表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/54

初めての冒険者ギルド

 冒険者ギルド。

 それは、数多くの冒険者達が集い、活動の拠点となる場所である。


 今日もまた誰かがクエストを受注したり、報告したり、受付嬢にちょっかいを出したりしている。

 竜王国ドラグヘイムの冒険者ギルドは、規模が大きく質も高いと言われているらしい。

 様々な国の高ランク冒険者が、ダンジョン目当てで訪れるためそうしているのだ。

 このギルドでは、酒場はもちろんのこと、アイテム販売所、素材買取所、鑑定所、治療所、資料室なども完備してある。

 ショッピングモールみたいな感じにも見える。

 おそらく、この規模の冒険者ギルドは、ここ以外にはないだろう。


「おお……」


 僕は、そんな冒険者ギルドを見て、つい感嘆の声をもらしてしまう。

 いろんな装備をしたいろんな種族が目に入る。

 まるで、MMORPGで大勢のプレイヤーが集まっているかような光景だ。


 すごい!

 猫耳や狐耳の獣人もいるし、エルフやドワーフなんかもちらほら見える。

 装備している武器も、エクスカリバーとかグラムとか、そんな名前が似合いそうなカッコいい武器ばかりだ。


「坊ちゃん、そこで立ち止まっていると、他の人にぶつかってしまいますよ。こちらへどうぞ」


「あっ、ごめん。すぐ行くよ」


 つい見過ぎてしまっていた。

 僕は急いでバロンとリーチェのもとに向かう。

 ちなみに、お腹がいっぱいになったアステルは、リーチェに抱っこされて寝ている。


 ドンッ!


「きゃっ!」


「うわっ!」


 移動した拍子に誰かとぶつかってしまった。

 こちらはよろめいただけだったが、相手は尻もちをついてしまう。


「ごめんなさい! 大丈夫ですか?」


 僕は、尻もちをついた女性に手を差し伸べる。

 その女性は、頭にねじれた角があった。

 茶色の長い髪を後ろで束ねていて、ほんわかとした顔をしている。

 落ち着いた感じの竜人のお姉さんというイメージだ。


「こちらこそごめんなさい……少しよそ見をしていました」


 彼女は僕の手を取り、体を起こす。

 彼女の身長は僕よりもずっと高く、まさに大人と子供って感じだ。

 もしかして、身長差で視界に入らなかったとか……?


 僕がぶつかったことに気付いたバロン達がこちらに寄って来る。


「坊ちゃん、大丈夫ですか? ……ぶつかってしまい申し訳ありません。お怪我はございませんか?」


 そう言って、バロンが頭を下げた。


「いえいえ! 大丈夫ですから、頭をあげてください!」


「ご無事のようで何よりです。……坊ちゃん、見学するのもいいですが、あまり離れないようにお願いします」


「ごめん」


 僕は素直に頭を下げる。

 ちょっと浮かれすぎてた。

 反省。


「あの。もしかして、冒険者ギルドへの依頼、登録をご希望でしょうか?」


 僕とバロンが話していると、ぶつかったお姉さんが声をかけてきた。


「ええ。今から坊ちゃんとお嬢様の登録をしようかと思っておりました」


 バロンがそう言うと、お姉さんが姿勢を正す。


「では、私が対応致しますね。……あっ、申し遅れました。私はギルド職員のマリーダと申します」


 僕がぶつかった人は、ギルド職員のお姉さんだったようだ。

 僕達は軽く自己紹介をした後、冒険者登録用の受付へと向かった。


「冒険者のご登録をするのは、ルシエル君とリーチェちゃんの2人ですね?」


 僕とリーチェは、マリーダさんに頷く。


「新規登録時は、レベルに応じてランクを上げられますが、どうなさいますか? ……ステータスボードの確認が、必須となってしまいますが……」


 そうなのか!

 僕のレベルは28だ。

 もしかしたら、そこそこランクアップできるかもしれない。

 そしたら、いい感じのスタートダッシュが切れるぞ!


 ……ってよく考えたら、だめじゃないかぁぁぁ!

 リーチェがレベル100だった!

