第四十二話 ルート分岐
───中央広間、お山前。空色の青年に背中からバッサリと行か
れたオオザルはうつ伏せで倒れ、青年たちを子分である魔猿達が
取り囲む。
掃討戦突入かと言う所でオオザルが子分達を止め、空色の青年た
ちへと言葉を飛ばした。『話がしたい』と。
オオザルの言葉を受けた空色の青年たちは果たして。
当初の脱出計画とはちょっと予定が違っちゃったけど、まあオオ
ザル中ザルをぶっ倒せちゃったオレ達。増援の魔猿が上の階から
到着する前に逃げんべとしていた、そんな所で。
倒れていたオオザルが“手を出すなー”って感じに叫んだのだ。
それは何故かと言えば。
『メガミ達と話しがしたい』
との事です。まだまだ血気に盛んと言う訳でも、だまくらかそう
と知恵者ぶっている感じも無い。ぶっちゃけもう勝負付いてるし
ね。
「どうします皆さん?」
「時間稼ぎかも知れない。ライフを回復される前に、無視してこ
の場を後にした方が無難だろう。現有戦力なら小猿程度で此方は
止まらない」
相棒が呟きトロラオさんが頷く。
「私も同意見です。このまま此処に留まる意味は薄く、また危険
だと思われます」
リストゥルンさんも相棒と同意見、と。
「罠の可能性も十分あります。ニルス様、いかが致しましょ
う?」
「んー取り敢えず敗者としての自覚が無いみたいだから、完全に
ぶった倒しちゃえば良いんじゃない?」
「ロリ様それはちょっとー……」
「ああ、ああでもそうね」
「あ?」
リストゥルンさんに請われたロリ様は途中でオレを見上げ。
「折角指揮官に任命してあげたんですもの。此処はおまえが決め
なさい」
「は?なんでだよ。面倒くさいからって丸投げすんなって」
「それも勿論ある」
「あんのかよ!」
「けれど敵将仕留めたのっておまえだし、此処までの戦術を組み
立てて外さなかったのもおまえ。だからその判断を此処だけでは
優先してあげるって、そう言ってあげてるの」
「調子の良い事言ってるなぁ。それに成功したのは個々人が頑張
ったからでもあるからね」
「当然わたしの活躍があってこそとわかってるわ。後調子は何時
だって良いわよ、わたし」
自信満々なロリ様。はぁ。
……まあ。普通に考えるなら逃げの一手。だけど見た感じさっき
と違って敵意がないっぽいんだよなぁ。加えて、例えこれが罠で
も正直どうでもいい。今となってはね。
頭で考えを纏めたオレはロリ様からオオザルへと視線を合わせ。
「よし。良いぜ、話しがあるなら聞くだけ聞くよ」
『おお!そうか。では……』
「ちょい待ち。ただし条件があるんです」
『何だ?言ってみろ』
「まず話し合いって言うならその最中は襲わない事」
『それはそちらもだろう』
「あい勿論。後は今すぐ出口を開放するって事ね」
『む……良いだろう。……ガアッ!』
オオザルが一声叫ぶと一階、いや閉じていた建物内の全ての扉が
開かれた。音声認識タイプなのかな? てか叫ぶと開くんか。
何にせよ出口の扉は開いた。
『これで良いか? メガミの眷属よ』
「良いよ。後オレの名前はルプスね、覚えても覚えなくても良い
けど、眷属呼びは勘弁だわ」
『いいだろう』
オオザルとそんなやり取りをするオレに、相棒とリストゥルンさ
んが身を寄せて来ては。
「おい本当に良いのか? 話が終わった途端、或いは最中にまた
閉じられて襲われる可能性だってあるぞ」
「はい。相手は獣、敵勢力です。とても信用何てできません」
「あー良いの良いの」
「「?」」
「扉を開けたって事はもうアイテム倉庫自由にアクセスできるっ
しょ? ならもう出方の分かってるダンジョン、イベントは怖く
無い。相手が数で襲ってくるって分かってるし、もう一度襲って
くるなら今度は完全に返り討ちにできるでしょ。実力もこっちが
完全に上だしね。格付けは既に済んじゃってるもん」
「確かにそうだが、わざわざ嵌ってやるのか?
