第三十八話 獣愛
───空色の青年達は獣の王国にて予想外な協力者を得る事に。
このゲームの中にはボスキャラとか創作とかを越えた、本当の神
様ってのが居るらしい。いや自称何だけどさ。まあ兎に角そんな
怪しい連中が居る訳よ。しかも大勢。全部が全部神様~って訳は
無いっぽいけど、それでもヤバイよね。
でも何がヤバいって、一番はオレもその怪しい奴らの仲間入りし
ちゃってる事だよ。あぁー!笑えねぇーマジで!
そうしてオレは、最高で、今までで一番理想的だと遊んでいたオ
ンゲの、そんな知りたくもない秘密をも同時に知ってしまったの
さ。更には面倒にも知る過程で引き合わされたロリ神様の勢力、
今はそれに協力する事に成っている。
あは~クソダルいぃ!
「(ダルい、ダルいと言えば)」
何故かオレは今敵地、ロリ様と敵対してる勢力、獣王国とか呼ば
れる場所に囚われちゃってるのよねん。ぶっちゃけ完全な巻き添
え事故で。
まあ最悪な事態でも良い事はあったんだ。それはポカしたロリ神
様と二人きりで無い事と。現地協力者を得られそうって事だ。
「私は貴方方の力になりましょう」
敵対勢力側っぽい彼、赤い鬣のトロラオさんが協力を申し出て
きてくれたからね。
「ふーん。本気らしいけど残念。誰がおまえを───」
「するする、協力しちゃう。PT組もPT」
「本当ですか!ありがとうございます」
「いえいえ此方こそっすよぉ~」
「───おおおお、おまえはまたそうやってッ、勝手にッッ」
オレはロリ神様と目線の高さを合わせ耳打ちする体勢へ。他二人
も僅かに耳を此方へ傾け。
「今敵対心むき出しにしたって何~の特にも何ないの。お分か
り?」
「でも絶対アイツ裏切るわよ。だって獣だもの」
「分かんないでしょーが。まあ仮にそうだとしてもさ、オレ達は
この拠点の事を全く何も知らないじゃん? こんなアウェイで生
き残るには慎重な立ち回りと、敵を許せちゃう程の柔軟性とかが
必要だと思うのよ。そんで何よりー……現地の情報。でしょ?」
「んんー……まあ……そう、かも」
「でしょー? だからさ、此処は協力しておこうぜ? 此方から協
力をってのはこの先二つの意味で多分無いだろうし」
彼以外に此方の事情を理解しての協力者が得られるか、またそん
な存在に自分たちから協力を頼められるのか。
考えればまあムリだろうね。
「ん。仕方ない事ね。わかったわ」
難色を顔で現し、少し悩んでいたロリ様も最後には納得できた様
子。
求めた側でなく、求められた側ってのも大事よな。立場の強弱を
考えたら。ロリ様もその辺り分かってるんだろう。……多分。
「よし。じゃあ早速お話しを───」
「わたしが任命してあげる」
「は?」
「おまえを一時的に私の大使に任命するわ。それと戦場指揮官も
兼任させてやる。本来はありえない名誉よ? 感涙に咽びなら励
みなさい!」
「まあ!おめでとうございますルプス様!とても、とても誉れ高
い事ですね!」
「───(青年の絶句)」
コイツはどうしても自分を、物事全てで主体と言う所に絡めたい
らしい。まあこれ他陣営の絡む話だし、ロリ様領分の事柄だし分
からんでもないがー……うぜぇやな。
絶句のオレへ相棒が半笑いを浮かべ。
「ふ。良かったじゃないかルプス。コマンダーだとさ」
「わーいるぷすうれしー」
「顔、顔が引き攣ってるぞ」
「面白い喜び方するのね。おまえってば。
でも恥じなくて良くてよ。身に余る、余り過ぎる幸福や栄誉に遭
遇すれば、神であれ誰あれそうなるものなの。特にわたしからの
贈り物にはね。ふふん。
でもおまえにもそんな普通な所があったのねと思うと、ふふ。何
だか可愛気を感じてしまいそうよ。絶対感じないけど」
「はは。そっすねぇ!(あぁ~ぶっ飛ばしてぇ~!最後強調早口
になる所かぁ~!)」
とことんポジティブな捉え方しやがって。いや自分に都合の良い
捉え方か。だけどまあ、ロリ様の機嫌は損ねない方が良いね。少
なくとも今は離れるに離れられない状況だし。
なら当たり散らされる不機嫌よりも、一人勝手な上機嫌に浸って
てもらおう。我儘癇癪ロリよりも見てウザロリの方が幾らかマシ
だね。……ドブ川とドブの二択ってレベルの話だけど。
そうしてロリ様達との内緒話を終え。オレは屈んだ状態から立ち
上がっては。
「んーでだ。トロラオさん」
「はい。何でしょう?」
「出すって約束ー……ってのはまあぶっちゃけ難しい。オレら出
れるか分からない状況だしね。だからそうだなぁ。
脱出方法を見付ける手伝いをしてもらえるなら、見付けた脱出方
法でトロラオさん達が外に出るのを最後まで手伝う、助ける。っ
て感じでどうよ?
ああ後勿論オレらはこの場所を破壊しに、害しに来たわけじゃ無
いってのを付け加えておくっすね」
一人だけ外に出られる方法があったとしても、この約束だと使え
ないよって意味と意図。互いを縛る最低目的を含んでいるのだけ
ど、そもそも此処に一人で出たい奴は───一人居たけど、居な
いようなモノと考えよう。うんうん。
この形での約束の意味は、互いに協力しなければ行けない。つま
り協力関係で行こうぜって話しが主題。一方的な約束でなく互い
でって意味何だけど、彼はどうかな?
「ええはい。勿論それで構いません。
貴方方はこの場所を害さず、ただ一緒に外を目指すと。そうであ
るなら私はいくらでも協力できるでしょう」
「うっしならこれで決まり。改めてよろしくね、トロラオさん」
「此方こそよろしくお願いします。ルプスさん」
この約束には守らせるべき形、規約も契約も無いけど。確かだと
する為に彼と握手を一度交わす。
「にしても。此方陣営の人ってのは、他陣営を見たら皆問答無用
で襲ってくるもんだと思ってたなぁ。トロラオさんみたいに話せ
る人も居るんすね」
「私も全く同じ考えでした。いえ、他の方もきっと大勢そう言う
考えで居ると思います。陣営と言う存在を知ってはいても、実情
は誰も知らず、探ろうともしないですから」
「へえ?何でっすかね? 普通その、同郷?的な人達の動向なん
か皆気になりそうっすけどね」
「簡単です。皆そこまで興味がないのです。だって今では皆が自
由の民であり、また望みそうであろうとしています。
国が何をしているかに無関心なモノは居ずとも、関心深いモノも
また居ない。自分たちに害がないのならただ王に、トップの方針
だけには従い、打ち出された方針だけに関心を持っていれば良
い。後は自分の生活を守り謳歌する。
此処での、此方での民とは皆そう言うモノ何でしょう」
うーん。何か耳が痛いような、別に痛くないような話し。
陣営ってのが管理する場所に住んでる奴、居る奴ら全てが陣営の
為に動く訳じゃないって事かな? これはとても良い事が聞けちゃ
った感じかも。
「かく言う私も同じです。陣営の存在を知っても、作った彼ら、
上位に位置するモノにも彼らが作った派閥、権力抗争と言った事
柄には一切興味が無い。争いには前に十分身を置いた。
此方でそう言った事には関わらないと決めてもいましたし、加え
て言えば私はこの陣営へ後から来た者です。だから協力への強制
等も意無かったですかね」
「ふーん。成程」
まあ魂入りの連中全員が敵って訳じゃないよな。ロリ様で言えば
リストゥルンさんとか、あの館のスタッフだけだろうし。配下と
呼べそうなのは。守るとかってのもロリ様の話の雰囲気、上の役
目だとか、義務責任辺りの雰囲気っぽかったし。まあ一番は領地
保持だと思うけど。
そう考えればまあ此処は普通だよな。ちょっとロリ様と此処じゃ
規模ってのが違うけども。
そうしてトロラオさんと握手を交わしては。
「うし。ならオレらがしないと行けない事はこの拠点、獣王国か
らの脱出が最重要目標!」
「なんでよ。折角敵地に侵入したのだから、このまま此処で破壊
の限りを尽くすべきじゃない?」
「ははッ。
それで何だけどさ相棒───」
「………え? 嘘、今笑って流したの?笑って流されたの?わた
しが!?」
「ニルス様ニルス様。ここはどうかご辛抱を、そしてルプス様戦
場指揮官にお任せしましょう。ね?」
「わたしこいつ嫌いなんだけど! やっぱ指揮官取り上げたいん
ですけどッ!」
「ははッそりゃオレもな。
んでね相棒───」
「ココッ、コココココココ!!!?」
「ニルス様。行けません、行けませんよ」
リストゥルンさんに諌められるロリ神様はおいて置いて。
「何だルプス」
「うん。取り敢えず何するにせよ情報が欲しのよ、此処の」
「自分も同感だな。後一つ言っておくとこの村、いや国か?
