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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第五章
57/65

第三十九話 囲い

 ───様々な獣系キャラが行き交う獣王国大通り。その通りから

 少し外れた、路地裏へと集う人影。影は大きなヘビとウサギの着

 ぐるみを着た誰かに。一見すればビーストマンと思しき女性。赤

 い鬣を持つビーストマンと。

 彼らは人波の少ない裏路地を歩きながら何かを話し合う。




 不幸にも敵の本拠地へと飛ばされたオレ達は、現地協力者を得た

 りしてこの敵地からの脱出方法を探していた。

 その為にまず近場のマーケットへと向かい情報を集めていたのだ

 けど。


「そんで相棒。さっきの話はマジなの?」

「ああマジだ。そこのトロラオさんの言う通り、この拠点には主

 として王と呼ばれる存在、そして四獣とか呼ばれる幹部達が居る

 らしい事が分かった。場所を知れたのは序みたいなもんだ」

「さっすが相棒。マジ有能」

「王や四獣、ですか」


 リストゥルンさんの呟きに相棒は。


「その王や四獣と言った情報は大して機密性の高いモンじゃない

 らしい。トロラオさんが知ってたぐらいだからな。だから居場所

 も別段隠されている、秘密の場所、と言う事もないんだ」


 王。って言うのは間違いなくうちで言うロリ神様的ポジションな

 んだろうね。けれど四獣ってのは、トロラオさんの話しにも出て

 たけどイマイチ良く分かんねー存在。


「なあ相棒。王ってのは何となく分かるよ、一番偉い奴の事だか

 ら多分察しは着くね。けれど四獣って何よ?」

「さあな。詳しくは知らん」

「えー。相棒もかよー」

「そう言うな。埋もれた通信(チャット)会話ログ(ボイスチャット)を探るって言うのは大変

 なんだ。それに通常の会話データのログだぞ? 常に消去実行中

 の断片データを精査して得られるのなんて基本大した事ないのば

 かりさ。

 だから流れ続けるログを漁って分かったのは王と、四獣と呼ばれ

 る幹部、腹心の様な存在の確定情報。それと居場所が精々。

 これでもかなりいい収穫だっと思うぞ」

「ふんふん」


 仮想世界。普通に喋ってる話し(チャット・ボイス)がずーっと保管されてる何て事は

 無い。したら話すのが皆億劫になっちゃうもの。だから仮想世界

 での基本として、会話ってのは全部ニ、三分で完全に消える仕様

 だ。特別な事が無い限りは、ね。


「できれば転移制限のコードでも見付けてクラックできればと思

 ったんだが……。其処まで甘くはなかった」

「なるへそ。まそりゃそうよね~」


 相棒の報告が一段落のタイミングで。トロラオさんが此方へ。


「あの。王様の事は私でも殆ど分かりませんが、四獣の事なら知

 る限りではお話できるかと」

「え? でも四獣の事は知らないんっすよね?」

「ええ。興味がなかったもので知ろうともしませんでしたが、同

 胞達は聞けば色々と教えてくれました」


 そうだった。王って単語も四獣って単語もトロラオさんから出て

 た事だ。


「流石現地協力者~。んじゃおねげえします」

「何?その頼み方は?」

「突っ込むな突っ込むな。オンラインとかだと言語が怪しくなる

 んだよ、オレは」


 ロリ様へ“シッシ”と手を振り、怒ったロリ様から猫パンチ受

 つつ。


「さ。トロラオさんどうぞどうぞ」

「あ、はい。では……」


 オレ達に協力してくれるている、獣陣営のトロラオさんが聞き

 込みで得た話を共有してくれる。


「四獣と言うのはこの国の中を五つの縄張りに分けた時、その四

 つを管理する方々の事です」

「ほうほう。中間管理って感じかな?」

「だろうな。規模の大きいギルド等でよくある部門管理者の様な

 ものだろう」


 オレと相棒の呟きにトロラオさんが頷きで反応を見せながら、話

 は続く。


「彼らの存在理由は担当縄張りでの秩序維持や娯楽探求等色々あ

 りますが、最も重要なのは外へ出る事への許可。いえ、出さない

 為に出入り口を管理する事でしょうか。それと、王への道を守る

 事でもありますね」

「王への道?」

「はい。最奥、あのずっと向こう───」


 後ろで話していたトロラオさんが立ち止まり遠くを指差す。オレ

 達も同時に足を止め、指し示された方向を見遣る。

 示された先を追って行けば、突然視界を遮る壁が横一面へと続

 き、更にそのずっと向こう。そんな壁が小さく見えるほど一段も

 二段も高い壁が遥か遠くへ見える。

 ホント、壁が多いなこの拠点。


「あの一番奥に見えている一際大きな壁。その向こうにこそ王が居

 る。立ち入れるのは四獣とそれに認められた、極限られた者の

 み───と言う話しでした」