それに見えてない手札もあるかも知れない」
「確かにそれは怖いけど、物資さえあれば絶対負けないと思う。
まあもしもって時にはそれこそ召喚アイテムだって何だって使っ
たってやるさ。んで建物脱出用のアイテム手元に入れとけば完璧
っしょ」
話しながらモンスター召喚アイテムとダンジョン脱出用アイテム
をインベントリへ忍ばせる。この拠点は出れずとも建物ぐらいは
出られるはず。……大きな声で言えないお店で買ったやつだし。
ムリならこのPVP解禁エリアでモンスター喚んじゃうもんね。
制御不可級は事故が怖いから制御可能級を選んどこ。
ダメ押しに扉を強制的に開く系も入れとくか? 此方も効果重視
でダーク品でと……。
どれもお値段的に使いたくは無いけど、使うならアンロックアイ
テムの方を使おうか。うん。此方なら狩場一月分だしね、お値段
的に。
召喚系は値段安いけど、コレクト目的で集めてるから数がねぇ。
「なるほどな。扉を開けさせたのは単純な逃げ道確保ではなく、
物資確保が目的だったか」
「そゆこと。後相手の本気度合いが見たかったのもあるね」
「相手の本気、ですか?」
「そ。出口開放したって事はこのまま逃げても良いわけでし
ょ? 勿論逃げようとしたら閉じるんだろうけど、オレの速さな
ら間に合わないって分かってるはず。つまりオレとロリ神様を逃
がす可能性大な訳、相手にとってはさ。
それでもって事は相手さん、誠意を見せたって事でしょ?
ならマジで話したいのかもね~」
「な、なるほど。其処まで考えて……流石はルプス様です!」
「いやぁーそれほどでもぉー……ありまーすッ」
とは言っても。オレってば仲間を見捨てる訳ないので、普通に交
渉したい所だけどね。ムリなら相手ぶっ転がしちゃうけど。
『相談は済んだか?』
「おっと! 待たせてごめんごめん。終わったよ」
『ならば───』
驚く事に、オオザルさんはもう動ける程度に体力が自然回復して
たらしい。瀕死からの回復時間かなり短いなぁ。その辺りはボス
っぽいね。インチキってレベルじゃなく。
起き上がった彼はその場で胡座をかいては。
『話すとしようではないか。メガミの』
座っているのに高い視線からオレ達を待ち構えている。周りの魔
猿達も真似して一斉に座っている。何あれ、スクショ取りたい気
分ー。まあ記録残すと後々怖いから取らないけどね。
相手に待たれたのなら、これは近付くしか無い。相棒たちと意思
の確認済ませ、相槌を交わし。オレはロリ様を抱える。
「ちょ。おまえどんだけわたしを抱えたいわけ?分かるわよ、わ
たしは可愛く可憐で唯一の美しいモノ。独占したい、したいわよ
ね? でもねそれは───」
「いやこれいざって時の為だから。オレだって好きで抱えてない
から。やめろよ、お前の頭の中の相関図を現実のオレへ共有、い
や強制してくるの。ムリだから、全然ムリだから」
「ぶあッ!!!? ムイっでぬぁに!?」
鳴き声と共に手足ばたつかせてを暴れるロリ様をスルーしつつ、
オオザルの側へと向かう。勿論オレも相棒達も武器は手放さな
い。装備したままでね。
側へと、ギリギリオオザルの攻撃範囲外で立ち止まり。彼を見上
げ。
「そんでー? 有無を言わさず襲っといて今更話って何すかー?」
先制の挑発。
「オイ貴様ぁ!失礼ダぞ! ボスが話すと言うかラには黙っテ聞く
んダ!」
お。我が相棒にのされた元ボスザル、改中ザルさんじゃないっす
か。いやぁ吠えてますねえ。子分に肩を返りてる辺りまだ万全じ
ゃないのに、元気ですねぇ。そのままオレに襲いかかってくんね
ーかなー。
『よさないか“ジガ”』
「……ルル」
中ザルが前にと出した上体を引く。彼はそのままボスザルの横へ
