プロローグ1
【重要】ゲームサービス終了のお知らせ
日頃より『スカイ・アース・ファンタジア』をご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび『スカイ・アース・ファンタジア』は、サービスを終了させて頂くことになりました。
これまで利用して頂きました全ての皆様へ、心より御礼を申し上げます。
『スカイ・アース・ファンタジア』運営チーム
▽▽▽
「嘘だろ……」
俺こと大空 大地は、人生最大の衝撃を受けた。
『スカイ・アース・ファンタジア』
プレイヤーは冒険者となり、果てしない大空に浮かぶ未知なる大地を冒険するというMMORPG。
アニメ調の可愛らしいキャラクター、広大な世界を表現する美麗なCG、全キャラクターの一人一人にフォーカスを当てた重厚な物語のウリとするオンラインゲームだ。
3年前のサービス開始当初から現在までランキング1位に君臨し続けていて、世はまさに大航空時代と言わんばかりの爆発的ヒットとなったゲームである。
……その波に乗っている超大作ゲームが突如としてサービス終了を告知したのだ。
つい最近に大型アップデートを行ったばかりでもあるのに。
「悪い話も聞かないし、人気も利益も十分にあるはずなのになんで……」
ふと掲示板サイトを開いてみる。
【悲報】スカイ・アース・ファンタジア Lv3653【サービス終了】
勢いランキング1位で、ユーザー達が大騒ぎしているようだ。
悲しみのレス、怒りのレス、次やるゲームのレスなどの勢いがすごい。
ゲーム内の各街で、ユーザー達によるデモが起こっているらしい。
「とりあえず俺もインしよう……」
そうして俺は、スカイ・アース・ファンタジアを起動するのであった。
▽▽▽
ルシエル・テーレ。
3年間育て続けた俺のメインキャラクターだ。
ジョブはテイマーで極限まで育て上げ、使役しているモンスター達も限界まで育成している。
重要キャラクター達のメインストーリーも、一般キャラクター達のサブストーリーも全て達成済みで、遊びつくしたとも言える。
……ただし、それは最近あった大型アップデートまでの話だ。
大型アップデートの内容は、ラストダンジョンとラスボスの実装と最終ジョブの開放の3つだ。
まず、ラストダンジョンはランダムダンジョン型のフロアが全100層となっていて、5階層毎に過去のボスが設置されている。
しかも、1人用のダンジョンみたいなので、かなり難易度が高い。
次に、ラスボスはラストダンジョンの100層目に待ち受けている『名もない魔王』というモンスターだ。
名もないという部分にはどんな背景があるのか気になるが、おそらく明かされることはないのだろうと思われる。
最後に、最終ジョブの開放である。
解放されるジョブは、ソードマスター、ウォーロック、ネクロマンサー、……ドラゴンテイマーとなっている。
そう、ドラゴンテイマーである。
今まで人を乗せられるような飛行モンスターは、テイムすることができなかった。
だが、ここにきてドラゴンのテイムが解禁されたのだ!
テイマーである俺は、この時をずっと待っていた!
サービス終了まで残り30日ほど。
俺は、この大型アップデートを遊び尽くして、スカイ・アース・ファンタジアの最後を見届けようと決意した。
▽▽▽
……サービス終了まであと10日ほど。
最高級の回復アイテムやスクロールなどを買い漁り、無事にラスボスを倒してラストダンジョンを制覇した。
何度も死に戻って、倉庫も所持金もすっからかんになったが後悔はしていない。
あとは最終ジョブになるために必要なレアアイテム『転職の虹宝玉』を取るだけだ。
ただこのレアアイテムは、ラストダンジョンの80階層以上で稀に出現するレインボーメタルスライムのレアドロップとなっている。
いったいどれだけの確率なのかはわからないが、ここまできたらやりきるしかない。
▽▽▽
……サービス終了まであと3日ほど。
何百何十何回かもわからないレインボーメタルスライムとのエンカウント。
召喚したホーリーナイト・ガーディアンの一撃でレインボーメタルスライムを撃破。
ピュイン♪
「おっ?!」
レアドロップのSEがなり、虹色の宝箱が出現する。
「いよっし! ついに来たか!」
念願のレアドロップで喜びを隠せずについ叫んでしまう。
これで俺もドラゴンテイマーだ。
もうテイムするドラゴンは決めてある。
天空のダンジョンに出現するホーリーホワイトドラゴン。
この後はこいつをテイムしに行く予定だ。
俺、ジョブチェンジしたらホーリーホワイトドラゴンに乗って、この世界を見下ろしながらサービス終了を迎えるんだ……
そんなことを思いながら虹色の宝箱を開けると、レインボーのライトエフェクトが溢れ出す。
宝箱の中をのぞき込むと、そこには虹色に輝く宝石のような玉が入っていた。
『転生の虹宝玉』
そのアイテムの名前はそう表示されていた。