幕間 何かの足音
───酒場にて。
賑やか、と言う程の人気は無く。程々の客に静かな
店内。そんな店内で。
「ではごゆっくり!」
ブロンド髪のウェイトレスが接客を終え、店の奥へと戻って行く
最中。彼女はカウンターへと立ち寄り。
「ミランジェ様。ちょっと良いですか?」
声を掛けられたのはカウンターで作業していた、白シャツに黒い
ベスト姿の女性。
「何です?」
「此処ではちょっと……。」
ウェイトレスの反応で何かを察したらしい黒ベストの女性は、近
くに居た同僚らしきに持ち場を任せ。二人は店の奥へと姿を消し
て行く───
───店の奥。人通りも無い通路を二人の女性が歩き、ふと前を
歩いていたベスト姿の女性が足を止め振り返り。
「それで?」
短く尋ね。
「はい。黄昏時に魔物がこの地を襲い、これを撃退しました。」
「それは素晴らしい活躍です。魔物は何処の者か分かりました
か?」
「アレは恐らくマシラの手先だと思います。」
「はぁ……。あちらのちょっかいはコレが初めてではありません
が、等々黄昏時に。しかも私達の膝下に手を出すまで増長してし
まいましたか。由々しき事態ですね。」
困り顔の黒ベストの女性に、苦笑いを浮かべるウェイトレス。
「それにしても。」
「?」
「確か貴方は戦いが余り得意では無いと聞きました。加えてこの地
に来て日も浅い。だと言うのに早々に魔物を退けるとは、流石と
言うべきですね。」
「いえ。それが、そのう、です、ね。」
「?」
ウェイトレスの彼女は戦いの時に起きた出来事を説明。
「───そのヒトに助けて貰わなければ、危ない所でした。」
「成る程。一先ず貴方が無事で何よりです。次からは先走ったりは
しないでくださいね?」
「気を付けます。」
黒ベスト姿の女性が、一呼吸を入れては区切りとし。
「……つまり、貴方はそのヒトを“勇士”だと言いたいので
すね?」
「そうです! 黄昏時の出来事でしたので、此方へ流れた魂の一
つだと思います。」
「でしょうね。」
「はい。なのであの勇士を此方へ、私達の下へ引き入れるべき
だと思います。」
「……ふむ。」
ベスト姿の女性は、ウェイトレスからの提案に少し考える仕草を
見せ。
「分かりました。上に掛け合ってみましょう。」
「! 是非お願いします。」
「見る目の確かな貴方方の話しですから、多分通るとは思います。
なので、その勇士を他へ取られぬよう。見張って置いてもらえま
すか?」
「ええ、ええ勿論。」
「頼みます。……今の我々はとても小さい。使える者は此方に引
き入れるべきでしょう。しかし、それをあの方が素直に分かって
くれるでしょうか。それだけが心配ですよ。」
「きっと分かってくれますよ。ああ、それにしても早く彼を引き
入れたいです。そして行く行くは───ふふ、ふふふふ。」
不敵な笑みを零すウェイトレス。そんな彼女を気にもせず。
「誰であれ、使える人材だと良いのですが……。」
少し遠くを見詰める黒ベスト姿の女性。
何かが、何処かで、ひっそりと始まろうとしていた───
最後までお読みいただきありがとうございます。この物語を最後まで読んでくれた貴方様に、心から
の感謝とお礼を此処に。
誠にありがとうございます。




