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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第三章
37/65

第三十ニ話 やって来た大混乱、その向こうで。

 ───空色の青年が幼女を無造作に片手で掴み上げ、鈴を振るか

 の様に揺らして居た。




「やめろーバカー!」

「……。」

「うぇぷ。……わ、分かった。んん、ごめーん。

 はい、はい謝った。謝ったからもうお終いね。お終い。」

「………。」

「やめ、やめろよぉぉぉおおおおお!」


 俺はずっと無言でロリ神様を揺さぶってやる。

 これが現実だったら到底許される行為じゃない。通報案件。

 だけど此処は仮想でゲーム内で、誰に見られてる訳でも無いの

 で無問題。普段なら無問題だろうとやらないけど今は例外だ。

 それにさっきやられた事、黙ってた事を思えば……。愉快さす

 ら浮かんで来るわい!


「ルル、ルプス様。もうその辺で、あ、あの。」

「(あ、周りに“目”はあったね。)」


 此処は彼女や俺に取ってはもう現実。いけねいけね。

 危うく騙されかけた事でとさかに来てた。クールに、紳士に落ち

 着こうぜ、オレ。

 人目もあるので片手に掴み上げていたロリ神様をそっと地に下ろ

 し。ネコちゃんズを両手に抱くようにして気を落ち着かせる。

 ……ふぅ。よし癒やされた。


「いや取り乱してすみません。」

「あ、いえ。その───」

「今のはニスル様が悪いのでお気になさらず。」


 リストゥルンさんが言い倦ねる事をミランジェさんが代わりに言

 い放つ。その二人をロリ神様が息を乱しながら睨み付け。


「わわ、わたしがあんな事、され、されてたら! 助けなさい

 よ!」

「もも、申し訳ありませんッ!」

「申し訳ありません。ニスル様がじゃれているのかと。」

「このっ! はぁはぁはぁ!」


 このロリ神様は絶対君主、と言う訳でも無いのかな?

 でもリストゥルンさんの方は完全に改まっているし。うーん?

 まあ他所様の力関係は余り気にしないが一番だな。 他所の固定

 へ、ギルドに接するが如く。深く触れず尋ねずが一番。


「っく。い、いいわよ。兎に角もうオマエはわたしのモノだか

 らね! はい決定!」

「あぁ? まだ言うかこのロリっ子!」

「あわ、ちょ、もうそれは───!」


 首根っこを再び掴んで揺らしてやったロリ神様が呟く、と。

 “ビキビキ”等と軋む異音が辺りに響きだし。途端に“パリン

 ッ”っと割れる音共に白い空間が砕け散る。

 何事かの破片が四方から降り注ぐ中、慌てて俺は姿勢を低くし

 ては防御の体勢へ。そうして備える……のだけど、暫く待って

 も腕に何かが打つかる感触は一向に無かった。

 恐る恐るに閉じた瞼を開くと其処は。


「元の……部屋? はぁービビるわぁー……。」


 白い空間から再び元の部屋へと戻って居た。

 “ホッ”っとして立ち上がり周りへ少し視線を流せば。特に驚い

 た様子の無いリストゥルンさんとミランジェさんの姿。二人にと

 ってアレは慣れた事象なのかも知れない。うーん、俺もVRでその

 手の演出には慣れてるんだけどなぁ。やっぱ生命優先で動くと行

 動が違ってくるよ。

 NPCが持つには規格外な空間改変能力だと改めて思いつつに、ロ

 リ神様へ文句を言おうとして見れば。


「……。」


 無表情で此方を見上げるロリ神様と目が合う。


「? あんだよ?」

「! べつにー……。」

「???」


 ネコちゃんズと一緒に抱え込んだロリ神様が此方を見上げて居た

 ので、何かと尋ねてみるもそっぽを向きやがった。まるで親戚

 の姪っ子を相手してる感覚。……まどうでも良いかっ!


「部屋が戻ったと言う事は帰れるって事だし!」

「あ! 逃がす訳無いでしょ!」


 言いながらロリ神様がまた何やらしようとしていたので。


「良いのか?」

「な、な、なによ。」

「あの空間の崩し方を俺は分かってる。また空間に俺を引きずり

 込むなら、このまま大きく振り回してやるぞ。」

「!? こんなにも美しい女性に何て事しようと思ってるのよ!」

「ふん、知らんな。俺の守備範囲でもないし、巻き込まれる俺の

 方がずっと被害者だし。」

「わたしは神様よ! もっと畏れたり敬ったりは無いの!?」

「こんな、神様が沢山いる仮想世界で言われてもなぁ。」

「此方はホンモノ! ホンモノなのッ!」


 ゲーム世界。神と呼ばれるキャラもモンスターとかも普通に沢山

 居る。まあ中身があって本物に出会ったのはこれが初だけどね。

 だけど本物かどうかは分からない。前もそうだったけど、今の俺

 にとって現実に居る向こう側がマジでどうでも良いのと同じだ。

 開けられない箱の中身を気にしすぎるのは無意味。

 ネトゲでPCと対する時は、箱に書いてあるラベルを読んで『ふー

 ん。』程度に思って置くのが疲れないコツ。

 それに戦闘中でも無い今のロリっ子を恐れたりはしない。

 そうして俺とロリ神様が睨み合っていると。


「お、お二人共落ち着いてくださ───」


 リストゥルンさんが口論を止めとうよ此方に近付く、その瞬間の

 出来事だった。

 “ドガンッ!”

