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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第一章
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第三話 息づくゲーム

 ───人気も、心潤す緑も無い。そんな寂しい山岳地帯に男が一人。

 いや、居たのは男だけでは無い様子。




 大きな戦斧を振り上げ、此方に向かってくるは人型巨像モンスター。

 俺は相手が武器を振りかぶって生まれた僅かな隙に、

 その懐へと潜り込み。勢いを殺さぬよう、手にしたロングソードを

 振り抜いては。そのまますれ違うようにして人型巨像モンスターから離れる。


『───』


 背後では“ズシンッ”と大きな音と共に、舞い上がったらしい土埃

 が俺の足元へ微かに届く。振り返りモンスターの生死も確認せず。


「はい次ッ!」


 一人叫んでは次の巨像モンスターへ斬りかかり、斬り伏せてはまた次へ。

 このエリアの適正レベルを越している俺は、そうして

 レベルと装備の暴力でもって次々モンスター達を狩り取って行く。

 一体を仕留める間に別のモンスターを近くに誘い、最小限の動きで

 次から次に仕留め続ける。追い求めずとも時間と共に

 動きは洗礼され、いつしか最効率でモンスターを狩り続けていた。

 ただただ全力で狩る。そうしてふと気が付けば。


「……枯れたのか。」


 たった一人で狩場を枯らしていた。多分ちょっと離れた

 場所に敵が溜まってるな、これ。


「はは、てか一人で狩場枯らすとかすご。」


 人気の無い狩場だからこそ出来たのかな。

 俺は一体どれだけ此処で狩った事か。時計を確認すると

 時刻は二十時頃。また無心で狩り続けてしまった訳だ。


「……。一旦戦利品のチェックしよ。」


 言いながら、俺は手にしていた剣を空中へ放る。放られた剣は

 地面に落ちる事も無く、放られて直ぐに消え。

 俺の手持ちへと収納された。このオンラインゲームでは

 武器の携帯を表示と非表示が選べるのだが、俺は大概こうして非表示だ。

 武器を仕舞い、近くにあった手頃な岩に腰掛け。

 窓型インタフェースを開いては戦利品のチェック。大概は店売りで良い

 ゴミドロ。しかし、レア(奇跡)は其処に存在した。

 ドロップをレアリティで並び替えて見れば、一番上に燦然と輝くレア(奇跡)


「ほほほほほんとかよぉー! 二本めぇ?!」


 本日二本目の極レア。トライバレルである。

 マジかよマジかよ、二丁構えるとかすげーロマンじゃん。

 やべぇー。やっぱ俺ツイてるなぁーこれ。


「これは明日にでも車に引かれちゃうか!?

 はっはっはっ……。はぁ。」


 全然笑えなかった。逆に言っててちょっと背筋がゾッとするだけだった。

 乾き切った笑いを零しては、俺は腰掛けた岩の上で“がっくり”と項垂れる。

 こんな事してる場合じゃないよ、ほんと。それは分かってる。

 仕出かしてしまった事を考えるのが怖くて、俺は思わずパニックを起こし。

 此処に逃避しに来た訳だけどね。心を落ち着かせるためにさ。

 お陰で大分落ち着いたよ、うん。しかし心落ち着かせるのに

 無心の狩りって……。はぁ。

 いかん。心の中も外も溜息で溢れている。


「ほんと。どすっかなぁー!」


 ほぼまる一日自分を放置した事を考えるのは、正直怖い。

 だってトイレとか行かなかった訳でしょ? 当然生理現象は

 意識の有無に関わらず止められないから。現実のオレはさぞ

 悲惨な事に成っているだろうね。しかも色々サボっちゃった

 訳でー……。いやサボりじゃないよな、遊んでたけど

 実際緊急事態だった訳だし。


「はぁ……。」


 また溜息が零れる。現実の自分の惨状を思うと仕方がないとは言え。

 ずっしりと沈む心。殺風景なエリアの遠くを見詰め、俺は独り

 途方に暮れた。

 ほんの一時の間、そうしてぼーっとしては。

 狩りの後の習慣で色々チェックをしていて気が付く。


「んあ? メッセ? あー……。無心で気が付かなかったかな。

 差出人は───相棒からか。何だろ?

