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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第五章
61/65

第四十三話 お約束とは

 ───塔のような建物内で四獣の一匹、マシラオウと名乗ったオ

 オザルから、王へと会うに必要な鍵を渡された空色の青年達。彼

 らはそのまま四獣の下を後にし。現在は一枚目の壁を超えた先

 を、拠点の中を歩いている。




 今自分たちが出てきた建物。壁にめり込んだ塔のような建造物を

 振り返り。


「何か、すげー普通に出られちゃったね」


 突発的な戦闘、そして話し合いを終えたオオザルはオレ達を素直

 に開放、建物からも出してくれたし。


「お気をツけてッキー!」

「バイバーイッキー!」

「手なんカ振らなくテいい!」


 お猿さん達の見送り付き。モンスターがめっちゃう普通に喋って

 るけどいいのかね、あれ。


「最後までうるさいわね。おまけに不敬にも面倒なお願いまでし

 ちゃってくれちゃって」

「まあまあ。王とかってのに会って、オオザル君がこう言ってま

 したーってさ。そう伝えるだけじゃん」

「獣ごときに使われてる。そこが気に入らないわ、わたし」


 ぷんぷりなロリ様。

 この拠点を出るには全体の管理者、つまり王とか呼ばれるトップ

 が居る場所、そこだけらしい。念願の脱出経路の情報だったのだ

 けど、これでステルスミッションよろしく相手の懐から一気に脱

 出だ! とは行けない。

 あのオオザル曰く、今は誰もこの拠点を出られないとの事。そん

 な事態が長引けば一般プレイヤーの皆さんだって、数多の不具合

 やバグに障害。それらに鍛えられてきた彼らだって不審に思う。

 当然短期集中で複数同じタイトルで寄せられるであろう報告(レポート)を、

 運営は無視しないだろうしね。流石に。

 噂が広まれば物見遊山に検証班、運営の調査チーム派遣等々。有

 象無象がこの事態を楽しみ(遊び)に来るはずだ。

 そんな面白い、いや可笑しくなる前にこの事態を解決しないと行

 けない訳だ。脱出から解決へと目的はシフトしてしまった。……

 はぁ。

 おまけにオオザルちゃんてばオレ達に王への頼み事を代わりにお

 願いね、何て言ってきたしな。『壁と囲いはいらない』とかって

 言う意味不な伝言をさ。


「何かあるのなら自ら申し出れば良いと思うのですが、そうは行

 かない物なのでしょうか?」

「さあ。言わせないのか、耳を傾ける気がないんじゃない。何に

 しろ部下の管理がなってない時点でわたしよりもずっと格下よ、

 格下」

「はい! ニルス様への人望は獣とは比較になりませんもの」

「ふふ。当たり前で当然な事も、口に出すべき時はあるものね」


 信じ難い事を口にするリストゥルンさんと、真に受けるロリ神様

 が何か楽しそうにしてる。ロリ神様最後此方を見てたけど、何の

 事やら。

 うーんでも、ロリ様の言う事も確かにと思う。ここのトップは部

 下の意見を聞いてないと言うか、汲み上げてないと言うのか。

 ただその一方でこのロリ神様の方が部下に好かれている事実を見

 めたくないと思う。だってこんなだし。

 でもロリ様以外の魂側の……。魂陣営……。


「『ソウルズ』」

「は?突然何?」

「ルプス様?」

「いや何かロリ様達魂持ちの連中とそれ以外を分けるのに何か呼

 び名が欲しいなって思って。うん、オレこれから勝手に魂持ちの

 事、つまりロリ様達の事をソウルズって呼ぶ事にするわ」

「えぇ。そんな適当な……。と言うかそれおまえも含まれてるで

 しょ」

「あ、確かに。ま良いだろ別に。これオレが勝手に呼ぶだけだか

 ら。こう言うの、呼称略称通称ってのはあって困らないし。

 後一々魂持ちとか、入りとか肉とかって呼ぶより格好もいいから

 ね!」

「ええはい。私は良いと思います。私達自身の事を敢えて呼称す

 して呼ぶ者は今までいませんでしたので、特に何もありませんで

 したし」

「ねーリストゥルンさん」

「え?あ、はいルプス様。ふふ」


 笑顔のリストゥルンさんから相棒へと顔を向けて。


「相棒もそう思うよな?」

「……」

「相棒?」


 話を振った相棒は何か集中してる様子で。何だろと思っている

 と。


「トロラオ、さんの姿が見えない」

「あれ?ホントだ」

「逃げたんじゃない。あのビーストマン」

「期待はしていませんでしたけど、離れる前に一言でもあればと

 は思いますね」


 気が付けば塔を出て歩くオレらの近くには、あの現地協力者の姿

 が無かった。ロリ神様が言った通り逃げてしまったのだろうか?

