第三十九話 保留
───中世にて貴族でも住んでいそうだ。等と言うカタログ的感
想を抱かせるは、絢爛豪華な調度品に彩られた寝室。その部屋の
主足る不思議な髪色をした少女は、一人の男性キャラクターを白
亜へと誘い。『力を試す』と言われたトレンチコートの男性キャ
ラクター、そして誘った少女自身も同時に部屋から消失。
白亜へ招かれず残されたのは空色の青年、そして彼に抱かれる二
匹の獣と。此処までの案内を務めた従者のみである。
ロリ神様が腕を上げると同時。“パチンッ”と指を鳴らせば隣り
に居たはずの相棒の姿が一瞬で消え、同様にロリ神様の姿も。二
人は俺の視界、室内から忽然と消えてしまった。
「イリュージョーン。ナルホドね、残される側か見るとあんな感じ
で消えるのか」
何のエフェクトもなく俺の視界から消えた二人。これじゃ消え方
がちょっと不自然だよね。大抵ならバグとかエフェクト不調と思
ってくれそうだけど、鼻の効くヤツには勘ぐられる可能性があり
そうだ。
「(だから一般プレイヤーの前で使うには……ってそもそもこの
場所以外では使えないんだったけ? チートと違わない力も、使
えなきゃ意味ないねと嘆くべきなのか。チートを持ち出されてゲ
ーム世界を台無しにされず良かったと思うべきなのかな。
ああでもこんな状況、使える力は頼りにしたい気持ちも! けれ
どチートと変わらん力の行使はいち優良プレイヤーとして!
……悩む、悩むなぁ)」
あのスキルの有効利用方法問題は一旦超法規的措置って言葉共
に、頭の片隅へ放り仕舞って置こう。
考えを変える為俺は視界に映る物へ意識を切り替えた。
二人が消えても部屋の様子はそのまま、って事はアレ、範囲型
ってよりも対象指定型って事なのかな? 何にしてもあのスキル
スピードじゃとても回避は不可っぽい。明らかに一般プレイヤー
が持っていいスキルレベルじゃないよ。……ロリ神様が持ってる
スキルの説明とか、あるなら超読みてぇ。
「(使用説明とか空白なのかな?)」
「あ、あのルプス様」
「んあい?」
っと。今此処には俺の他にリストゥルンさんも居たんだった。体
を彼女の方へ向ける
「大丈夫でしょうか。ルプス様のご友人……様は」
言葉とは裏腹に心配した様子がゼロ。嫌われちゃったかもね、相
棒ってば。
「んー多~分大丈夫っしょ。アドバイスもしときましたし」
「ニルス様の試しを超えたルプス様のお言葉であれば、それは金言
でしょう。しかし、しかしそれでもニルス様が負けるとは私には
到底思えません」
虚勢や自惚れではなく、確かな自信ありと言った様子。
意外ー。あのロリ神様の一体何処に信頼、信用の置けるスペース
があるんだ? まあ確かにチート的ボスキャラな強さだし、存在
感もバックボーンを思えばありありで……。もしかしたら凄いヤ
ツかも知れない。
と言ってもやっぱエリュシオン出身な俺とリストゥルンさんじゃ
認識の齟齬は否めないよなぁ。きっと本来の、本当のロリ神様っ
てのを俺が知れれば、無条件で敬ってしまうのかも。敬いたくな
いので、もしそんな機会が訪れたらスルーしよう。うんうん。
「まあ本体?本当の? とかと違って此処はバランス調整に心血注
がれるオンゲの世界っすからね~。エリュシオンじゃ必ず勝てな
い、ってのは無い世界っすから」
何処のオンラインゲームでもそうだろうけどね。
無敵には無敵貫通、絶対回避には必中を。高防御には防御無視、
バリアにはバリアブレイク、高HPには割合ダメージと。何かしら
で対抗できるのが、我らがエリュシオンと言うオンゲだ。
ゲーム仕様に無敵があり、そして無敵貫通も用意されているの
で、ゲーム仕様外で無敵になっても、此処での貫通効果は有効と
される。どう言う理屈、仕様、規格か分からないのだけど、そん
な風にして必ず対抗手段が見付かるのだ。
まあ無敵って言っても色々種類があるんだけどさー。
因みに無敵貫通無効とか、無効の無効、無効の無効の無効……何
て小学生じみた無限ループは存在しない。これは無敵や無効と言
う効果は重ねる度に技術難度が跳ね上がるーっとかってそんな理
由だったかな?
なので無敵にあぐらを掛けない様ゲームは作られるている。らし
い。大概相手の方が有利って状況から始まるけど、それでもチー
ターと言う悪意の存在にも立ち向かえてしまったりするのが、他
と違いエリュシオンの面白い所。んま大抵は通報推奨だけどッ!
なんて。無敵無敗がデフォルトみたいなイメージの神様も此処
では~ってニュアンスの返答を聞いたリストゥルンさんが。
「ルプス様のお陰で“げーむのせかい”と言う認識を強められた
ので、今の私なら言葉の意味、世界仕様を含んだ話しと言うのも
多少は理解できます。ですが、それでもあの方は私達乙女や他の
多くと違い、ニルス様はこの世界へ最適化される形で自らの力を
持ち込んでおられますので」
「あぁー……(認識を強めるってなんだ?最適化ってなによ)」
分かんねー話きた。分かんねーけど言葉そのままなら、あの反則
なアビリティやらスキル系の数々は元々の力が此処、エリュシオ
ンの仕様、法則に即するよう変化したモノ、って言う事を言って
るんだろうか? 神の力をゲーム仕様に堕とすって考えると、エ
リュシオンスゲー……ってか、元の世界での元の力ってなんだ
よ。そもそもな話し、別の世界からどうやって此処にログイン?
