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この世界と転生のこと

 女神様から俺の状況について教えてもらった。


 まず、この世界は地球ではなくスカイアースという異世界らしい。

 そうMMORPG『スカイ・アース・ファンタジア』の世界だ。

 あのゲームの世界観は、そのまんまこの世界がベースとなっているようで、ゲームを通してこの世界スカイアースがどうなるのかをシミュレートしていたらしい。

 地球の神の協力もあって、シミュレート自体は上手くいっていたのだが、ここで大きな問題が発生した。


 ゲームが流行り過ぎてしまったのだ。


 そのため、今まで誤魔化していたものが隠しきれなくなってきて、急遽ゲームを終わらせることにしたのだという。

 また、今回の件で地球の神に迷惑を掛けてしまったため、その代償として地球側が有利な条件で転生者をトレードすることにした。

 そのトレードされた転生者の1人が俺のようだ。

 そして、転生した俺は10年の時を経て、ようやく前世の記憶を思い出したということらしい。


『大まかにだけれど、あなたの状況についてはこんな感じね』


「なるほど……それで俺は10歳の子供になっていると。でも、なんで10歳からなんです?」


『それは、転生後の事故を防ぐための処理になるわ。それについても説明しましょうか』


 この世界での転生者は、ゲーム内での転生の引き継ぎ設定がそのまま引き継がれているとのこと。

 あの時の転生の虹宝玉のことだな。

 俺の場合は、ルシエルとしてこの世界に転生した。

 他の転生者についても、俺と同様にゲームで使っていたキャラをもとにして転生しているようだ。

 ただ、前世の記憶とゲームでの力があるといっても、転生時はみんな赤ん坊である。

 転生してそれらを持ってしまったばっかりに事故を起こしたり、周囲の人に不審に思われて捨てられたりしないよう、10歳の祝福の儀で初めて転生の恩恵が解禁されるようにしたのだという。

 ちなみに前世を記憶を残したままにするのは、そのほうがこの世界の発展に繋がるかららしい。


 言われてみて、確かにと納得した。

 スキルの検証しようとして、死にかけましたとか、屋敷が吹っ飛びましたとかってなったら、絶対にややこしくなるだろう。

 最悪、命を落とすかもしれない。


 あと地球側での転生者に関する情報は、地球の神様が上手い具合に隠蔽して誤魔化してくれているとのこと。

 もちろんハードディスクの中身も……


 地球の神様ありがとうございます!

 俺、地球に生まれてよかったです!


『ここまで説明したけれど。なにか質問はあるかしら?』


「3つあるんですけどいいですか?」


『どうぞ』


「まず1つ目なんですが、10歳までの俺の意識はどうなるんですか?」


 大空 大地(おおそら たいち)の記憶が戻る前の俺のこと。

 いや、ルシエル・クリステーレだった僕のこと。

 どちらも俺の記憶の中にあるが、意識は大空 大地(おおそら たいち)のものになっていると思う。


『イメージとしては、転生時に分かれたもう1人のあなたが元に戻ったって感じよ。どちらの記憶も混ざってあなたの中にあるでしょう? それと同じで意識も混ざっているわよ。まあこの辺りは後々わかってくると思うわ。……それと、あなたの代わりに誰かが消えたなんてことはないから安心して』


 よかった。

 もし10歳の少年が俺のせいで消えてしまっていたら、申し訳なさ過ぎて今世を楽しめなかっただろう。

 意識も混ざっているということは、ルシエルの意識が出てくることがあるってことかな?


『じゃあ2つ目をどうぞ』


「あっ、はい。2つ目なんですが、俺たち転生者はこの世界で何かすることはあるんでしょうか? 転生者の使命みたいなやつです」


『うーん。特に使命とかもないし、好き勝手に生活してくれていいわよ。ただ悪いことはしないようにね』


 自由度高いな。

 ゲームの時みたいに色々冒険してみようかな。

 空を自由に飛びたいな!

 仲間を作ってこの世界を一緒に旅するのも面白いかも!


『年相応の無邪気な顔をしているわね。中身はおっさんなのだけれど。ふふっ』


 うっ。ルシエルの意識と混ざった影響かな。

 前世ではそこまで表情に出なかったと思うし。


「というか、おっさんなのはほっといでくださいよ!」


 そんなこと言われても苦笑いするしかない。

 ん? まてよ?

 前世の記憶は隠し通すとして、ちゃんと意識して子供のフリをしないとマズイやつなのでは?


「女神様。俺って年相応の子供に見えますか?」


 今のままで家族にあったら、どこか変に思われてしまうかもしれない。


『そうね。初見の子供の意識だけの時と比べると、雰囲気も話し方も結構変わってしまっているわね。できるなら子供っぽく振る舞っておいて、成長に合わせて徐々に大人っぽくしていくほうがいいんじゃないかしら? ……変に意識し過ぎるのもマズイとは思うけどね』


 体は子供、頭脳は大人な感じか。

 まさか、実際に体験することになるとは……

 はぁ、少し恥ずかしいけど子供っぽく振る舞うしかないか……


「最後に3つ目なんですけど、俺の他に転生者は何人ぐらいいるんですか?」


 もし転生者が多すぎたら下手なことはできない。

 好き勝手した結果、目をつけられて転生者同士で争うとかシャレにならない。

 たしか、ドラゴンテイマーと一緒に実装されたジョブは派手な技ばかり使ってた記憶がある。

 ソードマスターは、街の高さ以上の極大の光の剣を振り回していたし、ウォーロックは、巨大な隕石を大量に降らせていた。

 他のジョブの技は公開されなかったからわからないけど、おそらく同様の街ぐらいは壊滅できる程の力を秘めているのだろう。


『現状でこちらが把握している転生者は全部で10人ね。その内で前世の記憶を取り戻しているのが、あなたを含めて3人よ』


「10人もいるんですか……転生者同士の距離ってどれぐらいになりますか?」


『記憶を取り戻した3人の位置ならわかるけど、他の人の情報は教えられない決まりなの。まあこの大陸に他の転生者はいないから安心しなさい』


 とりあえず近くに他の転生者がいないことを知ってほっとした。

 できるなら最初は目立たずに力をつけていきたいしね。

 他の人の情報は教えられないってことは、一応プライバシーの保護はあるのか……

 こっちの情報が漏れないのはありがたい。


『さてと、もう大丈夫そうだしそろそろお別れね。最後にメニューと意識することで、あなたの情報を見ることができるわ。後で試してみてね』


 もうお別れか……

 右も左もわからない状態の俺に優しくしてくれた女神様には感謝してもしきれない。

 俺、女神様の信者になります……!


「はい! 色々とありがとうございました!」


 俺は感謝を込めて頭を下げる。

 お辞儀の角度は90度だ。


『それじゃあまたね。この世界であなたに幸があらんことを』


 その声を最後に女神像から光が失われた。


 またねって言ってたから、もしかしたらまた会えるのかもしれないな。

 今度祈りに来よう。

 そんなことを思いながら、俺……いや、僕の祝福の儀は無事終わったのだった。


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