何にせよお前が話してる間にエリアマップもフィールドマップも
確認して見たが、現在地が何処か分からなかった」
「マジ?さっき見た感じ普通の町ぐらいの規模だったのに、位置
情報まるっと秘匿されてるって事?」
「マジだ。秘匿と言うよりは偽装だろう。マップ上ではただの平
原か森何かに情報が偽装されている可能性が高い。そうして偽装
するからには秘密を守る機能も同時に存在して来る。彼が出られ
ないと言う話しもそれ関連かも知れないな。
拠点施設の出入りを其処まで極端に、簡単にも制限できるモノな
のかは疑問だが、今回は事が事だからな。お前と、お前の事情関
係を知った今の自分には不可能だとは言い切れない」
「成程ねい」
この拠点の正確な規模、近隣に別拠点とかあるのか。諸々知りた
かったけど、どうやらそれらは無理そうです。キャラの出入りと
は別に、外部へのチャット送信もムリっぽそう。
「オッケイ。んまあ脱出がオレ達の勝利条件ってのは変わらな
い。だとして何処から?どうやって? その手がかりをまずは探
る所から始めないとね。
んで取り敢えずー……大扉とかって言うのはあるんすかね?
或いは近代的、魔法チックな転送施設っぽいオブジェとか」
相棒と話しながら、オレは途中でトロラオさんへ視線を向け
る。すると彼は頷き。
「私が此処へ来た時に通った、外へと続く大きな門ならありま
す。
けれど開いている所を私は一、二回しか見た事がありませんね」
「ふんふん。多分だけどこう言う閉鎖空間、いや鎖国系コミュの
定番として、外と内を繋ぐ門や扉っての大抵固~く閉ざされてる
のよねぇ。ま、少なくとも門はあるって事か。
ああ後、拠点外への通信は皆やめとこっか。出さねえってのがキ
ャラだけとは限らないし。きっとチャット、メッセ系とかも全部
監視されてっかもね~。
出来ないなら出来ないで良いけど、試して引っ掛かって位置バレ
何てして職質系イベント発生とかダルいし」
今回マイサーヴァントは喚べそうに無いね。喚んで大事な大事な
マイサーヴァントに不具合起きたらキレちゃうし。
「確かに。だが事情的にゲーム運営は勿論、助けを呼ぶ宛なんて
ないだろ?」
「オレじゃねえのよそれは」
「? ……ああ」
相棒と二人でロリ神様へ視線が移る。
「な、なによぅ」
「遠回しに言ってたんだけど、自分のメイド?乙女? に連絡し
て助けを求めたりすんなって事ね」
「わかってるわよそれぐらい」
「ホントぉ~?」
「敵地の真ん中から味方呼び寄せたりしないわ。それにわたしは
戦争を回避したい側なんだから。自分の勢力である乙女を此処に
呼んでしまうのは意に反するでしょ」
「あそ。ちゃんと考えてるみたいで何よりっすわ」
「大事な事はちゃんと考えてるわよ」
「御見逸れしました。へへーい(さっき破壊の限りとかほざいて
たのにね)」
「……おまえバカにしてるでしょ?ねえ?」
「! してない、ゼンゼンしてない」
「嘘!今最後声上ずった!」
何をすべきかを話し合えた、共有出来たと思うので。ロリ様から
“すっ”と視線を外し。
「ットロラオさん! 協力してもらえるって事だから聞くんだけ
どさ、何処か情報を集めるのに適してる場所とか無いっすか
ね?」
早速協力者に何か情報をもらおう。
「そうですね。此処の情報が欲しいと言う事なら、近くに市場が
ありますから、まずはそちらを覗いて見るのはどうでしょう?
ヒトも多く、噂話か何かは聞けると思います。
そこで気になる事が見つかれば、私が補足できると思います
し」
「お。いいねそれ」
現状知りたい情報が多すぎて的を絞れない。ならこの拠点のあり
方や様子を見て、彼に質問を飛ばすほうがやりやすそうだね。
「んじゃまず情報集めに其処へ行くとしようかね」
情報収集ってのは大事。ダンジョンやボス攻略、未体験の場所へ
行くとか。そう言った何事もまずは其処から始めるもんね。
「……何をするのかはもう決まったのね」
「おう」
「はあ。ならさっさとしたら?」
「はいはい。行こうぜ相棒、リストゥルンさん」
「ああ」
「ええ」
そうして。オレ達が早速家を出ようとした所。
「あ、待ってください皆さん!」
慌てた様子でトロラオさんが扉の前に立ちオレ達を止める。
んー?
「ん?何すか?」
「なによ。やっぱ協力できないって話し? なら直ぐにお前もああ
してあげる」
「こら。ロリ神様しつこい。
後オレにあのレアアイテム使わそうとすんな」
「な!?わたしを叱ったの、今!?」
「そんな驚く事かよ」
「そそ、そんな事ー!!?」
こいつリアクションが一々しつこい系だな。それはさておき。
「んでどしたよトロラオさん」
「あ、はい。協力できないと言う話しではないのですが」
「分かってる。このロリ神───いやロリ様は気になくていい
よ」
今更だが気を使って置かないとだな。ロリ様呼びに抗議が入るも
此処は無視無視のどスルー安定。
「良かった。ええとですね、皆さんがそのまま出て行くのは問題
が一つありまして」
「ほほう?」
「どんな問題だ?」
オレと相棒の質問にビーストマンが、トロラオさんが此方の爪先
から頭の天辺までを見ては。
「問題は皆さんの“格好”です」
「格好? オレ的にはエリアの世界観を損なわない程度のコーデ
だと思ってるんだけどなぁ。中世エリアでフォーマルスーツって
ダメかな?」
「いや。そもそも格好で問題に成る事はないはずだ。特定の派閥
連中にはそれを示す、誇示する専用のコーデもあるが、あっちで
倒れている二人からは特別に合わせたアクセも衣装も見受けられ
ない。シンボルタトゥーも。
仮にそうで無いとして、彼らが外用の格好だとしても、アンタと
彼らの格好、自分たちとも大きな違いがあるようにも見えない」
相棒の仰る通り。獣の陣営さんにはそれと示すモノ、腕章とかが
無いっぽいし、トロラオさんの格好は普通。中世エリアに合わせ
た衣服に、緑の布を片側に羽織ると言う。ザ・旅人って感じの衣
装。倒れてる他二人と同じレベルで普通。
オレと相棒は現代的だけど、リストゥルンさんの制服はテーマ
が近いものだと思う。けれどそんな彼女も止められた。
つまり服装自体に問題はないって事。まあエリュシオンで服装が
違和感って滅多に問題にならないよな。
「その……正確に言うのならば格好では無く、種族が問題なんで
す」
「「種族?」」
「はい。ええでも、いきなりこんな事を言われても混乱してしま
いますよね。なのでまずこの国の特殊な事情からを説明した方が
いいと思うのですが。どうでしょう?」
「何が問題か聞いといた方が良いなら、もち頼みます」
建物を出る前に敵地の情報が知れるなんて、現地協力者は早速役
に立っているね。
「分かりました。何故種族が問題なのかと言うとですね、そもそ
もこの獣王国に入れる、受け入れられているのが獣人や獣に関係
する者に限定されているからなのです。
ですから普通なヒューマンやエルフ、デーモンにブリキ等の方は
一切この国へは入れません。と言うか一人も居ないのです」
「なるほどな。入れないはず、居るはずもないのにルプスや自分
達が居るって事は、それ即ち侵入者だって周り宣伝している様な
ものか」
「はい」
なーる。でもだとしたら困ったぞ。
「つっても此処で種族チェンジってのもなぁ。ロリ様とリストゥ
ルンさん達ができるか分からんし。言ったらオレもだし」
ログアウトできないオレにキャラチェンができるかって言われる
と、答えはNOだろうね。キャラ選択画面に戻れないからムリゲ
ー。……ん?アレ? 今更だけどオレのサブ垢って全滅って事?