 等と何かが勢いよく打つかる音が室内に響き。


「「「!」」」


 全員がその音に驚く。怪音はこの部屋にある扉、俺とリストゥル

 ンさんが入って来た扉からの物。


「「……。」」


 突然の異音に固まる俺とロリ神様。そんな俺達と違い素早く動け

 たのは、険しい表情で扉を睨むリストゥルンさんともう一人。

 “ガチャリ”と。事も無げに扉を開け放ったミランジェさんの二

 人だけ。


「うぅ。……。」

「「!」」


 扉を開くと同時。室内へ一人の女性が倒れ込む。

 身に付けた衣服はリストゥルンさんと同じ物で、詰まりは酒場の

 スタッフさん。

 それが一体何故? その場の全員が同じ事を思ったに違いない。だ

 けど疑問に時間を割く暇はそれ程なかった。何故なら。


『キッキー!』


 甲高い叫びを上げたのは、倒れる女性の向こうに居た猿型モンス

 ター。そいつは室内を視界に収めると。


『キー!? キッキキー!キッキキー!』


 その場で大きく手を叩きより一層激しく叫び上げた。かと思え

 ば不意に。


『キー!』

「あうッ!」


 倒れた女性を踏みつけ大きく飛び上がっては此方。俺の方へと

 飛びかかって来やがった!

 咄嗟に俺は左手に仲良く抱えて居たネコちゃんズの野生を信じ

 て手放し。空いた手に特化ショートソードを呼び出しては。


「るらぁ!」

「あーあーあー!」

『キィ!』


 片手で騒ぐロリっ子も気にせず飛ん出来た猿型モンスターを斬

 り飛ばす───も!


『ッキッキッキ。』


 見た目通り軽い身の熟しで、飛ばされる最中に姿勢を整え戻し、

 飛ばされた先では見事な着地を見せた。流石猿型。


「つかやっぱ対爬虫類特化ソードじゃ仕留めきれねーか! しか

 も周回後の品質落ちっぱだしね!」


 俺は右手で叫ぶロリ神様と、呼び出したソードを持つ左手、それ

 ぞれを交換してはモンスターにトドメをと思っていた、けど。


「はぁッ!」

『キキ!? ……───』


 切り飛ばされたモンスター。その背後に控えていたらしいリ

 ストゥルンさんが、呼び出した槍でモンスターの身を貫く。


「おお! ナイスフォロー!」

「! ふふ。」


 彼女は勇ましい表情を笑顔に変え此方に笑いかけてくる。

 良い。こう言うふとした連携は多人数ゲームでの醍醐味で、マ

 ジで良いもんだ。

 オンゲの素晴らしさを噛み締めつつ、俺は左手に入れ替えたロ

 リ神様へ。


「で? 何で店内にモンスターが居るんだよ。ペットか何かか?

 だとしたら趣味が悪いし懐かれてないの笑えるぞ。ペットはも

 っと可愛いくて大人しいのにしろって。リスとか。」

「え? わた、わたしに聞かれたって分かんないわよ! こんな

 のペットでも何でも無いんだから!」

「マジ?」

「マジよ。」


 ロリ神様の困惑具合から、これがロリに仕組まれた事ではないと

 察する。コッソリ俺を~……じゃ無さそう。

 となると俺が欲しい物を持っているのはあっちか。


「申し訳ないですが、何があったのか報告を。」

「うぅ……。は、はい。」


 ミランジェさんが倒れた女性の側へ屈み込み言葉を飛ばす。

 倒れた女性はこの酒場のスタッフで、リストゥルンさんと同じ制

 服姿の女性キャラ。俺が今尤も欲しい話を聞けるとしたら彼女

 だ。

 そう思い側へと寄る。

 その最中『お見事でした。』とミランジェさんが呟き、会釈で返

 事をは揃って倒れる女性の下へ。女性キャラは苦しそうな様子

 で。


「獣が、突然獣の派閥のモノが店内に現れて……。」

「襲われたと?」

「はい。私はニスル様へこの事をお伝えに此処まで走っ

 て来たのですが、何故か扉が開かなくて。」

「!」


 服の首裾を掴んだロリ神様の。その体が僅かに揺れた気がする。

 俺はそれよりもこのスタッフさんも中身のあるNPCなのだろうな

 ぁと、そっちが気になっていたり。


「んんッ。それで?敵の数は?」

「直ぐに伝令へ走らされたので正確には分かりませんが、兎に

 角沢山の獣達です。それも我々乙女達でも押さえきれない程!」


 ロリ神様と話している間に、お店はとんでもない事になってた

 らしい。わーとんでもねーっと他人事として思っていると。

 その後二、三話を聞いていたミランジェさんが立ち上がり。

 此方、正確には俺に首裾を掴まれるロリ神様へ。


「大変な事に成りました。」

「それは分かってるわ。何時もの───」

「いえ。今回は本当に貴方の首、頭。四肢をもいで帰る気らしい

 ですよ。そして、それは今回可能そうです。」

「え゛? な、なんで!?」

「話を聞いた限り今回の彼等は本気で貴方を狙って来てます。

 でなければこんな、館を襲撃する様な事はしないでしょう。

 ……襲撃を許した落ち度には遺憾を禁じえませんが、それは今は

 置いておき。これから如何しましょうか?

