ってはいる。絶対使いたくないけど。

 けれど何にしたって此処で、現時点でロリ神様がドロップアウト

 するのは正直痛いんだよね。ロリ様の言葉だけを信じるなら勢力

 均衡の崩れは仮想世界の破滅を招くらしいし。オレとしては此処

 の代表から是非同じ話を聞きたかった。最低目的として。

 情報の精査には数が必要だからね。それも確認できないままって

 言うのは……あーでも今の状況からどうするってのもなぁ……。


『問答はもういいだろ! コイツらを早く噛みちぎろう!』

「おい。一つお前達に聞きたい」

「相棒? 相手すんごい物騒なこと言ってるのに物怖じしないね

 君!」

『何だ! 偉そうな子ヘビ!』


 相棒はどうやら彼らに聞きたい事があるらしい。相棒はオオカミ

 の吠えにも微動だにせず。


「何故自分たちが此処へ来ると知っていた? 何故そこまで敵対

 勢力のトップを語る自分たちへ冷静に対処できる?」

『??? む、むずかしい事言う、聞くな!噛むぞ!』

『毛無し。貴様にはもう答えが分かっているのでは?』

『……。………』

「ああ。まるで全て知っていたみたいじゃないか」


 顔を四獣達から横へと向ける相棒。視線の先には現地の協力者の

 トロラオさん。


「そうは思わないか? なあアンタ」

「! あんたやっぱり裏切ったわね!」

「……かも知れない。だがそれがどうかしたか?俺は出たいだけ

 で、争うなんて一言も言ってない。分かるようそう言ったはずだ

 が?」

「ふん。出してもらえるなら自分以外どうでもいいって事か。ケツ

 の軽い野郎だな」

「ほら裏切った!ねえねえほら! わたしすごいでしょ?」

「ロリ様今それ喜ぶ所ー?」


 なるほどねい。トロラオさんってば話し方も表情も別人じゃん。

 全てを物語っちゃってるわー。案の定裏切ったのかぁ。


『もともと我らが王の眷属。ならば貴様らを此処まで誘導するは

 当然の義務! これ程の大物。分け前をねだる浅ましさも許しま

 しょう!

 全てはただそれだけの事。貴様らが本当にメガミと分かった以

 上、貴様らは此処では終わる。王の為にも終わらせるのです!』

『? 食うんだな?食って良いんだなぁあああああああああ!』

「!? 捕らえて逃がすだけのはずだ!」


 トロラオさんが驚いた様子でオオワシへと問い。


『ええ捕らえて逃します。あの彼方へとね!』


 悪い顔で応えられる。

 此方を完全に襲うつもりらしい!


「わーお問答無用じゃんー!」

「ギャー!食べられるー!」

「ルプス!」

「ニルス様!」


 オオワシとオオカミが飛び上がりそのままオレ質を、足にしがみ

 つくロリ様諸共目掛け空から攻撃を仕掛けてきた。


『ハハッ。こんな獲物、簡単に仕留め───!?』

『なんだー!?』


 突然の事だった。此方に迫る四獣二匹、バカでかい体躯のそれよ

 りもずっと高い、在るのかどうかすら怪しい天井から何かが落ち

 て来ては。


『ガアアアアアアアア!』

『っく!』

『キャイン!』


 声を上げる謎の物体を、オオワシが後少しで接触、と言う所で体

 を無理やり翻しては躱し。躱された落下物は地面へと、オオカ

 ミを巻き込みながら墜落。


「ひゃー!」

「なんかスゴイ、なんかスゴイんですけどー!」


 眼前で巻き上がる大きな土煙(エフェクト)風圧(物理演算)

 身体がぶっ飛ぶかと思った土煙の爆心地、その中からオオカミが

 飛び出しては身体を震わせ煙を注視。まだ中に居る、起き上がる

 大きな影を見つめている。

 煙は直ぐに晴れ、中から()()()()()()()()()()()()()が一匹姿を

 表す。


『何で?何で何で??』

『裏切るか!マシラオウ!』


 オオカミとオオワシが睨みつけた相手。白い体毛に包まれたオオ

 ザル、自分たちと最初に戦った四獣、あのオオザルだ!