「参ったな。いきなり積んだか?」
「え。やだ、何とかしなさいよ! 戦場指揮官でしょ!」
「んっんー図らずも気分が乗りそうになるかそう呼ぶな。あー…
…」
相棒が肩をすくめ。ロリ様がオレを持ち上げてどうにかしようと
している。その最中オレは目の前のビーストマンと目が合い、ふ
と思った。彼は話の中で“獣に関係すればいい”と言っていたっ
けか。
「今の話、完全な種族固定じゃないー……ですよね?」
「! ええはい。すみません言葉が足りず。種族と言いました
が、ヒューマンだと名乗らなければ、エルフと分からなければ。
見た目が獣ならば此処では許されます」
「お。あぁー……なら、アレもー……行けっかな?」
「「「?」」」
腕を組み頭を大きく横へと、身体ごと傾けた体勢から復帰し。
オレはその場でメニュー画面を呼び出し倉庫へのアクセスを試み
る……お!繋がった! どうやらアイテム倉庫へのアクセスは制
限されてないらしいね。ラーッキラッキー。
早速アクセスしたアイテム倉庫からオレは見た目セット装備を幾
つか取り出しては、一つを自分へ装備。
「じゃじゃーん。どうよ?どうよ?」
「「「……はあ?」」」
相棒やロリ神様、リストゥルンさんからも困惑の生返事が送り返
されちゃう。現在彼らから見たオレってば、可愛らしい着ぐるみ
姿のオレなのよね。
装備したのはキャラの全身を包み込む見た目装備で、ウサちゃん
な着ぐるみなのだ。耳が片方垂れているのがチャームポイントだ
ぞい。物理演算がどんなにイカれても決して立たないお耳がね!
とは言え。
「まあ流石にこれ───」
「おおッ! はい、それならば全く何の問題ありません!
この場で同胞と認識される、種族を超えた唯一の特別。ケモナー
と呼ばれる方々として通ることでしょう!」
「「「はあ!!?」」」
「マジか!(てかケモナー?)」
オレが姿を披露した以上に三人は、トロラオさんの言葉に大きく
驚いてる。彼曰くこれでも良いらしい。結構此処の制限緩いっぽ
ーい。
「よっしこれでオッケーなら外出て動けるって事よな!」
「……ああ。今の反応的にそうだろうな」
「そんな不安気な顔すんなよ相棒~」
渋いフェイスを更に渋くする相棒ちゃんへと、ゆっくりと距離を
詰め、可愛らしいウサちゃんハンドを彼の肩へと置きながら。
「さぁ。ネズミにヘビにゲロゲローなカ・エ・リュ。
どの着ぐるみセットが良いんだい? ん?相棒ちゃんは?」
「………。…………ヘビで頼む」
「承りッ!」
ご希望通りヘビをモチーフにした可愛いデフォルメ着ぐるみを相
棒へと貸しちゃう。渋々と装備した相棒は、渋いオジ様からスネ
ーくんへと早変わり。頭が不必要に大きくて、ヘビなのに手とか
足とか付いちゃってる着ぐるみ。
トカゲに見えるけどもこれはヘビったらヘビ。だって着ぐるみの
名前が『スネーくん』だもん。
因みにきぐるみシリーズぶっち切りの不人気。理由は見た目と、
大きな当たり判定です。
「これで本当に良いのか疑問だ、疑問だぞルプス」
「まあまあ。何かキャラ的にスゲー似合ってるし、良いじゃんじ
ゃん。って事でお次はそっちの───」
「あ、わたし達はここで留守番してるから」
「───あん?」
「だってわたしが、トップが敵地をうろつき回る訳にはいかない
でしょう? だから出口を見つけたらまた呼びに来て。わかった
らはい、行ってらっしゃい」
ロリ神様が突然行かないを宣言。そして理由が結構まとも。けれ
ど。
「却下で」
「なんでよ!?」
「まず此処が安全とは限らないし、この状況ならいざって時側に
居てくれた方がオレ的に助けやすい。それと出られるってなった
時に此処まで迎えに来る、そのリスクよりも一緒の方がすぐ脱出
ってメリットがあるから」
「で、でも! ぐぐ。……わ、わたし助けられる程弱くない、し」
「いやザコ、クソザコだよ。引きこもりがひっぱりだされたら弱
いに決まってるだろ? 後ロリ様さっき普通に建物一緒に出よう
としてたよな?」
「ぐぐぐぅ! 引きこもりじゃない、し!
……うーやだ!着ぐるみ何てそんなダサいの、わたしやだも
ん!」
おー、おーおー。とうとう本音が出やがった。ったく面倒臭えな
ぁ。けど、この先どう転ぶにしろ一緒の方が絶対に都合がいいん
だよなぁ。ロリ様存在価値自体が高いし。
「分かった分かった。なら着ぐるみ以外で、可愛いの考えてやる
からさ、それなら良いべ?」
「ホント? でもダッッサいのはイヤよ?」
「うん。取り敢えず全部オレの私物だからさ、ダサいの連呼はや
めよっか。───転がすぞ?おい」
「ひッ」
ウサちゃんハンドを意味もなく閉じたり開いたりして見せる。ビ
ビってるビビってる、ワハハ。
さて。着ぐるみセット、アニマルくんスーツシリーズが使えない
となると。また別の見た目装備が必要か。ならアレとソレと、序
な物を取り出して、っと。
「ほいこれ。取り敢えずこれ全部着てみ」
「ううー……」
見た目装備をオレから受け取ったロリ様は、何故か物陰へと向か
う。別に着替えるだけなら何の問題も無いのに。此処ネトゲだ
し、いきなし下着姿とかにはなれないからね。……下着と同じか
それ以上っぽいコスチュームもあるけど、それは突っ込んでは行
けないお約束。
ぶっちゃけあの広間から此処に飛ばされた時点でロリ様ってばネ
グリジェ? 見たいなパジャマのままだったしね。
それで今更恥ずかしいってのがオレには分からん。
「はい。着たわよ……」
「おお!」
「へぇ」
「まあ!お似合いですよニルス様!」
装備変更何て一瞬。なのでロリ様は物陰から直ぐに出てくる。
オレが渡したのはネコのお鼻とお髭、そして動く猫耳としっぽの
セット。ネコ子猫セットシリーズ装備。それとおまけに普通のワ
ンピースコスチュームもね。
この中に存在する時点で、パジャマコスだって当然良いのだけ
ど、今回は冒険的なノリ。なら見た目もそっちにしないと気分が
上がらないよねって話し。衣装は現実でも仮想でもモチベーショ
ンに関わる素敵な景色の一つ。後普通に人目惹かないよう地味
な感じで行きたってのもある。
渡した装備を全て付けたロリ神様は、さながらネコのビーストマ
ンっぽい。“ピコピコ”と動く猫耳に揺れる尻尾。ひく付かせて
いる鼻の動き何かも良く出来ている。子ネコ、血統書付きなネコ
の少女とでも言おうかね。
「お。ぽいじゃんぽいじゃん! いいんじゃねーの?」
「ちょっとカワイイ服と、こんな獣の格好で褒められても。ぜん
ッぜん嬉しくないわよ」
「えー?カワイイはカワイイんじゃね?」
「! ホ、ホント? これでもカワイイの?」
「うーん……かなりッ」
親指を“ぐっ”と立てながら。
「いやー正直?ここまでバッチリケモかわな感じで似合うとわ
思わなかったよ。やっぱ元の素材が良いと何でも似合うねー
い」
「んっふーッ当然ッでしょ! わたしを誰だと思ってるのよ、
もう!もうもうもう!」
嫌がっていた先程よりも明らかに上機嫌なロリ様。褒めると乗
ってくる性格、性質ってのはありがたいよなぁ。……ま、普通
にガチ目で似合ってるんだけどさ。腰に手を当て胸を張ってる
姿とか、得意げな顔がネコらしいと言うか。何でこう似合っち
ゃうかね。
とりまロリ様はこれでよしと。んでんでお次ッは。
「はいじゃあリストゥルンさんもこれ装備しちゃいましょう」
「敵地への潜入、その為の変装。……はいッ。リストゥルン行
きます!」
「うん?うん。あ、じゃあこれでー」
「お任せください!」
ロリ様と違って最初からやる気のリストゥルンさんへ装備を渡す
と、彼女も同じ様に物陰へと向かう。ロールプレイ、恥じらいっ
てのは大事だもんな、うんうん。
「……」
「ん?どしたよロリ様。此方見てきて」
「何かおまえに今ムカついたのだけど?」
「えぁー……。理不尽すぎないかそれ」
ネコなロリ様にムカつかれたらしい。気分までネコ化したのか?
何て考えていると早速装備したリストゥルンさんはが戻って来て
は、少しだけ不安気な様子を見せ。
「あのー……これで装備、できていますでしょうか?」
「おおお!めちゃ似合ってるじゃないっすか!」
羽耳に控えめなクチバシ、長細い鳥類の尾を付け。尾は白色の中
に黒い線が入ってるやつ。恥じらうリストゥルンさんを見て思
う。此方もかーなり似合ってるじゃない?