 だとしても仕方がないかなぁ。

 四獣と争ったり、王に会いに行くとかね。無茶苦茶だもの。


「まあ……あ、居たじゃん」


 辺りを見渡せば、少し遅れて後方からトロラオさんが小走りで追

 いついて来た。


「すみません。知り合いを見かけ目で追っている間に皆さんに置

 いて行かれてしまってました」

「な~るッ」

「野生っぽい癖に鈍くさいわねー」

「逸れては私達では探せるか分かりませんよ?」


 申し訳ないと謝る彼の事を、相棒が“じっ”と見つめては。


「……」

「あの、なにか?」

()()()()?」


 応えの先はトロラオさんでは無くオレの方だった。なので。


()()()()()。誰にだってあるっしょ?」

「そうか」


 答えを返しておく。

 相棒とオレのやり取りに困惑した様子でトロラオさんが。


「えっと……?」

「ふ。いやなに、迷子は誰にでもあるから責めるなと、そう言う

 話だよ。ルプスと今のは。特に気にしないでくれ」

「……はい。気を付けます」

「ああ頼む」


 それだけ言って相棒は再び顔をオレへ向けて来ては。


「ルプス。それでこれからどうするんだ?」

「んもうそれは残りの四獣の所行くしかねーべや。ってはずだ

 ったんだけどー……相棒ってばさっきの話本当なん?」


 本来は大変面倒な事に他の四獣に合わねばラスボスには会えな

 い。四天王方式とでも言おうか四つの鍵が必要なのだ。

 本来なら。


「ああ。触りを観た程度だが、あの四獣から渡されたそのキー

 アイテム。()()()()()ぞ」

「えぇ。もうしゅんごい!」

「ふふ、何だよその喋りは。

 しっかりとした確信が欲しいなら、自分に貸してくれるか?」

「あいよ」


 言われた通り相棒へキーアイテムを譲渡。すると相棒はアイテム

 を手に取り睨んでは。


「問題ないな。やはりこれは複製が可能なタイプだ」

「マジ?」

「ずっとマジだと言ってる」

「やっぱマジか。複製できるんなら他の四獣とは争う必要なさそ

 うだし。楽ができる!」


 あのオオザルが言うには、王の場所へ行くには四つの鍵が必要な

 んだそうな。オオザルがくれた一つと、残りの鍵は他の四獣が管

 理しているって話し。まあ当然ただでは渡してもらえないであろ

 う代物。拠点管理者の下へ行く為の、そんな大事なアイテム。

 入手には戦闘、お使い、拒否。何にせよそんな面倒(お約束)が待っていた

 のだと思うけど。素晴らしき相棒のお陰でそれら面倒なイベント

 が一気にスキップできちゃいそうです。


「ねえ。それチートじゃないの?」

「ロリ様違う違う、これはチートじゃないのよ」

「神の御前へと至る秘宝を、それを真似るとかご法度じゃない」

「この何でもありに近いエリュシオンで何をもってチートって定

 義、言うのかはぶっちゃけムズいけどさ。キャラ改造とかそんな

 やばい系チートと相棒のは違うのよ。

 このキーアイテムの複製とかってのは、ゲーム内で行える範疇に

 ちゃーんと収まってるの」

「……(少女からの訝しい目線)」

「んん! 良いですか?そもそもね───」


 ロリ神様が持ってるスキルとかがまさにチート級。同じ効果をプ

 レイヤーが使用するにはもっとリスクや苦労がある。ノーコスト

 に近い条件でアレだけの事ができるなんてチートよ、あれこそ。