 襲撃者の眷属は乙女の数を軽く超え、此処を占領するのも時間の

 問題かと。そう成ればいずれ広間も機能しなくなり、ニスル様は

 彼等に捕まる事になるかと。」


 内容は慌てふためくレベルだと思うんだけど。ミランジェさんは

 驚くほど冷静に淡々と話す。動じない人だなぁこの人。あれ、て

 かこれ俺も逃げらんなくない?


「ふん。心配なんてしなくていいわ。」


 ロリ神様は自信満々な様子で言い切る。まああんだけの力持って

 るっぽいしな。この襲撃とか余裕なのだろう。

 ああだからミランジェさんも慌ててない訳か。なら俺が逃げるチ

 ャンスも十二分にあるな。ラッキー。

 考える俺へロリ神様が途端に顔を此方へ向け。


「早速の出番よ。わたしの勇士候補。」

「ハッ。お断りだね。」

「こんっなに愛らしい神様のお願いを断るとか、正気!?」

「だって俺関係ないし。」

「さっき協力するって言ったでしょ!」

「ああ~……。そうだった。」


 まさかこんな直ぐに使われる事になろうとは。でも。


「今の感じロリ神様がそのまま出てけば問題なくね?」


 襲って来たのは何時か森で倒した魔猿。種的にもモンスター的

 にもザコな部類だ。事実俺が今適当も適当な剣で切り飛ばせた

 程度に。だったらチートロリの敵にすら成れない。


「え? ま、まあそうなんだけど……。」


 何故か言い淀むロリ神様。

 今回の狙いはロリ神様。なら俺が動いて生命を危険に晒すなんて

 プレイングミスは絶対したくない。安全っぽい此処で嵐が過ぎる

 のを待って、その後───


「ルプスさん、いえルプス様。」

「はい?」


 算段を考えている所を突然ミランジェさんが改まり。


「私から、このオリエンタルランプのミランジェとして。

 信頼出来るお客様の貴方にお願いがあります。」

「!」

「どうか私達のこの場所を、仲間を。館を守っては頂けないでし

 ょうか? ニスル様では大暴れで、スタッフを守れるとは思えな

 のです。」


 きっちとした礼を此方に見せるその姿は、何時もの受付のお姉さ

 んの姿。俺が好感度を上げ続けたその人。


「ちょっと急にどうしたの? わたしでダメなのにアンタのお願い

 でどうこう出来る訳無いでしょ?」

「……正直、積極的には関わりたくないです。俺は俺が一番大事

 ですから。」

「ほら! ほらこの外───」

「だけど。此処は俺にとっても大切な憩いの場。それにミランジ

 ェさんにそう頼まれたら、俺断れないっすよッ。」

「───は?」


 間抜けな声を出すロリ神様には目もくれず。


「ありがとうございます。ルプス様。」

「任せてくださいッ。俺は期待に応えますよ。」

「ルプス様、私達の為に戦ってくれるのですね!」


 小さく笑い合う俺とミランジェさん。それを見て感動したらし

 いリストゥルンさんの様子。ああ、俺は今最高にロールしてる

 って感じ。


「ちょちょちょちょっと! おかしいでしょう!」

「あにがよ?」

「わたしのお願いはダメで、何で二人のお願いは聞くの!?」

「簡単な事だよ。」

「?」

「二人のお姉さんが俺の好みだからさ。」

「……そうよね。男は何時でもそれよね。」

「俺で男全てを判断するな。最低なのだとしたら俺個人だ。

 っとまノリは冗談だったとしてさ。」


 開け放たれた扉を見ながら。


「……マジな話し。結構此処が好きなんだよね~俺。

 しかもロリもリストゥルンさんもミランジェさんも中身入

 り何だろ?」

「わたしだけロリ呼びはやめない? ニスルさ───」

「だったら見捨てるのもなーって話し。要は寝覚めが悪いん

 だよね。」

「ねえ? ねえ聞いてる? わたしはニス───」

「今までそうと知らず接してきたけどさ。今さっきのミラン

 ジェさん何か、俺が好みの対応を今此処でしてたんだよ。

 あんなんでマジに乗せられて生命掛ける訳無いけどさ。」

「……貴方を安く見た訳ではありません。」


 ミランジェさんへの返事は肩を竦める行為で済ませ。


「それって今までの俺を知ってるから出来る事だろ? んで俺

 も思わずノッて見せちゃったけどさ。思ったよ。“中身がある

 んだ。”ってさ。

 正直に言えば、此処で戦っても土壇場で俺は俺の生命を優先し

 て逃げるかも知れない。」

「「「……。」」」


 扉から敵の姿はまだ見えて来ない。


「そんでも良いってんなら……。まあ俺は戦いますよ。戦える限

 りっすけどねー。此処で言い切れない格好の悪さは、これこそが

 俺の素って事で一つ。」


 相手はNPCじゃない。中身は未だ何か分からない知的生命体で、

 そのフリ、ロールをしてるだけってのはもう納得した。

 話によると死んでもあんま問題ない連中らしい。でも、死んだら

 此処から居なく成る。この、俺が最高だと思える仮想世界から消

 えてしまうのだとか。それってちょっと勿体ないよな。