「成程ねー……。そう言う“作り”なのかね、この拠点は」


 エリュシオンに拠点は沢山ある。規模で言えば平原に出来たちょ

 っと大きいキャラバンの集まりから、村であったり町であった

 り、砦や国であったりと。規模はまちまち。またそうした拠点ご

 とに特色、種族制限とかドレスコード指定、どこどこの出身者限

 定とかってのも、まあ沢山あったり無かったりなのよ。

 勿論拠点の中で仕掛け(クエスト)なんかも色々ね。


「手順踏まないと拠点代表に会えないとか、行けない場所がある

 ってのもざらだよな、相棒」

「ああ。そう言うのを楽しみたくて拠点を作ってるプレイヤーも

 多い。それに受けが良ければ公式や企業からイベント等で声を掛

 けられたりもするからな。そっちを狙ってるのも少なくない」

「ねー。プロのイベントプランナー並のとかスゴイよね」


 拠点を持っているプレイヤーには、当然拠点内を自由にする権利

 が存在している。だからプレイヤー主導でイベントとか開ける

 し、何だったら常設クエストの設定だって可能だ。プレイヤーに

 素材を集めてきて欲しいとか、NPCや資源施設何かも置けるの

 で、進行を任せたり報酬をやりくったりとね。


「数に比例して失敗、寒いモノも多いが、大抵はそうなるしな」

「オレは好きだけどね。楽しみ方何て此方で工夫すれば良いし」


 拠点の大体はまとも。ちょっと不便だとか、拠点代表をやたら持

 ち上げるようNPCへ言わせたり、クエストの報酬が見合ってなか

 ったりとか。そう言うのが大概。仕方ない。

 けれど皆カワイイもんさ。

 オレの考えた最高のイベント! とか。誰にもクリアさせる気の

 ない悪意のイベント! とかと比べればね~。

 まあそんなダメダメな拠点はそのうち維持費工面できなくて消滅

 って道を辿るから、蔓延ったりはしないのだけどね。だから消え

 ちゃう前に楽しまないと。酷さを酷い! とね。ワハハ。


「ああお前はお行儀が良いよ。そう言う暗い楽しみ方を、黙って

 密やかに独り楽しむ辺りは」

「ゲヘヘ」


 相棒がオレのゲスな笑い方に“やれやれ”と首を左右へ振り、

 乾いた笑いを一つ零した後。


「ま。此処の場合は管理者、副管理者に認められれば良いと単純

 な物らしいな」

「だったらそこの協力者に四獣とかって言う奴の所へ行かせて、

 外出の許可だけもらわせればいいじゃない」

「あー……ロリ様。十中八九それ無理」

「なんでよ?」


 オレはロリ神様からトロラオさんへと顔を向ける。すると彼が一

 つ頷き。


「申請するだけなら誰にだってできますが、申請が通る事はまず

 ありません。何故ならここの王様達は私達を、この場所へ辿り着

 いたケモノを出すつもりが全く無いんですから」

「んね? そんな簡単ならもうとっくにトロラオさんはおんもに

 出てるの」

「獣にしては独裁的ねぇ。ただ、陣営管理の観点からなら理解は

 できるかしらね」

「おお? 独裁者でなく?」


 理解を示したロリ様がオレを“キッ”と一度睨んでから。


「いい事。私達は争わないって示してはいるけど、それは私達が

 直接やりあったらこの奇跡の世界もただじゃすまないからであっ

 て、眷属や信者同士が争い合うのは別に止められてない」

「お。政でのお約束。ズルっ子だな?」

「ズルじゃない。これは自衛、防衛目的であえてその部分を曖昧

 かつ適当にしたの。そうでもしないとわたし達トップが防衛自衛

 理由で出張ってくるからよ」

「なるなる」

「トップ同士以外が争うなら大目にって事に成ってるけど、だか

 らと言って大手を振って自衛はできない。やり過ぎて正体を探ら

 れたりしたらそいつの失態、責任問題だからね。そう成れば他陣

 営に付け入られる隙きに成ってしまう。

 だからこその信者、眷属なの。分かる?」


 陣営トップ同士が戦えば人目を引くどころでない。かと言って陣

 営トップが自衛理由で好きに動いては結局人目を大きく引いてし

 まう。だから陣営トップが自らの領土から出ないようにする、と

 かそんな理由かね。これでも抜けはありそうだけど……。

 推測だけど人目を引いた、好き勝手した陣営のトップってのは、

 他の陣営に駆逐されるんだろうなぁ。運営とかに精査される前に

 とかね。でも争いは止められない、だって争い(闘争)もまた自然現象な

 のだから。

 だからこそ戦う事自体を禁止にはせず、トップの代わりに戦う

 者、代替戦力を必要とした訳かぁ。人目を引きすぎない、プレイ

 ヤーレベルを。……最悪始末、送り返しとかってのも?

 ふーん成程ね。

 納得の行ったオレはロリ様へ視線で話の続きを促す。


「……けれどそもそも交流が殆ど無い陣営同士。互いの勢力って

 のは各々完全には把握できてない。そして分からない以上常に相

 手は此方よりも勝ってると想定するしか無いでしょう?