 彼が降ってきてはオレたちと四獣の前に立ちはだかり。


「えーっと。つまり助けてくれるって事で良いか!?

 てか君あっこから出れないんでないの!?」

『……儂には儂の考えがる。お前達は好きに考えるが良い』

「オッケー成程了解!」


 質問の答えは曖昧だったけど、オレは直ぐさま足で震えているロ

 リ様を抱え上げ。


「降って湧いたチャンスだ!これを逃す手は無い! 皆一気に

 向こう、あの大岩を目指すぞ!」


 この地形、マップ何て分かってない。けれどさっきの会話で大岩

 付近に“王”って奴が居るのは分かったからね。


「! はい!」

「ああッ」


 リストゥルンさんと相棒が返事をし。


「……」

「あんたも来た方がいいぞ、此処に居たら巻き添え食うだけだ

 し。騙して裏切って犬死って、それ一番つまらないだろ?」

「ッ……」

「それに相手が約束守る保証なんてないじゃん? さっきみた

 いにさ。

 まあそれ此方もなんだけど……」

「何裏切り者に構ってるのよ。情けと慈悲は違うのよ?

 ほら!発進、発進しなさい発進!」

「あーはいはい。てかオレはロリ様の乗り物じゃないんでそう言

 う言い方はしないでくださーい。

 ま、アンタそれでも良いってんならオレは構わないけどね。

 んじゃな!」

「……ッチ」


 声を掛けたトロラオさんも、大変不服そうにしながらオレらと一

 緒に走り出す。目の前、オオザル達を避けて横へと膨らんで走り

 出すと同時。


『……シラァ、シラシラシラシラシラマシシシラァァアアア!』


 茶色の体毛に金色のラインの入ったオオグマが、それまで静かに

 涎を垂らすだけだったのにいきなり、真っ赤に血走った目をコレ

 でもかと、飛び出るんじゃねーのって程に見開き、涎をまみれの

 口から牙を剥き出しで、言葉にも似た叫びを涎と共に叫び上げ立

 ち上がる。

 オオグマはそのままオオザルへと真正面から突進。


『来るか!キンユウヒィイイイイイイイ!』

『グギヤアアアアアアアアアアアアアア!』


 対するオオザル側も白い毛を逆立て牙牙しい口を食いしばり、右

 フック左フックと。殴るようにしてオオグマを迎え撃つ!

 二体の巨大なモンスターが正面衝突。地響きに衝撃波のエフェク

 トがえらい事に成ってます!

 真横で繰り広げられる激闘を見ちゃった。


「うおおお大怪獣バトルじゃんか! ああームービー撮りてぇ!

