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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第二章
25/65

第二十二話 恐怖の次は絶望

 ───テーブルに頭を沈める青年と、それを“やれやれ”行った

 様子で見下ろす男性。




「大丈夫か?」


 思考がショートした俺に相棒の気遣いが届く。


「……消滅の恐怖を乗り越えた先には、絶望が待ってたよ。」

「そんな大げさ……って事も無いのか。お前にとっては命にも

 等しいな。」


 同じVRゲームを遊び、俺が失った物の価値が分かっている様子の

 相棒は、俺の心中を察してくれる。


「そうだな。取り敢えずお前から送られて来た物は、そのまま返

 してやるよ。」

「んー……。」

「? どうした?」

「いや。正直フレンズに送ったのは何時か譲ろうと思って、その

 タイミングを図ってた物ばっかなんだよね。だからそれを返され

 てもなぁーって話し。」

「返されたそれを売り払う、って考えは無いのか?」

「無い無い。人にあげた方が楽しい物達だからね。だから送り返

 さなくて良いよ。相棒が前に欲しがってた装備だし、それ。」

「そうか。ならお前からの贈り物、遠慮なく貰っておく。ありが

 とう。」

「おう。しっかし、これからどうすっぺかなー……。」


 贈り物以外。手放した物は売払った時のお金を使い、重要な物か

 ら取り戻すとしよう。でもそうなると莫大な額になりそうで、つ

 まり俺が無一文になるのは確定事項な訳だ。……はあ。


「これからの金策を思うとダル……くないかも。」

「?」

「俺ってば疲れ知らずじゃん?」

「まあ。良く長時間ゲームしてるな。」

「いやそうじゃなくてさ、此処に───」


 一度周りを確認。よし、相変わらず誰も側には居ないな。


「───捕らわれてからさ、疲れないんだよね殆ど。

 だから無限にゲーム出来るって訳よ!」

「それ、は良い事なのか?」

「もち良い事だろ? だって無限にゲームを遊べるなんて、夢み

 たいじゃんか。

 いやぁー捕らわれたのがオンゲで良かった。アップデートで変化

 し続けるだろうから、暇で精神がやられる心配も無い!」


 これがコンシューマ物だったら、永遠と同じ世界をループし続け、

 心がやられていただろう。……おおこわっ!

 染み染みと思い呟く俺の言葉に。


「お前……。本当にもう現実世界への期間を諦めるのか?」

「? うん。そうだけど何か?」

「あっさり言うな。」


 苦笑う相棒へ俺は。


「だって仕様がねーだろー。もう帰れる体が無いんだから。」

「それはまあそうなんだが。お前はそれで良いのか?」

「全然良い。」

「凄い奴だよ、お前は本当。」

「今更気が付くとは遅いな。」


 相棒は一度頭を振り。


「お前がそれで良いなら自分も構わない。こうしてお前と会える

 なら、お前が幸せならもう何だって良いよ。」

「お、おお。サンキューな。」


 何だか嬉しい事を言ってくれる。


「ただまあ、今まで以上に気は付けろよ。」

「ん?」

「これまでとは明らかに違うんだ。万一にもその事情を誰かに

 知られる事は避けたほうが良い。お前も言ってたろ? バレたら

 実験がどうのって。」

「言った言った。超こえー展開の話な。」

「実際にそんな事に成るかは別として、平穏に過ごしたいなら運

 営にはバレない様にしろよ。後他のPC達にもな。」


 此方を真剣に心配してくれる相棒へ。


「俺の事情を知って心配してくれたり、こう言う話が出来るのは

 相棒だけだよ。マジ助かるー。」

「気にするなよ。お前が逆でも、きっと同じ事をしてくれた

 だろ?」

「……多分っ!」

「おい!」


 笑い合う俺達。一頻り笑った所で。


「それで? これからどうする?」

「んーそうだなあ。今まで通りこの仮想世界を静かに過ごす、

 かな。」

「ほう。」

「んでその第一歩は……。」


 言いながら俺は仮想インターフェースを開き、流した装備品とア

 イテムを買い戻す。みるみる溶ける自分の貯金に目眩を覚えなが

 らも、絶対に取り戻したい物を買い戻した頃には。


「……うっしほぼ無一文オロロロロロロロロロッッロ!」

「吐くな吐くな。」


 自分の貯金残高に嘔吐感が爆発する。何だこのグロい数値は!


「数字がグロいとか意味不明! えぇこんな減るぅ!?」


 俺の想像の五倍は貯金が、金が溶けた。

 いやいや、こんなの本当に無一文じゃねーか!


「おぉ、おあぁ。」

「大丈夫か?」

「酒場への……新規のお気に店……自室維持費……。」

「ブツブツ言い出すと、本格的にって思うな。」


 俺が今まで行っていた最低限の出費すら今は出来ない。これは由々

 しき問題だ。兎にも角にも金がいる! 金、金、金ぇ!


「金……金がいるよぅ……。」

「貸してやろうか?」

「フレンズと金の貸し借りはしない主義。」

「だろうな。借り作りの為に言ってみただけだ。」

「おま! こんな疲弊してる友になんちゅう事ぶっこんでん

 だよ! 油断も隙きもねーなおい!」

「冗談だ冗談。」


 くっそーあの目、絶対冗談じゃないぜ。


「此方は上げた貢献度と好感度のピンチ何だよ。」

「らしいなぁ。」

「興味なさげぇ! 良いか!俺はもう初期の頃の“何を話しかけて

 も無反応”“まるで其処に何もないかの様な対応”はヤなの!

