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オレだけが此処にいる。  作者: MRS
第二章
21/65

第十八話 言動だけは英雄

 ───街中の大通り。猿型の魔物と戦うは三人の誰それ。




 突如始まったテストイベントを静観していた俺は、NPCの余りに

 も拙い戦い方、そして窮地で見せた表情に。感情の抑えが効かな

 くなり、静観をやめ参戦する事に。参戦してまず窮地の女性NPC

 を華麗に救い。


「そー……れっ!」

『ギギー!?』


 斬れるモノは斬って。


「ほほい。」

『! ギッギッギ!』

「外した!」


 動きの早い奴は油断を誘い。


「───なんちゃって。」

『?』


 回避を誘い、猿が回避した先は路地裏で待機しているマイサー

 ヴァントから一直線の場所。つまり。


「援護射撃が届くんだなぁ其処は。」

『ギギギギギ!?』


 “ババババッ!”と路地裏からの射撃をモロに受け、その場で体

 勢を崩す猿型モンスター。そんな隙きを晒すモンスターへ。


「これで最後っ!」


 両手で槍持つ女性NPCが一突き。


『! ……───』

「っ。はぁ、はぁ、はぁ……。」


 息の上がり切った女性NPCは、モンスターから槍を引き抜き。貫

 かれたモンスターが地に倒れ、その体が溶けるように消え去って

 行く。

 今のがこの襲撃イベントでの最後のモンスターだな。辺りにはも

 う猿の姿は無いし。よしよし。

 最後の襲撃者を倒し終わった事を確認した俺は、手にした武器を

 放る動作で仕舞い、一息吐く。


「ふぅ。街中で戦うってのも、新鮮で結構おもろいな。新実装の

 イベントだとしたら、期待出来るなこれ。」


 今までも襲撃イベントはあったが、それは町から離れた砦や古城

 跡地など。こうして多くのPCが拠点としていたりその他サービス

 が置かれる町では初めての試みだ。

 もしコレが実装されるとしても、大規模な物は無理だろなぁ。

 町では静かに過ごしたいってプレイスタイルの人も多いから、

 今みたいな小規模襲撃が主になりそう。うーん個人的には大型か

 してもらって、PC達の阿鼻叫喚具合を見てみたくもある。

 何て未実装イベントへ思いを馳せながら、周りを見渡すと。


「うおおお!」

「やったなぁ!」

「魔物を退治してくれてありがとう!」


 戦う様子を離れて見ていた町の人々、男性や女性NPC達が一斉に

 俺と、隣で槍持つ女性NPCへ歓声を飛ばし始めた。

 お、おお。クリアするとこんな風に歓声が上がるのか。むふっ、

 結構気分良いなこれ! 湧き上がる歓声に乗せられ手を振ってみ

 たりしちゃう俺。しかしふと良い気分の心に水が差される。


「(あれ。今って結構、いや物凄~く目立ってる。よな?)」


 メンテ中の運営がどうやってゲーム内を監視しているかは分から

 ない。だけど衆目が集まれば集まるほど、何だか見付かりそうな

 気がする。自分よりも上位な存在、運営に発見されてしまう

 かも。そう考えると途端に怖くなった俺は。


「………!」

「!? あ、あの───」


 その場からさっさと逃げ出す事を決めた。

 走り出した瞬間未だに呼吸を整えて居た、槍持つNPC女性が驚き

 何か言おうとした様子が見えたけど。構わず俺はマイサーヴァン

 トを待機させた場所へと向かい、そのまま追従の指示を出しては

 路地裏奥へと姿を隠す───


 ───歓声に沸く大通りから静かな路地裏へと戻り、イベントの

 あった大通りから出来るだけ離れるよう、静かに。だけと素早く

 移動しては、一旦足を止め。


「此処まで来れば大丈夫、かな?」


 辺りを“キョロキョロ”と確認して見る。

 ゲーム運営チームがどの様にして、メンテ中のこのゲーム内を監

 視しているかは分からないけど、何となく人目を避けて暗がりに

 居れば大丈夫だと思う。逃亡犯的思考で考えて、しかも成分は

 “何となく”が百パーセントだけどね。

