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文句あるかっ!  作者: 凪沙一人
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龍気の剣

 ヴォルグの敗北は一対一でもなければ、圧倒的戦力を率いていた訳でもない。だが、シャルクを倒したのはティグレから見ればガキ一人。つい先日まで一介の獣人に苦労していたと聞いていた。それが、である。この進歩の早さこそが脅威であり、そのアインとアルカの二人が眼前に居る。ティグレにとって不利な状況である事は明らかだ。しかし、撤退は許されない。ファングが許すハズもなかった。

「もうよい、下がれ。」

 聞き慣れた声の、思いがけない言葉にティグレは思わず振り返った。

「ファ、ファング様… 。」

「へぇ、あんたが獣勇士の一人、黄金の獅子王ファングさんか? 」

 アルカも獅子王相手に微塵も怯まない。問答無用とばかりに振り下ろされた拳を廻し蹴りで払った。

「なるほど、力量の差は分かっているようだな。」

「フッ、あんたがあたしに優っているのは力量じゃなくてバカ力だけだよ。」

 そう言ってファングの右腕の前腕に無数の蹴りを叩き込んだ。ブチッという音がしてファングが二、三歩後退った。恐らく筋か腱が切れたのだろう。それでも痛い素振りは見せない。それどころか、笑って見せた。それが強がりではない事はアルカにも分かった。

「四つ足ならば、スピードが落ちたかもしれんが。」

 背後に回った… つもりのファングだったがアルカはその背後に居た。

「どうやら銃士が出てこなくてもヴォルグに勝ち目はなかったという事か。」

 振り向き様に左腕を振り回した。だが剛腕は空を切った。ファングにも、それは想定内だ。間を取ろうとしたのだ。だが、そこからが想定外だった。ファングの左腕を掴むとアルカは投げ飛ばした。右腕が効かないファングは受け身が取れず大地に叩きつけられた。

「おいおい、だらしないな。」

「ブ、ブルコーン?!」

 巨大な角の黒き猛牛が立ちはだかった。

「勇者どもっ! 獣勇士をそう簡単に討たせる訳にはいかないんだよ。」

「そうそう。ファング、足手纏いは帰ってもらえる? 」

「ビーク… 貴様まで… 。」

 不本意ではあるが、退く機会チャンスだった。

「おっと、こちらとしては出来るだけ魔王軍の戦力を削いでおきたいのでね。逃がす訳にはいかないんですよ。」

「くっ!」

 退路をシオンに塞がれ、ファングは表情を曇らせた。

「とっとと逃げないからだ。自分で何とかしろ。」

 ブルコーンの言葉は冗談ではない。黄金の獅子王ファングを追い詰めた実力は決して侮るものではない。

「えっと、その鳥頭があたしの相手? 」

 ビークの視線がリヴィエラの銃を捉えた。翼王と呼ばれるビークにとって体術のアルカや剣術のアインより厄介な相手である。銃声と共にビークの右の風切羽が散った。

「不意討ちとは… 」

「卑怯とか言わないわよねぇ、この状況で。あんたの能力で一番厄介なのは飛べる事なんだから、飛べなくするのは定石じゃない? 」

「最初に心臓を狙わなかった事を後悔させてやるっ! 」

「だって、この銃じゃ、その鳩胸貫けそうにないんだもん。」

 確かにビークの胸板は厚く、リヴィエラの銃では撃ち抜けそうにない。

「だから空に逃げないようにしてから、こうするのよっ! 」

 言うが早いか、リヴィエラは黒い塊を投げつけると、それを撃ち抜いた。爆音と共にビークは炎に包まれていた。

「あれ? 火薬の量、間違えたかな? 」

「やれやれ。手負いの獅子と牛退治は二人に任せて、リヴィエラは私と逃げた虎狩りです。」

 シオンはリヴィエラを連れてティグレを追った。

「獣勇士と呼ばれる我々が舐められたものだな。四人がかりならば勝機も在ったかもしれんが… 」

「はいはい、強がりはそこまで。別に一対一でも勝機100%。負ける気なんて欠片もないよ。」

 アルカの言葉が虚勢ではない事は、ファングは身をもって知っていた。

「もう、あんたにはあたしの蹴りは防げない。」

 ゆっくりとアルカはファングとの間合いを詰めた。

「まだ俺には左腕が… なに?! 」

「さっき、投げ飛ばした時に傷めたの、気付いてなかったの? 筋肉つけ過ぎて自重が重過ぎなのよ。ダイエットしとくんだったわねっ! 」

 アルカの無数の蹴りがファングの体の中心線に叩き込まれた。哺乳類の場合、鍛えようのない急所は中心に多く、それは獅子も同じである。腕が上がらず、ファングには防ぎようもなかった。一方、アインも最初の一撃でブルコーンの右側の自慢の角を切り落としていた。だが、アインの剣もまた、折れていた。

「俺には、まだ左の角がある。勇者の命運もここまでだっ! 」

 アインは無言で折れた剣を正面に構えた。ブルコーンは息を荒げて突進した。間合いを計ってアインが剣を振り上げると折れた剣に纏わせた龍気が剣の形を成した。

「なにっ! 」

 それに気づいたブルコーンだったが、自分の勢いを止める事が出来なかった。アインが剣を振り下ろすとブルコーンを打ち倒した。

「ふう、危なかった。」

「何言ってんの。物が無くても龍気をイメージの形にする。出来てたじゃない? 」

「まだまだですよ。」

「合流するよっ! 」

 アルカはアインを連れてシオンたちを追った。

さて次回は魔王軍中心… の予定です。

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