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繊細と落花  作者: 秋助
1/6

エピローグ これまでと

・縦書き ニ段組 A5サイズ

・27文字×21行

・文字サイズ9ポイント

・余白 上下11mm 16mm


に、設定していただくと本来の形でお読みになれます

 両親の友人である女性の自宅に伺うことになった。

 私のお母さんと、お父さんの昔話をしてくれるそうだ。

 家の中にお邪魔すると、大型のコルクボートに魚の写真が何枚も飾られていた。水族館の中の景色だろうか。海底トンネルで楽しそうに笑う写真もあった。

「どうぞ。座って」

 勧められてソファーに腰を下ろす。

 女性の背にあるギターが目に入る。そういえば、お母さんからギターを譲り受けて以来、たまに弾いていると言っていた。よく行く河川敷で弾き語りしているらしい。

「さて、と。今日はどんな話をしようか?」

 女性の言葉を受けて様々なことを考え込む。

 この人との最も古い思い出は私が六歳の時だ。女性は私に会うなり「大きくなったわね」と頭を撫でてきた。手のひらの熱量を今でも鮮明に覚えている。

 両親が結婚記念日に旅行をする際、たまには夫婦水入らずで楽しんでほしいと女性が提案したのだ。

 私は知らない人と一緒になるのが本当に怖くて、最初こそは駄々をこねていた。それに戸惑った女性がバッグからヒモを取り出して、あやとりをしてみせた。次々と形を変えていくヒモに興味津々となり、すぐに女性に懐いた。

 我ながら単純だな。と、苦笑する。

「どうしたの?」

「いえ。思い出し笑いです」

 差し出されたホットレモネードを微量、口に含んでくちびるを湿らせる。ほんのりと染みる酸っぱさが口の中に広がった。母の好きな味だ。よく家でも入れてくれる。

 そういえば、女性と両親の出会いを聞いていなかった。

「両親とはどういった経緯で知り合ったんですか?」

「誰が?」

「……あなたが」

「君はかたくなに私の名前を呼んでくれないんだね」

 痛いところを突かれて息が詰まる。

 意図して名前を呼んでいない。それは確かだ。女性は私の名付け親でもあるけれど、その付けられた名前が私は嫌いであった。だからこそ女性の名前を呼ぶのが嫌なのだ。

「いじわる言ってごめんね」

「……いえ」

 何も知らないのだ。女性が出会った経緯も、両親の馴れ初めも。良い機会である。聞けることは、聞いてしまおう。

「私の知らない話、全部。全部、聞かせてください」

「そうね。じゃあまずは順を追って、これまでの話から」


最後までお読みいただきありがとうございます

感想やご指摘などがありましたら宜しくお願い致します

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