「本当か嘘かは分かんないけど、この世界が好きって言ってる連

 中を。俺と同じ世界が好きな人達を───!」


 見据える扉の向こう。薄暗い中で何かが動いている気がした。

 剣を握り込み、身体を僅かに前へ倒しては。


「見捨てられないんで。自分の生命が大切な小市民、いっ来まー

 す!」

「は? えちょちょちょッ!?」


 叫び、俺は倒れたままの女性を軽く飛び越え。薄暗い廊下へと走

 り出した───


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ───部屋出る間際ミランジェさんからすれ違いざま『行って

 らっしゃいませ。』との、依頼を受けた時同様のセリフ言葉を送

 られる。ただし何時もと全く同じでは無く少しの笑顔が添えられ

 て居たけどね。だから今俺はとても。


「良い気分ッ!」

『キキ!?』


 薄暗い廊下に居た猿型モンスターを切り上げては、打ち上げられ

 た身体を叩き落とすように剣を振るい。


「トドメだよっと。」

『!! ……───』


 フィニッシュムーブを決める。狭い廊下で一匹程度なら何とかな

 るな。

 んーんそれはそれとして、これは燃える展開だ。

 行きつけの店を守るなんて面白そうなイベント、そうそう体験で

 出来ない事だ。


「(……水面下では世界の乗っ取りが画策されてるけどね。)」


 等と思いながら長い廊下を走って居ると。背後から足音が此方に

 近付き。


「私もお手伝いしますね。」

「お、マジっすか。」

「はい! それとミランジェさんから『店の一階ホールで戦ってい

 るヒト達が居るので、まずは彼等と合流を。』との事です。」


 何時か渡した腕輪と本日作成の槍、パルチザンを手にしたリスト

 ゥルンさんが俺の隣へ並走して来る。


「ありがとうございます。っと。」

「ととと、止まりなさいって!まえ、前ー!」

「分かってる分かってる。」

「ならもっと慌てなさいよ!」


 左手に装備したままの、喚くロリ神様が言う通り前方には猿型モ

 ンスターの集団。

 此処で足を止めている場合ではない。フロア連中が全滅してたら

 此方の寝覚めが悪いし、このイベントの勝率にも影響しそうだ。

 なので此処は避けて通らず。


「リストゥルンさんは槍を構えて前へ。俺は後ろに付きます。

 んで前だけ見て後ろは気にしないでください。」

「任せてください!」

「ばかばかばか!止まりなさいって───」

「すぅ。……りやぁああああああああ!」


 深く息を吸っては走り出すリストゥルンさん。

 あー……補助スキルとか使わないのか。いや、話だと最近此処に

 来たっぽい、マジな意味での初心者らしいしね。

 大丈夫だと思うけどちと不安なので、補助スキルをこっそり彼女

 へ使用。手持ちにアイテムが無いのでAPを消費しては。


「(“ディフェンスアップ。”“スケアレジスト。”こんなもん

 か?)」


 取り敢えず防御と怯み値耐性上げときゃ大丈夫っしょ。

 俺の補助スキルは前提条件の為だけに取った下位も下位。まあ

 この状況なら無いよりマシだ。

 バフを掛けた俺は、猛進するリストゥルンさんの後ろに付きつ

 つ。


『『『キキー!?』』』


 槍を構えた彼女の突貫に、猿型モンスターの集団はボーリングの

 ピンの様に弾け飛ぶ。突破力に飛ばされたヤツは無視して。


「それっと。ほいほいっと。」

「わ、わ、わ。わたしを片手に掴んでるの忘れてない!?」


 目敏く躱したヤツだけを狙い。回避の隙、着地を刈って行く。

 身体を揺らす度に片手に持ったロリ神様が鳴くけど、構う余裕は

 無い。あっても無い。

 そうして薄暗く長い廊下をリストゥルンさんを前衛に駆け抜け。

 やっと主流の廊下まだで辿り着く。


「ホールは此方です!」

「あいあい。」


 リストゥルンさんの案内の下、抵抗しているらしい人達の下へ向

 かう事に。途中襲われているスタッフさんを猿の集団から守った

 りしては、いよいよ厨房入り口へと到着。


「「!」」


 中が騒がしいと気が付き。入り口の物陰に二人で身を隠し、中の

 様子を少し窺う。


『キキキ!』

「ああ、その料理にどれだけ時間がかかったと思ってるの!」

『キーキー!』

「っく。ちょこまかと! こんな奴らに私が!」


 厨房内ではスッタフのお姉さん達が暴れる猿どもに苦戦している

 模様。見た所誰もまともな武器を持っている様子が無い。

 いや、武器は持っているのだけど。


「(厨房で槍を振り回すのは難しいだろうね。)」


 スタッフのお姉さん達は皆あの槍、リストゥルンさんが持つ粗悪

 品で戦っ───おうとしていたが。場所は最悪で武器の勝手も悪

 いらしく。遂には槍を地に転がし調理器具を手に奮闘し始める。

 思えば道中助けたスッタフさんもあの槍だったな。流行ってんの

 か?