と運ばれ、仲間に支えられながら腰を下ろした。
『すまぬ。コイツは儂を思ってなのだ、許されよ』
「ああ別に気にしてないっすよ。オレ(ッチ。挑発分はチャラだ
な)」
大人な対応されちゃうとね。
「わたしは完全に気にしてるわ。失礼すぎて焼きザルにすべき─
──」
「ハハッ。ほ~らうちの大将も全~然気にしてないってッ」
「むぐぐぐー!」
ロリ様の口に手を当て縦に揺らしてやる。交渉って場面を進んで
決裂に持ってこうってのは、どうなんだろうねこの子。
『そうか。気遣いに感謝しよう』
「いえいえー。そーれでッ。話の続き、いっすか?」
『そう、そうだな。まず何故お前達メガミのはこの場所、我らの
ビーストキングダムにいるのだ?』
「あーそれっすね。実は───」
オレはオオザルへ、敵情視察に来たあのビーストマン達の事を話
す事に。
この情報は別に隠す事じゃないし、隠して得になる事も話して損
になる情報でもないからね。そもそも相手方からのアクション、
当然相手側は知ってるだろう。ならここはそんなタダ同然の情報
を、コッチは正直に話しましたよーって印象の為に使わせてもら
おう。
ウソを吐くにしろ、吐かないにしろ。話すにしろ話さないにし
ろ、真実ってのは必ず一欠片程度は入れておくモノだよね。
序に、正直者アピールの傍ら自分たちは被害者だって強調もして
置いた。これは実際そうだし。
そうして何故オレ達が此処に居るのか。その説明を彼に聞かせ
る。
ただ一つ、今現在オレらを攫った彼らの状況だけは適当にボカさ
せてもらったけどね。だって瀕死状態で拘束して放置してるとか
心証最悪だもん。
「───って事がありまして。だから“望まざる”って言ってた
んですよ。最初に」
『成程。偵察が捕まりそんな事があったか……』
驚き的に、まさか偵察部隊が敵の御大将攫って来るとは思ってな
かったろうね。
「あったのよ。此方もお前に聞きたいのだけど、お前たちは何故
わたしの拠点を襲ったのかしら? 獣達は領土主張以上に、この
わたしと明確かつ完全に敵対するって事なの?」
脇に抱えたロリ様が真っ当な質問を飛ばす。確かに気になる話だ
ね。
あの偵察ビーストマン達の話では彼ら、と言うよりは一勢力?派
閥の独断って話しだったけど。それって詰まりこいつらの事だよ
な。襲撃首謀者の中ザル居るし。
『い、いや。我らの王は決してメガミを排そうとは考えていない。
ジガの、いや元を正せば……全て儂の責任か』
「! 違ウ!オレ達が勝手ニ行ったンだ!」
自分たちだと言う中ザルの周りには他の魔猿達も集まって来て
は、大きく頭を頷かせている。彼らは中ザル同様いつかの襲撃者
達だろうかね。
んーそれにしても。モンスターが完全にPCみたいに行動してる
のって。
「今更だが凄い違和感だ。アレ全部モンスターとはな」
「んね。モンスターが普通の、PCみたいに動いてるのって見な
い無いからね」
相棒と小さく頷き合う。その間もロリ様とオオザルの話しは続
き。
「勝手ねえ。だ、そうだけど?」
『こいつらは、ジガ達は儂より後に此処へ来たのだ。だから本当
のお山を知らんのだ』
「? 山ならお前の後ろにあるじゃない。と言うかそれが一体ど
うしたって言うのよ」
『……かつてこのお山は空を、そしてここら一帯全てを見渡す事
ができた。この上から見える景色は……。ああ、なんと素晴らし
い景色だったろうか。アレは』
遠い目で何処かを見遣るオオザル。その表情は厳しい顔に優しさ
が滲み出ている。
んー?空なんて見えないけど、天窓とかあるのかな?それか開閉
式とかって事か? いや壁に埋まってるから開閉とかってレベル
じゃないよな。うーん?
