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メニューと現状

 祝福の儀が終わった後、僕は迎えの者に連れられて馬車に乗っていた。


「坊ちゃん。御者の話によると、日が沈むまでには屋敷に到着するようです」


 この迎えの者の名はバロン。

 赤みがかった茶髪に赤い瞳。

 バロンは、元々は母の実家であるシルフェイユ家の執事で、母と共にクリステーレ家にやってきた。

 その後、母から僕のことを任されて、僕専属の執事となってくれている。


 それにしても、バロンは執事だというのに体格も良くて、帯剣した細剣も自然でよく似合っている。

 騎士だと言われてもほとんどの人が信じるだろう。


「坊ちゃん? どうかしましたか?」


「い、いやっ。なんでもない! 時間についてはわかったよ。バロン、わざわざありがとう」


 まじまじと見過ぎてしまってたようだ。

 これからは気を付けないと……


 バロンが馬車の中に入り、馬車が動き出す。


 馬車の中には、僕とバロンのみ。

 僕の対角線上の席にバロンが座っている。

 前世の記憶が戻る前なら、祝福の儀がどうだったかを元気に話せたと思うんだけどなぁ……

 数年ぶりに会った親戚とぎこちない会話をした時のような、ちょっとした気まずさを感じてしまう。


 バロンもなんとなく僕の変化に気付いたのか、いつもは僕が退屈しないように話しかけてくれるのに、今回は目を閉じている。


 もし何か聞かれたら、キチッとし過ぎて疲れたって答えよう。

 僕も今まで通り話しかけられるように頑張ろう……


 そういえば、メニューって意識したら俺の情報が見れるって女神様が言ってくれてたな。


 うーん。

 近くにバロンがいるけど、目を閉じてるし大丈夫だろう。

 ひょっとしたら、メニューは開いている本人にしか見えないとかかもしれないし。


 メニュー!


 頭の中でそう意識すると、僕の前にウインドウが表示される。

 ウインドウにはメニューと書かれていて、その下にステータス、テイムモンスター、インベントリの項目があった。


 これってタッチすればいいのかな?

 これも意識するだけで選択できたりする?


 僕はステータスと意識する。

 ウインドウの内容が切り替わり、僕のステータスが表示された。

 おっ! 意識するだけでよかったみたいだ。どれどれ?


ステータス


ルシエル・クリステーレ

レベル:1

ジョブ:ドラゴンテイマー

メインスキル:

なし

サブスキル:

「鞭術Lv10」「異次元牧場Lv10」「言語翻訳Lv10」「成長補正Lv1」


 僕の名前はルシエルで、家名はクリステーレだ。

 ゲームでの名前が、ルシエル・テーレだったから近しい名前にしてくれたのかな?

 ジョブもちゃんとドラゴンテイマーになっている。

 おそらく、メインスキルは現在のジョブで得たスキルで、サブスキルはそれ以外のスキルなのだと思う。

 スキルの説明についても見られるようだ。


 「鞭術Lv10」

 鞭を自分の手足のように自由自在に操ることができる。


 「異次元牧場Lv10」

 異次元に存在する牧場。

 魔力を消費して牧場を行き来することができる。

 牧場にはモンスターを待機させることができる。


 「言語翻訳Lv10」

 あらゆる言語を自動で翻訳することができる。


 「成長補正Lv1」

 レベルアップしやすくなる。

 レベルアップでの強化時にプラスの補正がかかる。


 鞭術、異次元牧場、言語翻訳のスキルは、テイマーから引き継いだスキル。

 成長補正のスキルは、転生アイテムの説明文に書いてたやつだな。

 ゲームでのスキルが、こっちの世界ではどう作用するのかも確かめてみないとね。


 ステータスはこんなところか。


 次はテイムモンスターを見てみるか。

 僕はテイムモンスターと意識する。

 ウインドウの内容が切り替わり、僕のモンスター情報が表示された。


テイムモンスター 1/1


リーチェ

レベル:100

種族:フェアリープリンセス


 レベル100……

 テイムモンスターの場合、強さはそのままなのか。

 もし、レベルが高過ぎていうことを聞いてくれなくなったらヤバいな。

 ……いや、大丈夫だ。リーチェを信じよう。


 テイムモンスターの横にある1/1っていうのは、テイムできるモンスターになるのかな?