 まあそれは今此処では言わないけども。

 相棒が言っている複製と言うのは、文字通りキーアイテムの複

 製。この仮想世界、個人宅や建物宝箱とかには当然ロックシステ

 ムがあり。同時にそれらを開くキーアイテムってのも当然ね。

 ロックシステムは簡単な物、それこそ初歩的な鍵開け系スキルで

 開いちゃうレベルの物から、現実の大企業レベルの物まで。

 まあそんなレベルは超大手ギルドの宝物庫とかのだけどね。大手

 はマジなスポンサーとかが着いてたりするし当然と言えば当然な

 んだけど。


「───そうしたお家以外にも宝箱とかダンジョン、ダンジョン内

 の扉とか。アンロックの技術は自然と存在してるモノなのよ。

 まあキーアイテムのコピーとかってのはかなり技術、スキルレベ

 ルと扱う者の知識も必要なんだけど。逆に言えばそれがあれば誰

 でもできる事なのよね。この仮想世界、ピンとキリは果てしない

 でしょ?」

「ふーん。要はアレね、盗賊とか盗掘者が使う技術でしょ? 小

 賢しくと思うけど。それで面倒を回避できるなら、今回は見逃し

 てあげる。この世界を壊し揺るがすほどでも無いでしょうし」


 自信満々にロリ様が相棒へ“ほら早く”と言っている。


「……どうするルプス。自分はしてもしなくてもいいぞ」

「わたしが許可してるのだけど!?」

「そうです。ニルス様が許可をしていますよ?」


 相棒は意地悪した訳じゃない。ロリ様でなくオレにこうして聞い

 てくるってのは詰まり、“楽していいのか?”って事をあんに聞

 いてるんだろうね。ダンジョンとかだと相棒此方系は全て使わ

 ないよう封印してるし、何より本人ってばイージーよりハード、

 ハードよりもベリーハード派。

 それでもヌルゲーなら縛ってでも難度を上げる! ってな人種

 だからなぁ。オレはぬるま湯もアツアツも嫌いじゃないけど。


「今回は場合が場合なので許可しますッ。ぶっちゃけ敵地のど真

 ん中とか精神的ストレス値がガン上がりなんで、ボクは早くお家

 に帰りたいどす」

「最もな理由で明瞭な答えだ。それに加え今回は自分が起きて付

 き合える時間にも限りがあるしな」

「それねそれ。相棒はちゃんと現実のベットでお寝んねしないと

 だからね。オレたち……ソウルズと違ってね!」

「……何ですか、それは?」


 相棒では無くトロラオさんが疑問気に尋ねてきた。


「ふっふっふ。オレら魂持ちの事っすよ」

「へぇー……」

「因みにそれはそいつがさっき考えた呼称よ」

「な、なるほど。あれ?と言うか今現実のベットと……」

「あ、ああー気にしないで気にしないで。相棒が現実の、一般

 プレイヤーって事は気にしなくて良いから。全然」

「え!?」

「大丈夫大丈夫。理由知ってるし黙っててくれる奴だから」


 トロラオさんの驚きを強引にスルーしつつ。


「んじゃ相棒様」

「様はいらない。それと眠いからでなく、起きていられるか分か

 らないと言う意味だぞ」

「分かってる分かってる。

 でもま、さっさと鍵の複製をしちゃおう!って事でさ。王様ま

 での壁、いや囲いだっけか? 複製待つ間コッソリ越えてこう

 ぜ」

「良いが……。大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃない? あのオオザル以外にわたし達に気が付く奴な