してっか知らんし謎い───そうか、そうだよな。
「別の世界から魂が~ってのは聞きましたけど、キャラメイクと
かってどうやったんすか?」
相棒たちをただぼーっと待つよりも、気になっていた事の話を聞
いてみよう。どんな情報も今は大事だしね。
「きゃらめいく……?」
「あーつまりっすね、今のその体は自分で作ったのかーってか、
ぶっちゃけエリュシオンに来る時って最初どうやって来るんすか
ね?」
「ああえっとですね───」
尋ねてみるとリストゥルンさんは普通に教えてくれた。別段秘密
って話じゃないらしい。
内容は結構面白い物で、まずリストゥルンさん達乙女とかって呼
ばれるこの酒場の従業員さんは、皆あのロリ神様が呼び込んだの
だとか。んで呼ばれた彼女たちは自らの魂を此処へと送り込んだ
らしい。
「えーっと。それ体とかってのはどうなったんすか?」
「勿論元の現実、永遠期の世界にちゃんとありますよ」
「凄い失礼なんすけど腐ったりだとかは……? やっぱ神様的生
物には無縁のモノだったり?」
リストゥルンさんが小さく笑う。……美女の笑顔。グッと来る感
じ! 心が潤うなぁ。
「勿論高い叡智とお力を持つ方々にはそう言った存在も確かに居
ました。けど、そもそもが永遠期の世界ですから。老いや死。肉
体の腐敗に飢餓、消滅に怪我や病気。それら一切が等しく存在し
ない世界ですので」
「はぇ~……」
理想の世界に聞こえる、のだけど。語るリストゥルンさんは何処
か儚げと言うか、憂いた表情を少し見せていた。ふーん……。
しかし凄いログイン方法だよね。そんなマジカルログインでエリ
ュシオンへ来るなんてさ。
「んん。そうして肉体をあちらへ残し、此方へ来ては───」
仕切り直すように停車してた話を動かすリストゥルンさん。
彼女は次に此処で活動する為の肉体、つまりキャラの体を自分で
作ったり、もしくは相性の良い本来のNPCを乗っ取るって話を聞
かせてくれた。相性って何だろうと思いつつふと。
「……何かサイバーウイルスみたいっすねー」
「ウ、ウイルス。ですか」
「あ。申し訳ないっす」
「ううん。多分ですが、ルプス様の考え方が近い物だと感じます」
彼女から小さく『複雑ですけど……』っと呟く音声が聞こえた。
まあNPCのデータを乗っとるんだから間違ってはないよね。
んで、呼び込まれずに来ちゃった他の存在とかを“流れ”と呼ば
れるらしい。彼らにはキャラメイクの選択肢は勿論、本来の力も
殆ど無いらしい。そして、流れの多くはランダムなNPCと入れ替
わっているのだとか。
「へぇー……。元?の性別とか、種族?とか変わったら混乱しそ
うっすね。力ってのも無いんじゃ不満とかも凄そう」
「元に性別があるのなら、ある程度はそれに沿った器に入ります
よ、魂にも指向性や形と言うのが付随していますので。
種族、と言うか姿形もそれに倣いますね。幸いにして、此処に
は多く器がありますから」
「確かに」
キャラの数は多いからね。そう考えると流れる先としては、正に
理想郷と言えるのかな?此処って。
「能力に関しても殆ど不満がないですね。成長を剥ぎ取られた永遠
期よりも、変化や成長が多少なりとも望める此方の方が、皆さん
楽しいらしいので」
「なーる。てか、だからロリ神様とか此処に来てるんすもんね
(此処は神様の避暑地か何かな?)」
エリュシオンでは自然な受け答えの出来るNPCが一つの売りで、
未だ磨かれ続ける技術で新規NPCが追加されたりもする。初期
に実装されたNPCはやや会話が硬かったりするのだけど、それ
もいつの間にか改修が施されたり……。いや、あれってもしかし
て───
「ああそれと。流されてくる程度の者は大抵そちらの人間と変わ
らない力の持ち主であったり、そもそもが人間そのものだったり
もしますので。力が抜ける、落ちても特に不満は無いのです。
最大の理由として自ら流れる者は皆、永遠期に退屈、うんざりと
したヒト達ですからね」
「ほほーん。あ、え? 人間居るんすか!?リストゥルンさんの世
界って!」
「ええ居ますよ。ずっとずっと昔、まだルプス様の世界に神々が存
在した頃の話しです。永遠期へと流され始めた折り、共にと付い
てきた信奉者、それに神自らが選んだ者達もまた、永遠期の世界
へ流されたのです」
何とも不思議を極めた話じゃねー?
現実にあったとは信じられない。ゲームの中でゲームの話を聞く
ような感覚だ。
リストゥルンさんは『これは他の陣営の方々も、皆同じ様なもの
でしょう』と呟く。永遠期の世界って複数? あるらしいしね。
俺は深く考えず、今は会話を楽しむ事だけに集中する事にした。
得た情報は後で噛み砕こう。
「ふーん。あ、んじゃあリストゥルンさんは自分でそのキャラメイ
クしたんすね」
「自分で自分の体を作ったか、と言う意味ですよね? はい、ええ
そうですよ。此処の乙女は最初をニルス様に、後は先に居た姉妹
たちが手伝って、皆自分で体を作らせて貰ったんですよ」
「ほほーん。……キャラメイクは元の自分を再現、とかっすか?」
「ああいえ、完全な似姿を作っては問題がありえると言われたの
で、参考にはしても完全に同じにはしなかったんです。まあ、ど
うしても皆似てしまうんですけどね」
何て、彼女は困り笑顔を浮かべる。凄く綺麗な微笑みだ。うーん
このレベルの元かぁ。そいつはマジでゴッドレベルの素材なので
は? 後、皆さんお胸が大きい。その部位だけ共通なのは元が皆
小さいか、或いは……。
俺たちがキャラメイクする時ってのは願望、希望をエッセンスに
加えるのが常套。彼女たちもそうであるか無いかで大きく分かれ
る所。
ま、此処でのモノが全てなので、元とかどうでも良いんだッ!