 なら。攻めてくる、来られるとして 深部まで迫られなければ大

 きく戦えない私達にとって、代わりに戦ってくれる存在。眷属や

 信者と言うのはそのまま戦力自体を意味してる訳なの」

「あー……なるほど。何となく分かった気はする」

「私達は戦わないだろうけど、もしかしたら眷属は攻め入ってく

 るかも知れないし、自分たちの場所を守るにはやっぱり眷属って

 存在が必要になってくる。どうしても。

 だから此処の主も戦力確保の目的があるから、無理やりにでも自

 陣へ確保して置きたいんでしょ。例え意に従わない相手でも」

「でもそんなんで戦ってくれるか?」

「戦場に身を置かれれば誰だって戦うわ。相手は全て敵とみなす

 侵略者。話して分かってもらえるとは誰も思わないわ」

「まぁー……そうか、そうかも」


 説明を聞いた事でオレも納得。要は王様って存在は自らは戦わな

 いって話しだ。その理由が仮想世界を巻き込むからって言う壮大

 な物だけどね。

 んーしかし。


「出れないって話だけど、聞いた感じ見た感じ普通のプレイヤー

 は自由に出入りできてるんだよなぁ。さっきのフレンズ二人もそ

 うだったぽいし」

「その様ですね。でもそれは当然だと思います。私達も自らの存

 在を公にはしたくありませんから。この世界の住人以上だと思わ

 れ目を引くのは誰でもが避けたい事、避ける事ですから。

 ですから彼らには秘密の場所として、場を提供はしているのだと

 思います」

「まあそれもありそうなんだけど。てかだろうなって実際話す前

 から思っては居たんだけど……んー………」


 納得しきれない。理解しきれない。何かが引っかかる。

 公然の秘密と言う手法で秘密を、此処を守っているとしても…

 …。


「何か引っかかんだろ?ルプス」

「ん? あーいや、外に出れないって結構な事じゃん? だけど此

 処に住んでる、魂入りの連中は皆好き好んで此処に居る気がする

 んだよな」

「分かるのか? 魂のありなしが」

「いや分からんよ? だけど外に出たがってる奴を全く見かけな

 いから、圧でも掛かってんのかなーって」


 キャラが大勢居るマーケットを見回しても、此処まで来るにすれ

 違った誰それも。皆出れない事に不満を持っているキャラは一人

 も居なかった様に思う。見た目だけの話だけどね。


「……大勢の同胞は此処を気に入っていますから」


 浮いた疑問に答えてくれたのはトロラオさん。


「私達にとって此処はとても住みやい、何処を見ても同族ばか

 りの、いわば安息地ですから。ケモナーの皆さんも同じかと」

「そうね。此処はお前達獣ばっかりだものね」

「ええ。ですがそれでも、此処で良いと思ってる彼らも心の奥で

 は、皆外を見てみたいと言う気持ちを絶対に持っているんです。

 だってそうでしょう? 柵があったら飛び越えたい私達ですよ?

 それこそ途方もなく大きく、なのに何も強くは感じられない場所

 から此処へ来たんです。皆駆け回りたいはずなんです、絶対」