 再生数といいねが沢山もらえそうな光景ですよ、相棒!」

「ふふ、ああ。確かに凄い迫力だ。アレは」

「バカバカバカ! 言ってる場合じゃないでしょ!」

「……戦場で呑気な事だ」

「戦士としての胆力があるんです。ルプス様とご友人様には」


 間近で繰り広げられる大怪獣同士の取っ組み合い。オオザルはも

 しかしてあの時わざと負けたのかな? 何て一瞬疑うけど、オレ

 らじゃああも正面衝突では戦えないもんな。

 単純なパワーバトルを避けて良かった。マジで。

 いつか戦ったヒュドラ戦思い出しちゃう位、テンション上がる光

 景。


『ぅぅ。マシラオウめ! 楽しそうだけど、ああなったキンユウ

 ヒには近付きたくないぞ。アレはマシラオウに任せて、オレは

 侵入者を───ワオ!?』

「ルッルッルッル!!」

「「「ッキッキー!」」」


 猛り狂うオオグマはオオザルに止められたけど。オオカミとオオ

 ワシが此方を追いかけようとした、その時。オオザルが降ってき

 た所からまた落ちて来た大量の魔猿達。彼らはオオカミを埋めん

 ばかりに降り注ぐ。その中には何処かで見た事のある、此方へ勝

 ち誇った顔の中ザルの姿もあったりなかったり。どうでもいい事

 だけどね。

 敵が味方にって最高なチャンス、なんだけど。


『愚弄、愚弄して愚弄して愚弄してええええええええ!』

「「「キー!?」」」


 オオカミと一緒に魔猿に集られていたオオワシは、キレイな回転

 で持って身に付く魔猿達を平原へと吹き飛ばす。


「どうせならオオワシの方も止めて欲しかったんだけどなぁ!」


 オオザル達襲来のゴタゴタを飛行で回避したオオワシは、唯一オ

 レたちを追える四獣が此方の上空へと迫る。


『この場所で、この場所を、このぉぉぉおおお!絶対に許さない

 ぞ貴様らぁあああ!』

「何かめっちゃ怒っってるっぽい!まー当然ですよね!」

「敵陣で好き勝手してるのだから、それは怒るでしょう!」


 青い円の中心にある黒い点、瞳を怒りに滲ませ。赤のラインが通

 った翼を大きく広げ、上空で叫ぶオオワシ。四獣の二匹を止めた

 だけ大金星、もう一匹までは流石に贅沢だとは分かってるさ。

 待ち伏せのピンチから、転がり込んできたチャンスを活かすため

 に走り出したオレたち、その自分たちをすっぽりと覆い隠す影。

 怪鳥型モンスターの最大サイズよりは小さいけど、それでもデカ

 イよねやっぱ!