彼女たちのキャラメイクがスンバラシイって事よ、つまりは!
ん? あそっか。
「って事はロリ神様も───ほあ?」
話してる最中に違和感を感じ。自分の腕を見下ろすと。
『喚ばれたか』
『致し方無し』
何て言い残して俺の腕の中から可愛い可愛いネコちゃんズの姿が
消してしまった! ロリっ子に喚ばれたんだろうと落胆───
「うおッ!? は、え?戻ってくるの早ッ!」
する暇も無く。ほんの数秒でネコちゃんズが再び腕の中へと戻っ
て来た。
『やれやれ。あの者、隙き無き射手だな』
「?」
『向こうの地を踏んだ瞬間だ。我らは見事射抜かれた』
「あ、あ、相棒ぅ~~~!」
いやプレイングとしては正しいんだろうけどさあ! もっとこ
う、あるだろ相棒! 戦闘への姿勢がドライ過ぎだぞ!
瞬殺されたネコちゃんズを撫で回していると今度は部屋に違和感
が満ち。
「! 戻って来た、のか……?」
突如相棒が元居た場所に現れた。
姿勢は消えた時と違い片膝立ちにちょっとレトロで、レトロに似
つかわしくない高性能そうなサイトが無理やりと付けられたライ
フルを構えた状態。
どうやらあのチートロリ絶対有利フィールドでの戦闘が終わり、
元の部屋へと戻って来れたらしい。レバーアクションなライフル
を構え、膝立ちの相棒が辺りを見ては状況を理解した様子で。
「外、皮だけでも凄さは分かっていた積もりだったが、実際に
こうして体験すると……本当におかしな事だ」
「んねー。やっぱ一キャラが持って良い能力じゃねーよな、あれっ
てさー」
俺の声で存在を思い出したのか、相棒はライフルの構えを解き。
立ち上がりつつ背に装備を隠すようにして仕舞う。立ち上がった
後に一度頷いて見せると。
「ルームスキル、と言う規格に収めて良いレベルの話じゃ無い。そ
れに今のルームスキルもそうだが、あの少女自体も規格外だ。体
験した限りで言えば所持スキル、ステータス共にハイビギニング
コンテンツに出てくるボスクラス、いやそれすら超えてそうだ。
パターン固定化の無いキャラが持っていい力じゃない、あれは」
語る相棒の目は熱く燃えている。うーんゲーマー魂に火でも点い
ちゃったかな?
このオンゲには良くあるエンドコンテンツってのは無い。運営は
限界の無い進化、何処までも続く自由な冒険を目指している。
と、どっかの取材で公言した通り。常に果ては更新され続けられ
ているので、エンドに当たるコンテンツはビギニングと呼称され
ている。始まりがずっと続く~みたいな意味合いで、らしい。
バカ広いオープンワールド、多種多様な遊び方のあるゲームだか
らこそ、極める先は遠く果て無い。常に果てへ居るのは極々少数
の猛者達だけ。
このゲームは強さって事だけで言うなら、プレイヤーもモンスタ
ー側も一定の水準で常に落ち着いてる。近い実力、武器防具であ
ったり単純な反応速度。それらを身につければ同等、少し格上と
も立ち回れるのがゲームエリュシオン。なのだけど。
ビギニング攻略だけは多くの戦闘経験、研鑽の積まれたキャラコ
ンが物を言い、マジに難しい反応速度を求められたり、挑むPT
の連携力に複雑なギミックへの理解度が求められる。装備もね。
ただし難しいのレベルを更新し続けると誰も勝てないモノが生ま
れるので、一部の者やビギニングレベルのボスモンスターにはパ
ターン化と呼ばれる仕様が加えられて実装されている。意味その
ままで、決められたパターンに行動が収められているってヤツ
ね。
通常モンスターにあるイミフなランダム行動、それがビギニング
クラスにはないのだ。代わりに行動を読み切るの前提な動きして
くるのよね。ぶっちゃけ付いてけるヤツも大概だと思う。
ので。行動予測、鍛え抜かれたエピック装備、そして挫けない心
を確かとしないと、とても勝てないレベルって事。ハイビギニン
グコンテンツってヤツはね。
因みに俺は中堅ど頃なので。ハイビギニングには挑まず“ハイ”
の部分が取れた頃に挑ませてもらう様にしている。
んなパターン化しないとヤバイ能力を、自分の考えと意思を持っ
て扱えてるのが、誰あろうあのロリ神様だ。用意にハメ技ができ
ちゃうもん。
……改めてヤバイよなーそれって。
「高物理防御に対魔障壁持ちで、しかも攻撃も純粋高火力と来たも
んで。酷い壊れだよね」
『そのような相手を』
相棒と話す傍ら。俺の両手に抱いた二匹のネコちゃんズが言葉を
此方に飛ばす。
『容易く打ち破ったそなたらの方が驚きである』
『右に同じ』