 んていないでしょうし」

「そそ。ロリ様の言う通り、オレ達の顔を知ってるのお猿さんだ

 けだし(まあオレと相棒に至っては着ぐるみだしね)」

「……」


 そうして相棒に鍵の複製作業をしてもらいつつ、時短の為オレ達

 はそのまま王の場所を目指し歩き出す事に。


「取り敢えず、だ。さっき通り抜けたオオザルの所の、あのデカイ

 のを後三つは越えないと行けない訳かー」

「四獣って言葉と同じで壁も四枚あるでしょうね」


 背後にはオオザルの居た建物と壁。そして前方遠くにも同じ壁と

 建物が見えている。勿論建物は壁にめり込んでるっぽい。


「にしてもー……何か」

「ええ。すごいですね」

「どこもかしこも壁ばっかり」

「建物の数も此方はギュウギュウとありますよ」


 一枚壁を越えた拠点の中には、意味不明な壁が幾つも乱立してい

 た。それこそ景観を損なうレベルで。特色を出したくてしてるの

 だとしたら成功だ。マイナスな方で、だけどね。

 けれどそれでも拠点内には二足四足、様々なタイプのビーストマ

 ンキャラが行き交っている……のだけど。


「……おいあれ」

「うわマジかよ」

「着ぐるみ……」

「耳が四つ……」


 とまあ。なんちゃってなケモナーを装う我々を“面白くない”と

 気にされちゃってます。いや。


「クスクス」

「見た? 見た見た?」

「……ねえ。戻ろ」

「……そうだな」


 オレらだけじゃなかったみたいです。壁を越えて来たであろう他

 のキャラも、お眼鏡に適わなかったのが居るらしい。

 物色と言うか値踏みと言うか。まあ、居るよねって感じの人々。


「ムカつく空気ね」

「お? ロリ様気になちゃう?」

「値踏みするのは好きでもされるのは嫌いなの」

「はは、なるほどー(何が違うんだ?)」


 一つ前のと比べて人の質が偉い変わった所。建物も何かの店らし

 い看板には“ケモナーの里”とか“ケモケモな本屋さん”とか。

 一見何の店だから分からない物が多い。面白そうな名前ー。

 此方も一つ前には見かけなかった感じ。店頭サンプルを見る限り

 まあその……。ニッチな感じ。個人的なメモにこっそり記憶して

 おくとして。

 まー壁一つ越えただけでこんな変わるもんかねー。

 内側ってもたかだか壁一枚。アグンラ化するには速いんでな

 い?