 何てどうでも良い事はさっさと忘れ。俺は厨房入り口で。


「リストゥルンさんは入ってすぐにあっちへ。それで出口の方を

 向いて少し待機しててもらってもいいですか?。」

「? 何か作戦があるのですね?」

「ええ。ま作戦って程じゃないですけどね。」

「分かりました。私はルプス様を信じます。」


 そう言うとリストゥルンさんは頼み通りの位置へと身を潜ませ

 に。良い人だなぁ。

 見送った俺は入り口で室内の様子をもう一度窺う。室内には俺達

 が入って来た入り口ともう一つ。奥へ見える出口。

 あれが目指すべき場所は、フロアへの道。目的のフロアへは彼処

 以外にも道はあるけど、最短は此処しか無い。

 だからお姉さん達がモンスターの気を引いてる間に通り抜けてし

 まおう。


「って言うのもね。此処を見過ごしたら元も子も無いんだよな

 ぁ。それ引いても背後は怖いし、確保出来るフロアは確保しと

 いた方が後になって効いてくるもんだ。これゲーム展開のお決

 まり。

 ……うっしうやるか。」

「『うっしやるか。』じゃない! いい加減わたしを下ろして

 よ! おい、聞いんの!?」


 ちょっと泣くロリ神様は此処でも無視で、俺は狭い厨房でも振

 り回せるショートソードを構え。物陰から派手めに厨房へ飛び

 込み。


『!』

「キャア!」


 劣勢の中で襲われる一人のお姉さんへ近付き。


「そらよっと!」

『キキー!?』

「!」


 まずは一匹を斬り飛ばす。仕留めれた様子が無い所を見るに、

 マジで俺の武器は品質下がりまくってるな。こんな事ならあの鍛

 冶屋で修理の一つも頼んどきゃよかったぜ。


「(それにあの部屋だけかと思ったけど……。)」


 ロリ部屋を出て直ぐ。いや今も適宜個人倉庫へのアクセスを試み

 ているのだけど、一向にアクセス出来ない。

 結果から分かる事はこの建物がダンジョン判定に成っているか、

 今現在も戦闘中の判定だからかな? 周回用のアイテムと武器は、

 周回場所に最適化された装備。だからそれから外れたモノには

 遅れをとったりしてしまう。

 まあ手持ちがあるってだけ今は有り難いと思う。途中に使えるモ

 ンもねーしな。

 斬り飛ばした、倒せない格下モンスターを見つめながら考える俺

 は、今モンスターに襲われていたお姉さんへ手を差し出し。


「大丈夫ですか?」

「え? ええありがとう……。あれ?ニスル様!?」

「情けない。乙女なら武器を持ちなさい。そして武器を使ってわ

 たしを掴むコレを───ぉぉぉおおお!?」

「ニニニスル様ー!」


 余計な事を言いそうなロリを思い切り振り回しつつ、次のお姉さ

 ん達を助ける為に動く。

 近くに居たもう一人の厨房スッタフさん。彼女は中央の台の上に

 乗って料理を貪っているモンスターへ攻撃を加えているが、モン

 スターの方はまるで意にも介していない。寧ろ身体を揺すられる

 度に魔猿は。


「こ、このッ!」

『キッキ。キッキッキ。』


 小馬鹿にする様に笑っていた。他よりちょっと強いタイプらし

 く、武器も無い素手では意味が無いらしい。

 それを見たロリっ子が。


「───オマエよくもッ! ……何アノ獣? 何であんな弱そう

 なのも乙女はどうにか出来ない訳?」

「俺が知るかよ。まあ素手も武器も弱いんだろ。」


 リストゥリンさんもそうだが、同じ様なスタッフさんは皆乙女

 とか呼ばれてるらしい。……何で乙女って呼ぶんだ?