 普通に話し掛けてくれりゃあ良いのに。」


 俺は何時の間にか届いていたメッセージ内容を確認する。

 内容はこうだ。『よう。まだ諦めずにそんな所に籠もってるのか?

 全く、前みたいに根を詰め過ぎるなよ? まあ折角頑張ってるお前の

 邪魔をするのも悪いからな、サイレントメッセージにして置いた。』

 成る程。だから通知音も何も無かった訳か。

 相棒は本当に気遣いの出来る奴だ。俺は心の奥で歓心を感じながら、

 メッセージの続きを再び読む。

『用件ってのはな、今日の祝賀会をどうするかって話なんだ。

 実はINして早々彼奴等に呼ばれてな。聞けばお前が其処に

 籠もってるから皆声を掛け辛いってんで、自分にお役が回って来たのさ。

 祝賀会は後日って話だったが。奴ら、今日発散する積り満々だぞ。

 だからまあ、お前が暇になったら適当に連絡くれよ。それまではなに。

 此方は此方で俺が暫く相手をしとくよ。ああそれと、

 良いもんが拾えると良いな。』

 内容は以上。相棒、良いもんは拾えたぜ……。

 んーしかし昨日の今日か。確かにあの時は何やかんやで

 思う存分喜べなかった。だけど今はそんな宴を開いている余裕は……。

 でも一緒に頑張ってくれた仲間達の事は絶対に労いたいし……。むむむ。

 ……こう言うのは達成感とかが薄れる前にすべきだよね。うん。

 取り敢えず宴を開いて、ほんのちょっと参加したら後は

 皆で適当に楽しんでもらって。俺はコッソーリ抜けて

 運営なりなんなりにでも連絡して問題解決を図ろう。


「うっし。そうと決まればまずは───」


 岩の上で窓型インタフェースを開き、俺が拠点にしてる町で

 酒場を検索。一覧表示された酒場の状態を見れば……。

 んーんーんー。イベント終了後って事もあり何処も混み混み。


「他の人達と混ざって騒ぐのはそれはそれで楽しいけど、

 今回はあの二人が居るしなぁ。しゃーない。

 此処は身銭を切りますかね。」


 俺は一番のお気に入りの酒場『昼行灯』の二階を、フロアごと

 貸し切りたいと申請を送る。……結果は受理。よしよし。

 この酒場の二階は宿だけではなく宴会用の部屋もあり、何より

 内装が落ち着いていて大変お気に入りの酒場だ。

 本当なら二階の一部屋だけを借りれば良かったんだけど、折角なので

 フロアごと貸し切ってやった。こう言う時は豪快にいかんとねー。

 んーでも。


「昨日からずっと狩っていたモンスターの

 ドロップ品を売っても。やっぱ足が出るかー。

 この時期は仕方ないとは言え、うむむ。」


 トライバレルを売れば一週間貸し切ってもお釣りが来る、が。

 当然売る積りは微塵も無い。生憎この二丁めの使い道は

 既に決っているしね。

 ま、はみ出た分は俺の蓄えから出しとこか。

 さて、取りえずはこれで場所は確保出来た。

 後は場所と時間を相棒に送ろう。皆一緒に居るっぽいし、

 相棒に送れば皆にも伝わるだろ。


「……これでよしっと。んじゃ次はっと。」


 俺は窓を操作して相棒にメッセージを送り。

 狩場から町の酒場へ直接移動スキル発動させ。跳ぶ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 酒場『昼行灯』前。酒場の外観はファンタジーゲームや