ネコちゃんズに見上げられた俺は相棒と一度顔を見合い。そして
お互いに一つの方向へ顔を向ける。その先は天幕付きのベッド─
──の前で地に伏すロリ神様へと注ぎ。
「なんで、なんでがでな゛い゛の゛よぉおーおーーお゛お゛ー
ー!」
「「そりゃ単純にプレイヤースキルが無いからだろう」」
「あ゛あ゛あああああああああああああ!」
「ああニルス様! どうかお気を確かに!」
俺と相棒が言葉を合わせるとロリ神様が一層の大声で泣き喚き、
腕や足をバタつかせ。側には心配した様子のリストゥルンさん
が駆け寄り。ネグリジェみたいな服の裾がめくれないよう押さ
え宥めている。
ああ成るとロリ神様には威厳もクソもねえなと思いつつ。
「で?向こうでどうだったよ?」
「ん。ああ向こうでは───」
俺はロリっ子が圧倒的有利なチートルームでの事を、相棒の口か
ら聞いてみる事に。
白亜の空間へと引きずり込まれた相棒は事前のアドバイスを信じ
てハンドガンで対峙。そんな相棒にロリ神様が『アレに入れ知恵
でもされたんでしょうけど、そんな物が何の意味も無い事を教え
てあげる!』とか何とか喚き。何処から来るか謎の自信、いや慢
心で無い胸を踏ん反り返していたらしい。
『さあ今から後悔しなさい。駄犬がわたしに戦いを挑んだ無知と愚
かさと無謀さと馬鹿さかげ───』
等と何時までも仁王立ちだったらしいロリ神様へ相棒は。
『……』
『───ハ?』
何も言わずに煙幕を投げつけ、ハンドガンに装填されていた障壁
破砕弾をフルオート、それも拡張マガジン目一杯に撃ち込み。
避けもしないロリ神様の障壁を呆気なく砕き、その場でレバーア
クションライフルへ装備チェンジ。
あのレトロなレバーアクションライフルの引き金を引いては、一
発の銃弾を煙幕の中へ放ち。
『ブベッ!? ちょ───』
煙幕の中からの命中音を聞き。相棒はレバーアクションを起こし
てはもう一発、もう一発と煙の中へ魔法属性弾を撃ち放ち。やが
て煙幕の中で“ギャーギャー”騒ぐ声が次第に聞こえなくなり。
白亜の世界にヒビが入ったかと思えば───
「此処に戻っていた、と言う訳だ。ああそう言えば途中煙幕の中
で小さな影が二つ現れたから撃ったが、あれは何だったのか謎
だ」
「それはね君、この子達だったんだよ」
「? それは、すまない」
『構わない。戦いとは一刻一瞬の取り合い』
『徹するもやむ無し』
気にするなと言うネコちゃんズへ、ちょっと申し訳なさ気な相棒
が手を此方、抱えるネコへ伸ばし。
『『にゃ~ん』』
「(鳴くんだ! え、スゴイ!全然ネコっぽくない声!)」
二匹の頭を撫でた。面白いので序に俺も撫でよう、むふ。
そうして二人でネコを撫でつつ。
「一番の敗因があるとすれば、今さっき言ったがアレ自身にプレ
イヤースキルが無かった事が原因だ。経験不足とも言える」
相棒が言う。ネコちゃんズを気に入った様子の相棒へ俺も。
「ねー。ほんそれ。立ち回りとか全然分かって無いよなー」
「お前もそう思ったか。……いや待て」
「んあ?」
相棒のネコを撫でる手が止まり俺を見詰め。
「何でそう思った? そもそも何故アドバイス何か出来た? ま
さかお前自身が“アレと戦った”んじゃないか?」
「───」
何と応えるべきか一瞬迷った。迷ってしまった。
相棒にはその間だけで返事としては十分だったらしい。相棒は片
手にハンドガンを取り出し、未だ這い蹲るロリ神様へ向けて引き
金を躊躇なく引く。
「!」
「!?」
顔だけは此方へ向けていたロリ神様が僅か驚き、リストゥルンさ
んが庇い出てくる。が、発砲音は無い。発砲自体が無かった。
相棒のハンドンガン周りには“セーフ”と書かれたデジタル表記
が銃身を囲むように回っている。
「ッチ。此処は別扱いか」
「お、おま、相棒落ち着けって!」
「どう言う積りだッ!」
「ウヒョッ!?」
思わず体が“ビクッ”とする程の声量、気迫で叫んだのはリスト
ゥルンさんだった。彼女の表情にあの優し気なお姉さんな様子は
微塵も無く。代わりに怒気ありありな様子。ゲームであんな恐ろ
しい表情を見事に表現しないでほしい!怖いじゃん!
「積りも何もない。ルプスを殺す気だったのか? お前らは」
「何───」
「ああいや違う。考えてみれば此処で撃っても仕方なさそうだ。
となれば、どうすればお前らを駆逐出来る? これが今一番自分
が聞きたい質問だな」
「貴様ぁッ!」
とんでも無い空気なんですけど! 誰か、大人の人呼んで来
てッ!
