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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第二章
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第二十三話 何か始まりましたか?

 ───仮想に想造された森へ、二人の男が光をに包まれ現

 れた。




「うっし。んじゃ探そっか。」

「ああ。任せる。」


 お気に入り店の依頼を受け、森へ採取に来た俺と相棒。

 しかし俺の合図に『任せる』の返しはおかしい。


「あんで“任せる”よ?」


 尋ねると相棒は小さく笑いながら。


「側に居たくて付いて来たが、採取は事態は面倒だ。」

「わー正直さんー。」

「だから集めるのはお前に任せて、代わりに自分は辺りの警戒を

 して置くよ。元々お前のクエストだしな。」


 警戒してくれると相棒は言うが、素材があるこの森は油断しなけ

 れば初心者でも安全な場所。そして俺達は初心者よりも大分Lvの

 高い中堅冒険者。俺達には安全も安全な此処で警戒って……。

 必要の無い警戒をする程、採取が嫌なのだろうなぁ。

 まあ相棒は戦闘関係が好きな方だし仕方ない。それに相棒が言っ

 たように、ぶっちゃけ俺個人のクエストに近いからね。


「あいあい。ならま、ちゃちゃっと集めますかね。」

「ん。」


 早速俺はこの森で集めるべきクエストアイテムを探して歩き

 出す。そんな俺の側を、スナイパーライフルを取り出しては肩に

 担いだ相棒が続く。

 集めるべき素材はどれも見付け難い物、専門スキルやアイテムの

 必要ない物なので、特に苦戦などもせずに集める事が出来る。

 そうして黙々と俺が依頼品を集め続けて居ると不意に。


「なあ。」


 木の根で屈む俺の背へ、相棒が声を掛けて来た。


「んー? お、キノコめっけ。」

「……そんなに大量に要求されたのか?」

「いんや? 頼まれたのは各種三個だったよ。」

「おい。もうとっくに集まってるじゃないか。」


 俺は見つけた土色のキノコを採取し、それをインベントリへ仕舞

 い込みながら立ち上がり。


「ちっちっちー。分かってないな相棒。」


 相棒へ人差し指を振って見せる。そんな俺へ相棒が訝しげな表情

 を浮かべ。


「……多分自分が分からなくても問題無い事だろうが、一応聞い

 てやる。何がだ?」

「好感度だよ、こ・う・か・ん・ど。」

「ああ。ああやっぱり知らなくても良い事か。」


 納得した顔を見せる相棒。まあ興味ない事は分かってたので俺は

 全然平気。平気だからどんどん説明を続ける。


「こう言う素材要求クエストで必要分集めるのは三流。一流は余

 剰分集めて渡してこそよ。」

「二流一流は分からんが、随分と自信あり気に話すな。」

「手探りで調べたからなぁ~これって。」

「? 攻略サイトか何かで定石を調べなかったのか?」

「あー……それね。NPCの好感度ってマスクデータで、隠しがあ

 る事は知られてても、それの上げ方の殆どは攻略サイトも当てに

 は出来ないんだぜ。」

「へぇー……。」


 お。興味を示したご様子。


「良いか相棒。よく考えて欲しいんだけど、このVRゲームの世界

 には沢山のNPCが居るよな?」

「ああ。」

「彼ら、NPCが貰って喜ぶプレゼントや嬉しく思われる行動っての

 は、一定じゃないんだよ。

 山菜を上げまくってたら翌日には山菜で喜ばなく成ったりして、

 突然趣向が変わったりもすんのさ。」

「ほう。そう考えると……かなり途方も無い話じゃないか。」

「だぁろう? 自分が好感度を上げたい一NPCの情報を探すのも一

 苦労だし、例え探し当ててもNPCはPC事に頼み事が違ったり、貰っ

 て喜ぶ物、行動が結構変わるんだから、攻略が追いつかない。

 ってよりもまあ、意味が無いんだよねぁー。」

「だろうな。PC個人毎に要求が違って、しかも内容が一定じゃ

 ないとは……。普段NPC何て気にしないが、よくよく考えれば作り

 込みがとんでもないな。他VRで此処までの物も無いとよく言うが、

 それも納得だ。」


 流石の相棒もこれには歓心を示して居る。

 実際NPC攻略だけでゲームが成立しるしな、此処。


「まあ全員を攻略なんてそれこそ無理な話だけど、だからこそ

 自分のお気に入りのNPCには力を注ぐのさ。」

「……虚無な事をしていると思ったが、話を聞くと意外と奥深い

 事が分かって見る目が変わる。」

「虚無な事って……。メッチャ刺さるんですけど……。」


 VRゲームで現実に返っては行けない。これ大事。


「む。すまん。」

「良いよ別に。もう自分で自分を刺して慣れっこだし。」

「刺すな刺すな。」


 適当な雑談を挟みながらも目的の物を集めていた俺は、この

 辺りを引き際とする事に。大量に持って行っても、多すぎる

 と逆に好感度が下がる。微妙なパワーバランスを意識しなけ