 何て適当な疑問を頭に浮かべつつ、俺は魔猿の背を“ポカポカ

 ”と殴っていたお姉さんの肩を掴む。


「! は、えぇ!!?」


 お姉さんは此方を振り返り俺とロリ神様を見ては大きく驚く。

 事情を聞かれる前に困惑する彼女へ横ズレる様ジャスチャー

 を一つ。困惑してるからか素直に退いた彼女の場所へ立ち。

 台ヘ剣を置いては。


「おるらぁ!」

『キ───!?』


 調子付いていた魔猿の背を殴り飛ばす。

 貫通属性の付与されている俺の拳を受けた魔猿は勢いよくぶっ

 飛び壁へ激突。ライフが自然回復したので火事場の判定は無く

 なったらしく仕留めきれて無い。まあライフの方が大事だし、

 敢えて攻撃を受けたりはしなくて良いよな。


「アッハ! 見た?あの獣が、ふふふ! 凄く良い気分!」


 何か分からんがロリ神様大喜び。

 魔猿をぶっ飛ばした俺は台の上から剣を手に装備し直す。

 すると壁にぶっ飛んだモンスターが。


『! キ、キッキー!』

『『『!』』』


 大声を上げる。そして他の魔猿達も俺にようやく気が付いてくれ

 た。

 さっきのはリーダーだったらしく、大きな声を上げると他の魔猿

 たちは俺を脅威と思ったのか一斉に逃げの行動へ移行。

 自分達が逃げ出すに近い方。つまり奥の出口を目指し動き出す。

 それが一纏めと成った所で。


「リストゥルンさん!」


 待機させていた伏兵。彼女の名を叫び合図とした。


「! らぁああああああああああああ!」

『『『キッキ!?』』』


 名を呼ばれた彼女は迫力満点に叫び上げながら、叫びにも負けな

 い迫力で槍を構え突進。見事猿型モンスター達を一網打尽。

 上手くハマってくれた喜びから。


「ナイスッ!」

「あ、え。」

「ハイタッチ!」

「は、はいッ。ふふ。」


 互いにハイタッチまで決めちゃう。マジでPTプレイっぽくなって

 来やがったな。


「……楽しそうねあんた達。」

「ロリ神様もさっき喜んでたじゃん。」

「そうなのですか?」

「よ、喜んでない!」

「マジか。自分の店の従業員助けられて喜ばないか。」

「! 喜んだわよ!」


 コイツおもろいな。っと、いかんいかん。

 興奮状態が続いた所為でさっきから距離感がおかしい。

 初対面を弄ったりしないんだけどな、俺。

 キッチンの出口で三人“ワチャワチャ”している所へ。


「リストゥルン。それにニスル様。そのヒト? は……?」

「「!(無言で頷くお姉さんズ。)」」


 襲われていたお姉さん達が尋ねてきた。

 そのヒト、とは俺の事で間違い無いね。此処は格好良く何か決め

 台詞でも行って立ち去ろ。な~にが良っいかなー。


「ああコレはわた───」

「私が此処で見初めた、期待の勇士ですよ。」

「「「!」」」


 ロリ神様が何か言い掛け、それを遮る様にリストゥルンさんが言

 い放つ。彼女にわざと遮る積りは無かっただろうけど、ロリ神様

 が睨んでる睨んでる。


「「「……。」」」

「(ん?)」


 勇士。と聞いたお姉さん達の視線が、何か変わった気が……?


「さあ。ルプス様、ホールへ行きましょう。」

「あ、ああ。そっすね。」

「ちょ、ほんとイイカゲン───」


 今は此方が優先だ。

 気になる視線を振り切り、俺達は厨房を後にして再び走り出す。

 目指すは酒場のフロア───


 ───厨房を通り過ぎ廊下を越え、遂に酒場フロアへ続きく扉

 の前に辿り着く。フロアへと続く扉を少し開き中の様子を窺う

 と。


『『『キキキー!』』』

「わ、そっち行ったぞ!」

「ぐあ! ……───」

「ああまた一人やられた! くそ、何て数だよ!」

「もう! これじゃキリがないわよ!」

「誰か回復、回復系スキルが使えるヤツはまだ残ってるかー!」


 飛び込んで来たのは頑張ってるキャラ達のオープンチャット。

 何時も俺が寛いでいる酒場フロアでは猿型モンスター達が多数暴

 れまわり。モンスターにやられたのか転がる冒険者達の姿もチラ

 ホラ。

 取り敢えず全滅はしてない様子で一安心だ。だけどそれも時間の

 問題じゃねーかな。これ。


「(態々助ける価値……んん?)」


 見渡す室内。その一角、外へと続く出口にはテーブルやら何やら

 で作られたバリケードと、その向こうで抵抗しているらしき集団

 の姿を確認出来た。おお、抵抗勢力残ってるじゃん!