「相棒ッ! 大型飛行モンスターとか、事前準備無しで相手してる暇

 とか全然ないから、時間!時間さえ稼げればいいんですけど!」

「この土壇場で無茶を言う!」

「分かってる!ごめん! けど!けどけどッ!?」

「ああ! 支援も無しにやってやるさ!」


 隣を走っていた相棒はくるりと踵を返し、足から土煙を上げなが

 らブレーキを掛け、上空へと手を構え。その手にスナイパーライ

 フルを喚び出す。


『ハハハ!そんなモノがこの私に当たると思うか!?』


 オオワシは攻撃を避けるために旋回、蛇行と言う無茶苦茶な飛行

 方法を大空で見せつけてくる。普通の鳥人プレイヤーには到底真

 似でき無さそうな曲芸飛行。あの体躯であの動き、仮想で強化さ

 れた三半規管でも相当キツイでしょ、あれに耐えるのは。


『どうだこの動き! 空を制す者、私だけに許された力よ!』

「ダウナーインジェクシ(精神鎮静)ョン」


 空で風の音よりも鋭く叫ぶオオワシ。相棒はそんな相手の超飛行

 にも眉一つ動かさず。


『老兵、蜂の巣になるが良い! アハハハハハハハ!』

「ちょっとアレ!」

「大丈夫、相棒なら多分大丈夫!」


 オオワシは両翼を目一杯広げ、直下には風の弾丸による、さなが

 ら機銃掃射が相棒前方へと迫っている。地面を削りながら迫る風

 の弾丸、地を這う驚異の影。

 それでも相棒は地面へ片膝を付き、照準を引き絞り。そして。


「ふー………ッ!」


 トリガーを引いた。降り注ぐ風の弾丸の中から放たれた一発の弾

 は───オオワシには当たる事は無く。


『無様!避けるまでもない! 勇ましく残り、肉の塊になっ──

 ─キャアアァ!?』


 オオワシに当たる事の無かった弾丸だったが、弾はオオワシの、

 その顔の目の間で突然炸裂し、強い閃光を放った。

 相棒が放ったのは攻撃の為ではなく、落とす為の物。閃光弾。

 その強烈な光を間近で受けたオオワシは、飛行もままならず空

 から地へと落ちて行く。


「あの男やるな」

「アハッ! 何よ鳥撃ち何て楽勝じゃない!」


 相棒の上で前を見たトロラオさんとロリ様。


「な訳あるか! あんな動きの、しかも弾丸迫る中でその顔面に閃

 光当たるように撃つなんて芸当、相棒ぐらいしかできないってー

 の!」

「射手としてはとても優秀な方ですね。ご友人様は」


 オオワシを撃ち落とした相棒がオレ達に追いついて来ては。その

 顔は余裕、では無く驚きに満ちていて。


「ヒーロー!」

「は。良いから前見て走れ」

「おお?」

「信じられない話だが、()()()()()()()()()。目も見えない、崩

 した体勢を落下の寸前で持ち直し、滑空へ移行していた。直ぐに

 また空に上がって来るぞ」

「マジ!?」

「回避不能な距離で、それこそ獣の直感だけで閃光を僅かに躱し

 たか、或いは耐性が高いのか……」

「どんなキャラコンだよ!」


 閃光をあんな至近距離で受けたなら、視界も平衡感覚も相当イカ

 れてるハズ。んで空でパニックらずにってか?マジかよ。

 直撃でそれなら、もし閃光爆発が少しでも顔から遠かったりした

 らそもそもフラッシュも効かなかったかもって事? うへぇー。


「何にせよ二度同じ手は通じ無い相手だろう」

「それじゃ通じないだろうね。此方下に見ていてくれた、ただの

 攻撃だと高をくくってくれたお陰もあるだろうしね」


 話してる間に遠くではオオワシが再び上空へと登り始めていた。


「マジじゃん!もー走れ走れー! オオワシ、怪獣バトルの決着が

 付く前にー!」

「「「おおー!」」」

『~~~~~!』


 走るオレ達の背後からオオワシの怒号、大怪獣の振動が響き渡

 る。

 四獣達とオレ達。どちらが大岩の下へと辿り着いたかと言えば─

 ──


「ぃよっしゃああー!」

「ぁぁぁああああ!」

『『『!?』』』


 着いたのはオレ達。より正確に言うならオオワシの機銃掃射に日

 和って加速スキルを使って相棒たちを置き去りにし、華麗に大岩

 へとエントリーを果たしたオレ。と脇に抱えっぱのロリ様。

 相棒ちゃん達はちょっとだけ遅れている。敏捷型ビルドのオレ大

 勝利。ワハハ。

 そうして四獣を振り切って走り着いた先は大岩の前。王が居ると

 言われた場所で。


『……。………』


 “すやすや”と大岩の上で寝息を立てる大きな、それは大きな大

 きなライオンさんが寝ていました。遠目に見た時何かが乗ってる

 なぁーとは思ったけど。四獣に負けず劣らずのデカーイライオン

 さん。

 てかこれが何となくって、どんだけ此処まで距離あったんだよ!

 走ったなーオレ。……ん?


「「あれ?」」


 ロリ様とオレから驚きの言葉が漏れる。王だと思われるライオン

 を見付けたからじゃない。更に他にも()()からだ。


「ライオンー……はそう言う存在を予想してたからまあ分かるん

 だけど」

「これはどう言う事かしら?」

「さあ?」


 王と呼ばれるに相応しい一匹の巨大ライオン。全身が鬣並にフサ

 フサと言う、普通のライオンとは全然違う一頭が寝てる、その大

 岩の側には。


「「……すぅ」」


 子イヌと子ブタ姿のビーストマンキャラも眠っていた。岩へ背

 を、頭を互いの肩へと預け仲良く眠っている。

 もしかしたら最初から居たのかも知れないけど気が付かなかっ

 たね。


「ロリ様のみたいなお付きの眷属ってヤツ?」

「違うわね」

「ほん?」

「寝てるのプレイヤーよ、プレイヤー。だって魂が此処には来て

 無いもの」

「ふーん……え?マジ!?」


 って事は詰まり。この超絶空間に居るって事は、しかもトップと

 一緒って事はよ。ロリ神様達ソウルズの事情を知っている一般プ

 レイヤーって事になっちゃわね? うわーまじー?