あぁー何故こんな事にぃ! 俺が心の中で大絶叫していると。
「! ニ。ニルス様?」
「もう平気、平気だから下がってなさい」
ロリ神様が“スッ”と立ち上がり。気遣うリストゥルンさんへ。
「しかし!」
「うるさい。なんども同じ事を言わせないで」
「! ……」
アレほど激高していたリストゥルンさんを短い言葉だけで下がら
せ。
「おまえの実力は分かったわ。多少は使えるみたいね」
「……だからどうした」
銃口を向け続けるロリ神様の、その冷静な態度に思う所があった
のか、相棒の方も僅かに冷静を取り戻した様子で。銃口を下げ、
対話に応じる姿勢を見せた。
「そっちの、協力者が倒される事に随分忌避を感じていたみたい
ね。ああ違った、殺される。だったかしら?」
「……」
「殺される、ねぇ。もしかしておまえも事情を知ってるんじゃな
い? それが此処へ縛られている事の」
「ッ!」
「なるほどね。おまえもソレの事情を知ってるようね」
あーバレちゃったかぁー……。流石の相棒も俺の事情を他が知っ
てるとは思ってなかったらしく、一瞬の動揺が表情に浮かんでし
まう。
俺の事をロリ神様が鋭く一度睨み。視線を相棒へ戻しては。
「でもダメ。わたし達の事は話せないし協力もさせない」
「誰がお前に協力するなんて言った? 決めるのは───」
「そう、決めるのはわたし。これは個人の意思どうこうの話しじゃ
ないの。これはソレを含めわたし達側の問題。当事者はおまえで
はない」
真剣なトーンでマジに話すロリ神様には、リストゥルンさんとは
違った種類の気迫、圧のようなモノが感じられた。正直気圧され
てた俺は何も言えなかったりする。さっきの視線とかちょっぴり
怖かったし。
気圧されたかどうかは分からないけど、相棒は黙る俺とは違い。
「自分にとって異物はそちらだと思うがな。さっきの力を見るに」
まだ会話を行うことが出来るらしい。相棒の言葉を聞いたロリ神
様は。
「だとしたら何? わたし達を此処の管理者にでも報告するのか
しら? しても良いけど、ソレも巻き添え食うでしょうね」
「……」
「まあそもそもが無駄なのだけど。
此処の管理者連中の中には、わたし側の協力者がいるんですも
の。だから報告しても困るのはおまえだけって事になるでしょう
ね」
マジかよ協力者いんの!? えぇ初耳ー……。俺がそう思ってい
ると、此方の様子をロリ神様が一瞥し。
「協力者って言ってもおまえが考える程便利な者じゃないわよ。
お互い基本不干渉だし。あっちはわたし達の存在を黙認、隠し
て。わたし達も秘密を話さず、プレイヤーとも怪しまれないよう
仲良く接するって具合にね」
話の最後。小さく『ある意味他陣営とも言えるわね』等と付け加
えた。
成程。一部のクオリティが高すぎるNPCとかってのは、そう言う
理由もあったのか。だってマジな相手なんだから。このクオリテ
ィを下げたくは無いだろうし、此処まで盛況なコンテンツを潰し
たいとも思ってないはずだ。その協力者ってヤツは多分。
「だからアンタは要らないの。分かったらこの事は誰にも言わず帰
んなさい」
「断る」
「……へえ?」
「長々と話してくれた所悪いが、そもそも自分はお前の手伝いをす
る等とは一言も言ってない。自分はルプスの力になるだけだ。誰
に何を言われようとな。其処を勘違いするなよ」
「相棒……ッ」
相棒が一度此方を“チラッ”とだけ見ては、直ぐに視線をロリ神
様へと戻し。
「帰りたくなったらコイツと一緒に帰らせてもらう。だから気に
するな」
「ふーん……」
「ニルス様、戦闘許可さえ頂ければ私が追い出します」
ロリ神様に代わったのはリストゥルンさん。彼女は怒りを押さえ
たらしく、表情だけは優しそうなお姉さんに戻っていた。剣呑な
雰囲気は未だ纏ってるけどね!
ぶっちゃけ超怖えぇ! あれかな、優しそうなお姉さん程こうな
ると怖いってやつなのかな! 相棒は───睨み返しちゃってる
しよお! このままだと望まない感じで、誰も幸せにならなそう
なバトルが始まってしまいそう。あぁあああ俺の息が詰まりそう
な雰囲気なんですけっど!
「ま、まあまあ皆。そんな喧嘩腰に成らないでさ、そのーあれだ
よ? 相棒ってば結構ウラの技術にも詳しいし、此処を探り当て
られる位の腕前。助けは多いほうが良いし、きっと誰彼構わず話
したりもしないし人柄は俺が───」
必死だった。相棒に何か危害が及ばぬよう、場をなあなあに落と
して有耶無耶にしたかった。此処から現実の相棒へ何をする事も
出来ないとは思う。だけど不快な思いをさせる事は此処でも出来
る事だ。
なので話を怖い方へ運ばせないように色々と言葉を吐いてみたの
だけど。
「“ウラ”? それは分からないけど、この場所を探り当てたって
言う話は気になるわね」
食いついたのは意外にも冷静なままのロリ神様。
ロリ神様は周りのこの、一触即発剣呑増し増しな空気を感じない
のか? あの大人しそうなお姉さんが怒ってるのに呑気過ぎだろ
うよ。
もしかしたら周りの空気を感じ取っての冷静、なのか? 冷静さ
を頼もしいと思いながら、ヒートアップしてる相棒とリストゥル
ンさん以外で会話の主導権を握ったほうが良さそうだ。
つまり俺とロリ神様でだ。
「それは説明難しいんだけどね。相棒にそもそもなーんで此処ま