 よし、よしよしよし。なら。


「リストゥルンさん、あの場所まで進みましょう。ただし一直線

 ではなく、道中戦ってるらしき人の近くを通りながらで!」

「はあ!? あん中突っ込む気!? て言うかそんな事せず勢い良

 く直進した方がわたしは良いと───」

「分かりました! はぁああああああああ!」

「───あああああああああばかあああああああ!」


 前衛をリストゥルンさんに頼むと。彼女は槍を両手で抱え、肩で

 扉をぶち開けホールへと勢いよく飛び出す。その勢いで何匹かの

 魔猿を引き飛ばすリストゥルンさんの姿に。


「(うーん前衛としては中々の胆力持ちだな。見込みもありそう

 だし、後で育成方針でも───じゃなくて、付いてかないと

 ね。)」


 何て思いながらその後に続きカバーへ入る。

 ホールへ突入した俺達はモンスターへ抵抗しているらしい集団の

 下を目指しながらも、途中バリケードの外で個別に戦闘している

 逃げ遅れっぽいPCの近くに寄っては援護を行い。


「今がチャンスだ、動けるなら俺達に付いて来い! そんで出来れ

 ばカバーよろ!」

「悪い、助かった!」

「ありがとう!」


 負傷した者を拾いつつ陣形を構築。そのまま店の出入り口へ着実

 に向かう。人数が増えた事で勢いが死んでしまったが、お陰で肉

 壁がこんなに沢山───


「流石はルプス様です。この様な状況でもヒトを捨て置くなどは

 しないのですね。」

「!? そ、そっすねよ!」


 不意にリストゥルンさんが振り返らずそんな事を言う。

 ……これで非常時以外で肉壁作戦は使えない。此処まで来て印象

 を下げるのは、ね。

 気を取り直しもっとちゃんとした陣形、具体的には弱ったキャラ

 を中側へとそっと動かし。


「速度は落とせない。このままバリケード前まで行ったら、手前

 にあるテーブルを踏み台使って全員で飛び込む。オウケイ?」

「分かりました!」

「「「おお!」」」


 リストゥルンさんと拾った連中が返事を返す。よし、このまま進

 んで───あん?

 最後の最後と周りを警戒すると、遠くでモンスターに取り囲まれ

 る誰かの姿が見える。其処は普段人気の全く無いカウンター側

 で、囲まれているのは何時も元気なスタッフさんと、不人気な受

 付の担当お姉さんだ。


「あはー。此処までっぽいね私達。あはは。」

「こんな時でも貴方は元気ね……。」

「笑顔と元気は私の取り柄だし!」

「どっちも私には縁が無いわ……。」


 僅かに聞こえる二人の会話。いや。よく見れば影は二人だけじゃ

 ない。側には他のNPC達の姿もあるじゃないか。あの場所で抵抗

 してたって事か。にしたってそれを取り囲む魔猿の量が尋常じ

 ゃ……そうか!