 ればね。


「初回の印象付けにはこんなモンかな。」

「やっとか。」

「付き合わせて悪かったよ。」

「いや、付き合うと言ったのは此方だ。気にするな。」

「しかも手伝わなかったよなぁ!」

「ちゃんと警戒してたろ?」


 互いに笑い合っては、俺は大きく背を伸ばし。


「んー……はぁ。やっぱ良いわぁ。オンラインゲームって。」

「ふ。確かにな。」

「なー。」

「……俺の物語は盛大に───」

「? どうした?」


 少し黙ってから俺は首を横に振る。


「───んや。何でも無い。」

「そうか。」

「おう。それじゃ町へ返って報告だ!」


 俺と相棒は揃って町へと飛ぶ───


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ───町へ着いた俺達は直ぐに依頼主の下へ。

 店内で依頼主のラミアのお姉さんに依頼品を渡す。


「わ! こんなに沢山!?」

「少し頑張ったら余剰分が出来ちゃいまして。余剰分の報酬は結

 構ですよ、取り過ぎただけですから。」


 頑張ったキメキメスマイルで台詞を吐く。


「で、でも折角これだけ取ってきて貰ったのですから。」

「良いんです。俺達には必要無いものですし、このお店のお役に

 立てた事が、俺には最高の報酬ですから。」

「! う、うぅ。あ、ありがどう゛ございまず。」


 同じ目線だった店員さんは、何時の間にか此方が見上げる高さに

 伸びていた。うーんナイスラミア。


「それじゃあ俺達はこれで。」

「はい゛!」


 出口の前で立ち止まり。一度振り返っては。


「……また来ますね。」

「是非来てください! お待ちしてます!」


 相棒と一緒に一度会釈をしては店を後にする───


 ───店の外。店から少し離れた所で、俺は隣の相棒へ顔を

 向け。


「どうよどうよどうよ! 見たあのウブウブな反応! たま

 らにー!」

「あ、ああ。いやそんな事よりも、自分はお前の態度にびっく

 りだったぞ。」

「へ?」

「あんな台詞良く浮かんだし、出せもしたな。」

「あーあれ? そりゃ此処ゲーム内だし。必要ならロールも

 するぜ、俺は。」

「普段からそのノリを出してくれて良いぞ。」

「断るっ。」

「むう……。」


 何故か悔しがる相棒。っと、時計を見れば仮想と現実の時

 刻が表示されている。現在時刻を確認した俺は。


「良い時間だな。今日はこの辺にしとこっか。」

「……。」


 心配したような、もしかしたら不安? な表情の相棒。


「だーいじょうぶ大丈夫。俺は消えたりしないで明日も、その

 次だって此処に居るよ。お前が会いに来る限り、ずっと俺は此

 処さ。」

「……また来る。お前に会いに。」

「おう。」


 それ以上は特に言葉も交わさず、互いを少しの間見合っては。


「また。」

「またな。」


 相棒の姿が掻き消えていく。寂しい町の外れに俺は一人。

 近くにあったベンチへ腰を落ち着かせ。


「俺の物語は───」


 普通に生きてたオレにとんでもない事が起きた。でもその後はっ

 て言われると、それまでと変わらない程度に生きてる。まあ現実

 には帰りようがないし、現実の出来事も今の俺には無関係だ。


「───物語は盛大に何も始まらなかった。」


 よくある物語なら何かが起きたら、主人公が頑張るんだろうけ

 ど、俺は今の所何も無い。今までと変わらない、皆が主人公な

 VRゲームの世界で、変わらず一人のPC。これじゃあ気分も……。


「まいっか! ゲーム世界は楽しいし!」


 落ち込んだりしない。現実から切り離されてしまったけど、元

 々現実で過ごすのと此方で過ごすのは半々だった俺には、その

 半分がゲームの時間に変わっただけじゃん。

 消滅の危機も何か乗り切れちゃったし。


「現実パートが無い分、ゲームパートだけ。うひゅ! 最高ー!」


 俺は素敵な第二の人生に興奮し、ベンチから飛び立つ。

 さぁーてなにしよっかな。何せこのVRゲームには沢山のお楽しみ

 があるのだから。

 今までは現実時間や実生活の関係上、深く遊べなかったコンテン

 ツも盛り沢山。何せ遊び尽くすには一生掛かる、何て噂される位

 だからね。

 何から楽しむ? 俺は初心に帰った気分で、自分のステータス欄を

 確認。


「……遊ぶも何も……先立つ物が……ねーじゃねーかーーーー!」


 現実でも仮想でも、大に悩まされるソレを思い。曖昧な存在の誰

 かがベンチの前で咽び泣く。




 平穏な仮想的日々が、今日も過ぎて行く───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が楽しめた物なら幸いです。

お読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。

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