第三十六話 拠点・ビーストキングダム
───数多存在する仮想世界サービスの一つ、幻想体験型VRM
MOエリュシオン。心躍る冒険、穏やかな日常生活、生産生育。
果ては企業間取引の仮想ロケーションとしても利用される、仮想
世界ゲームサービス。
広大無辺と用意された規模の仮想世界は幾つものエリアやフィー
ルドに分けられ管理されている。
そのエリュシオンで現在、空色の青年達が居るのは通称中世エリ
アと呼ばれ、古き良き、幻想物語の風景に彩られたエリアだ。
エリア内には町、村、城、砦等と言った拠点施設が点在するのだ
が、彼らが跳ばされたその拠点は多くがその存在を知らず、知る
資格のある者だけが獣王国と呼ぶ不可視の拠点。空色の青年
達は望まざるとその、隠された拠点へと足を踏み入れてしまっ
た。
肉体が尊き天寿を全うしてしまった俺は、落ちてたスマホ交番へ
届けたりだとか、捨て猫の飼い主を探してみたりと。日頃の行い
は疑いようも無く清く正しかった。そんなお陰か、どっかに溜ま
っていた善行ポイントで見事魂とか精神とかって言うそれっぽい
モノがゲームの中で何かこう……上手~い具合に残ってセカンド
ライフ何かがスタート。やったねって感じ。
ぶっちゃけ何でとかオレにも良く分からん。でも奇跡って多分皆
こんなもんでそんなもんだと思う。説明できる奇跡って何かショ
ボイじゃん?
分かってる事は今この仮想世界にしかオレって存在は居ないって
事で。今日も、そしてきっと明日も明後日もずーっとオレはこの
場所に居るんだと思う。居たいとも思ってるし。
なんだけどー……なのだけどー………。
「ハハハ!ここでくたばれ外道なる毛無しめ!」
「ウォオオオオ!」
何てさ。目え血走らせてお口も大きく開けて叫んじゃって、武器
まで振り上げちゃってるのよ、ビーストマンが二人も。それも目
の前で。うーんピンチ。
「ウソウソ!何処此処!? て言うかこんな何もない所で終わりた
くないのだけど!?わたし!
せめて黄金の毛皮にくるまれて眩い大理石の神殿とかじゃないと
ダメだと思うの!最低条件! 民家の道端とか絶対イヤアアア
ア!」
「ニルス様!お下がりくださいニルス様ッ!」
「死にたくないけど、死ぬなら絢爛豪華な死に場所がいーいいー
ー!」
オレの側にはそうして突然の事に無様待ったなしな感じで慌てふ
ためくロリ神様に。その無様な主を身を呈し庇おうと頑張ってる
お付きのウェイトレスさん。
何でこんな事に成ったのか?どうして? と考える前に。
今必要な情報は彼らが武器を持ち、此方へ攻撃を仕掛けてきてい
ると言う事実だ。これだけで、少なくとも今此処ではプレイヤー
間への攻撃が解禁されている、と分かる。分かったなら後は簡
単。
「アクセラレイション!」
「ワン!?」
速攻自分へ加速バフを掛け。目の前の犬型ビーストマンのおっそ
い攻撃を軽く躱しちゃって背後へと回り込み、ショートソードを
喚び出しては。
「バックアタックだゴラァ!」
「キャインッ!」
思い切り振り下ろす。ゲームだから別に血飛沫なんか出ないけ
ど、魂持ちって言うオレの攻撃はそこそこ響いたはずだ。コイツ
らにはさ。
背後攻撃ボーナスのお陰か、それとも単にコイツのレベルがクソ
低いのか知らんけど、一撃でのされちゃったね。イッヌちゃんて
ば。
「?」
倒れた拍子に彼が握っていたお椀、の様な物が地に転がり砕けて
しまう。見た目的に銅製?的何かのアイテムだったらしいけど、
これじゃ確かめようがないや。まあ今この状況で気にするような
事じゃないでしょう。うん。