でついて来られちゃったかって言うと、ロリ神様が俺を試してた
時───」
「……」
隣の相棒が険しい表情を浮かべ、俺は大丈夫だと愛想笑い。
「───にね。どうやらその居場所を此処だって探られたからな
のよ。ね、相棒。そうだよね?」
正確には違うんだけど、此処では修正しないで良いと思う。
「……ああ。あんな異常な情報量の物体を見付けられないのは問
題だと思ったが、さっきの空間に直接保織り込まれて分かった。
アレじゃ誰も正攻法では見付けられない訳だ。見つけられたのは
俺がルプスに───」
「ストーカーな事してたからだもんな!」
「───そう、だが。そうでもないんだ。あれは、何だ」
お。相棒が困ってる。同時に調子も何時もの相棒へ少し戻ってい
た。
「んん。兎に角、見つけられた方法はどうでもいいだろう」
「誤魔化された。……んじゃ他には?今がアピールタイムだぞ」
「そうだな。例え自分を今この特殊な寝室から弾き出したとして
も、仮にルプスが居なくとも。この場所へ来れる事、ぐらいか」
「! おま、マジかよ、そんな事できるのか!」
「ああ。全く見ない技術だったが、似通った所はあったからな。
キーとなるパケットの特徴は取らせてもらった」
驚き発言に関心したのは俺だけじゃない。
「分からない所もあるけど、分かる所だけでも面白い話しじゃな
い。へぇ、お前一人で此処に来れると……」
「ニルス様?」
「小さい事は察してるらしいから言うけど、この部屋はさっきの広
間同様わたしが招かないと来られない場所なの。だから扉を出て
もう一度。此処を一人で訪ねる事ができると、その言葉が嘘じゃ
ないなら……。そうね、協力の件。少しは考えてもいいわ」
「おお!だってよ相棒ッ!」
相棒は鼻で一度笑い。
「別に認めてもらう必要など───」
「いーから! その態度が俺を思って来る物ってのは分かっけど、
今は話しややこしくすっだけだから!」
「……分かった」
相棒が扉の前へと行き、そのまま扉の外へ出ては。
「……」
ロリ神様が手を横へ一度振る。すると扉が閉まり“キュリキュリ
キュリ……”っと小さく歯車でも回るような音が響いた後に“カ
チャンッ”と言う施錠音。
そうして皆で扉を見詰め続けてちょっとの間を置いた頃。
“キュッ!キュリ、キュリキュリキュリ!”何て激しく音が響い
ては“ガチャンッ!”と言う音共に扉が開き。
「これで満足か?」
再び扉の向こうから相棒が姿を見せる。それを見たロリ神様は何
故か満足そうにして居て、リストゥルンさんの方は驚きの表情を
浮かべていた。
「流石スト、じゃない、相棒。いやぁーどうやんだよ、凄いじゃ
ん!」
俺の言葉に悩むような表情を見せる。このネタは暫く擦れるな。
「此処は仮想。データだからこそ座標は無限に動かせても、無限
の中に在るのは分かってるんだ。在ると分かっていれば、後は取
得したメタ情報を頼りにサーチを書けるだけで済む。
ただ見付かる事を想定されてないから───いや、これは今関係
無い話だったな」
簡単に出来る、みたいな説明だったけど、多分俺らに分かりやす
く教えてくれただけでもっと複雑で、専門技術が必要な事なんだ
ろうなぁ。説明を終えた相棒が俺の隣へ並ぶ。
相棒の簡単簡素な説明をロリ神様が聞き終えると。拍手を小さく
送り。
「やるじゃない犬。ニルスの名において、犬の協力を許可するわ」
「それはどうも。だが自分はお前たちに協力する気なんて無い。寧
ろどう消し去ってやるかずっと考えているぐらいだ」
「ッ───」
相棒の言葉に怒気高々に叫びそうに成ったリストゥルンさんを、
ロリ神様が片手を上げて制止し。俺も隣の相棒を小突いておこ
う。いらん挑発すな、ってね。
此方に渋い顔を見せるので一度睨み返してやる。
「! ………」
渋い顔で“しゅん”とすなや……。まあいいや。
話を進めるようとロリ神様へ視線を送る。
「さて。さっきから言っているその件なのだけど、おまえの誤解を
解いておくとね、わたしはソレを殺す気なんて無かったし、そも
事態をどうにかしてあげようと、協力する側でもあるのよ?
何よりもおまえ、何があったかの詳細も知らないでしょう? そ
れでわたしを責め対峙しようだなんて。思慮に欠ける行動で無く
て?」
「む……」
言ってる事だけは正論。ロリ神様からの正論パンチを受けた相棒
の視線が俺を捉える。
「(嘘だぞ! アイツ絶対俺を殺す気だったぞ!)」
だけど今此処でそれを言ってもまた“ギッスギス”するだけだ
し。実際の所ゲームの中で俺がキルされるとどうなるかは誰にも
分かってない。そして分からんままで良い、永遠に。
ま、ロリ神様は俺の事情を知る前だったけど、それでも絶対殺そ
うとしてたね、あれは。
許せねえ事だしムカつく、けど。此処は俺が大人と成るしか無
い。このまま話が進まないと困るし。くそう。
仕方無しに俺は相棒へ一度頷いて見せる。
「………確かに性急過ぎたかも知れない。だが───」
「それと───私の力が“アレ”だけとは思わない事ね」
一瞬“ゾクッ”とした。
そんな事が今の俺に起きるのか疑問だけど、背筋みたいなのが凍
り付く程の悪寒が走り、場は完全に幼女が放つナニカに飲まれて
しまう。
「───分かった。此方も頭に血が上っていた。