 辺りに人目も無い事を確認した俺は、漸く心がゆとりを取り戻す

 事が出来た。


「んーそれにしても。さっきのテストインベント、結構面白かっ

 たなぁ。でも思わず助けに入ったのは不味かったけか? 戦っ

 てたのが野郎なら俺も参戦しなかったんだけどねー……。

 あ、援護ありがとね。武器はもう仕舞って良いよ。」

『承知しました。』


 指示を出すとノギは携えていたサブマシンガンを手放すようにし

 て仕舞い。俺は止めた足を再びゆっくりと進ませ始め、その後を

 マイサーヴァントが続く。


「……。」

『……。』


 静かでちょっとだけ暗い路地裏を歩きながら、さっき体験して来

 た出来事を思い出す。

 多分突発的なランダムイベント何だろうけど、あれは期間限定実

 装で、常設になる物じゃ無いだろうな。なったらなったで町でゆ

 っくりしたいプレイヤーから不評とか買いそうだし。

 実は、町でいざこざや騒ぎが全く無い訳じゃないんだけど……。

 それはまだ日常的な物。モンスター襲撃の騒がしさとは違ってく

 るだろうしね。

 此処での遊びは自由度も非常に高い、だから冒険に出かけず、

 アイテムの売買や生産、またはショー等で芸を披露したりと。

 戦闘意外の何かで資金を集めたては町だけで生活して遊んでい

 るプレイヤーもかなり多い。自由度とやれる事の多さ故って

 奴だ。


「所謂セカンドライフに近い、ってかそれその物か。

 遊び方の幅が広いゲームは良いゲーム~。」


 クエストを受けたり魔物を倒したりせずに遊んでいるプレイヤー

 が多いのも、このVRゲーム『エリュシオン』の特徴。

 セカンドライフ特化のVRゲームも勿論あるのだが、何故か此方の

 方がセカンドライフゲームとしても人気で、セカンドライフゲー

 ムのランキングに載っちゃうほど。

 改めて自分が遊んでいるこの仮想世界の、その凄さを再認識し。

 またそんな大好きなゲームの裏側を今歩いていると思うと。


「テンション上がっちゃうね!」

『はい旦那様。』


 嬉しさから少し後ろを歩くマイサーヴァントに同意をお求め言葉

 を飛ばす。飛ばされた言葉に反応し、設定された適切なランダム

 ワードが返される。そうして俺は“ルンルン気分”で路地裏を歩

 き進む。


「あの、待ってくださいっ!」

「ひゅほ!?」


 そんな俺の背に突如呼び止めの言葉が届く。

 現在状況で呼び止められると言うのはかなり怖い。だからつい

 情けない声が出てしまったとしても、思わず素直に立ち止まっ

 ても。決して恥ずべき事じゃない、よ。


「あ、あの。はぁ、はぁ、はぁ。」


 素直に止まってしまったけど、掛かる言葉は“あの。”と荒い息

 遣いだけ。どういうこっちゃと後ろを振り向いて見れば。


「!(さっき共闘したNPCちゃんか。いやでも何で? もしかして

 これ……。)」


 息を整えようと必死なNPC女性。呼吸の度に無防備な部分が揺れ

 るが、紳士な俺は一瞬で目に焼き付け脳内保存。チラチラと窺っ

 たりはしないぜ。いやちゃうちゃうちゃう!

 脳内保存映像は後で楽しむとして、今の状況が飲み込めない。

 “まさか中身入りのテスターなのでは?”そんな考えが頭に浮か

 び、恐怖に体を縛られ動きが鈍ってしまう。逃げるべきかどうす

 べきか悩む俺へ。


「はぁ……。んん。先程は助けていただきありがとうござい

 ます。」

「あー。いえーそんーな大した事は無い、です、よ。」


 何だこの口調。俺は人と話すのが苦手か。


「いえ! 大した事あります!」

「ほへ?」


 自分の挙動に冷ややかな笑みが零れそうになるが、突然彼女が

 声を荒げ冷笑も引っ込む。


「魔物から私を助け、町を救ってくれたじゃないですか!」

「あ、ああまあ。」

「十分大した事です! もっと誇るべきです!」


 あんな雑魚モンスター程度で此処まで喜ばれるとは。結構ヨイ

 ショなイベントなんだなぁ。ん、てか今の反応的にまさかイベ

 ント進行中とかって事?