そんな事を考えながら、呆気なく一人を片付けたオレはもう一人
のビーストマンへと視線を移す。
「グ、グウ!」
「ふん」
移した先では。攻撃の為に振り上げた爪むき出しな片手を、下か
らそっと、上げきった所の肘を冷静に片手で抑えられ。
「ガハッ!」
そのままがら空きの腹へ“バンバンバンッ”と三発銃弾を受け倒
れる所の、可愛そ~うなネッコの姿があったとさ。
「やるじゃん相棒。流石PVPのある場所に潜ってるだけあります
なぁ」
「いやそれは関係ない。単にこいつらが弱いだけだぞ。PVP特有
の掛け引きも何もなかったろう?」
「まあ。突然の奇襲で叫んでちゃダメだよね」
バッサリ言い切った相棒は、ぐったりとしているネコ型ビースト
マンを見下ろしもしない。倒した相手に興味は無いもんね。
これで地面へ転がるビーストマンは二人で、周りを見回して見れ
ば現在土やレンガで作られた風の住宅街の、その道端だって事が
分かる。騒ぎを聞きつけたNPCの姿も、此奴らの増援の気配も
今は無い、と。
なら一先ずは安全を確保できたと言えるかな。これ。
「んでー……」
「! よ、よくやったわね!褒めてあげるわよ!」
ロリ神様へ視線を移すと。寸前まで取り乱しまくっていたロリ神
様は何事もなかったように、平然と、自然に踏ん反り返る様を見
せつつ。
「ほら~らほら」
などと。頭を撫でてあげる、みたいなジェスチャーも序に見せつ
けてくる。なんだコイツ。
オレは全然微塵も屈んでやらずに、思いっきり見下ろす形で。
「なあおいロリ神様さぁ」
「ロリ言わないでって───」
「うるせえ。まんまと見え透いた罠に嵌りやがって!」
「んな!? 崇高で気品そのモノの権化たるわたしに、ぼぼぼっ
ぼ暴言よ!媚びへつらいながら謝りなさい、謝って!」
「崇高も気品も自分自身で使う言葉かよ。で?崇高で気品の権化
さんは、罠に嵌った事についてどう思ってるのかな?」
「それー……は。計算よ、計算」
「あん?」
此方を見上げたロリ神様はドヤ顔をぶっかましながら。
「いいこと? 敵地があれば、その内情を偵察したいと思うのは
当然な事でしょう? だからわたしもずっと思っていたの。獣
達は領地の何処を根城に、そして規模は?ってね。
そう、だからね、これはわざとなの。このわたしがホントにこん
な粗末な罠に引っかかると思ったの?思ったなら侮辱よ。やっぱ
り謝って、ごめんなさいして今すぐ」
「いや明らかに動揺してたじゃん、泣き叫んでたじゃん。ロリ様」
「ロリ言わない! ンンッ。演技よ演技。これで襲われた、攫われ
たって公的な証拠になるでしょ?」
「まあ………そう言われると、確かに?」
公然と本拠地襲ってきた相手に抗議もクソもと思うけど、政治チ
ックな駆け引きはオレの守備範囲外だ。もしかしたら政ではこの
ロリ様も駆け引き上手とか超優秀かも知れないし。
それにこの、どこから?って自信満々な様子が妙な納得感を此方
へ強要してくるんだよなぁ。根拠の無い自信なのにね。
「おい。どう考えても嘘っぽいぞルプス」
「分かってる。けど確か相手にとってこの前の襲撃はトップの意向
じゃなかった、的な事言ってたしな。てなると今回の偵察も……
って事もありえるかも」
「なるほど。だから焦って口封じを、と言う事か」
「そこまでは分かんないけどね。正直トップ同士でのやり取りがど
の程度有効なのかはオレには分かんねーけど。もしかしたらロリ
神様の言い分も正しい、役立つかもねって話」
「一理はあるって事か」
「一理だけね」