そちらの言う“誤解”と言う事にして置こう。加えて、自分にい
たずらな敵意や害意は無い、ルプスに危害が及ばなければ、と言
う話だが」
「(お前もつくづく物怖じしねーな!)」
緊張の糸が張り詰める空間は相棒に何の効果も、いや少なくとも
完全な冷静さを取り戻す助けには成ったらしい。
「そうなの。ならこれからはそっち同様協力者ね」
背筋も凍る場を作り出したかと思えば、呆気なくも空気を霧散さ
せるロリ神様。その柔らかい笑顔は、緊張感で埋め尽くされた場
を一気に解す程だ。やっぱしアレの中身ってば神様なのかも知れ
ん……。少なくともそう感じさせるナニカだよなぁ。
まあ何にせよ。ロリ神様のお陰で一触即発の空気は解れてくれ
た。
ので、俺としては“ホッ”と胸を撫で下ろせる。えらい疲れた
よ。
「さあ。それじゃあ仕切り直しましょう」
言って少女が指を“パチン”と鳴らすと、部屋に長テーブルとイ
スが地面より現れる。それっぽい演出で現れたイスをリストゥル
ンさんが引き、引かれたイスへロリ神様が手を借り腰掛け。
「頑張った犬のお前にわたし達の事を説明してあげるわ」
俺らにイスは無いんか! っとツッコミたいが、恩着せがましくロ
リ神様に振る舞われるのも嫌なので黙っておこう。
「凄腕チーター集団の事情か?」
「だから違うわよ! それを言うならさっきのとか、犬こそチータ
ーじゃない!」
「俺はハッカーだ。クラッカーでもチーターでも無い」
「ああそう! ……はあ。良い?まずわたし達って存在は───」
認められたらしい相棒は、ロリ神様の口からこのゲームの世界、
エリュシオンに潜む真実を語られる事に。
此処には魂を持った存在が他所から流れ、強い力を持つモノが派
閥、陣営、共同体等とやらを作り互いを牽制。そんな状況に俺っ
て存在が巻き込まれてしまった事等など。それらを簡単に相棒へ
説明して行く。途中相棒の理解を助けるため、俺が合間合間にち
ょっとした解説を入れつつね。ロリ神様って大雑把だから、説明
の仕方とか。
そうして。世にもビックリなお話を聞かされた相棒はと言うと。
「成程。……にわかには信じ難い話だが、受け入れられない話と
言う事は無い」
「おいマジかよッ! おま、相手自称神様なんだぞ!?」
「全然自称じゃないんだけど? と言うかおまえそう思ってたの
ね」
ロリ神様の言葉に視線も揺らさず相棒は此方を見詰め。
「お前とはまた違った知り方、視点違いと言う理解、だからだろ
う」
「ほあ?」
「……っく」
俺の顔と言葉が余程マヌケそうだったのか笑われてしまう。
だが気にしない。此処ゲーム内だし、こんなリアクションも寒く
ないし、“コイツ何いってんだ?”って時はこんな感じだろ、誰
でもさ。
「ふ。良いか? さっき空間に引きずられた時に内部を少しだけ見
てみたんだよ。構成データと言うかその辺をな。近い所、内側か
ら直接覗けたからこそ、納得した」
「何によ?」
「あのスキル、と言うか空間を構築する全てが、現在エリュシオン
内で使われている仕様、科学技術とは全く違う。言わば皮だけが
整えられた別物だ。もっとはっきり言えば現代の情報処理技術と
根本から違う、全く未知の技術で再現、構築されたモノだと言っ
ても良いだろう。
何処か無理矢理感があったが、其処は間違いない」
「へえ?」
「……簡単に言うと地球の技術が自分たち、あっちはエイリアンの
技術。そんな違いが在る、っと言えば分かるか?」
「へぇ! 地球外生命体的な!?」
「意味は分からんが、ここはそうだと応えて置こう」
自分には技術的な事はさっぱりだけど、そちらに詳しい相棒が
言うなら信じられる。地球外的な話かぁ。
「コードのルールや通信プロトコルなんかがどうして噛み合っ
てるのか謎すぎる。無理やりと取り繕われたアレは……うん、
謎だ」
独り呟く相棒から視線をロリ神様の方へ移し。
「ロリ神様って宇宙人だったの? 神様ーっとかよりそっちのが
“スッ”と入ってくるんだけど、納得的な意味で」
「……そろそろ本気で怒ろうかしら?」
「ル、ルプス様!」
リストゥルンさんに注意されちゃったぜ。まあ自称の部分イジ
り過ぎたか。本人がそうと言うならそうなんだろう。
「ごめん」
「……」
ヒトのロールを否定してはいけない。そんな思いで謝ると、ロ
リ神様はまるで間違ってブラックコーヒーを飲んだ時の様な、
何とも微妙な表情を浮かべる。
「何だよ。俺は不快にさせないように気を付けもするし、やり
過ぎたら謝るよ。優良プレイヤーは皆そう」
「………」
微妙な表情で口をへの字のままに固まるロリ神様。だからどん
な感情での表情なんだよ、それは。
「結局の所、言葉の通じる未知の生命体。その域は出ない。
ただそれにしては何処とは言えないが、何か似たものを感じる技
術だったが……」
「(似た所?)」
相棒は一度キャラの頭を振って。
「ああしかし、言葉通りなら本当に貴方は神なのか」
「そうよ。驚いたかしら?」
「神と知らず無礼な事を。申し訳ない。てっきり他国のチーター集
団がルプスの秘密を嗅ぎつけ利用してるのかと……。本当にすま
ない神様」
ロリっ子の事を神と思う事に納得したらしく、相棒がその場で頭
を下げている。マジか、俺もこうして謝るべきだったり?