二人へ渡した見た目装備はオレと相棒のような全体を変えるタイ
プではなく、部分装備系。
なのでロリ様は普通のワンピコスな見た目とネコセットが混じり
子ネコ感がバッチリで。ちょっと品までありそうなのが恐ろし
いぜって感じ。
リストゥルンさんの方は元々着ていたウェイトレスなコスチュー
ムが主体で変わりないけど、アンマッチと言う事は無くむしろ良
い。非常に良い。今回のコーデの記録後でとっとこ。
「よし。後は武器としてネコパンチとフェザーハンドを装備して
もらえば完璧っしょ。うん!」
「ネコパンチ……。ってまるきりこれ、手がネコに成ったんです
けど!なにこれ! あはは!あはははは!」
「怒ってんのか喜んでのかどっちだよ」
「ニルス様。わ、私も手が鳥の羽の様に成ってしまいました」
「うわ! あんたそれで物つかめるの?」
言われたリストゥルンさんが近くの家具へと手を、羽を伸ばす。
すると羽が手のような形を取り家具を掴む。
「つ、掴めるみたいです!」
「なにそれー!」
ロリ様とリストゥルンさんはただの装備品で大はしゃぎだ。
反応的にこのエリュシオンと言うゲームをまるで楽しんで無かっ
た、もしくは遊んで来なかった人の反応だなぁ。アレってさ。
「おい。本当にコレで、アレでちゃんと誤魔化せるのか?」
はしゃぐ二人から離れ小声で尋ねてくる相棒。
「無理なら無理で着ぐるみ着せれば良いっしょ。とりまこれは出
歩かせる目的だし。ロリ様がこの安全な家を出てくれれば、後は
外で危ない目にあった時、選択肢は着ぐるみを着るしかないでし
ょ?」
「なるほど」
「後着ぐるみはトロラオさんから平気ってお墨付きだから、大丈
夫じゃね?」
「自分が言ってるのは、信じる根拠を彼で多く占めるなよって事
だ」
「ああ大丈夫大丈夫。分かってるよん」
「……ならいい。自分はお前を信じるだけだ」
「相棒こそ根拠をオレで占め過ぎじゃない?」
「自分とアイツとでは年月が、共有した時間、積み重ねた思い出
の桁が違う。互いを信じられると、預けあった信頼が此方には
ある」
「わー。お口からお砂糖でちゃうー」
オレはどストレートに信頼とか思い出とか語っちゃう相棒から顔
を動かす。
向いた先では似合う似合うとリストゥルンさんに褒められ上機嫌
なロリ神様。自身も満更でなさそうなリストゥルンさん。
うん。取り敢えずこれで外を出歩く為の準備はできた訳だ。
「んじゃーまッ。いっちょ市場に偵察へ行きますか」
「「「おおー!」」」
「ええはい。では案内しますね」
こんな状況でも楽しんじゃ行けないって事は無いはずだ。なので
オレは楽しみつつも敵地で情報を集める為に。トロラオさんの案
内の下、どの街にもあるであろうマーケットへと向かう事に──
─
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
───現地協力者のトロラオさんの家を出て暫く。家々が立ち並
ぶ通りを歩いて行く。
「この位なら案内は必要無いように思うが」
相棒の言葉にオレも同意見。
トロラオさんは家を出てそうそう『私から離れないように』と言
って先頭を歩き案内をしてくれているのだけど。此処までの道は
至って平凡。両サイドに家が立ち並び、オレたちはその中央の道
を歩いてるだけ。
「いえいえ。此処はそう、見た目通りに単純じゃないですよ」
「「「?」」」
「ああほら。アレを見てください」
案内のトロラオさんが指し示す先。それはオレ達が真っ直ぐ進ん
でいた道の先。何だ何だと彼の背から皆で前を覗き見れば……。
「は?」
「どう言う意味だ?」
「壁?」
「はい。壁ですねニルス様」
オレ、相棒、ロリ様とリストゥルンさんが見遣る先には壁が立ち
塞がっている。別に壁自体がおかしい訳じゃない。問題は、何で
家々が立ち並ぶ場所に、しかも通路も建物も堂々ぶった切る形で
いきなり立ってるのかって事。だっておかしいだろ?
「家とかめり込んじゃってね?」
「ああ。まるで後から無理やり填めた、そんな感じだな。あれ
は」
オレ達が進んでいた通りは普通な通り。両側に家が続くだけの。
なのにこの壁はその通りをいきなり通行不能にしてるし、なんだ
ったら両サイドの建物が全部バッチリ壁にめり込んでる。
完全に置く場所を間違っちゃってる壁。
レイアウト変更で一時置きしてたモノがそのまま、みたいなね。
「皆さん此方へ」
呼んだのはトロラオさん。彼はこの異常な光景に驚きもしない
で、壁にめり込んでいる右側の建物。その扉を開けてオレ達を
呼んでいる。
壁を見ていても仕方がないので、呼ばれた彼の下へ皆で移動。
オレ達が近付くと彼はそのまま家の中へ。
「おいおい。まさかこの中が通れるって言うのか?」
「はい。遠回りで裂け目を探せば壁を回避できますが、実は此処
から直で行けるんですよ」
「なるほど。これは此処を知ってるヒトじゃないと分からないわ
ね」
相棒とロリ様が納得しながら家の中へ。オレもリストゥルンさん
も後に続く。
中は内装も普通のお家。ただし。
「……いや通れないが?」
入った家の中にもバッチリしっかり外の壁がみっちりと貫通して
いた。なんだこれ。
皆でトロラオさんの顔を伺えば。彼は二階への階段を指差し。
「一階では無く二階からなら向こうへ渡れますよ」
「「「へぇー」」」
言われるがまま全員で二階に上がると、トロラオさんが言ったよ
うに二階部分には一階と同じ地点に壁がない。向こうに側には下
りの階段も見えているので、どうやらマジで通り抜けられそう。
意味の分からない構造だなぁと。そう思いながらふと二階の窓か
ら外を見た。見てしまった。
「……はあ?」
高い位置。自分の目線が建物と同じか少し上の視界を手にして。
「どうしたルプス?」
「ルプス様?」
「何間抜け声漏らしてるのよー」
見えた。壁が。
「ほら行くわ───なななによ!」
近付いたロリ様を片手で持ち上げ、視線を窓の外へと通してや
る。
「「「……なにあれ?」」」
相棒たちも釣られ、そうして全員がオレと同じ物を見て、同じリ
アクションを零す。
窓の外には当然この拠点の景色、町並みが広がっていたのだけ
ど、建物の間、通路の真正面、時に建物自体を巻き込みと。とて
も機能してるとは思えない無意味な壁があちらこちらに立ってい
る。数は家屋の方が多いのだけど、それでも目立つね。
ただ用途のはっきしりてる物もある様子で、点在するそれら壁と
は一味違う、完全に区を分ける為だろうか。遠くにはちゃんとし
た壁っぽいものも聳えている。バカでかい、何を考えて立てられ
たのか不明で巨大な壁が遠くにね。あれが外へ通じてるのかな?
でも方角的には内側のようにも見えるな。うーん?
何にしても、何だよこの町並み。可笑し過ぎんるだろ。レイアウ
ト操作でもバグってんのか?
「んまぁ~確かに。こんな町並みなら案内はいるかも」
「ああ。まさか此処まで可笑しな事に成っているとはな」
「ね~」
オレと相棒が窓の外の光景、日常に落とされた不自然について感
想を零すと。
「前、前はこうでは無かったと聞きます。事実私が着た時には壁
の数もまだ此処までではありませんでしたし。ただ、聞いた話だ
と何時からか王は国中へあの様な壁を建て始めたんだそうです」
「にしても景観台無し過ぎるでしょー。アレー」
町並みって作りは普通なのに、いや普通だからこそあの意味不明
に点在してる壁、あれが悪い意味で際立ってしまっている。しか
も配置的に見て用途意図共に不明だ。建物系、それこそクラフタ
ーとかが見たら発狂するんじゃない?
