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プロローグ
───ランダムな風に合わせ靡く草、ズレのない大地。変哲もな
い仮想の原野。
生い茂る雑草を踏み歩くは猪顔の中型二足獣、低木に止まるは一
本足の怪鳥、草陰に潜むは赤目のげっ歯類。
皆探索者へと襲いかかるべく制作された魔物。
『───』
うろつく彼らには素晴らしき科学技術の産物、量産型AIが搭載
されている。組まれたAIに従い魔物達は一定の範囲を行き交
う。
用意されたチャートの通り、今も彼らは歩く。飛ぶ。這いずる。
『! ───』
だがおかしな事に。一匹の魔物は何もない場所で突然立ち止まっ
ては、進む方向を百八十度変更。
『『───』』
一匹だけでは無い。他の多くの魔物も同じ場所を避けている様子
だ。広範囲に広がる不思議で不可思議な現象。
まるで、まるで原野に不可視の領域が存在するかのように。
この場所が人気であれば、モンスターへ搭載されたAIの学習能
力が低ければ。もしかしたら誰かが気が付いたかも知れない現
象。
ああしかし。此処に人気は無く、AIは障害を学習し。誰にも
気が付かれる事はなかった。
仮想の原野に紛れる異物、不可視の王国こそが其処に───
最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら
幸いです。