ロリ様達の勢力図、相関図の詳細一切を知らないから何ともなの
だ。
相棒とオレが納得仕掛けている所を見たロリ神様は、“うんう
ん”と頷き。
「でしょー? 全く、まだその辺りの事は分からないのね、貴方
達ったら」
「(当たり前だろうが。此方は何も知らねーんだから)」
「流石ですニルス様。思慮の深さにリストゥルンは感動ですで
す!」
「乙女。主をそうも褒めないの。当然で自然な事でも照れるでし
ょう?」
何かこう、ムカつくんだよなぁ。釈然としないって言うのはきっ
とこう言う時に使うんだろうな。
絶対こいつ罠に嵌っただけだろうけど、取り敢えず今追求するほ
どの事じゃないと、流してやるか。
「まあ此処で、敵地でゆっくり話してないで一旦戻ろうぜ」
「それもそうね。ならほら、おまえ戻り道を開いてよ」
「あん?」
「な、なによぅ。そう言うのがあるんでしょ?あなた達には。知
ってるんだから」
「もしかしてポータルの事言ってんのか? そんなの態々使わなく
ても個人個人で転移使ってで良くねえか?」
「……んない」
「は?なんで急に小声?」
「! だからその、わかんないの。おまえ達が使う転移……って言
う力は」
「うわぁ。まじですか。初心者でも持ってて当然の、必須のスキ
ルをご存じでない。はぁー……」
「うぅ、うるさいッ!」
オレが最大値の哀れみを込めてロリ様を見下していると、リスト
ゥルンさんが慌てた様子でフォローに入る。
「ニルス様は普通とは違い、違いますから。ですので知らなくと
も仕方がありません。ありませんよね?」
「そうよ!そうよね、そ───え? んん?ちょっと待って」
「はい?」
「わたし“は”って事は、まさかお前、お前は使えるの?」
「!……はい。ルプス様にこの世界での特別なる力、スキルのご
教授頂いたものですから、その、はぃ」
「へ、へー……。ふーーーん……」
転移。他ゲーでもよくあるファストトラベルとかワープとっかて
呼ばれる瞬間移動スキルの事だ。このエリュシオンってば現実世
界以上に広いし当然存在してるスキル。なのだけど、実は最初か
らは持ってるスキルじゃないんだな。これが。
習得クエストを受けてクリアしないと覚えられない。っても超重
要なスキル。勿論チュートリアル的なモノが存在してるし、それ
を熟してりゃ勝手に覚えてる系スキルなのよ。
ゲームをストレスフリーでやるために、システム的要素の強い超
重要スキルを初期で持ってないってのは、このチュートリアルだ
けは“飛ばすんじゃねーぞ”って制作サイドからの意味合いが強
く込められてるって事。
仮想世界は広く、その広さと同じほどやれる事の多いエリュシオ
ン。チュートリアルで全ては賄えないし、賄えないなりにもチュ
ートリアルの量は多い。多いからこその配慮だったりするのだけ
どね。
まあー正規とは違う方法でこのエリュシオンへログインしてるっ
ぽい存在に、チュートリアルとか出てたかは不明だあな。因みに
リストゥルンさんへのアドバイスとして、拠点施設で実行できる
初心者ルートを個人やり取りで教えていたりもした。チャートを
チャットログに貼ったりしてね。
彼女はオレが教えた通りに進め、見事転移スキルを覚えられたみ
たいでなによりだ。優秀な新規、見込みのある後輩ってのは良い
よね。うんうん。
しかしま、このゲームの世界、エリュシオンってのを深くは理解
してなくとも、ネトゲ的常識やそれらを知らんとしても仕方ない
よね。
……いや。待てよ。
オレは倒れたビーストマンを指差しながら。
「此奴らも転移程度は知ってたよな。じゃあ単純にロリ神様の不