 テイマーの時はレベル分だけテイムできたから、ドラゴンテイマーでもレベルが上がるとテイムできる数が増えるのかもしれない。


 できるだけ早くリーチェを召喚してあげたいな……

 多分、リーチェは異次元牧場で待機していると思うから、異次元牧場から呼び出せるのかも。

 1人になったときに召喚できるか試してみよう。


 じゃあ最後にインベントリを確認しよう。

 僕はインベントリと意識する。

 ウインドウの内容が切り替わり、インベントリ内の情報が表示された。


インベントリ 192/200


カースウィップ・メドューサ

幻影鳥の羽帽子

シャドウコート

……

マックスライフポーション×100

マックスライフポーション×100

マックスライフポーション×100

……


 うん。ラストダンジョンを攻略してたときのままだ。

 最高級の消費アイテムや強力な装備品が入っている。

 装備してた装備品もインベントリ内に格納されているようだ。


 ……これは隠しておいたほうがいいな。

 ゲーム開始直後の最初の街の時点で、既にラスボスを倒せるアイテムや装備持っている感じだし。


 アイテムの取り出し方や入れ方はなんとなくわかる。

 これも1人になったときに試してみよう。


 メニューの確認が一通り終わったけど、到着まではまだまだ時間はあるな……

 今のうちに僕の状況について情報を整理しておくか。


 まずうちの家系からだ。

 クリステーレ家の爵位は男爵で、中の下の貴族といったところ。

 代々騎士を輩出してきた歴史ある家系らしく、現在も騎士になるための教育に力を入れている。

 僕の祖父にあたるガレアス・クリステーレが、現当主としてクリステーレ家を仕切っている。


 次に僕の両親についてだ。

 父はルーシェン・クリステーレ。

 三人兄弟の三男で、騎士として部隊長を務めていたが、去年起こった魔物の氾濫(スタンピード)で命を落とした。

 母はラスティナ・クリステーレ。

 シルフェイユ家から嫁いできたのだが、ルーシェンが亡くなったことで半強制的にシルフェイユ家へと戻された。

 母は僕と一緒に暮そうとしていたが、現当主のガレアスがそれを良しとしなかったのだ。


 恐らくだが、ガレアスが魔法を嫌っている頑固な騎士だということが原因だろう。

 母の家系であるシルフェイユ家は、補助や妨害などの支援魔法を得意として成り上がった家だ。

 騎士の家系である僕が、支援魔法を使ったり魔術師になったりする可能性を無くすために僕と母を引き離したのだと思う。


 まあ、僕はドラゴンテイマーだから騎士にも魔術師にもなることはないんだけどね……

 どっちかのスキルは覚える可能性があるけど。

 そんな感じで、父は亡くなっていて、母とは離れ離れ、僕は祖父の屋敷で騎士になるための教育漬けという感じになっている。


 最後に今の状況についてだ。

 この国では、10歳になると祝福の儀を受けることになる。

 祝福の儀は、さっき僕がいた教会でやってたように神様に祈りを捧げることで、神様からジョブを授かることができる。

 ここで授かるジョブは、自分が望んだジョブや適性のあるジョブが選ばれるようになっていて、人々はこのジョブをもとに自分の人生を決めていく。


 その祝福の儀について、教会の偉い人や貴族の上の人達はこう言っている。


「神様に選ばれた我々人間は、ジョブという祝福を授かることができるのだ!」


「我々の清い生き方や高潔な血を神様が認めてくれているのだ!」


「使えないジョブを授かるものは、生き方や血筋に問題があるのだ!」


 などなどで、それが世間での一般常識となり、ジョブによって格付けされる風潮となってしまっている。


 だが、僕のスカイ・アース・ファンタジアでの記憶が正しければ、祝福の儀はキャラ作成時の初期ジョブ選択にあたるものだ。

 必要なものを使えば、初期ジョブを変えることはできるし、その人のジョブで人生が決められるなんて深い意味もないはずだ。

 某ゲームでいうと、ダー◯神殿だな。

 もちろん、この世界では一度決めたら変えられない可能性もあるから絶対とは言えないが、機会があれば一度確認してみてもいいだろう。


 少し話が脱線したが、僕は10歳になったためこの祝福の儀を受けてくるよう言われたのだ。

 それで、今はその帰り道で現在馬車に揺られながら、祖父の屋敷へと帰っている途中である。

 この後、僕は祖父に祝福の儀で何のジョブを授かったかを報告しなければいけない。


 まあドラゴンテイマーのジョブは、騎士や魔術師なんかよりも上位のジョブだから、そうそう悪い待遇は受けないはずだ。


「ふわぁぁぁ……」


 そんなことを考えているとなんだか眠くなってきた。

 僕は瞼を閉じて昼寝に入る。


 この後、そんな僕の考えが裏切られるとは知らずに……


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