 そんなリーチェのぶっ壊れステータスを見せることはできない。

 目をつけられることになる。


「い、いえ、初心から学びたいと思っているので、最低ランクからでお願いします!」


 僕が苦し紛れにそう言うと、マリーダさんは目を丸くした。


「それはとてもいい考えですね! 少し心配してたのですが、それを聞いて安心しました。ルーキーは最初に突っ走って大怪我をすることが多いんですよね……」


 微笑んだマリーダさんが、僕を褒めてくれた。

 リーチェはジト目で僕を見てくる。

 僕の考えてたことはお見通しのようだ。


「ははは……」


 ごめんなさい。

 スタートダッシュして突っ走ろうとしてました……

 マリーダさんの笑顔が心に刺さる。


「では、こちらが仮の冒険者カードとなります」


 僕とリーチェは、マリーダさんから1枚のカードを受け取る。

 このカードは金属の板でできているみたいだ。

 カードには、僕の名前だけが書かれていた。


 あれ? 冒険者ランクが書かれていない……


「そのカードは仮なので、まだ冒険者ランクもついていません。冒険者見習いということですね。初心者講習を受けることで、冒険者ランクがGとなります」


 なるほど。

 最初に講習があるのか……

 今まで冒険者のことをあまり知らなかったからちょうどいいな。


「一番早い初心者講習は、明日の午後からですが、参加されますか?」


 バロンのほうを見たら、頷いてくれたので参加しようと思う。


「はい! 参加します!」


「では、参加申請を出しておきますね。明日の午後ちょうどまでにギルドの受付までお越しください」


「わかりました!」


「わかったわ」


「以上で仮登録の手続きは完了となります。登録費は……」


「登録費は私が……」


 バロンが支払いを済ませてくれた。

 そのお値段、2人合わせて2万ゴールド。

 円に直すと20万円、1人10万円だ……

 高い気もするが、これは登録費だけでなく施設の利用費も含まれているらしい。


「ご利用ありがとうございました。また明日お会いしましょうね」


「はい!」


 そうして、僕達は受付を離れて、ギルド内を探索するのであった。


▽▽▽


 ある程度ギルド内を物色した。

 酒場、アイテム販売所、素材買取所、鑑定所、治療所、資料室を見て回った。


 資料室では、ダンジョンの情報やドラグヘイムで生息している魔物達の情報、それ以外にも様々な資料が保管されていたので、時間が取れたら調べにこようと思う。


 そうして、冒険者ギルドを一通り見学して、そろそろ帰ろうかなというところで、1人の竜人の男が近寄ってきた。

 その男の背後には、男女が数人ついてきている。

 おそらく、この人達はパーティを組んでいるのだろう。


 なんかめんどくさい感じがする。

 冒険者ギルドで新人が絡まれるというやつか?


 そう思っていると、その男はリーチェの目の前で止まった。


「そこの美しいお嬢さん。どうでしょう、私のパーティに入りませんか?」


 どうやら勧誘……いや、ナンパか?

 新人いびりじゃなくてよかった……

 リーチェは気品ある美少女って感じがするし、ナンパされるのも仕方ないか。

 どうせ、リーチェは断るだろう。


「あら? 何も知らない相手をいきなり勧誘とは失礼ではなくて?」


 いきなり勧誘されたリーチェは少し不機嫌になる。

 まあ、顔だけでパーティに入れたいって判断したように見えるしそうなるよね……


 リーチェがそう言うと、男は慌てたように取り繕う。


「こ、これは失礼しました。私はキースと申します。先ほど冒険者登録していたようなので、声をかけさせて頂きました」


「キースは今年期待のルーキーと言われてる有望株なんだぜ? パーティに入るのも悪くないと思うぜ?」


 キースの仲間の男がそうフォローを入れた。


 へえ……

 このキースっていう竜人は、期待のルーキーって言われてるのか。

 一体どんな戦いをするんだろう?


「ふーん。でも、期待のルーキーと言っても所詮はルーキー。……あなた達は駆け出しなのでしょう?」


 リーチェの言葉には少し棘があった。

 キースとその仲間達が少しむっとしているようだった。


 あの、できるだけ穏便にお願いします……


「駆け出しと言っても、冒険者ランクはDです。レベルも30を超えているのでね」


 むっとしていたキースは、ぎこちなく微笑んだ。


「そうだぜ! 俺達も同じだ! 仮の冒険者カードの見習いとは違うんだぜ?」


 キースの仲間は僕を見下すように笑う。


 あれ? なんで僕が対象になるの?

 なんか、ちょっとイラッと来るなぁ……

 まあ、リーチェが適当に断って終わりだろう。

 リーチェさん、適当に切り上げてください。


「そうかしら? あなたが見下している仮の冒険者の方が、あなた達よりも強そうだけれど?」


 しかし、リーチェは油を注ぐ。

 リーチェの不機嫌さも増している。


「ちょっ!」


 何言ってんの?!

 僕を見る目も鋭くなってきてるんだけど……!


「はっ? そこの従者がか?」


 ん? 従者って僕のこと?


「あら? わからないのかしら?」


 キースの仲間達はイライラし始めてきた。


「その従者よりも弱いから、パーティに入るつもりはないと?」


「そうね。逆に聞くけれど、わざわざ今よりも弱くて全く知らないパーティに入る意味ってあるのかしら?」


「では、その従者と私が戦って、私が勝てばパーティに入ってもらっても?」


「もし勝てたら考えてもいいわよ? ないとは思うけどね」


「えっ?!」


 なんでじゃあぁぁぁ!

 リーチェも機嫌悪いのはわかるけど、そこまで言わなくてもいいでしょ!

 キース達も1回断られたんだから、諦めてくれよ!


 僕はバロンを見て仲裁してもらおうとするが、バロンは期待した目で傍観していた。


 バロンッ! 止めてくれよ!


「いいじゃねえか! じゃあ今から訓練場に行こうぜ!」


「そこまで言ったんだから逃げねえよな?」


「この弱そうな従者が俺達に勝てんの? 一発殴っただけで気絶しそうだぜ?」


 キースの仲間達が僕にそう言ってくる。


「本当にいいんですね?」


「ええ。時間も勿体無いし、早く行きましょう?」


 キースが確認するも、リーチェは即答する。


「ちょ、ちょっと、リーチェ! なんで僕が戦うのさ! この勝負で僕が勝っても特にメリットないじゃないか!」


 僕がそう言うと、キース達が睨みつけてくる。


 え? 対価を求めたらダメなの?


「そうね。なら、あなたが勝ったら今日も一緒に寝てあげるわ」


 えっ? 急に何言ってるの?

 こんなときにそんな冗談言ってる場合じゃ……


()()()ってことは、何度か一緒に寝てるのか?」


「破廉恥な! 従者のくせにけしからん! 私は一切容赦せんからな! さあ行くぞ!」


 キース達の僕に対しての怒りは募っていく。


 なんか、最近僕の扱いひどくないかな?

 もしかして、何か呪われてる?


 そうして、僕達は訓練場まで連れていかれるのだった。

 周囲で聞いていたギャラリーを引き連れて……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