勉強、怠惰って事になるんじゃね?」
「ふ」
「ッ!!!?」
「ルプス様、ブルクハルトさん!」
相棒に鼻で笑われたロリのお顔が真っ赤。仕方ねえ、コイツにも
後で習得できる、した方が良いモン教えてやっかな。できねえと
今後ずっと不便かも知れないし。なによりコイツの為にオレが毎
回使われんのはムカがつく。
「しょうがねえからオレがポータル作るかね。一人の為に」
「んー!バカにしてぇ!」
「ニルス様! 此処は我慢、我慢です!」
従者、従業員?に頻繁に諌められる上ってどうなのかね。
敵地への長期滞在なんて望んでないので、一旦自分たちの町、拠
点へ戻ろうとポータル生成を試みる、みる……のだけど。
「アレ? 何かポータルが開けねえや」
「何だと?」
「ほら!ほらほらほら! 何よおまえだって使えないじゃない!」
大喜びのロリ神様。キツイツッコミ入れたい所だけど今は構って
る場合じゃないぞ、これは。
「……ルプス。ポータル移動、と言うか転移系自体が阻害されて
る可能性がある。いや通信系もすべて止められてるか?」
「マジぃ?」
「マジだ。特別な事情持ちだけかとも思ったが、自分もこの拠点
から転移できない」
異変へ直ぐに反応した相棒がざっと調べた事を教えてくれた。
オレは喜ぶロリ神様を見下ろし。
「おいロリ神様。こうやって敵地から出られないのも計算なん
か? んん?」
「………」
「すげーなぁー。え?こっから、この転移阻害を乗り越える策が
あるんですものねぇ。さすがだなぁー」
「…………な、です」
「ええ!? ごめん聞こえないですぅ!」
「ぐず。な、ないでずッ!」
「はぁー……ッ。お前ほんと、ほんっとあの部屋以外だとマジつ
かえねーよなあ!」
「!!? そ、ぞんない、い゛わなぐてもぉー!あああーあああ
あーー!」
「あぁ泣かないで、泣かないでくださいニルス様! どうか、ど
うか!」
「だっであいつ、あいつがあーああーーー!」
冷静になるため一旦ロリ様を泣かしたけども、それで問題は解決
しない。気は少し晴れたけどね。解決の期待もロリ様にはしてな
かったし。
「遊んでる場合じゃねーな。かなりやべーよな、これ」
「ああ。何せ此処は敵地のど真ん中だ」
「それな! ってか相棒ログアウトの方は?」
「少し待ってくれ。……どうやら此方はできそうだ。だが勿論し
ないぞ?」
「あいあい。義理堅いこって」
いざと成れば相棒はログアウトでどうとでもなると。それだけ分
かってりゃ気もちょっとは楽だね。
「ならまず身を隠すのが先かね~」
「そうだな。それが最善だろう」
オレは相棒へ近くにあった建物、周囲に立ち並ぶ民家らしき一つ
を指差す。それで察した相棒と一緒に調べてみると、ロックの掛
かってない建物だと分かった。そこで。
「ロリ様とリストゥルンさん。この建物中に入っとこう。何にし
ても身を隠して置きたいからさ」
「……ぐず。それ、は。お願いって事?」
「ざけんな。命令だよ命令」
「うわあああああ!バカー!」
敵地で叫びながらロリ神様は、すべき事はちゃーんと理解してる
様子で。泣きながら開けた扉をくぐり建物の中へと駆け込み。
「ニルス様お待ち下さい! それでは転んでしまいますよー!」
リストゥルンさんも後に続く。んでは。
「筋力に自信があるって訳じゃないけど、持てそうね」
「此方もだ」
相棒と二人でスタン状態の、瀕死のビーストマン二人も家の中へ
と運び込む───
───ロックの掛かってない建物室内はそこそこ広く、玄関へ入