 トラウマだぜアレは。はぁ……この所持金の額。初心者に帰った気

 分だよ。」

「多分それは貢ぐには足りない額って意味なんだろ。そも初心者は

 貢ぐなんて遊び、まずしないぞ。」

「俺はNPCに貢げるの知って、最初っから速攻貢いだけど?」

「成る程。特殊個体だなお前。」


 何だ特殊個体って。でもさっきまで何処かしんみりとして、ちょっ

 と重い話から。何時ものノリへ会話のリズムが戻ってくれて嬉し

 いな。しかし金策、金策ねぇ。


「手早くデカく儲けるなら───」

「黒寄りの物はやめろよ。」

「───! す、する訳無いじゃん!」

「今は事情が事情なんだ。危ない橋は避けとけ。」

「うぃ。」


 まあ確かに黒に頼るのは危ねーな。もしもの貯金も今は無いし。

 となるとやっぱ。


「イベントも無い今。地道にクエストや狩りで稼ぐしか無

 いかー。」

「だろうな。それで? どっちにするんだ?」

「お、付き合ってくれちゃう系?」

「心配した分、今日はお前と一緒に居たいからな。」

「しゃしゃるぅ~……。(略:刺さるー。)」


 俺は自分の胸を抑えて見せると、相棒が立てた人差し指へ

 “フッ”と行きを吹き掛ける。撃ち抜かれたぜぇ。

 コントもそこそこに、俺は何か金を稼げるクエストはと、仮想イ

 ンターフェースを開いては検索。……美味しそうな物は特に無い

 な。ん? むむ、むむむ?


「これ、これに行こう!」

「ん。どれだ?」


 相棒が席を立ち俺の側へ。側に来た相棒へ俺が開く窓を向ける

 と。


「? 大して、と言うかほぼ稼げなく無いか?」

「此処ってさ、俺のお気に入りのお店。しかもこれ多分初クエ

 っぽいのよ!」

「だから?」

「初めてのクエストは俺が貰う! 初クリアもな!」

「……もう何でも良い。」


 俺は呆れ続ける相棒を他所に、うっきうきでクエストを受注し

 ては、相棒とPTを組む。


「いやぁ。楽しいな!」


 相棒を連れ、クエストの発行主であるお気に入り店へと向かう

 事に。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 酒場を後にしては町の外れ。お気に入り店近くへと来た俺と

 相棒。


「此処がお前の?」

「そそ。極最近見つけた優良店でございー。」

「……町外れも外れだな。」

「ねー。まあ此処人気な拠点だし、土地争いも激しいだろう

 からね。」

「NPCでもPCでも、個人じゃ此処らが限界か。」


 相変わらず寂しい町外れを少し眺めては、それぞれ感想を零す。

 少しだけ俺が気に入ったあの店員さんが居るお店。早速相棒と

 共に店内へ。


「! いらっしゃませー。」


 小さな店内でたった一人の店員さんが、カウンター向こうから入

 り口の俺達へ挨拶を飛ばしてくれる。

 挨拶に軽く会釈をしては、そのまま店員さんの下へ。


「あ、この間のお客さんですね!」

「どうも。」

「ふふ、いらっしゃい。今日はどのような御用でしょうか?」

「実はクエストの受注に来ました。」

「わ! 本当ですかぁ!」


 喜んだからか、店員さんの背が少し上がり此方を見下ろす形に。

 きっとカウンター向こうには、ラミアな尻尾が蠢いているに違い

 無い。んー良きっ! 興奮した店員さんは少し照れつつ上がった

 背を戻しては。


「え、ええっと。依頼派ですね、新しいアイテムを作って見よう

 と思って。その素材を冒険者さんに集めて欲しいんです。」

「ふむふむ。」

「此方が集めて欲しい素材のリストです。」


 店員さんから文字の書かれた紙を受け取る。書かれた文字は作り

 込まれた世界観に順次、解読不可能なファンタジー文字。しかし

 翻訳機能が働き、PCは難なくこの文字が読めるのだ。

 VRゲームの多くは高性能な翻訳機能を搭載しているので、海外の

 人とも問題なくコミュニケーションが取れちゃうからね。

 そうして翻訳された文字を読み、俺は集めるべき素材を確認する、

 だけど。


「(メッチャ初心者向けー。)」


 書かれていたアイテム素材の多くは初心者でも簡単に集められそ

 うな物ばかり。俺が素材の価値にある意味驚愕していると。


「あ、あの。難しいです、か?」

「いえ。そんな事ありませんよ。」

「良かったぁ。」


 不安そうな顔から“ぱー”っと明るく嬉しそうに笑う店員さん。

 良い、しゅごく良い。仮想世界での交流に心底嬉しい思いを感じ

 ながら、クエスト受注しては。


「では。」

「はい。よろしくおねがいします。」


 カウンター向かうから背を少し伸ばし手を振ってくれる店員さん

 に見送られながら見せ出る。

 店を出て直ぐ俺は隣の相棒へ。


「な、な、な? 良い感じの店員さんだろ?」

「まあ。感じは良いな、感じは。」



 等と話しながら、素材を集める為に冒険へ出かける───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が楽しめた物なら幸いです。

お読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。

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