考える間に、オオザルの表情は直ぐに元通り。今を見据えた目で
ロリ様へ視線が戻され。
『メガミよ。お前達ならば分かるだろう? 此処の風景、風や木
々は本当には生きていない。だが生きているに限りなく等しいの
だ、此処の全ては』
「まあ。あっちよりはそれっぽく作られてるわよね、此処。
掛けた労力、完全を目指した不完全さとでも言うのかしら。ま、
単純に製作者、設計士の想いや熱意が籠もってるからじゃない?
そしてそれこそがあっちとの最大の違いでしょうね。
必要だから置いた、で済まされた完全世界よりも。必要だから作
ろう、で試行錯誤され目指されたモノの方が温かみがあるのよ
ね。きっと。
少なくとも私はそう感じられる。感じてる。だから此処は好き」
優しい声色のロリ様へオオザルが一つ頷き。
『同じ場所に居ながら、重なりながらも会う事も見る事も無い儂
らが追いやられたあの場所。あそこにお山は無い、無かった。
沈む事も明ける事もない仮初の夕暮れだけの、あの場所と比べれ
ば、かつて儂が生きたお山は此処にあったのだ』
「獣のお前達と一緒は嫌だけど、けれどそれでもあの場所が気に
入らないって事には同意ね」
『キッキッキ。あの場所から望んで来た誰もが同じだろう。儂も
こいつらも。
ああしかし、分かっていた事だと言うのに、儂は今とは違うお山
の姿を話してしまった』
「今とは違う? ああ、さっき空も見えたとか言ってたわね」
『そうだ。以前このお山を囲む物は何もなかった。その時の話を
してしまったばっかりに、王の領土が広がれば“壁も囲いもなく
なるはず”と。そう思ってしまったのだろう』
「「「!」」」」
図星らしく中ザル達が顔を背ける。よく分からんが。
「お前らってその、王とか言うトップが任命した四獣と部下何だ
ろ? なら好きに壁の外へ出られるじゃん。てか出ろよ」
『ああ。だが儂らは此処が好きなのだ、王の居る此処が。
ただそれでもこの“壁と囲い”は好きにはなれなんだ』
「壁ってのは分かる。でも囲いってのは?」
「此処だ」
「?」
と。言われましても。
「まさかこの建物自体の事か?」
「ああその通りだ。タテモノ、建物。此処の全ては儂らへの囲い
だ」
相棒が言い当てる。
『最初この場所には建物は勿論、壁も無かった。しかし今やこの
場所は壁と囲いが増える一方。……一方なのだ』
「ふーん。まあそんな、お前たちの事情とかどうでもいいのよ」
神妙に、しんみりとも話すオオザルさんの事情説明。だったのだ
が、痺れを切らしたのか飽きたのか。ロリ様は心底興味の無いと
言った様子で切り捨て。
「わたし達は別に争いたくて此処に来た訳じゃないし。それは分
かってもらえたかしら?」
『う、うむ。争う意思が無いと言う主張は分かった』
「なら脱出の方法とやらを、と言うかわたし達をこの国から出す
って許可を頂戴」
話の遠回りに付き合い飽きたロリ様はどストレートに要求をオオ
ザルへと突き付けた。突き付けられた彼は僅かに顔を曇らせる
と。
『……それはできない』
「はあ? ああ分かった。今回の事は大目に見てあげる。大事にし
ない。はい、これでいい?」
『そうではない。そうでは』
「お前もしかしてこのわたしをバカにしてる? なんならもう一
回とっちめてあげようかしら? そう!うちの眷属が!」
「……それ言ってて惨めに成らないの?ロリ様ってば」
「微塵もならないわね。だってわたし戦う立場じゃなくて、戦わ
せる立場だもの。おまえが強い、それ即ちわたしが強いって事
に他ならないわ」
「あっそ。もう開き直りも清々しいよね。ホントにさ」
このロリ様はどうしてやろうかな。っと思うけど。