ってすぐがリビングって作りの、普通な民家って感じ。オレと相
棒はリビングに置いてあった家具、椅子二つ拝借しては運び込ん
だビーストマンらを上に座らせてやる。
「ねえねえ。どうするの?それ」
「んー?それはねー」
既に泣き止んだらしいロリ様は、運び込んだビーストマンへオレ
達が何をするのか興味があるらしい。
「こうすんのよ。ほら起きれ」
「「ガハッ!?」」
スタンしてる二人のビーストマンを、同時に外側からビンタして
スタンから起こしては、ロリ様の方へと向き直り。
「通常のバトルって相手ダウンさせた後、トドメを刺さなければ
こうやって瀕死状態が継続するのよ。んでこの状態でもビンタ程
度のダメージなら死ないし、ひっぱたけば気絶から一時的に目覚
めさせられるって訳さ。筋肉バカとかで無い限りね」
瀕死を通り越す一発キルの大技とかもあるっちゃあるけど、圧倒
的レベル差とか無い限り大抵はこの状態へ皆陥る。こうなったら
自然回復か自決、蘇生を待つしか無いね~。
何て。デモンストレーションの様に弱々ビンタをかまして見せ、
説明を聞いたロリ様はオレを見上げては。
「気持ちの良さが容赦の無さと比例してるわよ。おまえ。
と言うか殴るなら拳でやりなさい、拳で」
握り拳でシャドーボクシングにするロリ様。
「ロリ様人の事言えてないぞ。つか殴ったらリスポーンに、死な
れちゃったら魂抜けちゃうかもなんでしょ?」
「え?そんな事も無いわよ?」
「はん? 魂持ちが魂持ち倒したら完全にアウト、死んじゃうんじ
ゃないのかよ」
「全然違うわ。魂を送り返すほどの効果を、威力を叩き出せるの
はわたしの様な神も神、主神クラス。後はそれぞれの陣営のトッ
プ位ね。あるとすれば。
それ以外が小競り合いしても滅多に、滅多に魂まで還るって事は
無いわ。偶に死ぬ過ぎて抜けちゃう事もあるらしいけど。でも滅
多には無い事なのよ」
「マジか。じゃあモンスター、魔物狩りしてるのは何でよ?」
「魔物が増えたら困るからよ。大概アレらは魂を帰す程の驚異は
無いにしても、それでも魔物の中には魂へ痛みを与えるモノも少
なくなく存在するわ。
誰だって痛みは忌避するし、魂で感じる痛みと言うのは普通とは
違うベクトルだもの」
「はあ……」
「全てが希薄になってしまった、感覚全てを希釈されたあの世界
から此処へ来たからには、勿論わたし達には痛みだって大切なモ
ノよ? けれどそれはこの場所の、世界の仕様に置ける痛みであ
って、決して魂を傷付け合う事とは違うの。
魂を持ってる者同士で戦っても魂に痛みが奔る事は無い。相手を
殺すって気概、許し難きと呪う程でもなきゃね。
魔物何て大概相手を殺す気だから、だから適度に狩ってるの。
痛みから民を守る為に。その為に乙女を戦わせてるのよわたし
は」
「なるほどー」
って事はさっきのオレの攻撃はビーストマンには痛みって感じじ
ゃくて、エリュシオンの、ゲームの感覚での衝撃程度だったか。
まあそれはそれで別に良いな。オレもリアルに痛いのは嫌だし。
てかまた一つ知らない事、ロリ様側の仕様が知れたな。
……後此奴があの時オレを殺す気だったって事も。
「前に試しとかって言う時。尋常成らざる痛みをオレは感じたん
ですけどぉー」
「んみゃ!?」
「それって~……。詰まりお前、あん時オレ殺す気だったんだな
ぁ」
「しょッ!? それは!否、定できないけど……。あの時はあの時
で必死だったと……言うか……」
ん?此奴なら“当然よ!”とか言うと思ったんだけどな。
「え。しおらしくない? 悪びれもせず踏ん反り返る所じゃない?