「さあ皆さん。行きましょう」
「「「はーい」」」
窓から見たそんな異様な景色を後に。オレ達は建物二階から壁の
向こう側へと進む。
道中そうした壁に何度か遭遇し、ある時はまた建物の中を、或い
は路地裏の隙間から移動したりとして。大変不便な移動を強いら
つつも。遂に遂に。
「皆さんおつかれさまでした。この先が市場です」
「や、やったー! 抜けたー!ひゃほーい!」
「うう。疲れた、疲れないけど疲れたわよ!」
住んでる人達が迷惑そうにしていた壁の所為で直線距離で中々来
られなかったが、遂に到着だ。
「移動は確かに面倒だったが、時間で言えばそうは掛からなかっ
たな」
「はい。どれも殆ど最短距離で壁を迂回できていましたからね」
疲労の色が見えない相棒とリストゥルンさんが言う。
確かにトロラオさんの案内のお陰でスムーズに進めたから時間は
疲労感を伴う程には経ってない。ただ“また壁かよ!”とかって
言う精神的に疲れる移動だったなと。
ちょっとしたアスレチックと考えれば、まあ少しは楽しかったか
もだけど、ああ言うのはもっと心に余裕がある時にして欲しい。
こんな敵地、PVP解禁場所以外とかでね。
それに楽しむならちゃんとした人に管理されたアスレチック拠点
の、初心者ルートとかが良い。……あぁアスレチック拠点かぁ。
「久しぶりに壁登りとかも楽しいかもなぁ」
「はあ? もう壁はイヤよ、わたしは」
「それは確かにそうかも」
ロリ様が考えている此処の壁じゃあないんだけどね。
んで。住宅街を抜けた先へとオレ達は着いた訳なのだけど、見え
る範囲には普通のお店が、商店街の様に立ち並んでいる。
どうやら此処がこの拠点でのメインの大通りなのかな。今の所あ
の意味不明な壁も此処らには立ってないようで一安心だ。
辿り着いた大通りには壁ではなく、普通にキャラの方が溢れて居
て。
「ねえねえ今日は何処を見に行こっか?」
「んー。この辺りってもう見たから、次はもっと奥行かない?」
「良いかも!」
ふさふさな毛並みにちょっと突き出た口、頭に着いた長い耳を揺
らしながら歩くのは人形のビーストマン。コスは動きやすい物
で、中世風と現代風の二つ。
彼女たちは連れ立って何処かへと行き。また他のキャラは。
「よーっす」
「おっすっす。講義終わった?」
「わったわった」
「うぃー。あ、出る前にちょっと店覗いてっても良いか?」
「良いよ~。なら俺クエストリスト見て待ってるわ~」
「あい~」
トラやオオカミにも似た人形ビーストマン。格好はかなり派手な
シャツにジャケットと、結構チャラめ。だけどビーストマンでも
似合う様気を使われたコーディネートだ。やるな。
中世エリアで現代風なコスってのは別に変じゃないしね。此処は
ゲームの世界だし。
後は……。
「アオーン!ってな!」
「ハッハッハッ!」
鳴き真似何かして大通りを走り抜ける四足歩行の……ってうおマ
ジかよ。貴重なビーストタイプまで居たよ! やべえー!
「マジかよ。おい見たかよ相棒!ああ言うタイプってさ、滅多に
見れないよね?よね!」
「ああ。ビーストマンは大抵人型が殆どだからな。あんな四足、
完全なビーストタイプって言うのは早々お目にかかれるモノじゃ
ない」
「だよな!だよな!」
「これは良いモノが見れたな」
常に冷静沈着な相棒も興奮、驚いている程さ。そりゃそうだろ
う、だってマジなビーストマン何てオレだって久しぶりに見た
よ。長くこのエリュシオンをプレイしてるけど、それでも余り見
れないからね。
超激レアのキャラタイプの一つ、数ある種族の中でもめずい!
「なになに? あんな獣が珍しいの?アレで?」
「フィールドを歩けば似たモノは沢山居ると思いますが……」
「ッチッチッチ。モンスターはAIだから分かっけど、ああ言った
本当の動物系キャラはそうは居ないの。メチャレアよ?アレ」
「だから何がレアなのよ」
「良いか? まずこのエリュシオンってゲームのキャラメイクが
とーっても───」
オレはロリ様とリストゥルンさんに軽く説明する事に。
エリュシオン自体技術関係者には超技術とか言われるレベルに有
名で、類似する物がない故、そのブラックボックスじみたシステ
ムを解明してやろうとマジな科学者が実際にゲームをプレイして
体験研究、考察した論文とか発表される程の、そんなイカれたレ
ベル。
なのでキャラクリも群を抜いて凄く、他にあるどのVRゲーは勿
論、キャラクリに特化した、それだけの物よりも遥かに優れちゃ
っているらしい。
曰く。天才科学者が初期開発に関わってるからだとか、そもエリ
ュシオン自体が軍事目的で開発されたプロトタイプの流用だから
可能、とかだったり。仮想体モデリングに心血を注いだとある変
態集団が~何て。跳んだ様々な噂が出てくる様にもうすんごいの
だ。
その技術の高さの証明として、仮想世界における完全にプレイコ
ントロールが可能な人外キャラクリエイト技術の実現は、このエ
リュシオンが現代で唯一。と言う点だね。
どのVRゲームも視点だけなら可能だけど、実際に五感共有可能
で自由に動けるのは此処だけ。
「イヌワシ、オオカミにイノシシとかの実在の生物、それも人形
サイズのから、果てはファンタジーモンスターまでも出来ちゃう
んです。そう、このリュシオンならぬえッ!」
「何キメ顔してるのよ。でも全然そんなの見ないわよ?」
「それはロリ様が単純にヒッキーなだけだから当然だろ。でも
ま、実際その通りなのよね」
「一々煩いわねー……。で?何でその通りなのかしら?」
「簡単。彼らが人型じゃないからさ」
「? ルプス様、人型でないモノが作れる、そこがこの場所の
優れている点だったのでは?」
「そうよ。それなのに人型じゃないからって……。ああ不人気
って事でしょ」
「近からず遠からずだな。そもそも───」
エリュシオンにはリアルに依存してか知らずか、個人個人に対し
て何かしらの秘密適性、一部で言う所のギフトって呼ばれるモノ
が存在している。
例えば運動系にその適性があるとすれば、リアルじゃスポーツ苦
手系女子でも男子でも、此処ではちょっと頑張ればプロアスリー
ト並に動けたりとかね。
そんなの仮想現実世界何だから当然だろって多くの人は思うけ
ど、これってそう単純な事じゃない。勿論仮想現実らしく動けも
するけど、極めたりするにはそれなりの努力と適性ってのが関わ
ってくるのさ。
さっきの例で言えばリアルがプロアスリートなら此処でもプロア
スリート並には動けるけど、その先ってのは当然この仮想世界で
の領域になる。だから此処の中で積むべき努力と、そして適性っ
てのが関わって来たりする。
適性に関しては種類、またどう言う基準なのかも全部が不明だ
し、完全未知っぽいからもうどうしようもないんだけどね。ただ
安心なのは適性だけが此処での全てじゃないって事。適性の高い
方が必ず勝つ、できるって訳じゃないのが大事なゲームバラン
ス。努力次第で適性の有無ってのはカバーできるからね。めちゃ
大変だけど。
結局努力って奴は何にしても、何処でも大事って話。それに適性
って自分じゃ完全には分からないからねー。感覚的に“あ、ある
かも?”って理解のしかただし。大概。
けれど唯一。人外キャラを動かす事、これに関して言えば適性っ
てのがかなりの割合を占めている。いやこの一点に関して言えば
才能と言っても差し支えないほどだろうね。
オオカミのキャラクリに関して言えば誰にでもできるけど、それ
でこのエリュシオン内を十分に動けるかはまた別の話し。誰でも
オオカミに成れるし動けもするけど、本当のオオカミ並みに、現
実のオオカミ以上に動けるかは適性の高さで決まる。
適性の低い奴は頑張っても少し歩き回る程度しか出来ないし、短
時間でも目眩、不快感、異物感等などに襲われてしまうらしい。
最初の町も出ること叶わず、それじゃまともに冒険も生活もでき
ないよねって話。
「───おまけにこれ。人の形から大きく離れれば離れるだけ、
動かす難度も不快感も跳ね上がるって謎仕様。これがどうしてか
ってのは運営下に尋ねても公式回答は返ってこないのよね~」
何か噂だと人型でも名状し難き系とかは高い適性を求められるら
しい。でもゾンビだとか獣人タイプは難度が極端に低く、獣人系
統でも同じ飛べる系の鳥人とかだと難度が普通より高い。
「ふーん。何で少ないのかはわかったわ」
「つまりアレは選ばれたモノ、適性、ギフトでしたよね? それを
持つモノ、と言う訳ですね」
「そゆ事。んまーだからってゲームプレイ的に不利有利が大きく
発生する事は無いけどね。装備品も装備できる出来ないはキャラ
の身体特徴に依存したりするけど、当然四足とかそっち系専門も
存在するし。まあ詰まり、その辺りはよく出来たゲームバランス
を保っておりますこのエリュシオン」
適性と言うマスクデータは全員が何かしら持っている。けれどそ
れで最強と最弱が決定されるって事は無い。適性にも投擲、
視力、スペル速読とか。一見意味不明なのも色々あるからね。
どっかの記事で見たけど、可能な限りが出来得るエリュシオンだ
からこそ、ホメオスタシス的バランスを実現しているのだとかっ
てあったな。適性システムもその一端なのかも。
正に混沌と言う名の秩序。
「しかし。本当にビーストマン、獣キャラしか居ないみたいだな
此処は」
相棒の呟き通り。大通りは右を見ては全身を毛に包まれたイエテ
ィ見たいなの、左を見ても羽の腕を持つビーストマン、猫耳仮面
なのとか。っぽいPCとNPCで溢れかえってる。
見た目で言えば普通のヒューマンやエルフと言ったキャラは一人
も見付けられない。こうなって来るとまさに此処ってば。
「ビーストキングダムって感じぃ」
「は。確かにな」
「何処を見ても獣ばかりですね。此処」
「良くもまあこんなだけ集めたわね。いえそもそも拠点の規模がで
かすぎよ。獣の癖にちょっと生意気じゃない?」
「ねー。ロリ様ってば館一個だもんねー」
「……わたしは大っぴらを避けただけよ。何?悪い?あぁ!?」
うお怖ッ。急にガラの悪く成っちゃうんだもんなぁ。ロリ様の睨
みつけからオレは視線必死に逃す。
「なあ。ちょっと思ったんだが」
そんな所に相棒の言葉だ。勿論飛びつくね。
「おう!どしたよ相棒!」
「ああいや。ふと思ったんだが、別に自分達は普通に此処を出られ
るんじゃないか?」
「うん?何でよ?」
「此処へ連れ込んだ二人組の事だが」
「わたしの館を偵察に来たとか言う不敬モノ二人ね」
「そうだ。彼奴等はそもそも此処からあっちへと出てきた訳だろ?