 映画等で良く見る中世風。その建物前に飛んで来た俺は、

 早速店の扉を開き中へ。

 店内はテーブル席と、正面奥に受付。中央から左右の

 壁際には飲食用のカウンター。

 他にあるモノと言えば───肌で感じられる程の熱気。


「───!」

「!!?」

「─!──!」


 広々とした店内には様々なキャラクター達が溢れ、賑わっていた。

 皆が皆ボイスチャットをオープンにしては。ワーウルフが

 喜びの雄叫び上げ、ヒューマンが罵声やもっと叫べと煽ったり。

 どさくさ紛れに誰かが運営への悪態何かを叫ぶ。そんな騒がしい

 一角とは距離を置いたりして、イベントについての考察や戦利品の自慢などを

 する誰彼。店内は実に沢山のヒトと声に溢れていた。


「……。」


 その様子に俺は思わず笑みが溢れてしまう。それもそうさ、

 俺がオンラインゲームに感じる魅力の一つが、今目の前で

 こうも燦然と輝いているんだから。

 イベント後のこの雰囲気ってのは、本当に最高だよ。

 一体感と言うかなんと言うか……。良い、兎に角良い!

 いやー。普段なら赤の他人が輪に混ざると『え、誰ですか貴方?

 此処身内だけなので……。』『あ、すいません。』

 みたいな空気に成るけど。今ならしれっと紛れ込んでも、

 わいのわいので許されちゃうんだよねーこれがさ。

 俺は見知らぬ誰か達のテーブルに混ざりたい欲求を“ぐっ”と抑え。

 それでも少しニヤけながら、店の奥を目指しては店内を進む。

 途中。進行方向からコルセットにエプロンドレス姿の女性が、

 飲み物を並々注がれたコップを両手に小走りで此方へ。


「おっと。」

「ごめんなさーい! お客さん!」

「気にしないで。お仕事頑張ってー。」

「はーい!」


 体を退ける俺の側を抜けて行き、遠のく間にそんな言葉を交わす。

 反応から察するに。彼女はNPCでは無く中身の入ったキャラクターだね。

 俺が遊び、今現在抜け出せないこのVRMMORPG『エリュシオン』は。

 高い自由度と共に世界観やら建物やらモンスターやらと、何から何まで

 細部に拘った作り込みで。

 それは今すれ違ったキャラクターの様に『ゲーム内酒場で給仕の

 仕事が出来る。』何て自由度からも分かる事だろう。

 作り込みの方も、NPCとそうでない者との見分けが初心者には

 つかない事で有名。実はさっきのも自信がなかったりするんだな。

 それ位受け答えが本当に自然なんだよね。まあ中には明らかに

 NPCって分かる、手を抜かれたのも偶に居るけどさ。

 本当、素晴らしい世界(ゲーム)だよ。

 お陰でこのVRMMOが溢れる時代に埋もれず、そこそこの人気を維持し。

 同時接続数を稼いでいるんだから凄い事だ。

 まあゲームの中で給仕を楽しむとか、俺には良さが全く

 分からんけどね。しかしこれが意外と人気なのだから驚き。

 どんなロールプレイにも需要があるって事かな。うーん、俺も

 何が魅力か知るために、一回体験して置くべきか……。むむむ。

 等とぼんやり考えながら。俺は賑わう店内を奥へ奥へと進む。

 そうして進んだ先に見えて来たのは、店奥に設置された受付。

 近付く前方方受付からは誰かの声が俺の耳に届く。


「えー。」

「二階使えないの? マジ?」

「申し訳ありません。先程特別なお客様から貸し切り願いが

 届きましたので。現在二階はそのお客様の貸切となっております。」

「マジカかよ。つかこのイベント後でも貸し切り出来るって

 何処のギルドだ?」

「あれじゃない、前に黒と───」


 等と言った。客と受付のやり取り。

 確かに。イベント終了直後は何処の宿も酒場も貸し切りが難しい。

 イベント後はどの店も繁盛するので、その分貸し切りの値段も上がるし。

 それでも貸し切ろうと意気込んでみれば、次は中堅ギルド連中が相手だ。