いつものロリ様的には」
「おまえわたしを何だと思ってるのよ……。わたし身内は大切に
愛でる方なの。だから、まあ」
ロリ様が見上げる姿勢からそっぽを向き。
「怒ってるの? 殺意を向けた事とか?」
「あー……ぶっちゃけそれ程は。立場が逆ならオレも同じ事した
と思うし。トップとしちゃ正しかったんじゃね?」
「そ、そうよね。うん」
「ただ一言“ごめんさい”は欲しいなー」
「ッ。……ご、めんなさい」
あらら。謝罪請求の方は冗談だったのに、また随分しおらしい
事。
ゲームの世界、此処で見た目は現実程大した意味を持たないけ
ど。そのままを受け取るだけのオレでも、こうして落ち込んだ雰
囲気出されちゃうとねー。
「あー許す許す(面倒くせえしな)」
「ホント!?じゃあもう二度と、一生この話しは無しだから!」
「現金なヤツ!」
「ふん。なんとでもいいなさい。おまえが許したのなら、わたし
はもう許されてる! だから二度とそれで責めんじゃないわよ!」
許すとか言うんじゃなかったなぁ、これ。
まあウザいヤツで居てくれた方がやりやすいから良いか。
そんなどうでも良い、取るに足らない雑談、相棒の鋭い視線なん
かも混じって来た頃。
「ううーん……。あ、お前ら!」
「なんだこの状況は!良くも貴様ら!」
「起きたけど!?」
「ニルス様ルプス様!」
ビンタの効果で目を冷ましたお二人。
あの広間と違って今回二人は拘束されてない。だからか、また無
謀にも此方へ攻撃を仕掛けようとする二人。オレの足元ではロリ
神様が足に抱きつき、ウェイトレスのリストゥルンさんが槍を手
に前へ出てくるけど。実はそんな必要はない。
「立つな。座れ」
「「ホウ!?」」
二人の背後に立って居た相棒が、立ち上がりかけたその頭へ拳銃
を突き付け制止する。中腰状態で止まるお二人さん。
この脅しの効果はどの程度かと言えば。二人が素直に椅子へ座り
直してくれた所を見るに効果はあったらしい。
ワンチャンリスポーン狙って強行もと考えた、てか絶対するだろ
と思ったんだけどなぁ。
さっきの話だと魂の痛みは、って言ったけど。多分コイツら普通
に痛み全般を嫌だと思ってるな。魂でも仮想でも両方の痛みを。
いやまオレもなんだけどね。
「良い子だ。お前達にはルプスから聞きたい事があるらしい」
「「……」」
「サンキュー相棒。んで早速質問何だけど、オレ達を此処へ攫っ
て来たのは作戦通りだったりするのかな?」
「そ───」
「分かってると思うけど、もし嘘何て吐いたらその魂を何処へな
りとも送り返しちゃうぞ!(語尾にハートを意識)」
「ふん。くだらない脅しだ」
「えぇ~。でも此方にはほら」
オレは片足を上げ、足にしがみつくロリ様を見せつつ。
「女神、ニルス様が居るんだよ?」
「え?でも此処じゃわた───」
「ほーれほれ。怖いかー?怖いよなー?」
「ちょ、おまえ、やめ、うぷッ」
察しの悪いロリ様を上下に揺らして黙らせる。
「ッ! ……作戦通りだ」
おお。この脅しは魂持ちには結構使えるかも。何て思いつつ。
「じゃあ次の質問でーす。何でこの場所でオレ達は帰れないん
だ?」
「ふ。話す訳には行かないな」
尋ねている犬型でなく猫型が反抗する。その頭に銃口がコツンと
され、序に揺れるロリ様を、口を片手で抑えたロリ様を近付けて
やる。
「分かった分かった!話すッ!」
「そうそう。素直が一番よ~」
「く。……この王国は我らの王様が支配している。だから余所者
はこの場所を探せないし、同時に抜け出せもしないのだ!」
「へぇ?」
ロリ神様の事を思えばそんなチートもコイツらのボスには簡単な
んだろう。与えられた土地への支配力と言うか影響力とでも言う
のか。事実跳べないと言う事は、そう言う事なのだろう。
これに関しては嘘か本当か分かったな。大味だけど。
「んじゃ帰るにはどうしたらいいのよ?」
「それは秘密だ」
「んん~? さっきから君たち。置かれた状況が分かってないの
かな~?」
此奴ら脅されてる癖に一回一回反抗してくるなぁ。
もう一度相棒へ脅しを促すが。