「あらー? なにあんた、神に対するって事が分かってるじゃな
い! そうそう、もっと貴方の神を敬いなさいよ」
「いや。自分には自分の信仰があるので結構。神として敬いはす
るが、あくまで他神他教に接する最低限としてとご理解を。それ
と、今謝罪したのも知らずの無礼を詫びる物で、それまでの態度
や言動を取り下げる物では無いです」
「前言撤回ー……」
“なんでよ……”っと言った目線を浴びせられるも、相棒は毛ほ
ども気にした様子は無い。こう言う所あるからね、相棒。
慣れてる俺は特に何も言わない。だけど哀れみが心の中に芽生え
たので、もう少しロリ神様を敬ってやろうとこっそり思う。
「ビックリな話しだったろ?」
「ああ。こればっかりは想像も出来ない話しだった」
「だよなぁ~! もー俺はこの秘密を誰でも良いから話したくて
話したくってよぉお!」
視線の端。ロリ神様とリストゥルンさんが“ギョ”っとした目で
此方を見ているのが分かった。おっと行けね行けね。
「勿論俺自身の事もあるから誰にも話せないけどさ」
「……だろうな」
相棒は言葉とは裏腹に胡乱な目をして俺を見詰める。いや信用ね
えなおい。
「状況は分かった。つまりこのゲームには貴方方の様な魂を持った
存在、仮称として『ソウルキャリア』とでも呼ぶか。それがわん
さかと居て、しかもニルス様は他の勢力に襲われる程度には劣
勢、と。なので戦闘の出来そうなルプスの力を借りようとしてい
る。こう言う理解で間違いないか?」
「大まかの理解はそれで良いわよ。わたし達は全然劣勢じゃないけ
どね」
多分見栄なんだろうなぁ。……あ、そだ。
「てか俺を呼んだ理由って? また攻められそうで緊急事態とかっ
て事?」
「い、いや。そうじゃないのよ、ね」
「??」
端切れの悪さに相棒と顔を見合わせていると、相棒が神扱いし出
したからか、穏やかな表情に戻ったリストゥルンさんが俺たち
へ。
「あれから獣達はずっと大人しいんです。我々の支配地域にも姿を
全く見せない程に」
「きっとわたしの力に恐れ慄いているのね!」
無い胸を張るロリ神様を睨み。
「わたしぃ?」
「……たち」
素直なロリ神様は良いロリ神様。しかしあの調子に乗ったサル共
が、獣陣営とか言うのが大人しいとな、ほほう。
「つまり今が攻めのチャンスって事か」
このロリ神様陣営にとって、いや俺個人にとっても“一つのチャ
ンス”じゃねえかおい。何事も立ち回り次第、強かなヤツほど生
き残れるのだ。人生もオンゲもね、クフフ。
「? 何故そう思うんだ?」
尋ねる相棒へ俺は言う。
「何でってそりゃあ……ああ、あん時は狙撃の為に離れてたから
会話までは聞こえてなかったんか。俺もあえて話さなかったし
ねー……」
襲撃時のボスとの会話は俺とロリ神様ぐらいかな? ちゃんと聞
こえてたのは。確かあのボスザルとの会話を要約すっと。
「良いか相棒、この前此処で戦ったイベントがあるだろ? あれ
ってば相手陣営さん的に“絶対落とさないだろう”って試合だっ
たんだよ。だから───」
「ああ……成程。相手は勝てる試合を落として、その所為で思わ
ぬ混乱まで招いた事になってる訳か。用心をすべきなのか、もう
一度攻めて力を確かめるべきか。そんな所で足並みが乱れている
頃合いなのかもな」
「そそ」
「しかし行動が透けて見えるとは、存外な間抜けな連中だな。陣
取りゲームは盤面情報が重要だと言うのに」
理解の早い相棒で助かる。流石、PVP大好きっ子だこと。
「ま、まあそんな所でしょうね、うん」
相棒の説明にロリ神様も“分かってた”って感じ。て事はー…
…。
「やっぱ今がチャンスって事だから俺を呼んだんだべ? まあぶっ
ちゃけあんな話を聞かされて、此方から攻めたアクションは無理
なんだろうなぁってのも思ったけど、こんなチャンスなら別の話
しだもんな」
「なんだ、何か攻め辛い理由があったのか?」
「おう。って相棒は此方も知らんよね。実はね、この拠点。維持費
すら危ういほどにー……資金がヤバイんだってさ!」
「……」
無言で眉間にシワを寄せる相棒。きっと現実でも同じ表情なんだ
ろうなぁ。素晴らし感情キャプチャー技術に感心しつつ。
「でもでも、獣陣営の足並み乱れてる今なら偵察のチャンス。
しかもこのタイミングで俺を呼んだって事は、資金面の問題が何
とかなったんだべ?」
相棒と二人でロリ神様を見やると。
「……」
顔に冷や汗を浮かべるロリ神様が“スッ”と立ち上がり。
「………」
相棒がした様に、テーブルの隣で頭を下げて見せた。序に
と慌ててリストゥルンさんも同じく。
「ロリ神様?」
「……お金……マイナスになっちゃった……」
「????????????????????????」
言葉の意味が理解できず俺はフリーズ。
「すみません。すみません。すみません……」
「……ふぅ」
平謝りのリストゥルンさんに、相棒は人差し指の第二関節で鼻骨
を抑え溜息を零す。
改めて俺はロリ神様へ視線を戻しては。
「お前今なんて?」
「おかねがまいなすになっちゃった」
見た目通りの幼い様子でのモーション。騙されない俺は柔らかな
笑みを浮かべ優しく───な訳ねぇだろうが!
「ガキぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「ッあびゃあああああああああああああ!????」
手にして居たネコちゃんズを放り、テーブルを駆け上がり使えな
いロリっ子を掴み上げて揺らす。
下からリストゥルンさんや相棒が止めるが、俺の耳には入ってこ
ないね!この、このガキッ!
青年はテーブルの上に立ち、揺らされる幼女が泣き叫ぶ。
他二人が止めに入り、獣二匹がとても穏やかな視線を送ってい
た───
最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら
幸いです。
物語を最後までお読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。