「ふーん。獣は自由を愛するとかって事かしら?」

「ええ、ええそんな所です。でも自由を愛するのは、何もケモノ

 だけでは無いでしょう」

「むむ」


 ロリ様が唸る。まあ、なるほどね。彼ら(獣さん)はそうだろう。

 だけどプレイヤーは? こんな拠点ができるなら、そもそもプレ

 イヤーに最後まで知られずもできた様に思う。でもしなかった。

 プレイヤーを巻き込んだ。何故?んー?


「そっちは何となく分かったよ」

「まだ何かあるのか?ルプス」

「んー……いや。やっぱ大した事じゃないわ」


 プレイヤーの出入りもそうなのだけど。前提としてプレイヤーが

 居る事自体に違和感を感じたんだよなぁ。ロリ様の様に必要な事

 とはまた違う、必要もなく入れてると言うか。……けどま、別に

 大した事じゃないっしょ。そう納得する事にしよっと。


「今大事なのはオレ達の脱出だもんね。勿論トロラオさん達も含

 めて」

「達? 達って何よ」

「トロラオさんって一人で出たいとは言ってなかったろ?」

「……気が付いていたんですか?」

「モチのロンです」

「ちょっと、わたしにも分かるように話して」


 ロリ様の猫パンチを足に受けながら。


「トロラオさんの家に子供が居たろ? あの子達も外に出してや

 りたいって事だよ」

「へー……」

「黙っていた訳では無いのです。方法が分かれば私でどうにでも

 と思っていましたから。ええ本当に、本当にそれだけです」

「んま助けてもらわなかったら此方は積んでたし、それぐらいは

 手伝いますっすよ」

「……ありがとうございます。ルプスさん」

「いえいえー」


 助けてもらったのは事実だし。此処は恩売り抜きで助け合わない

 とね。善良なプレイヤーとして。

 さーてと。情報共有はこの辺で良いべ。得た情報を考えて次は。


「そろそろ行動のターンだね」

「どうするの?おまえに考えはあるの?」

「ん? そりゃ勿論四獣って奴の所に行ってみようかと」

「わたしにはその四獣とかってのが簡単に外へ出してくれるとは

 思えないんだけど……」

「其処はまあ交渉してみたいなって。取り敢えず脱出の鍵は四獣

 ってのが握ってるんだし、見るだけ見てみよう」

「えぇー……」

「それともトップ。王とか呼ばれてるのと話した方が良いと思う

 か?」

「そ、それは確かに、かも」

「だろ~」


 オレとしてもこんな不利な状況で陣営トップと顔合わせはしたく

 ないね。下ですむなら下で済ませたいもんだ。

 納得できてないロリ様から相棒へ顔を向け。


「なわけで。四獣の居場所までのナビよろ」

「だろうと思って、さっきから向かってるのはその四獣の居場所

 だよ」

「マジか。宛もなく歩いてるだけだと思ってたわ。やるね相棒」

「はッ」


 相棒の案内の下。オレ達は取り敢えずとして四獣って存在の下へ

 向かう───


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ───適当な距離を歩いた所で、裏路地から大通りへと戻り歩き