 ライトとヘビーって感じに分かれてるなーと、頭の片隅で思いつ

 つ。


「あーてか、壁もそうなんだけどやっぱ色々此処おかしいよなぁ」

「そりゃ獣ばかりだものね」

「はい。皆さん獣、それか人の形をした獣以外見当たりません」

「此処はそう言う場所ですし、皆だからこそと目指し、来ていま

 すから」


 ロリ神様とリストゥルンさんが続き、トロラオさんは此処はそ

 う言う場所ですと言う。それはそうなんだけど。


「気にしてるのは種族の偏りじゃなくて、拠点事態の規模感がま

 ずおかしいって話なのよ」

「「「?」」」

「……! なるほど。そう言う事か」


 キーアイテム複製作業をしながら歩く相棒は気が付いたらし

 い。


「これはオレらプレイヤーにしかちょっと分からない話しだった

 かも」

「もったいぶってないで言いなさいよ。壁まではまだ距離ある

 し、暇つぶしに聞いてあげるわ」

「リストゥルンさんとトロラオさんも知りたがってるみたいだか

 ら、ロリ様の偉ぶった態度は大目に見てやるよ」

「ホントはわたしに話したいのでしょ? 素直じゃないわね~」


 こいつの自信は何処から来るんだ?。いいや、考えるだけ時間の

 無駄だ。構うと話も進まねえし。


「いいか。建物の外観と内部構造が乖離してるってのは、仮想世

 界ならままある事よ。でも、町とか村とかの外観と内部構造って

 のはそんな大きく乖離はしないもんなの」

「ふーん。ああ、外から中の大部分が見えているから、って事か

 しら?」

「そそ。まあそれも色々工夫はできるんだけど……。それは滅多

 にできる事じゃないから今は良いとしてね。

 この拠点は壁が何枚も建てられてる事と、この広さだ。そしてさ

 っきオオザルが言ってたろ? 壁と囲いってさ」

「何か言ってたわね」

「壁ってのは壁で、囲いってのは壁に埋まってる建物、てか建物

 自体ね。

 んで、この拠点って至る所に壁があるじゃん? 囲いも家って考え

 れば……結構あると思うのよ」


 言われて相棒達が周りを見渡す。

 一枚前も結構多いと思った建物が、壁が、此方は不自然さ全開で

 立っている。


「確かに多い、ですね。壁の方が異質過ぎて気が付きませんでし

 たが、この町、都市と言うかには、広場という広場がみあたりま

 せん。広場の代わりに建物が密に、密に建て並んでいますね」

「でしょでしょ?」


 リストゥルンさんへ“ナイス!”って吹き出しスタンプを送り。


「え? わわ!」

「なにそれー!」


 ロリ様と二人で驚くさまを見つつ。


「この拠点の作りは相当にイカれてる。こんな真っ直ぐ歩けない

 構造も百歩譲って趣味だと考えても、そもそもがおかしい。

 あの見えてる大壁を目指して、道中の建物や壁の所為で偉い遠回

 りされてばっかりだけどさ。直線距離抜きにしても歩いた距離が

 バカ広い。一拠点を、それも運営チームでも企業でも管理されて

 ないっぽい拠点で、こんなにもデカく魔改造何てできないだろ。

 拠点ってのはそのまま景観って事にもなるし」


 町や村、砦とかって拠点には、当然だけど敷地範囲が決まって

 る。だけど仕様は建物と一緒なので、恐ろしい事に範囲の中を好

 きにできてしまうのだ。とは言っても建物と違って拠点はそのま

 まフィールド、エリアの外観の一部。それを此処まで魔改造は中

 々できない。エリアテーマからの著しい逸脱、不健全な景観はダ

 メって決まってるからね。

 昔ピンクでパークな拠点を某企業が作ろうとして、運営その他に

 ボッコボコにされた事件以降。煩くない自治に任されたモノが、

 拠点のデザイン設定自体に直接手が、制限が加えられたりしたか

 ら尚の事できないはず。自由が売りなエリュシオンには稀な事例

 だったね。

 何でもできるからと、何をしても良いわけではない。運営が手を

 出さざるを得ない状況を作らない、上手い見極めないと距離感を

 大切にしないと行けない。