「……あの、もしかして気分を害してしまいましたか?」

「ん? あ、はい?」

「助けて貰って置いて、私偉そうな事を……。ごめんなさい。」


 女性が頭を下げ謝って来る。話の感じだとNPCっぽいかな? テス

 ターならこんな対応はしないだろうし。

 相手が中身入りでは無さそうだと分かり、恐怖も和らぐ。

 NPCの、こう言う自然な会話がまた凄いなと思いつつ。


「気にしてませんよ。ただあの程度の雑魚で誇るのも、助けた事

 を鼻に掛けてしまう気がして。」


 自分なりの爽やかフェイスで主人公っぽい事を言う。これぞNPC

 対応様の構えである。俺は自分の中の主人公感を全面に出しなが

 ら会話を続ける事に。


「そんな、だから何も言わずあの場を去ったのですか?」

「ええ。俺はちょっと貴方に手を貸しただけですし。何よりも。」

「?」

「困ってる人は助けて当然じゃないですか。(野郎は例外ね。)」

「………。」


 俺の言葉を聞いた女性NPCは、無言で顔を俯いてしまう。

 やべ、外したかな? もっと鼻につく感じの方が良かったか、

 それともメタい反応の方がもっと? 等と対応の種類を考え

 ていると。


「素晴らしいっ! 自らの強さを誇示せず、困ったモノに手を差

 し伸べ救うなど! 何って正しいお心の持ち主なのでしょう。

 私、感動してしまいます!」


 言いながら此方に近付き俺の手を取っては、本当に感動した様な

 様子で此方を見詰めてくる。

 ……ふ。此処は仮想世界。それもゲームの中なので、周りを見れ

 ばほぼ美男美女だらけ。彼女の見た目は長いブロンド髪を後ろで

 結い、小さすぎず大きすぎない果実が二つ。見た目は勿論美女と

 呼んでそう居ない容姿。

 NPCには好感度もあり、それが高まれば良い反応を返してくれる。

 そんなVRゲームを俺は長く、長~く遊んで来た俺に。今更仮想の

 女性NPCにこうも詰め寄られた所で。


「(めっちゃ恥ずいし嬉しいに決まってんだろうがぁ!)」


 誰に向けた物でもない雄叫びを心で発する。

 かぁーこれだからこのVRゲーやめらんねぇ! うひょひょーい!

 心の奥でこのゲームの醍醐味の一つを味わいながら、序に揺れ

 る果実も楽しみつつ。


「ハッハッいえいえ。俺何てちょっと、手伝っただけ。そう、誇

 るなら彼らを救うために動いた貴方、ですよ。」

「なななななんて! 何て心根の清いお方なのですか!?」


 女性NPCからキラキラとした視線が向けられる。超~良い気分~。

 この世界を生きるNPCには、良い人で接すると軒並み好印象を持っ

 て貰える。最初は恥ずかしい思いもしたが、楽しめると成ってか

 らは気恥ずかしさもいつの間にか消えていた。

 俺がそうして主人公感を出して接していると、女性NPCが突然そ

 の眼差し徐々に陰らせ。


「……魔物を見付け駆け出したのに、結局何も出来ませんでした。

 魔物も追い払えない私に、戦えない私には誇る物はありませ

 んよ。」


 何て、乾いた笑み寂し事を言うNPC女性。ふむふむ成る程ねー。

 まあボロ負けしてたし落ち込むのも分からぁな。余りにも落ち込

 む彼女。此方を気持ちよくヨイショしてくれた彼女のそんな姿に

 ついつい俺は。


「良ければ戦い方でも教えましょうか?」


 何て言ってしまう。

 幾ら何でも自然に返しすぎたな。まあ別に乗っては───


「良いんですかっ!?」

「んぇ? え、ええまあ勿論。」


 予想外の食いつきに押され応える俺の、その返事を聞いた彼女

 は、一歩程下がり。


「是非お願いします!」


 等と頭を下げ丁寧な姿勢を此方に見せて来る。

 おいおいマジか。面倒くさい流れになっちゃったなぁ……。

 ドキドキ探検もそこそこに、家へ帰ろうとも思ってただけど。


「……。」


 真摯な目で此方を見詰める女性NPC。


「(まあ……。別に今直ぐ死んじゃう訳でもなし。もちょっと遊

 んでから帰るか。)」




 俺はほんのもう少しだけ、このテストイベントに付き合う事に

 した───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が楽しめた物なら幸いです。

お読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。

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