 進めていると、前方に大きな建物が見えてきた。その光景は結構

 異様な物。

 建物は縄張りと呼ばれる分け方をされた、一面を遮る壁にそのま

 まめり込む様な形で立っている。当然両側には高い壁がずーっと

 続いているのだけど。これで分けているって事なんだろうか?

 景観異様で異質すぎるでしょ、これ。


「あの壁にめり込んじゃってる建物が、その四獣の住処って事な

 ん?」

「分かりやすいだろ?」

「いかにも重要って感じではあるね。確かに」


 めり込んだ建物は塔、或いは砦のような見た目で。円形タイプの

 建物だ。

 早速中に入りたいのだけど。


「「……」」


 当然と言うかなんと言うか。建物入り口には門番らしきがいらっ

 しゃる。そこら辺で普通に居そうなビーストマン二人。

 できるかどうかと思いながらもオレは、虎型キャラへ声を掛けて

 みる事に。


「あのー」

「? 何だあ?」

「いやーその。オレ達此処を通りたいなぁー……って」

「通ればいいだろう?」

「あ、そっすね。じゃ、失礼しまーすッ」

「おう。通れ通れうさぎちゃん」

「ぴょんぴょーん(あ。今のオレってウサちゃんだったね)」

「「???」」


 変な事したらから不審がられたけど、特に止められる事も無くそ

 のまま入り口を通る事ができた、できてしまった。見張りから距

 離が離れ、音声が拾われない所で。


「いや普通に通れちゃうのか!」

「そりゃ、まあ。通れないと不便だろうからな。

 と言うか何だったんだ? ぴょんぴょーん?」

「忘れろ、忘れてください。

 いやぁ何か証とか必要なのかと思ったけど、そっか。此処は普通

 に通れるんだね」


 周りを見れば普通に他キャラも居る。そして皆オレを見ているの

 は、さっきの奇行せいかも。恥ずかしい。


「ええはい。この国では縄張りと分けられてますけど、だから

 と言って行き来が制限されてる訳では無いんです」


 トロラオさんにはもう少し早く言って欲しかったと思う情報。

 全く。ぽろりばっかりだなこの人。


「なら四獣の情報集まらなかったり、トラブったりしたらこのま

 ま通り過ぎるのも良いかもなぁ。最悪さ」

「ああ。何処までこの建物の中が自由に歩けるか分からんが、取

 り敢えず歩いて、情報でも何でも得られるモノを探そう」


 四獣とかって言う幹部の居る建物へ入れたオレ達は、一度建物の

 中を散策して見る。と言っても入り口から真っ直ぐ進むしか道は

 無くって、道なりに進めば中庭の様な、天井まで吹き抜けの広間

 へと行き着く事に。

 広間の中央にはどでかい……。


「山?」

「山だ」

「山ね」

「山ですね」


 オレに続き相棒やロリ様にリストゥルンさんが同じ物を見て呟

 く。他のキャラも驚いているのが大半。

 広間には山がどーんと構えていた。外の壁乱立と言い、一体どん

 な美的センスだよと思う。拠点がそうであるように、建物の中も

 内装は自由とはいえ、なんだこれ。

 景観としては外も中も結構なインパクトだ。そんな山の周りには

 人影がちらほらとしている。マジか。


「スゲーなー……」

「建物の中央に山とはな。面白い作りだ」

「そう?アホっぽいわよ」

「はぁー……大きなお山ですね」


 通路を抜けたオレ達は広間中央、山の所までは降りずに。そのま

 まぐるりと囲むように続く廊下を回る。中央に見える山を見上げ

 ながら。


「縄張りを区切る建物、それは縄張りを監督している四獣の趣味

 が元にされているそうです」

「「「へぇー」」」