「(襲ってきたのは他の派閥の連中。だから魔猿達にとってはP

 C何かよりも、同じ魂持ちのイレギュラーPC達の方が重要なん

 だ!)」


 彼女たちは彼女たちで一つに集まり抵抗してたようだけど。それ

 ももう限界と言った様子。今にも魔猿に押しきられそう。


「あ、あ、あっちの連中も助けたいなぁー!」


 俺は助けたいと意見を上げてみる。すると襲い来る魔猿をソード

 で弾き飛ばした男性キャラが。


「はあ!? 態々モンスターが集まってる所に行く意味無いだ

 ろ! それに彼奴等多分NPCだぞ!」

「ま、まあそうなんだけど───」


 続いてボウガン装備の女性キャラが。


「確かに此処のってリアルだからちょっと後ろ髪惹かれるけど、

 相手はNPCだから大丈夫よ。見捨てても根に持つPCと違って、後

 でずっと恨み言を言われたりはしないわ。」

「(……まあそうなるよなぁ。)」


 拾った連中は皆NPCに興味がない様子。そりゃ中に魂がある何て

 知らないからな。

 人数が増えたデメリット。個人意見の圧殺。多数は少数を殺すも

 ので、俺の意見は敢え無く却下されてしまう。


「(確かに今から行っても、折角形になったこの流れが瓦解しか

 ねない。でも見捨てるってのも───)」

「直ぐには……。」

「?」


 どうしようかと悩む俺へロリ神様が小声で言葉を飛ばす。


「別に直ぐには死なないわよ。

 魂を持つ者同士が戦えば生命を失う事もあるけど、何に倒された

 からって直ぐ魂が還っちゃうわけじゃないの。わたしレベルの相

 手になら一瞬で、って事もあるけど。それ以外なら此処の仕様に

 従い瀕死になるってだけなの。」

「あ、そなの? ってきりやられたら直ぐに還っちまうもんなの

 かと……。」

「違うわよ。まあ……瀕死の状態で長く放置されると魂が還って

 此処で蘇生が……って事になるけど。それはオマエが気にする事

 じゃないし、乙女達なら戦死は覚悟の上よ。」

「……。」

「今の目的は館を取り返す事、それを考えれば今は見捨てるしか

 道が無いわ。分かった?」

「………分かった。」


 ロリ神様の言う通りだし、PC達の気持ちも分かる。今の状況でNP

 C助けて死ぬとかアホらしいだろうな。

 だから集団では動けない。なら。


「あ、おい! NPC何か今助けても役に立たないって、ほっとけ

 よ!」

「そっすねー! だからそっちはそのまま進んでてください!」

「!」


 俺が一人で行くしか無い。

 返事の言葉はリストゥリンさんへ向けた物で、彼女は小さく頷い

 てPC達と共に進んで行く。

 集団から一人離れ、NPC達の下へと走る。


「わーバカバカバカバカバカ! わた、わたたしも一緒に連れて

 くなああああああああああああ! 全部終わった後蘇生すれば

 いいでしょうがあああああああ。」

「あ、やべ。」


 訂正。一人じゃなかったわ。

 うっかり左手に装備されたロリ神様を、そのまま連れて来ちまっ

 た。生憎もう手放せる猶予は無い。仕方ないので泣き喚くそれと

 一緒にNPC達の下へぐんぐん進む。

 彼女達を取り囲む魔猿包囲網、それを抜けるのは大変だ。それに

 抜けたからって出れなきゃ意味が無い。だから、抜ける何て事は

 せず、そのままカウンター前を扇状に囲む魔猿一団。その一つを

 剣で切り払い、集団の中へ身をねじ込む。


『『『キキ!』』』

「あああ、ああああ、あああああ!」


 陣へ突然突っ込んで来た俺を、魔猿たが一斉に取り囲み。纏わり

 付く魔猿達。騒ぎ続けている煩いロリ神様を胸に抱くようにして

 は、右手に握るショートソード。それを床に突き立てては貯め

 られていたWP(ウェポン・ポイント)を全て消費してセットされたウェポンスキ

 ルを発動。


「“フレイムウィング”展開。」


 床に突き立てたショートソードからは炎が溢れ出し、刀身に渦巻

 いては次の瞬間。“ゴォッ!”っと言う音と共に真っ赤な炎が剣

 から溢れ出し。自身を中心に左右へとその炎の羽を大きく伸ばし

 ては。


『キッキキー!?』

『キキ?!キキキ?!』

「おわ、おわわ、おわわー!」


 俺へ跳びか掛かっていた魔猿は勿論、扇状に取り囲んでいた魔猿

 達を炎が飲み込み襲う。


「やるじゃない! え、なにこの力は!」

「ウェポンスキルって言うんだよ。(知らなかったのか?)」


 喜ぶロリっ子に応える。

 今発動したのは武器にセットされた“ウェポンスキル”

 武器は使用するたびWPと言う物が溜まって行き、それを消費する

 事でセットされたスキルの使用が可能に成る。

 必殺の技からバフデバフと種類は豊富で、どれも強力なモノが多

 いけど。使用にはモンスターを倒したりしてWP貯めないと行けな

 い仕様だ。

 周回で貯めたWPを惜しみなく全て使い切った。のだけど。


『キキー!?』

「(やっぱエフェクトが派手なだけだなー。)」


 品質が下がった状態で、しかもセットされたスキルもレベルが低

 い。だって周回でモチベを上げる為だけに、派手だからってセッ

 トしたモンだし。

 だから仕留めきれないモンスターが大多数。とは言え、それでも

 包囲網を一時的に瓦解させるには十分だった。

 炎に追われモンスター達が逃げ惑い、炎エフェクト終了と共に俺

 の視界には、魔猿に囲まれて居たNPC達の姿。


「「「………。」」」


 彼女達は突然の出来事にマジな呆気に取られている様子。

 なので。


「今がチャンス! だから走れッ!」

「今がチャンス! だから走るのッ!」

「「「!」」」


 まさかのロリっ子と言葉がハモりつつ。チャンスだぞと教え叫

 ぶ。

 すると彼女達は傷ついた仲間を抱えたりなどしてバリケード前へ

 と向かって行く。


「ほらもう済んだ!凄い助けた! だからわたしたちも!」

「オッケー殿(しんがり)で。」

「もういいっでしょ! 英雄ごっこはもういいっでしょうお!」


 何も英雄になりたくてこんな事をしたんじゃ無いんだけどね。

 まあ凄まじく格好いい事をしたのは認めよう。ふふん。

 折角助けたNPCをやられるのは許せないので、彼女たちの背後に

 付き。ちまちまと襲うモンスターを弾きながら俺もバリケードへ

 と急ぐ。

 戦いながらの所為で俺が到着する頃には皆バリケードの向こうだ

 ったらしく、俺とロリ神様が正真正銘の最後だ。

 前に誰も居ないので走る速度を上げ、バリケード前のテーブルを

 一つを踏み台にしては大きく跳躍。

 積み上げられたテーブルやら何やらのバリケードを飛び越えその

 向こうへ───!?


『キキー!』

「ヤベ!」

「隠れてたの!?」


 飛び上がった俺へ一匹の魔物が横から飛び掛かってくる。

 物陰で見えなかったのか! あーこれは終わったかな!?

 突っ込まれると思い防御の姿勢を取った瞬間。


『キキ!? ……───』

「おあ!?」

「あれ!?」


 飛び掛かって来ていたモンスターが空中で撃ち落とされる。

 落ちるモンスターを尻目に俺達はそのままバリケードの向こ

 う側へ華麗に着地。


「た、助かったぁー……。」

「ぁぁぁぁ……。」


 片手に掴んだロリ神様と共に溜息を一つ。

 そんな俺達の所へ。


「あんたら凄いな!」

「ナイスジャンプ!」

「NPCも助けたのね、凄いわ。」

「……何で幼女?」


 バリケード向こうに居たプレイヤー達が口々に声を掛けて来る。

 俺が彼等に適当な相槌を返していると。


「おい通してくれ───!」


 囲む一団を掻き分け誰かが此方に近付いて来る模様。

 何だ何だと思っていれば。


「ルプス!」

「へ?」


 一団を掻き分け現れたのはトレンチコートにライフルを構えた

 壮年の男性。つまりは。


「相棒!? それにお前らまで!」


 相棒の側には、甲冑姿の玉蜀黍に獣人のリュゼの姿まで。




 俺はバリケードの向こうで、思い掛けない面々の姿を見る事

 に───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです。

物語を最後までお読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。

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