それ以前に館襲撃のあのイベント、あれも仕組まれた物だとする
なら、彼奴等は頻繁に外へ出て来ている」
「まあ……そうだね」
「それはまあいい。彼らが陣営とか言う物へ属していると考えれ
ば良いのだから。だが問題は此処を見て、話し声を聞いて分かっ
た事だ。この大勢の中には自分みたいに普通のプレイヤーも混ざ
ってる事だ」
確かに。辺りのビーストマンキャラからはオープンボイスチャッ
トで。
「うぃーっす」
「おーやっとインしたな。てか飯食うのどんだけおせーんだよお
前」
「マジそれな」
「ったく。んじゃもう一人の迎え行く?」
「行こ行こ。今日はオレ親居ないから徹夜できるぜ」
「聞いてねえよ誰も。そこまで付き合わねーからな」
何て。ゲームへのログイン、アウトの話しとかが普通に漏れ聞こ
えて来ていた。つまり周りには魂入りのPC以外にも、普通にこ
のエリュシオンをプレイしている一般プレイヤーが居ると言う事
だ。
「……って事は。このビーストマンが出られないってのは嘘って
事なのね? よし、裏路地辺りに連れ込んで“サク”っと始末し
ちゃいなさい」
「畏まりましたニルス様」
「!? ち、違う!嘘なんて吐いてない!」
「でも実際ああして出てってるじゃない。あんた怪しいと思って
たのよね~。これは女神的感だけど、絶対何か隠してるでし
ょ?いや企んでる? 分かるのよねぇ私には」
「そんな無茶苦茶な!」
「(ホント無茶苦茶ー)」
直感だけのロリ様に睨み寄られ。たじろぐ彼を背後から羽交い締
めにするリストゥルンさん。ふー……。
「まあまあロリ様、リストゥルンさんも羽交い締めにしないしな
い」
「なに?おまえはまだこいつの肩持つ気なの? 裏切るわよ?コ
イツ」
「そんな言い方しないの。それじゃ裏切る気無くても裏切りたく
成っちゃうでしょーが。
ぶっちゃけオレはさ、薄々気が付いてたのよ。出入りは普通にで
きるだろうな~ってさ」
「どう言う事よ?」
羽交い締めをやめたリストゥルンさんにロリ神様、それに相棒達
がオレを見つめる。
ビーストマンの、現地協力者の彼はさっきこの国を誰も出られな
いと言った。けれどそれは。
「出られないのはビーストマンってか、獣って呼ばれてる魂入り
の連中だけの事だろうね」
「そ、そうです! ケモノは皆この国へ足を踏み入れたら出られ
ません」
「でも出られる例外もあるんでしょ? さっきチラッと言ってた
もんね。ケモナーってさ」
「! はい。まだケモノで無い獣のヒト、そちらのブルクハルト
さんの様な方は自由な出入りが許されているんです。
此処でそれ以外、ケモノが外へ出るには王様か四獣様の許可がい
るのですが、その許可を得た者だけは出られるんです」
「なるほどな。プレイヤーを拘束しては問題だから、限られた条
件をクリアした奴は出れるって訳か。だがそれで此処までの秘密
を他のプレイヤーから、好奇心から守れるものなのか?」
「そうよ。わたし達の存在は極力秘密にしなきゃならないの。
これはどの陣営とか関係ないわたし達の絶対ルール。なのに此
処へ普通にプレイヤーとかが入ってるはどう言う事なのかし
ら?」
相棒とロリ様の疑問に。
「相棒、ロリ様。逆よ逆」
「「ん?」」
「いいか? 秘密ってのは完全であればあるほど人の興味を引く
もんなのよ。何よりこの世界ってばゲームなんだもの。プレイヤ
ー個人の秘密ならいざしらず、秘密の拠点なんて物は探りたくな
っても仕方ない。だって冒険心を解き放てるのが此処なんだか
らさ」
「だとしたら尚更バレないように完全にするんじゃないのか?ル
プス」
“個人の秘密~”って所で一瞬反応を見せた相棒が質問を口にし
た。
「チッチッチ。オレが思うに秘密ってのは二種類ある。一切誰に
も知られずの、本当の秘密。それか守りたい秘密かって具合に。
この二つによって秘密ってのは守り方が変わると思うのよね~。
んでこの場合は後者だと思うんよ。つまり此処は守りたい秘密っ
て事ね」
本当に秘密にしたいのなら、こんなサイズの秘密は作らない。も
っと小さく、そして知る者を限りなく少なくする。或いはゼロ。
でも此処は逆を行ってる。
秘密のサイズは大きく、そして秘密を秘密だと言う事を多分大勢
が知っているのだろう。
「全然わっかんないんだけど?」
「だから。此処の秘密ってのは守るタイプのモノ、秘密って事を
公然と共有して、皆でこの秘密を守ろうね~って事よ。
だとしたら当然守る人が必要じゃん? 外に出れる連中は此処の
秘密を守る為の人で、プレイヤーも多分此処を秘密の場所として
口を固くしてる連中だろうね。裏事情、魂入り連中の事も知らず
にね。
別段珍しいこっちゃないさ。隠れ家的拠点ってのは大概がそうし
て守られてるし。
此処までの規模は滅多に、てかオレの耳に入らないほど機密性に
跳んだ秘密の拠点ってのは初めてだな。けどま、それほどすっご
い団結の力が強いんだろうね、此処」
「なるほど。言われればそうとも思える」
「ふーん。理解はできないけど、共感はできそうね」
「お?」
「つまりはそう言うモノとして捉えればいいのでしょ? 秘密
って暴く事に、好奇な喜びが目立つけど。同時に秘匿を美徳とし
て楽しむ事だってできるモノだものね。つまり、公然の秘密とし
て、楽しむ秘密って事ね。此処は」
「おおー……。何かめちゃそれっぽい事言ってる。だけど言わん
とする事はオレも分かるわ。流石ロリ様、理解が早いね」
「ふふん」
説明、ってか此処のあり方の考察なんだけどね。それを終えたオ
レはトロラオさんに気になった事を尋ねる。
「てかさ。さっき初めて出るワードあったよな?“四獣様”って
なんすか?」
「……ええ詳しく知りたいと思われるでしょう。ですがその辺り
は私にもよく分かってないんです。何せ私はこの群れの末端に過
ぎませんから」
「んー成程ッ(ふんふん)」
話を聞いたロリ神様がオレを見上げては。
「ねえねえ。ならやっぱ此奴もう用済みじゃない?」
「!!?」
「だーから。そう言う事言わないのッ。公然とさ」
「だってホントの事じゃない」
「彼は現地の、替えの効かないたいせーつな協力者なの。オレら
が此処でボロ出したりヘマした時、彼のフォローが絶対に必要に
なっから。その為にも彼の協力は必要不可欠だし。
そもそもオレらは此処へ侵略しに来た訳でも、まして破壊工作し
に来た訳でもないっしょ? ならもし仮に彼にも話したくない事
があっても、オレらはそれを尊重しなきゃいけない。
信頼には信頼で。パーティだからって根掘り葉掘りはしなーい
の。お解り?」
「……」
トロラオさんが此方を見ている。結構好感触な感じで。とりまウ
ィンクの一つでも送っとくか。
「!?」
はは。キョドってるキョドってる。
「うー……。まさかおまえに諭されるとは。
そうね。わたしは少し余裕がなかったかも知れない。おいお前」
「は、はい」
「獣の陣営かそうでないかに関わらずの無礼、それは詫びます」
「……ウソ。それで謝ってるんだロリ様ってば!」
ロリ様は此方を見ては『煩いわねぇ』と小声で呟いた。ま、これ
でいい感じの流れは出来たんじゃないかなと。
「んま。間違いを認めて謝れるって、それだけで偉いね事だし
ね」
「ははは……。私は得に気にしてませんが、謝罪は受け取りま
す」
「ん。で、まあどう行動するかは冒険者なおまえに任せてあげる
わ。ルプス」
「わーうれしいれすー。てか最初からその流れだったろ」
今更なロリ神様はさておき。
「なーらッ。へい相棒!」
「簡易AIサービスみたいに自分を呼ぶな。
分かってる。自分に情報を探って来いって話なんだろ?」
「お。さっすが相棒様。オレの言いたいこと分かってるね~」
「ふ。ただその場合───」
「はいはい。やり方は問いません見ませんって事で単独行動す
るんだろ?」
「頼む。必要最低限な情報を集めるのには一時間もあればい
い」
「言うねえ。んじゃ一時間後にまた此処ら辺でって事で。
オレらも適当に、普通にキャラに話でも聞いて情報集めてみる
よ」
「任せる」
「あいのあい~」
そう言って着ぐるみ姿の相棒はその場を離れて行く。ヘビな着ぐ
るみの、揺れる頭とその背を見送っていると。