「此処の四獣は高い所がお好きとの事でしょう」

「「「ふーん」」」


 トロラオさんさんの説明に耳を傾けながら、ちょっとした観光気

 分を楽しんでいると。


「ルッ?」

「あん?」

「なによ?」


 お山で寛いでるらしい人影。その一つが、大きめな影が眼下のオ

 レとロリ神様と目が合う。それはお山に相応しき存在、猿。


「「「……ああ!?」」」


 オレ達は互いに見覚えが合った。見付けた猿は大きな体で、いつ

 か女神の陣営に、酒場に踏み入ってきたあの魔猿だ!


「キ、貴様らはメガミの陣営ノ!?」

「えぇ!?多分きっとそれ人違いですぅッ!」


 とは言え今のオレ達は変装している。そうそうバレる事は無いだ

 ろう。オレと相棒何か着ぐるみ着てるし!


「ムウ。た、確かに。お前ハ可愛らしいうさぎだな」

「で、でしょー?(てか何て高さから見えてんだよ)」

「ダガ! 耳とシッポ程度でオレの目がゴマカセルと思ったか!

 後ろのメガミ!」

「でっすよねー!」


 ロリ様もケモ化してるとは言え、元々の素材が良い。良すぎる。

 だから勝ち過ぎた素材であの猿にバレてしまったらしい。

 くそう!隠せない品は罪だったか!


「まあ顔は普通に変わってないしな!そりゃそうか!」

「どんな姿に成ってもわたしの魅力は隠せないのね。罪なわた

 し!」


 アホが何か言ってる。てかこの状況やばすぎだろ!


「言ってないで走るぞ!」

「「「!」」」


 相棒の言葉通り。中央中腹辺りまで歩いて来ていたオレたちは、

 気が付かれたお山を無視し、向こうに見える出口へと急ぐ。


「逃がスな!お前ラ!」

「「「ウキー!」」」


 走りながらチラチラと見やれば、山から猿型のモンスターが続々

 居りて来てる。


「な、なんだなんだ!?」

「イベント?」

「(他の人はそう思うよなぁー!)」


 拠点内に存在する、襲わないタイプの、見栄えのモンスターかと

 思えばガッツリ襲ってくる系かよ! ああもう!

 だが既に中腹を抜けてるオレらに、山を駆け下りる猿とでは此方

 の方が勝ちそう。

 向こうに見えた出入り口。其処まで後少しと言った所で。


『ウオオオオオオオオオオオオオオ!』

「ほわっつ!?」

「む!」

「ぎゃーうるさーいー!」

「ニルス様!」

「これは!」


 それまでで一番の雄叫びが背後から、そして建物一帯に響き渡

 る。瞬間、目指していた出入り口の扉が“バタン!”と閉じられ

 ては、塔に存在する他の扉も次々閉じられて行く。

 そうして全ての扉が閉じられ。出るはずだった出口の前で佇むオ

 レたちの背へ。


『ほう。お主らがメガミのか』


 言葉が投げかけられた。声の主へと全員で振り返ってみる。

 するとお山の天辺らしきから大きな影が飛び降りて来ては、中央

 にて土煙を巻き起こし。序にサル達がぶっ飛んだりもして。

 その煙の中から。オレらを睨みつける存在は言う。


『儂は四獣が一匹。名はマシラオウなり!』


 お目当ての四獣だと。


「うーん。これはピンチかも!」

「どうすんのよ!バレてるじゃない!」

「ツイてないな」

「ルプス様、ニルス様!」

「……」




 空色の青年。彼が踏み入った拠点は、寄りにも寄って此方を攻め

 てきてた猿の、魔猿の長。その住処であった───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです。

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