 拠点を好き勝手ってのは至極困難、てかほぼ不可能に近い現状。


「な・の・に。此処はそんな規約も仕様もお構い無しで好き放題

 されてやがる。

 秘匿だってそうさ。こんな規模だとは思わなかったからこそ気に

 しなかったけど、秘匿の範囲が広すぎる。秘匿維持のコストだけ

 で拠点とか全部破産してるだろってね。でもそうじゃない。

 おまけにオレらだけで無い、拠点内全域へ作用する強制転移阻

 害。んなバカ程コストかかる事もできちゃう、魔改造。

 今更だけど此処って間違いなくソウルズの仕業って、そう納得で

 きちゃうねって話」

「確かにそうかもな。黒が関わってるならもっと秘密に拘ってる

 だろうからな。だが見た限り此処は息がかかってないだろう」


 相棒の言う通り黒の気配も無いしね。

 普通にはできない、公然とされた灰色。まだ通報レベルでは無い

 にしろ、外から見えないにしろ。このままだといずれ破綻しそう

 な拠点作り。方向性。綱渡りなこの状況。


「このあり方。これオレには関係ない、って言い切れないのが面

 倒だよなぁ。事情知っちゃってると」

「そうね。おまえってばもうソウルズ、だものね」

「……あー何か人に言われると背中が痒くなるかも!」

「! ソウルズ!ソウルズソウルズソウルズ!」

「連呼すな!」


 そんな、心配事を孕んだ雑談を交えつつ。オレ達は遠くに見えて

 いた第二の壁、四獣が居ると言われるその前へと到着。

 直線ではこれなかった大壁。囲いと呼ばれる建物前で。


「まーた壁に埋まってるねぇ」

「何故態々埋めるのか疑問だ。趣味か?」

「見た目最悪ー」

「防衛目的、なのでしょうか?」


 オオザルの居た建物同様此処の大壁にもまた埋まるように建物が

 一つ。外観は塔のようなそれで、オオザルが居たのとそうは変わ

 らない。外から見た限りは、ね。


「まあ……。入りますかー」

「ええ。私達は王へと会わねばなりませんからね」


 トロラオさんの言う通り。尻込みせず、囲いと呼ばれるその建物

 へオレ達は足を踏み入れる───


 ───中には見張りが居たけど、その他大勢と一緒で素通りでき

 る。まあ一緒に通り抜ける人少ないけど。

 キャラも少ない中、薄暗い通路を暫く進むと。


「なに?これ」

「また凄いな」

「こんな風にもできるのですね」

「私も此処へは初めてきましたが……これは」


 相棒、ロリ様、リストゥルンさんにトロラオさんが、通路を抜け

 た先の大きな空間を見ては感想を零す。


「屋内好きにできるからって……なるほどねぇ」


 オレも周りを見ては“やるな”と思う。建物外観は塔。だけど今

 オレ達がいる場所はでっかい平原みたいな場所。縦の外観から横

 広がりの空間。


「すげーわ。屋内なのに屋外に出た感覚だな、これ」

「無駄に広いだけね。わたしの広間と館の方がオシャレ」

「比べるにはジャンルが違う気がするけどなー」


 ロリ様に相槌を打つと。


「顔は知られてはいませんが、態々見付かる必要もないと思い

 ます」

「ああ。鍵は此方で用意できるんだ。なるべく早く通り抜けよ

 う」

「おっとそだね。ちゃちゃっと抜けちゃいますか」


 リストゥルンさんと相棒に言われたので先を急ぐ。

 広い空間の向こうへ見える、平原にぽつんと浮かぶ扉サイズの

 穴へ向けて足を進めた。

 出口へ向けて進む中。だだっ広い場所に大木だけと言うその場

 所で、他のプレイヤーっぽい人たちと歩きながら、ふとオレは

 木の上を見上げた。


「……」

「!(うお。鳥獣タイプだ!)」


 大木の上には鳥型のモンスター、それに鳥と鳥人のビーストマ

 ン達。止り木には沢山の鳥型ビーストマンが止まっているの

 だ。


「「「……」」」


 彼らは何をする事も無く。ただただ上だけを見ている。

 その中で。


『………』

「(何だあれ?デカすぎだろ!)」


