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初ダンジョンで様子見

 ダンジョンの入り口の横には、プレハブ小屋みたいなの建っていた。

 小屋の窓の部分からは、衛兵さんが顔を出している。

 ダンジョンに入るには、衛兵さんに冒険者カードを見せる必要があるのだ。


 なんだか、高速道路の料金所を思い出すな……


 僕達はそれぞれの冒険者カードを衛兵さんへと見せる。

 初心者講習を受けたため、僕とリーチェの冒険者カードはGランクになっている。

 リュークとリューネもGランクなのでお揃いだ。


「おっ。全員Gランクのパーティか……まだ子供のようだし無理せずにな。危なかったらすぐに逃げてくるんだぞ?」


「はい! 心配してくれてありがとうございます!」


「おう! 頑張れよ!」


「ほどほどに頑張ります!」


 僕はそう言って、ダンジョンの入り口に向かう。

 ダンジョンの入り口には扉がついていたが、開きっぱなしとなっていた。


 ふと後ろのメンバーを確認してみる。

 後ろには、リーチェ、リューク、リューネと並んでついてきていた。

 リーチェは少しワクワクした表情、リュークは意気込んだ表情、リューネは不安そうな表情をしている。


 パーティだからって、一列に並ばなくてもいいのに……


 僕は少し苦笑して、入り口の前で立ち止まる。


「じゃあ行くよ?」


 みんなが頷いたのを見て、僕は入り口の中へと一歩踏み出す。


 そうして、僕達はダンジョンへと入っていったのであった……


▽▽▽


 ダンジョンの入り口から、真っすぐの通路となっていた。

 通路の壁は土で出来ていて、塔の中だというのに洞窟のようになっている。

 通路は比較的明るい。

 壁のところどころに光る結晶がくっついているためだ。


 意外と明るいな。

 光る結晶が照明の代わりになっているのか……


「初めて入ったけど、思ったより明るいんだね。カンテラの魔道具を持ってきてたけどいらなかったよ……」


「リーダー、奥には明かりがないところがあるので持ってきて良かったと思いますよ」


 僕のつぶやきにリュークがそう返してくれた。

 相変わらず、リュークは僕のことをリーダーと呼んでいる。


 リューネと同じようにルシエルって呼んでくれればいいのに……


 一度だけ名前で呼んでくれないかを聞いてみたが、パーティに入れてもらった以上は譲れないとのことだった。

 ちなみに、2人ともリーチェのことをリーチェさんと呼んでいる。


「ねえ。そろそろ武器を出しておいた方がいいんじゃないかしら?」


 リーチェの声を聞いてはっとした僕は槍を右手に持つ。


「そうだね。ありがとうリーチェ、……もうダンジョン内だ。隊列を整えよう」


 僕達は事前に話しておいた隊列を組む。

 前衛にリュークとリューネ。

 中衛に僕。

 後衛にリーチェ。

 この隊列で僕達は通路を進む。


 僕が中衛なのは、鞭代わりのロープでの攻撃とアイテムでの援護ができるからだ。

 背後から敵が現れた場合は、僕が対応する手はずとなっている。

 リーチェは後ろから僕達を見て助言してくれる役だ。


 少し進むと、リュークとリューネが歩みを止めた。


「リーダー、ジャイアントラットです」


 僕達の目の前には、2体の大きなネズミがいた。

 高さは僕のすねぐらい。

 牙が鋭いので噛みつき攻撃に注意したい。


「素早く倒そう! リューク、リューネ任せた!」


 2人は頷きそれぞれのジャイアントラットに突っ込んでいく。

 その間、僕は辺りの警戒だ。


 ジャイアントラットは、このダンジョンで最弱の魔物と言われている。

 こいつらなら、僕達でも1対1で対処できるだろう。


 そう考えていると、奥から新たに1体のジャイアントラットが現れる。


「もう1体来たよ! 僕が引き付けておくから、先に倒した方はもう片方の援護をよろしく!」


 僕は辺りの警戒を重視して、槍でジャイアントラットを牽制(けんせい)する。

 ジャイアントラットは、こちらには近寄らずに足踏みしていた。


 あくまでも時間稼ぎだけでいい。

 各個撃破でもいいと思うが、囲まれないように慎重に立ち回るのが重要だ。

 リュークとリューネのリベンジも兼ねてるからね。