「ちょちょ、ロリ様達ってば正体隠すんじゃなかったの? 気軽

 にプレイヤー側に置いちゃうの?」

「置かないわよ。でもそれはわたし達の存在自体を完全に隠して

 るって訳じゃないの」

「あ? あー……。あん?」

「そうね。おまえが利用するわたしの酒場、其処で働いているの

 だって皆乙女でしょ?」

「あい」

「相手が、プレイヤーが真に此方の事を知り得なければ、接触だ

 って何だって普通にするわ。わたし達は生活をしてるのだから」

「なーるッ!」


 そっか。普段はNPCの振りをしてるんだもんな。


「でもそうねー……。この二人が事情をどの程度知っているのか

 は分からないけど、わたしと同じ立場のアイツが、コレを側に置

 くって言うのは……考え辛いわね」

「ほう?つまり?」

「全く意図が分からないわね!」

「自信満々に言うなよ……」


 何だそりゃ。結局謎って事かよ。


「……んまあ、事情を知ってる相手なら話せる、かも?」


 此方へ駆けて来ても、遠くで大怪獣バトルが起きていても驚かな

 いし起きない二人。と一匹。

 んーライオンと子供。どちらに声を掛けるとしたら、答えは決ま

 ってるよね。


「あのー……」

「「……。………?」」


 大岩の前。岩に背を預け眠っていた二人の子供キャラを揺すって

 みると、二人は目を擦りながら起き上がる。……マジで寝てたの

 か? VR機器付けながら寝るって大変だと思うんだけど。まあ、

 専用の機材とかもあるし、それ持ってる、とかかぁ?

 何て雑多な事を考えていると。目を開けた二人がオレを視認した

 らしく。


「? わあ!おっきなウサギさん!」

「小さなネコさんも!」


 無邪気。悪意っ気も無く目を輝かせながら、オレとロリ様の身体

 を目にしてくる子イヌと子ブタのビーストマン。


「あ。ああどうも、ウサギさんです」

「別にあたしはネコじゃないわよ」


 ビーストマン二人は立ち上がり此方、オレとロリ様を見回して

 は。


「とってもお似合いですね。そのファースーツ」

「ネコさんの格好もバッチリ!」


 と。またもや見た目を褒めてきた。


「ファ、ファースーツ?」

「はい!」

「あー……そう。いやありがとう(スーツって事は着ぐるみの

 事か)」

「だからわたしは全然うれしくないわよ」


 そうこうしているうちに背後から四獣の迫る音。相棒たちの到

 着と四獣の到着はほぼ一緒。


「わー。アイタズさん達に新しい仲間もいっぱいだ。あれ?

 でも皆どうして此処へ?」

「うん。それに他の皆も何だか楽しそう……。なにかしてたの

 かな?」

「「ボク達に内緒でさ?」」

『そ、それは……その……』

『……ワン』

『…。……』


 子供二人に尋ねられた四獣達が押し黙る。どう言う事かは分か

 らないけど、悟る事はできる。これはパワーバランス(上下関係)だ。

 ど言う訳か分からないけど、四獣はこの二人より下なんだ。

 そして下である以上オレ達の存在を説明できない。多分だけど

 ね。

 でももしそうなら。


「いっやぁ~良かったぁー! 実はオレ達ってさ、此処に迷い

 込んっじゃっただけなのよ。それをご親切にも四獣の方々が此

 処まで案内してきてくれた訳なんですよぉー」

『『『!?』』』

「わわ!そうだったんですか!」

「つまり……ボクたちの新しいお友達ですね!」

「うん? そう、そうね。オレ達友達! イェーイ!」

「「わーい!」」


 子イヌと子ブタとお手々をタッチ。

 パワーバランス的にこれで四獣は下手な事が言えないはず。

 その読みは正しく四獣が右往左往している。いや、クマは

 涎ダラダラがデフォみたいでよく分からんけど。


「それでー。お友達になった所で何だけどね」

「はい!」

「迷い込んだって言ったじゃないすか? できればその、外

 へ出ていなーって……」

「はい。いいですよ!」


 びっくりするほど二人は簡単にオレ達を帰してくれそう!


「マジ?やったー!」

『お待ち下さい!その者たちは敵です!』

「!(ゲ。意見してきやがったなワシ!)」


 正体明かさずこのまま出口を開かせる積りだったのに!