「待ってくれ、待って!分かった話す!」
「ほらほら早くはな───」
瞬間。ロリ様を近付けたり離したりな遊びに夢中だったオレに、
屋外から人の気配が伝わる。それは皆が同時に感じ、途端にその
場は静かになり注目する。意識と視線が向かう先は、窓の外。
「……たか?」
「…。…し…たり」
誰かの話し語が遠くから聞こえた。マジかよと窓を覗いていた
オレ達へ。
「ハハハハ!馬鹿め! 俺たちは調査に行ったんだぞ?」
「そしてこの急な転移だ!当然確認に、仲間が出迎えに来るの
さ!」
「なるほどね。時間稼ぎだったのか~……相棒ッ!」
「分かってる。叫び声すら出させはしない」
「「ッ! ……───」」
承諾と同時に相棒は容赦なく二人の頭を撃ち抜く。
これでキル。蘇生受付時間終了後リスポーンされちゃう。まあこ
こPV解禁されてるから細工させてもらうとしても。しても……。
「やべえ。転移地点から全然動いてねえから、絶対ここら家探し
されるよな!」
「だ、黙ってやり過ごすとかすれば? 鍵閉めちゃいなさいよ!」
ロリ様のアイデアも。
「自分たちは此処の家主じゃないから権限が無い。つまりロッ
クはできない。鍵の開いてるドアを開かれたらお終いだな」
「だったらお前の力で閉じれば───」
「相手は正規の見回りだ。第一位やユニークとまでは行かなく
とも、マスター権の短期コピー位は持ってるだろう。マスター
を騙せるほど精巧なアクセス権も作れなくはないが、そもそも
マスターに抵抗、拒否する時点で“おかしい”とバレるぞ。
ああ言っておくが、場所バレしてる時点で証明誤魔化すのも無
理だ」
「何語!?」
相棒に即否定され涙目。
「んー……」
考えながら外を確認。遠目にそれっぽいのが道を歩いてる。
此方へ確実に。それも結構な人数。
「あー……くそ。ちょっと今戦って良い数じゃないよね」
「どうす、うぷ。ど、どう」
「考えてる、考えてるよー」
飛び出して戦うか? だけど地形的ロリ様達守るのが難しい。
ならこのまんま立てこもって戦う? ダメだ、守れる人数と侵入
口の数が違ってる。
いやそもそも此処は敵地の真ん中。忍べても凌げないぞ!
あー、あーー考えがまとまらねえ! こうなったら出たとこ勝
負で活路見出しかねえなおい!ちきしょー!
「おい。誰か、誰か居るか」
「「「!」」」
考えてる間にとうとうこの家にも家探しが来ちゃったよ。絶体絶
命かも!
「はーい。ちょっと待ってください」
「「「(え!?)」」」
と言うところで。オレたち全員驚いた。それは返事と共に家の奥
から走り抜ける影を見たから。聞いたから。
影はそのまま真っ直ぐ玄関へ向かい。オレたちは慌てて見えない
位置へと動き、身構える。
影は少しだけ、オレたちが見えない様配慮して僅かにだけ扉を開
けては。
「はいなんでしょう?」
「うむ。この辺りに不審な者を見たとか、それか迷子の同胞を見
かけなかったろうか?」
「迷子……ですか?。いえ。私は誰も見てませんねぇ」
「そうか。家にはお前一人なのか?」
オレ達は扉から見えない位置で息を殺すしかできない。
「いいえ。他にも居ますよ」
「「「!」」」
「! 誰か居るのか?」
「はい。私が勉強を教えている、小さな子達が今奥で眠っていま
す」
「何?」
「ああ私、此処で先生……の様な者をしていまして。兄弟の真似
事ですが。はい。
そんな事をしていたら好いてくれた子供達がよく遊びに来るよ
うになって、そのまま昼寝などをね。
ハハ。困ったものです」
朗らかに話す影。いいや、一人のビーストマン。
「成程そうか……。分かった。では不審な者、見慣れぬ者を見た
のなら連絡を」
「わかりました。ご苦労さまです」
「うむ」
扉は静かに閉められ。扉の前で立つ見知らぬ影が、フサフサな尻
尾を持つビーストマンがオレ達の方へと振り向き。
「それで。貴方たちは外のヒト、ですよね?」
ビーストマンは彼ら見据える───
最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら
幸いです。