 彼ら、身内ギルドで店を貸し切ってはギルメンとどんちゃん騒ぎを

 したがるからねー。

 でも場所には当然限りがあり、結果。

 ギルド資金を使ってのパーティー会場争奪戦が勃発する訳だ。

 こうなると個人や並の固定パーティーに、ちょっとしたギルド何か

 じゃあ歯が立たない。いやぁ貸し切り競争は激しいのなんの。

 しかし。俺はギルド代表でも固定代表でもない。たった一人の個人だ。

 彼らが話す受付とは別、他の従業員よりも位が上な受付嬢。

 この酒場の支配人へ俺は声を掛ける。


「こんばんはミランジェさん。

 二階へのパスコードを貰えます?」

「これはルプス様、お待ちしておりました。

 此方が二階へのパスコードでございます。」


 そう言うと支配人は、丁寧にも両手で支えるように。

 小さな黄色い棒。ホテルのルームキーの様な物を此方に差し出す。

 俺は差し出されたパスコードを受け取り、棒の表面見遣れば。

 英数字が浮かび上がる。それを確認した俺は受け取った棒を

 片手で握り潰す。すると棒は光の粒子と成って砕け消える。

 支配人から二階へのパスコードを受け取った俺は。


「じゃあまたね、ミランジェさん。」

「どうぞごゆっくりお楽しみを。」


 此方を礼で見送る支配人へ、軽く片手を上げて応え。

 受付横にある階段を上がって行く。背後から俺をチラ見する

 他キャラの視線を感じながら、ね。むふふ。

 あ、だめだ。もうニヤけ面を抑えられない。

 まいっか。此処からなら誰にも見えないし。


「(チラッと横顔が見えたけど、結構驚いてたなー。

 これで俺が個人なんだって知ったらもっと驚くぞ、あれ。)」


 何故俺みたいな個人が、他の競争相手を押し退けてまで

 貸し切りが出来たかと言えば。それは金と親密度のお陰だ。

 このオンラインゲームに存在するNPCは勿論。

 宿屋や雑貨屋などには、店毎に貢献度やら親密度等と言った、

 公然の秘密と化した非公開パラメーターが存在する。

 それらを上げるには店からの頼み事を聞いたり

 足繁く通ったりとまあ色々。

 俺は常日頃このお気に入りの酒場へ、結構な額の寄付に、

 更には難度の高いお願いも熟し続け。親密度と

 貢献度を稼ぎまくった訳だ。

 お陰でちょっとやそっとのギルド程度では、店から

 俺への優先度は揺らがない。むっふっふ。

 因みにこの酒場はNPCが経営しているが、一般PCが経営している店も

 中には存在する。ま、そう言った所は至極金に靡き易かったり、

 単純に裏でギルドが───とか。色々面倒で、何より面白みが無い。


「やっぱ貢ぐなら、オーナーがNPCの所だよなー。

 NPCにも好感度あるとか、分かってるよ運営は。」


 階段を上がりなら、ゲームの仕様が心にだだ刺さりする事を呟く。

 序にオーナーが女性キャラだと尚良し。何て事を考えながら二階へ到着。

 一階とは違い二階は深々としており、少しだけ下での騒がしさを恋しく思う。

 此処は一階とはエリア管理が違い、更に今は貸し切り設定。

 下の喧騒も此処には届かないがその分此方の音も下には絶対に届かない。

 俺は感慨に耽るのをやめ。

 二階中央宴会用の大テーブル席、では無く。

 中央席を素通りしては端にある個室の扉を開けて中へ入る。

 ノリでまるまる貸し切ったけど、来るのは俺を含めても五人。

 どう考えてもあんなデカイ席はいらんし、二階全部を余さず使う気もない。

 こう言うのはノリが大事なのだ、ノリが。

 俺が入った個室の中は七~八人で使われる事を想定された広さで、

 中央に長テーブル。長テーブルの両側に三つづつ、上下に一つづつ

 椅子が置かれ。オリエントランプの優しい光が室内を満たしている。

 相変わらず五人程度で使うなら十分過ぎる広さだな、此処は。

 そう思いながら俺は長テーブル上下の椅子を二つ、部屋の隅へ除け。