「オオザルさん。ここにオレらを閉じ込めておくって事の方が大
事になりそうですけど?」
『分かっている。だがしたくともできないのだ』
「そんな事は無いはずだ」
言い出てきたのはトロラオさん。
『む?お前は……』
「逸れのトロラオです。失礼、貴方は四獣。王から外出の許可を
一任されてるはずでは?」
『そうだ。そうだった』
「だった?」
『今や縄張りと外出の管理、その権限を全て取り上げられている
のだ、儂は』
「なんと! それでは……」
オオザルの発言にトロラオさんが驚き、その後中ザル達が慌てた
様子で。
「おお、オレたちの所為───!」
『違う。かの王は儂らの事を罰しない。何があっても絶対に。
加えてこれは四獣全てがその対象なのだ』
「えーっと……つまり?」
聞いたオレの方へオオザルが顔を向け。
『偵察が帰ってきた事は、実は王も儂ら四獣も既に知っている。
だが帰ったはずの彼らから連絡も無く、姿も見えない。それで王
は……王は心配をして、事が片付くまで誰も外に出さない事を決
めた。今やこの場所を出る事は誰にも叶わぬ望み。魂のありなし
を問わず』
「……成程ー。え?それやばくね!?」
詰まり誰一人、今この拠点を出られないって事で、それは一般
PCもだと言うじゃない。マズイ、かなりマズイよそれ!
「わたし一生獣の国なんて嫌よ!?」
「オレだって───いやまあオレは生きてられるなら別にって
感じなんだけども」
「おまえ正気?!」
「ただ誰も出られないってのは問題だ。完全に不具合だと思われ
るし、プレイヤー達が此処の事で騒ぎ出したらマズイ。原因調査
とかされたら、芋づる式にオレやロリ様の事が運営とかその辺り
に知れちゃう。そうなったら電子鳥かごで一生実験人生! とー
ってもマズイ事態じゃん!」
「そう、そうよ! かなりマズイじゃない!」
慌てるロリ様から一旦相棒へと顔を向け。
「相棒ログアウトは?」
「……まだできそうだ」
「よかったぁ。て事はログアウトだけはできるのか。ならこの
拠点からだけ出られないだけね。いやまそれでも大きな問題だけ
どさ」
過去。拠点から移動できないって不具合はそれなりにあった。な
のでまだこれだけなら大きな問題にはならない。だけど二日三日
と続けば流石に騒ぎになるだろうね。もしそんな噂とか声が大き
くなれば、オレだったら確かめに行っちゃうもの。
これはただ逃げれれば良いってのとは話が変わってきちゃった
な。
『一応だが。この場所を唯一出られる場所が一つだけある』
「「あんのかよ!」」
オレとロリ様がハモる。
『我らの王のいる場所。あの場所ならば好きに外へと出られる。
唯一な』
「無いも同然じゃんそれ。あーつまりラスボスの場所だけが唯一
の出口って事で、そうでなくともオレら的に会いに行かねーとや
べーって事か……これ」
つっても。誰にも知られずが暗黙だと言うのなら。
「四獣のオオザルさんから“マズイっすよ”とか進言はできな
いんすか? 必要なら偵察が今何処に居るかも教えたりしてさ」
『勿論最初に申した。だが王には聞いてはもらえなかったの
だ。それに、今更偵察の者が姿を見せても王は止まらないだろ
う』
「?」
『何故か王は偵察が戻らない事を、恐れにも近い様子で心配を
し、儂らの声も言葉も耳には入っていない、そんな様子に見えた
のだ。
ああなっては我ら四獣の言葉も、誰のも届かぬ』
まあ偵察が戻ったのに報告に来ないって事は何かあったって事だ
と思うだろうね。トップとも成ればその辺りの心配事で大変って
事なのかな?
ふんふん。これオレらの存在を察してる可能性もありそうか?