 んまあそんな上手くは行かないか。


「敵? そんな訳ないじゃないですか」

「うんうん。動物さん、そしてケモナーの皆さんは皆大事なお

 友達ですもん」

「ねー。友達を疑うとか、良くないと思うー」

『クア!? 貴様ッ!』


 此方を襲おうとするオオワシ。だったけど。


「ああ!めっ。めっですよ『アイタズ』」

『ッ!! ……グゥ』


 マジかよ子ブタがオオワシを、足で掴まれたらサイズ補正で一

 発っぽいのに、そんな相手を黙らせたよ。てか今叱ってなかった

 か? ま、まあ気になる事は沢山あるけど、まずは此処の脱出。

 それと後。


「ふん。わたしは今回の事絶対許さないけどね」

「まあまあ。このままこそっと帰れるなら文句はないだろ?」

「む~!」

「はいはい笑顔笑顔」


 小声でロリ様を宥めてつつ。バカ正直にポータルを開け始めた二

 人のビーストマンへ。


「おっと。そだお二人さん」

「「はい?」」

「オレらが怪しいやつじゃないって分かったならさ、この辺り

 の転送阻害とか解除したほうが良いと思うよ。事情を知らない

 他の一般プレイヤーも怪しんじゃうじゃん? それってマズイ

 じゃん?」

「「ええ確かに───」」

「後このトロラオさんね。こいつも外に出たいって言ってるか

 らさ、何とか出してあげてくれない?オレらの事此処まで案

 内してくれた恩人でもあるんだよぉー。

 まあトロラオさんの方はもっと数多いんだけどさ」

「! お前……」


 トロラオさんがオレを見れては驚く。ふふ、オレは優しいの

 さ。基本的には。


「ふーん。外へ出たい……彼らも……」

「アハ、アハハハハ」

「「「?」」」


 何故か二人が揃って呟き、嗤う。顔をトロラオさんへ向け

 ては。


「出たいんだ? キミ」

「あ、ああそうだ。私と、私の教え子たちはこの国を出たい」


 話を聞いた子イヌと子ブタの二人がオレの方を見ては。


「此処はですね。動物さん達やケモナーにとっては最高の場所

 なんです」

「あー? ああうん。そう思う!うんうん!(目つき変わった

 な)」

「ですよね。なら───やっぱり誰も出て行かなくてもいいと思

 いますよね?」

「「「!」」」


 開きかけていたポータルは、二人が差し伸べた手を握り込み、

 弾け閉じられる。


「え!? いやぁーでも、オレらは迷い込んだだけだしー!」

「そうよ。わたしはこんな所永久に出て行きたいわよ」

「わ!バカッ」

「……そうやって」


 ポータル完全に閉じた二人は此方を睨み。


「そうやってみ~んなを騙すんだ?騙されたんだ? 皆みんな

 そいつらに」

『『『!』』』


 恨むように睨み二人のビーストマン。おいおいおい、雲行き怪し

 くない?ちょっと。


「………は? その、急展開すぎておっしゃってる意味が──

 ─」

「騙されたんでしょ?」

「そこの、そこの侵入者に!」


 二人は叫ぶ。


「なにを?いやいやいやオレらは───」

「おまえたちはいつも!迷惑なんて、隠れてただけなのに!

 居るだけで迷惑だって!理不尽を!」

「嘘、嘘嘘嘘嘘!嘘で守り合って!庇い合って騙し合って!」

『おお、落ち着いてください!』


 バグりだした二人のビーストマン。トロラオさんもオレらも

 皆困惑顔。

 彼らにはオオワシの言葉も聞こえてない様子で。


「「侵入者! ボク達の王国を荒らす奴は、侵入者は───み

 んな殺さないと!!!!!」」

「ボクたちの子が奪われる!また奪われちゃう!」


 うーわー……。ヤバ、完全にイッてるなあの二人。


「何かヤバい事に成ってきたんだけどー! 危ない電子ドラッグ

 にでもハマっちゃってる系かも!」

「違法じゃない方も大概だが……。先制攻撃をした方が良いか

 もなだぞルプス」

「かもね!」


 場は突如話し合いが出来ない状態へと陥り。


「「だからアカドッ!」」


 二人の声にライオンが、岩の上で目を明けた。その瞳は此方を捉

 え。


「「侵入(邪魔)者をやっつけて!」」

『!』


 巨大な体躯のライオンが、猛禽類の様な足を持つライオンが大岩

 から飛び立ち。


「うわわ!」

「下がれ下がれ!」

「っく!」

「キャー潰されるー!」


 オレ達が立っていた場所へと降り立つ。そうしてビーストマンと

 オレ達の間に降り立っては。此方を鋭く睨みつけ。


『ゴオオオオオオオオオオオオオ!』




 巨大な獅子は目覚め。獲物を見据え咆哮を上げた───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです。

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