 片側三席の真ん中へ腰掛けた。


「ふぃー……。っとと。」


 俺は危うくだらけそうに成るのを堪え。片手を開いては、

 何もない空間にパスコード浮かばせ、もう片方の手で

 窓型インターフェースを開き。パスコードに浮かび上がる英数字を

 インタフェース上に打ち込んで、それを仲間五人へ送信。

 そして再びパスコードを握り潰し。インターフェースも閉じる。

 これで彼らは一階を経由せずに二階へ直接跳んで来れる。

 もう今やるべき事は済んだな。気の抜けた俺は長テーブルに上体を投げ出し。


「あぁー……。落ち着く。」


 ちょうど良いまったりとした感覚が体を包む。ぶっ続けの狩りに

 祝賀会場の手配と。疲労感は感じずともやり切った感はある。

 仲間が来るまでの少しの間。このまったりに身を預けよう。


「……。(こんな事してて良いのかな?)」


 まったりしようとして、頭にそんな考えが響く。

 オレの体は今現在大惨事の真っ只中。運営に連絡を入れたとしても、

 行き成りログアウト出来る可能性は低い。だって俺以外は普通に皆

 ログアウト出来てたもん。つまりサーバーでは無くクライアントの問題。

 今使用中のVR機器が故障なり何なりしている可能性が高い。そうなると

 当然運営にはどうする事も出来ず、対処は消防か警察へ流れる訳で。

 彼らは俺の部屋に上がり込み、大惨事のオレが着けているVR機器を

 あれこれするんだろう。

 そして、ログアウト出来たオレはその真っ只中。しかも多分初めて意識を

 VRに閉じ込められたとかってニュースに成って───思考がそこで止まる。


「ぁぁぁああああああ! ああああぁぁぁぁ!」


 机に突っ伏したままで叫ぶ。

 過去の恥ずかしい記憶を不意に思い出してしまった、そんな時の様に。

 得も言われぬ感情が自分の内側で激しく暴れ狂う。無理無理。

 これじゃ祝賀会を微塵も楽しめないよ! 現実のオレが大惨事の

 中でどう楽しめって言うの?

 やっぱり今以上に成る前に、さっさと助けを乞うた方が良いかも知れない。

 連絡が遅れれば遅れるほどに『何でこんなに成るまで

 放っておいたんですか?』って聞かれた時に辛い思いをする。そんな気がする。

 うん、場所はもう用意したし。自分をどうにかしよう!

 俺は席を立ち。出入り口へ向き直る。


「?!」

「……。」


 自分だけだと思っていた空間。だが、出入り口には何時の間にか、

 レンチコートに無精髭を貯えた男性が一人。此方を気不味げに

 見詰めて居た。俺は出来るだけ平静を保ちながら。


「よ、よーく来たな。相棒!」

「あ、ああ。そのなんだ。特にする事も無かったしな。

 他の連中も時期に来るぞ。」


 言いながら相棒は、俺の隣の席。上座側へ腰掛けては此方を見上げ。


「座らないのか?」

「えーっと……。」

「分かってる。俺は今来だばかりだ。だから心配するな。

 ふ、それに俺が一々誰かに喋ってりする訳ないだろ?」


 相棒は困ったような笑みを浮かべ、そう話す。彼は暗に

『何も見てない。見ていても誰にも話さないさ。』

 そう俺に伝えたいのだろう。

 いや、そうじゃない。そうじゃないんだよ相棒。

 俺は如何ともし難いと思いつつ。仕方なしに

 椅子へ再び腰を下ろす。ああ、タイミングを逃してしまった。




 何とも言えない思いのまま、他の仲間を俺は相棒と待つ事に───

最後までお読みいただきありがとうございます。

この物語を楽しめたのであれば幸いです。

最後までお読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。

誠にありがとうございました。

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