「リューネ、今行くぞ! はあっ!」


 先に相手を倒したリュークが、リューネの援護に入った。

 挟み撃ちにあったジャイアントラットは、あっさりと倒される。


「リーダー援護します!」


「頼んだ!」


 僕が引き付けていたジャイアントラットも同様に倒れた。

 敵がいないことを確認した僕達は一息つく。


「辺りは問題ないよ。なかなかいい感じだったね!」


「そうですね。自分とリューネのときは、やみくもに敵を倒すだけでしたが、今回は倒す順番や役割がはっきりしていたので動きやすかったです」


「私もです。……ルシエル君、これジャイアントラットの魔石になります」


 リューネが倒したジャイアントラットの魔石を回収してくれていたようだ。

 僕はリューネから小さな魔石を3つ受け取った。

 1円玉ほどの小さい魔石で、色は無属性を示す透明だ。


「話には聞いてたけど、本当に魔石しか残らないんだね……」


 ダンジョンの魔物は、魔力が実体を持ったものと聞いていたけど……

 今、ジャイアントラットの亡骸がスッと消えたのを見て、それが本当だということを実感した。

 あと、僕の言語翻訳のスキルを通しても、鳴き声は言葉に変換されなかったので、もしかすると意思を持たないのかもしれない。

 まあ、それは他の魔物を見てからだね。


「じゃあ、先に進もうか。今みたいな感じで行こう」


 2人は力強く頷き、もとの隊列へと戻る。

 その後、しばらく迷路のような通路を進んで、十数体ものジャイアントラットを倒した。

 そこで、明かりが弱くなっている通路へとやってきた。


「自分たちが壊滅しかけたのはこの辺りです」


 リュークとリューネの表情がこわばっている。


「わかった。ここからより慎重に行こう」


 僕は背負っていた荷物から、カンテラの魔道具を取り出して辺りを照らす。

 それにより、光る水晶よりも明るい光が僕達の周りに拡がる。

 その結果見えたのは……


 通路の奥から、僕達に狙いを澄ましている弓を持ったゴブリン達の姿だった。


 まずい! 狙われている!


「2人とも戻って曲がり角を曲がれ! 矢が来る!」


 僕の叫び声を聞いた2人は、さっき通った曲がり角へと走る。


「ギャギャギャ!」


 弓を構えたゴブリン達は、僕達に向かって吠えながら矢を放った。

 僕はインベントリから、聖騎士のカイトシールドを取り出す。

 レベルも上がって、肉体強化のスキルも得たが、その盾はまだまだ重かった。


「ぐうっ……!」


 お、重い! でも、持ち上げることはできるぞ……!


 僕は盾を体の前に持ってくるようにして、矢を防ぎながら後ろに下がる。

 しばらくして僕も曲がり角を曲がり、矢の射線から外れた。

 盾を思うように扱えなかったためか、盾を出した時に矢が足にかすってしまっていた。


「リーダー!」


「ル、ルシエル君! 大丈夫ですか!?」


 リュークとリューネが僕のもとへと駆け寄ってくる。


「大丈夫だよ。矢が足に少しかすった程度だから……」


 僕がそう言うと、ほっとした様子になる。

 リュークはそのまま、曲がり角の向こうのゴブリン達を確認した。


「リーダー、追手はこないようです」


「わかった。ありがとう」


 でもまさか、ゴブリンが待ち伏せをしてくるとはね。

 しかも弓矢を持っていた。

 さすがは難易度の高いドラグヘイムのダンジョンといったところか……


 相変わらず、言語翻訳では翻訳ができず、ただ魔物の叫び声として聞こえてきた。

 でも、待ち伏せなんかできるということは、意思は持っているのかもしれないな。


 とりあえず、今日はこれぐらいにしておこうかな?

 帰りの時間も考えたら、外に出るくらいには夕方のはずだし。


「どうする? 私の助けは必要?」


 リーチェがそう聞いてくるが、今日はもう帰ろうと思う。

 またの機会にお願いしよう。


「いや、今日の様子見はこれぐらいにしようと思う。色々と課題も見えてきたしね。……いいかな?」


 3人は頷いたのを見て、僕達は来た道を戻る。

 帰ったら反省会をして、明日またリベンジしにこよう。

 

 僕の記念すべき初ダンジョンは、こうして幕を閉じた。


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