「ねえねえ。情報を探るのに何で単独行動が必要なのよ?」
「ニルス様の言う通り。此処は敵地、であれば単独行動は危ない
のではないでしょうか?」
ロリ様とリストゥルンさんが疑問を飛ばしてきた。トロラオさん
も聞きたがってるっぽい。ふんふん。
「そりゃまあ相棒の探り方が、ね。まあグレーと言いますか。兎
に角見せられない系でね。だから聞かず知らずで、トラブルから
オレ達を守ろうってしてるのよ」
「ふーん。前から思っていたけど、アイツチータでしょやっぱ」
「コラそう言わない。自分の利益だけを求めたり、私利私欲で悪
用かましてゲームが立ち行かない様にするとか、他のプレイヤー
に多大な迷惑掛けるとかじゃないから。あれは。
一応暗黙の仕様、ゲーム内情報戦とかでも使うスキルだからさ、
大目に見てよ」
ぶっちゃけチーターと言われれば否定しきれないから、自己弁護
を並べ立てるしか無いのだけどね。
ただまあ正しくチーターと呼ばれる種類の彼ら、その振る舞いを
相棒はしないし。キャラ自体を違法改造したりだとか、またその
データの販売もしない。
この仮想世界での一般的チーターってのはキャラの違法改造や本
来の習得条件を満たしてないのに使えるスキルだとか、後クソ悪
質なので言うと時間経過で消える偽造された仮想通貨とかそう言
うの作る人、買う人かな。一個人のキャラが持っていい力を超え
てる類ね。著しく逸脱して尚且悪質な方面で。
正直ゲームの中でできる事、可能な事全でが仕様。って考えもあ
るし、一昔前とか他ではチートに該当する行為も、此処だと対抗
できるたりもするしなぁ。定義が難しいレベルに何でもできるか
らね、エリュシオンって。だから普通に相棒みたいなのは結構居
るし、グレーな部分ってのはどうしても大きくなる。其処で他人
や世界に大きな迷惑、影響を及ぼすかどうかで他人の評価は変わ
ってくるのだろう。だからチートと言われても否定しきれない。
このエリュシオンで完全なるチーターってのは、それこそ仮想世
界を壊すレベルとかなのかなぁ。いやそこまで行ったら不具合
か。
そう言う意味ではこのロリ神様とかは立派なチーターだけど、悪
質な方かと言われると困る、かも? まあどうでも良いか。
「……んまあ良いわ。この世界壊そうとしてない限りは見逃して
あげる」
「ありがとうございますぅ~(まあ線引きは大事よな)」
「感謝しなさいもっと」
「はいはい。んで、だ」
オレは辺りを見回しながら。
「オレらはオレらで情報を集めないとね。そこら辺の適当なキャ
ラにこの場所について聞くのが良さそうかも」
「? 此処の事ならそこの獣に聞けばいいじゃない」
「ええ私ならこの国について多少は話せます。それに、私以外の
ケモノに話を聞いては不審がられるてしまうのでは?」
トロラオさんの言う通り獣陣営に話を聞いたら厄介な事になるか
も知れない。けれどそれは。
「まあそこはほら。話を聞くのは此処に出入りしてるプレイヤー
に絞ろうと思ってるし。何より此処の事を純粋に聞くだけだか
ら、不審がられる事は無いと思うよ。
此方が相手魂入か分からないように、向こうも此方がそれとは分
からないだろうしさ」
「? いえ分かりますよ」
「ね。ほらだから───は?」
驚いたのはオレだけじゃない。リストゥルンさんもらしい。
「え。トロラオさんは相手に魂があるかどうか分かるって事?」
「はい。と言っても何となくそんな“匂い”がする。その程度で
すが、我々ケモノは皆嗅ぎ分ける事ができると思います」
「ふーん。獣らしく鼻は効くのね。
因みに言うとわたしだって相手が魂を持つ存在かは分かるのよ。
それも獣と違って完璧完全に」
マジかよ。
「とは言っても。ルプスさんの言う通り私達は相手の魂の有無は
それほど気にしません。気にしても仕方がない事ですから」
「そーそ。魂があっても無くても、此処の住人は自然だからね。
加えて自分の下へ向かってる連中は自然と寄って来るもんだし。
だから分かる奴も敢えて見抜こうとかはしないわよ。そもそもの
数が多いし、分けるとか面倒だしで」
リストゥルンさんが『流石です』と呟き相槌を打つ。成程ね、神
様は面倒くさがりなんだろう。
「まあそうか。牽制しあってる関係なのはトップ陣営だけで、他
は此処へは退屈しのぎ、避暑地に来てる感覚なんだもんね。そこ
で同郷らしきの見分け、嗅ぎ分けが出来た所で特段何ってのは無
いのか」
此処へ来た彼らにとって中身はそれほど重要じゃないって事か
ね。これは覚えておこう。
まあ今は深く考えず。
「どっちにしろ今は情報集めだ。住人であるトロラオさんから話
しは聞けたけど、オレとしては出入りしてるプレイヤーからも話
を聞きたいんだよね。ケモナーさん達に」
「成程。だから態々なのね」
「そそ」
「ああでは。私は敢えて同胞へ話を聞いてみましょうか?」
「お? あそっか。そっちもありだね」
「はい。もしかしたら新しい何かを聞けるかも知れませんから。
それでその……」
「いいよ。単独行動したいって話でしょ?」
「!ええはい。顔見知りや同胞へは一人の方が都合が良いと思わ
れますので。では」
「あいあい~」
オレは人混みに紛れていくトロラオさんを見送る。
「いいの?」
「いいよ。んで、だ」
トロラオさんが離れた事で、ボロの事を考え話す相手は絶対プレ
イヤーでないとね。手頃なのが誰か居てくれれば良いんだけど…
…。お。
「今日は大きなイベントは無さそうですな」
「残念。まあ明日休みだし、私は街巡りでも楽しいけど?」
「それもあり。ありありのあり」
「んじゃそうしよ」
イベントとかってワード出てるし。何より現実世界の話が出て
る。よし。
「あの男女二人に話しを聞いてみるか!」
「え?マジで聞き込みするつも───」
「ねえねえそこのお二人ー!」
「───早くないッ!?なんなのあいつ!?」
オレは直ぐに二人のキャラの下へと近付く。二人は人型の獣と言
った、普通のビーストマン。
「むむ?」
「私達ですか?」
「そう君たち。いや実はこの拠点オレら初めてでさ~。ちょい勝
手が分かんなくて困ってたんだわ」
「「はあ……」」
「そんな所にこの拠点の常連、いや出身かな? そう見えたプレ
イヤーが居たからさ。良かったら此処独自の暗黙とか歩き方とか
教えてくれたら嬉しなーって。それで声かけちゃった!」
「「……」」
二人は悩んでいる様子を見せる。当たり前だ。
普通は他人に話し掛けられるとか滅多にない。道に迷ったらスマ
ホ、困ったら取り敢えずスマホ見れば済むのが現代だ。
普通に生きててキャッチ以外に他人から話し掛けられる機会何て
まず現実にはない。該当アンケだって稀よ。
でも、そこはやっぱり此処はオンゲなので。
「ほうほう。君はこの拠点初心者って事ですな?」
「イッエース」
「ふーん。なら此処の事少しは教えられる、かな?」
「マジ? った~マジ二人が良い人で!セーンキュセンキュ!」
って感じで。ロールプレイだったり何だりと、こんな会話や出会
いも結構簡単に成立してしまう。現実で道を尋ねられ応えられな
い事があった人でも、こう言った中だと道案内を親切丁寧にして
くれたりってのは結構多い。仮想の自分だからか、大抵の人はフ
ランクに接してくれる。まあ中身海外の人とか入り乱れてるけ
ど、人種文化の特色とかってのは希釈されてるもんだ。ネット、
仮想文化に流されてね。
内気な人は内気なままってのも普通にあるけども。それはそれ。
悪い事では無いので気にしては行けないし、気にしない。
それ言ったらオレとかリアルでこんなテンションで他人に話しか
けないしね。
「何。遠慮はいりませんぞ。我らケモノを愛す同胞ではありまぬ
か。同胞助けずしてなんとする、ですぞ」
「お?おお。同胞?同郷じゃなくて?」
ファーストエリアを出身地にする文化がこの仮想世界、VRMMO
エリュシオンには存在している。更に細かくするとエリア内の特
定の地を故郷と呼んだりってのもね。だからこの特殊な拠点を故
郷って事にするならって事も分かるんだけど。同胞と来ました
か。種族制限は知ってるっぽいな、この人。それに乗ってそうで
もある。
「そうですともそうですとも! 此処に今居ると言う事はですよ?