てかトップってのはうちのロリ様見たくワガママなんかね。
『だがお前、メガミの話ならば聞く耳を持つやも知れん。同じ立
場の者の言葉ならば』
「はーん。あの王様気取りはわたしに攻められてるとでも思っ
てるのかしらね。それで。お前がわたしを留めた理由がそれって
訳なのね。このわたしに誤解を解かせたいって」
『ああそうだ。王は勿論攻める気などなかった。そしてそれはそ
ちらもだった。その事をメガミから話を聞けば、きっと王も落ち
着きを取り戻すはずだ』
良い事が聞けた。此方の代表はそもそも領土拡大を狙ってないっ
て話しで、それは敵対的ではないって事だ。
そもそも偵察目的は攻められた女神陣営どうしてるか?って言う
至極まともな偵察理由だったし。もしかしたら女神が怒ってると
勘違いしてる、その可能性もあるよね。
なら話し合う余地はありそうで、結局此方の事情を説明する為に
も王に会う必要があるっぽい。規制解除含め。
「わたしはすんごくイヤだけど、でも行くしか無いみたいね」
「何にせよ直接会って話さないと解決できないっぽいね。でも
その王様って、勝手しても罰しないぐらい優しいらしいし、話せ
ば分かってもらえるかも」
『王は優しい心の持ち主だ。お主らが事情を話せばきっと分かっ
てくださるだろう」
「それはどうかしらね~……。だってアレでしょ、アレ」
胡乱げな目をして呟くロリ様。まあ確かに敵襲と勘違いしただけ
でパニクるとか、ちょっと上のポジションとして冷静さが足りて
ないって感じはするよね。……いや此方のロリ様も相当じゃな
い?それは。
そう考えれば相手の取り乱しよう、鎖国システムと言う極端な対
処も納得かも。ああそうだ、きっとこのロリ様みたいなやつなん
だろうね。トップってのは何処もさ。
……それはそれで嫌だなと思いつつ。
「んで? その王の場所には四獣のオオザルさんが案内してくれち
ゃったり?」
『いやそれはできない。儂らは囲いでの待機を命じられている。
この囲いからは今は出られない』
「マジか。てかそれオレら詰んでない?」
『安心せい。儂らとは別に、四獣以外が王の場所に行くには四獣
の許し、これがあれば行けるだろう』
そう言ってオオザルはアイテム取り出し見せてきた。それは一
輪の花。
「どうせただではくれないんでしょ? おまえ」
『察しがいいなメガミ。そうだ、儂はお前たちに頼みがある』
「聞くだけきいてやるわよ」
オオザルは一度空を見上げる。いや、天井だ。
そうしてロリ様を再び見据え。
『このままでは王を含め皆この場所を失ってしまうだろう。そ
うならぬようお前達で王を説得して欲しいのだ。壁も囲いも必
要ないと、儂らは此処から逃げ出すのではないと』
「なにそれ?それだけで良いの? 簡単だから良いけど、思い
が届くかは約束できないわよ?」
『ああ構わない。伝えてくれるだけでいい』
言いながらオオザルはアイテムを此方へ渡してくれる。それはキ
ーアイテム。王への道の。
「はー……もしかしてこれってさ、四つ集めないと行けない
系?」
質問にオオザルは“にやり”と笑い。
『察しが良い。だが気をつけろ。儂以外の四獣は皆、どんな形で
も王を裏切れない』
「つまり……バトルかぁ」
「! ……」
ビーストキングダムの、他の四獣とも戦い、話さなきゃいけない
らしい。四天王戦みたいだな。まあクエスト的にも流れ的にも王
道かもね。
『よいか。他の四獣で───』
オオザルさんがお決まりの、次のボスへのアドバイスをくれる中
で。相棒だけがオレの持つキーアイテムをマジマジ見ては。
「……なに?どしたん?」
「ふ。いや何、これならそのまま王とか言うヤツの所へ直で行け
そうだと思ってな」
「聞いてなかったのかな相棒くん。これは四つ集めなきゃダメな
ん───」
「必要は無い。この一つを四つにすれば良い」
「「「……はい?」」」
その場の全員が、オオザル小猿含め皆が相棒を見やった───
最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら
幸いです。