 一際大きな大木へ止まっている、一匹の()()()()。黄色いク

 チバシを上へと向け、白い体毛に包まれた顔で見上げる姿は

 とんでもなく様に成っている。サイズ的にはオオザルと一緒。

 他のキャラはアレを見に来てたらしく、殆どがそのまま足を

 止めていた。


「(上に何かあるのかな?)」

「(おいルプス。止まるな、行くぞ)」

「(っと。悪い悪い)」


 オレは相棒たちや他の観光?ビーストマン少数と一緒に奥へと

 進む。やがて遠くに見えた、平原にポッカリと開いた穴を通り

 抜けるれば。平原から元の薄暗い通路へと景色が戻り。


「ん?」

「『空』?」


 そのまま進めばオレとロリ様はある物を見付け同時に呟いた。

 それは通路の出口、外へと続く扉の脇に立てかけられた、表札の

 ような物。表札らしきにはただ一文字。『空』とだけ書かれてい

 た。


「「?」」


 この建物の名前だろうか?だとしたら何故出口に、それも端の方

 へ置かれてるんだろう? 不思議に思いながらも、深く気にする

 様な事でも無い。ので、オレ達は空と呼ばれるらしい建物を後に

 し。


「通り抜けられる事は分かった……。て事で!」

「ああ。さっさと次を越えて行こう」

「「「おおー!」」」


 そのまま次の壁を目指し進む。

 壁の数と家の数が一つ前よりもまた増えた、第二の大壁先。また

 直線で進むのはとてもムリだったけど、トロラオさんの直感や相

 棒の構造把握を頼りに何とか進める。オレとロリ様はやくたたず

 だったのはヒミツ。

 キャラの数は壁と建物が増えるに、奥へと目指せば目指すだけそ

 の数を極端に減らして行ってる。ぶっちゃけPCっぽい人たちが

 観光探検気分、暗部気取りで居たのは此処の入口付近辺りまで。

 奥の大壁を目指しているキャラ何て微塵も居ない中で、オレ達は

 その不人気な第三の大壁、そして囲いと言う建物へと向かい入っ

 て行くのであった。もう辺りに自分たち以外のキャラは見えな

 い。


「(なるほどね。この辺りまで来ると流石につまらないかも)」


 此処でフレンドになったビーストマン。彼は何かを言わんとして

 いたけど、何となく察せた気がする。奥へ行けば行くだけ退屈極

 まりないのだから。一つ越えた先でもああだったしね。彼が言い

 渋った理由は酷く真っ当で、そして善意からのモノだったのだろ

 うね。

 そんな退屈で大変な道を通り、大壁に飲まれた建物の中へと進め

 ば。

 内部はそれまでと共通部分は使い回しらしくて、オオザルの所か

 ら外観内観は全部一緒。ただ違うのは中心部分。中央広間の作り

 と。


「「「……」」」

「(うへぇ!ここは熊タイプかよ!)」


 中に居る存在、四獣とその配下達(キャラ)だ。

 建物の中心部分。今度の広間のデザインは何と渓流だ。また屋内

 で屋外ですよ奥さん。んまオレは嫌いじゃないけどね、こう言う

 奇抜なの。

 しかも渓流には沢山のクマが、クマさんタイプのビーストマンが

 そこら中にいらっしゃる。渓流と言ってもおかしな事に小川は一

 切流れていない。

 いや小川自体は複数あるのだけど、その流れは全て完全に止まっ

 てしまっている。ただ其処に流れる、流れていた状態で固まった

 水があると言うか。川だけが再生されるの忘れられた、みたいな

 ね。

 細く、長い止まった川の中央には、それまで居た主っぽい存在も

 見える。


『………』

「(こいつもでけぇー!)」

「(クマに許されるサイズじゃないわよあれ!)」


 オレとロリ様。


「(怪獣だな最早)」

「(何と逞しい)」


 相棒とリストゥルンさん。


「(四獣を見る機会はありませんでたが、皆さんああなのです

 ね。四獣、と呼ばれるだけはある見た目です)」


 そしてトロラオさんも含め皆あの存在には驚愕。小声で漏れちゃ

 うよね、分かる分かる。

 流れない川のど真ん中で、川底を静かに覗き込む()()()()