それつまり皆さんが同胞、“ケモナー”であると言う事!」
「けもなー……。ああケモナーね!はいはい。まあそんなとこ
よ」
「ですよねですよね。でなければ此処には居ないでしょう」
むむ。ちょっとした真実、正直も混ぜるか。
ウソだけだと話がハリボテ過ぎるもんね。
「あーでも実はさ。オレらって此処を偶然見付けただけなんです
よね」
「え?偶然?真に?」
「そうなんですよだからー……」
「ちょ、ちょっとちょっと!」
「あ?」
後ろで聞いてたロリ神様に着ぐるみを蹴られたので身を屈ませ
る。何だ全く。
振り向けば直ぐ背後にはロリ様達の姿。
「折角相手が何か勝手に都合よく勘違いしてたのに、話し合わせ
れば良いでしょ!後けもなーって何?」
「大丈夫オレにも考えがあっから。心配しなさんなって。
後ケモナーの話しはもそっと後でね」
オレは再び二人組へ向き合う。
「ああでも偶然は偶然何だけど。ちょっと此処の噂は聞いた事あ
るんだよねー」
「なるほど。それを確かめに来たら、って事何ですね」
「そそ!」
「なら良かったですなぁ!此処を見つけられて!」
男女二人が顔を見合わせる。ちょっと勝負するか。キーワードっ
ぽいのも拾えたし。
「おお?おお! ホントな! 此処ってばケモナーが沢山だもん
なぁ」
「そうですそうです。此処はケモナー達にとって最高の場所なの
ですから!」
「ねー。何処を見てもモフモフやフサフサがいっぱい。私たちケ
モナー憩いの場所よね。此処って」
「ふむふむ。もちょっとその辺詳しく教えてもらったり出来ま
す、諸先輩方。自分ケモナーの方も初心者な方でして」
「えー先輩だって」
「ふーむふむふむふむ。では可愛い後輩、子うさぎめに我ら先輩
が教えてしんぜよう!」
「ちょ。乗り過ぎだって~」
「良いではないですか。んん、では此処はですな───」
ケモナーでビーストマンな二人から説明を受ける。
彼ら曰くこの場所はエリュシオンをプレイしているケモナー達、
そのコミュニティとか界隈ではかなり有名な場所だったらしい。
仲間への情報共有等は身内間でしかされないらしく、漏れてもケ
モナー以外には興味を惹かれない秘密の場所。
同じ趣味趣向の仲間が集まれる、ケモナーが集まる獣王国。此処
はビーストマンや、動物愛に溢れるプレイヤーを受け入れる秘密
の拠点ってね。因みに入場と滞在条件は獣らしく在る事、らし
い。
此処では、どうしても物珍しさでひと目を惹くビーストタイプは
ひと目を気にせず過ごせ、またビーストマンに成りたくともキャ
ラスロットの問題があったりするプレイヤー等などは、獣として
着飾る事で肯定される。
様々なケモナープレイヤーが此処を憩いの場所としているらし
い。ふむふむ。
「───以上です。どうです?正に我々には最高の場所でしょ
う?」
「成程ね。とっても勉強になっりました、ありがとっす大先輩」
「もーそんな褒めるとコイツ調子乗るよ? あ、もう乗ってたっ
け?」
「ふっふー。見込みある後輩がこの場所を知ってくれて嬉しい
限り。ああただし奥へは余り行かぬほうが良いでしょうな」
「あ。確かに」
「え?」
「ほら。あっちに見える大きな壁」
言いながら女性の方が遠く、大通りの終着点。あの家から見た
大きな壁を指差し。
「あの向こうはそんなに面白いモノ無いから、特に来たてとかな
ら此方側。一番外側だけで楽しんだほうがいーよ。みんなそうし
てるしー」
「へえ?何でっすかね?」
「ああまあ。それはですな───」
男性のビーストマンが、此処まで楽しそうにしてたのに、一気に
表情を暗くした彼が、つまらなそうにその理由を話してくれるっ
て所で。
「あ!やば。もう時間じゃん!」
「おっと。そうでしたな」
「ごめーん私達これからデイリークエスト何だー」
「ああ。いっすよオレらの事は気にしないで」
「ごめんねー。そだ、良かったら私達と一緒にクエスト行く?
貴方達も一緒にさ」
「え?良いんすか?(行けねーけど!)」
「ナイス提案。僕も是非って思うねえ。こんなに話の合う相手
なら、一緒に遊べたらいいなって思います」
「そりゃ嬉し! けどゴメンッ。オレ達ってまだ此処でやる事
あってさ~」
「そっか」
「むむ。それは残念」
「すまんっす。で、良かったらフレンド登録だけでもしてかな
いっすか?」
「「いいね!」」
そうして、オレは親切な二人とフレンドコードを交換して分かれ
る事にした。二人が去って行く間際。
「ああ一つだけ僕から大事なアドバイスだ」
「ん?」
「いや君ではなくそっちの一人に」
「は?わたし?」
「?」
ロリ様とリストゥルンさんが不思議がり。彼はロリ様へ。
「耳が四つの獣人とか!僕ぁはどうかと思うなーッ!」
「「……(お口ポカーン)」」
「ああごめん気にしないで。彼過激派だから。
私は耳が四つでも、ケモ可愛いければオッケーだと思うわ」
「言語道断!人耳と獣耳の混在を許すな!ケモらしくあるべき
ですぞ! 何ですか耳四つって!」
「騒ぐなアホ。ホントこれがなければねー……。じゃ、ごめん
ね。これ以上気を悪くさせる前に、私達行くわね」
「髪型が耳なのも認めませんぞー!」
離れる二人へ取り敢えず手を振るオレ。
「……なに。最後のあれ」
「知らん。まあこだわりは人それぞれだからね」
「耳が四つ……」
自分の耳を触りながら呟くロリ様。
好みこだわりは人それぞれ。認めなくとも、認められずとも押し
付けちゃあ行けないぜ。先輩。
ロリ様は『ま、まあ良いわ。所詮獣グルイの戯言、戯言だもの』
と呟いてから。
「にしても。おまえってばもっと非社交的なのだと思ってたわ」
「いきなり失礼なヤツ。オレはオンラインでの出会いを大切にす
る派の人間だぞ」
「ふーん。で?ケモナーってのはなんなの?」
「ケモナーってのはまあ、人間の性癖の一つ。または趣味趣向か
な? 簡単に言えば動物が好きって事で、自分も動物になりた
い~とか愛でたい~とかだな。好みとも言えるか」
「なるほどね。分からないでもないわね」
「お?」
「弱いモノを愛で、強いモノを飼いならしたいって事でしょ?」
「んー多分、いや絶対違うと思う。そんな歪んでないだろ」
「ゆ、歪んでる?」
驚くかよそこ。と、自覚の無いロリ神様達と話している所で。
「お!」
「……(遠くから手を振るヘビぐるみ)」
別行動をしていた相棒の姿が見えた。時を同じくしてトロラ
オさんも戻ってきたので、皆で路地裏へと移動する事に──
─
───路地裏にて。
「おッかえり。二人共」
「只今戻りました」
「ああ。そっちでも別行動か?」
「ええはい。同胞へ多少話を」
「なるほど。ルプス、そっちでは何かあったか?」
「へへ。この拠点についてちょっと聞けたぜ。後フレコ二枚ゲッ
トしました」
「全く。お前のお友達作りは良いから、聞いた事を教えてくれ」
「あいよ。まず此処ってばさ───」
オレは相棒とトロラオさんに集めた情報を共有。
「なるほどな。しかし以外にも有名な場所だった訳か、ここは」
「知る人ぞ知る、だけどね。まあ秘密は公然の秘密の方が守るの
便利だからね。此処運営してる奴は賢いっぽいぞ。
んで相棒の方では何か分かった?」
「ああ。取り敢えず此処を出るのに必要そうな、王と四獣って呼
ばれてる連中。その居場所が分かったぞ」
「なるほどなるほど……え゛!マジかよ!?」
相棒の言葉にトロラオさんとロリ様達も驚く。勿論オレも。
「マジだ。取り敢えず歩きながら話そうか」
「お、おお」
歩き出した相棒。ロリ神様が歩く相棒の背を見ては。
「やっぱアイツチーターじゃない?」
「ううーん」
否定できない。情報の集め方がエグいからね。
「ほら。行くぞ」
「うぃー」
取り敢えず相棒の後に続く事にした。さて、相棒は何を知った
のかな?
空色の青年たちが路地を往く───
最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら
幸いです。