 オレ達はそれを尻目にそそくさと広間を通り抜ける。通り抜けよ

 うとしてるのオレ達だけだしね。長居何かしたら怪しすぎる。

 此方を不審に思うかなぁーとか思ったけど。此方に一切興味を示

 される事は最後までなかった。まるで本当に、クマの一団をやり

 過ごした気分。

 不気味な渓流ゾーンを通り抜けると、出口にはまたあの表札らし

 き物が端に置かれており。今回は『川』とだけ書かれていた。

 誰も気に留めない表札をチラ見しつつ建物の外へ。


「ふいー。今ので三つ目。次が最後の四獣の場所だね。

 いやぁー本来戦うかもって考えると、全スルーできるって最高

 だな!」

「やっと最後~。て言うかもう足がクタクタなんだけどー」

「大丈夫ですかニルス様? 私で良ければ背負います」

「そうね。此処はおぶって───ほにゃ!?」

「ああニルス様!」


 甘え腐ったロリ様を脇へと抱え上げながら。


「相棒鍵の複製、進捗はどうよ?」

「ちょうど四つ用意できた。鍵の仕組み的に数さえ揃えば開く仕様

 らしいから、これで問題ないだろう」

「さっすが相棒様!」

「様はいらない」


 これで王とか呼ばれる拠点管理者の下へ、コントロールルームへ

 と入る為の鍵が用意できた。後は四つ目の壁を越えて、入り口を

 探すだけ。

 と言ってもどんな入り口か分からないんだよね。まあその辺りは

 深く心配してないけど。


「トロラオさん───ってあれ?」

「また居なくなったか」

「どうでも良いわよあんな獣~」

「ニルス様。しかしこれは……」


 建物を出て直ぐ居なくなるか? と思うけど。


「出口出てこれじゃあねえ。仕方ないかも」

「ますます可笑しいな。此処は」


 出口の先。第三の壁の先はもう建物と壁だけ。通路と呼べる物が

 まるで存在しない。オレの正面には家が三つ並んでて、通路とか

 隙間も無いしね。

 っと。周りを見ているとその正面の家屋、その二階の窓が開き。


「皆さん此方です! 此処から先へと進めそうです!」

「お。何だ道を探してたんすねーもー。さすが~」

「ええ。さあ皆さん、此方へ」

「……行くか」

「あいあい」


 先への道を探してくれていたらしいトロラオさん。オレ達は彼の

 示す道順で、殆ど建物の中を通りながら第四の壁を目指す事に。

 複雑に入り乱れた建物、と言うかもう合体に合体を重ね全ての建

 物が中で繋がってるっぽい。そんな屋内、ただでさえ進み辛い屋

 内にも壁はちゃーとあったりもして。……なんだこの作りは!

 まあでも、皆で文句を言いながら進めばそれなりに楽しめた。気

 が付くと建物越しに大壁の、例の建物間近へ到着だ。

 んまあ最後まで家屋の窓から大壁の建物へと侵入する羽目になっ

 たのだけどね。


「ええいもう! しんどかったんだけど!

 もうこの、こっちの中の通路の方が広く感じるわよ!」

「いやロリ様オレに抱えられてただけじゃん」

「見てるだけでうんざりしたの。それに抱えたのはおまえの勝手

 でしょ?」

「っく。こ、こいつ……」


 我慢だ、我慢。コイツの甘えをリストゥルンに被らせるにはと思

 っての事。コイツの為じゃない、為じゃないんだから。 

 イラつく気持ちを抑え、強引に切り替え通路を進む。


「中は静かだな」

「ヒトが全く居ませんね」


 此処まで来ると前回同様キャラが全く居ない。と言うか完全にオ

 レたちだけ。一つ前の壁を最後にすれ違うキャラも皆無だったし

 ね。ただ、今まで居た見張りが居ないのが少し気になるなぁ。

 そんな事を考えながら通路を抜け広間へとたどり着くと。


「(ここはオオカミタイプかー)」

「「「「……」」」


 中央広間には平原が広がり、平原では寝そべっているオオカミタ

 イプが多数。今まで通りぶっ飛んだ屋内模様、だけど他と一個違

 うのは。


「(? 此処には四獣、の主っぽいのが居ない?)」


 走り回ることも、微動だにもしないオオカミ達。その主っぽい者

 の姿が無かった。まあ居ない事もあるだろうと、静かな平原をそ

 のまま通り抜けさせてもらう。

 やる気が無いのかそう言うものなのか。通り抜ける者に興味がな

 い様子で簡単に通り抜ける事ができてしまった。

 通路へと戻り建物出口へと向かへば、今までと同じく『風』と書

 かれた木板転がっていたりもね。

 そうして。楽勝で四つめの壁、囲いと呼ばれる建物を抜けた先に

 は───


「マジぃ?」

「意外な展開だ」

「ホント適当ね、此処作ったヤツって」

「ええ。ですが今度は広くて助かりますね」


 第四の壁を越えた先は、建物の外は変哲のない平原が続いてる。

 見渡す限り延々と続く平原。その中央、と言うか遠くには大きな

 石が横たわっているのが遠目に見えた。目を凝らしながら全員で

 近付く、一歩、二歩と。


「「「?」」」


 三歩目と言った所で、突然天気曇りになった。いや、遠くを見る

 に雲の流れない空は快晴。つまりこれは、()()()()()()()()()()

 ()()()()ー……マジ?

 影は背後から伸びて来た物で。全員が同時に振り返るとそこに

 は。


『『『……』』』

「わー……スルーしたはずの四獣さん達らー」

「ッチ」

「え? えええええええええええ!?」

「……」


 ロリ様とリストゥルンさんが取り乱し。相棒は舌打ち。

 オレらが着いたのは、いきなりのボス部屋、処刑部屋だった訳で

 すねー。




 三匹の大型の獣。オオワシ、オオカミ、オオグマと対する

 は、小さき人々───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです

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