勇者の剣
「待っていたよ、アイン。」
「プラントさん? 」
アインを待っていたのは魔王軍ではなく、短期間ではあったがアインに剣の手解きをしてくれたプラントだった。
「父セゾンが封印した勇者の剣。それを手にするのに本当に相応しいか見せて貰うよ。」
そう言って構えた剣には殺気が漲っていた。そして、鋭い斬擊を放ったがアインの剣はプラントの剣を打ち砕いた。
「おやおや、仲間割れか? 」
どこで見ていたのか、蜥蜴頭に蝙蝠の皮翼をもったリザドスが姿を現した。
「プラントさん、この剣を使ってくださいっ! 」
アインは砕いてしまった剣の代わりに自分の剣を渡すと走り出した。
「仲間割れの次は剣聖プラントに俺を押し付けて逃げるか? 」
だが、それを聞いたプラントは苦笑した。
「判っているのだろう? アインが勇者の剣を取りに行った事を。」
「あぁ、そして貴様を倒さねば勇者を追えぬ事もなっ! 」
リザドスは巨大な青竜刀を抜き放った。だが、難なくプラントは剣で受け止めた。
「うむ、アインもちゃんと剣の手入れをしているようだな。」
「さすが、剣士セゾンのガキ、剣聖と呼ばれるだけの事はある。グライストと獲物交換して正解だったぜっ! 」
幾度となく斬擊を繰り返すが一向にプラントには届かない。
「くそっ! 合成獣士になっても貴様等親子に敵わないってのかっ! 」
「これなら武具を出すまでもないな。」
プラントが剣を振り下ろすとリザドスはあっさり斬られてしまった。そして吹き出した血液がリザドスに雨のように降り注いだ。
「ふっ、元々武具相手に勝ち目は薄いと思っていたが、まさか武具を出される前に、この手を使うとは思ってもみなかったぜ。見よ、火竜変化っ! 」
リザドスの血飛沫は血煙となり、その中のリザドスの影がみるみる巨大化した。
「プラントさん、こいつは?! 」
武具を手に戻ったアインも、巨大な姿に驚きを隠せなかった。
「どうやら蜥蜴頭の最後の悪あがきらしい。勇者の剣を使いこなせるか、見せて貰おうか。」
「はいっ! 」
プラントの言葉にアインは応えるようにリザドスと対峙した。もはや、言葉は失っているのだろう。ただ、咆哮を轟かせていた。だが、アインは身動ぐ事もなく剣を抜いた。
「装龍剣っ! 」
そう叫ぶとアインの龍気が勇者の剣の刀身に宿った。そのまま一気にリザドス目掛けて走り出すと、その龍気ごとリザドスに突き立てた。するとリザドスの体は跡形もなく崩れ去った。
「アイン、今の装龍剣とは? 」
プラントは疑問をストレートに聞いてみた。
「なんか、こう… 頭に響いてきたというか、剣から聞こえてきたというか… そんな感じです。」
「そうか… 前の勇者は麟気という気を持っていたと聞く。アインの龍気もまた、剣に認められたという事らしい。」
アインは剣を一度見つめてから鞘に収めた。
「どうやら、片付いてたみたいね。」
声の主はアルカだった。その回りにはシオン、リヴィエラ、エトワール、オートン、そしてステラが居た。
「さて、準備は整ったみたいだし、魔王の城に乗り込みますか? 」
「道案内はアルカ、頼みましたよ。」
「えぇ、任せて。あ、ちなみにシオン、城って動いてないよね? 」
「えぇ、勿論。」
この時点でシオンも魔王の城の場所を知っている事が確定した。といっても、誰もが気が付いていた事だが。
「どいつも、こいつも役に立たぬ奴等だ。」
「仕方ありますまい。」
魔王の言葉に返したのは魔王と瓜二つの姿をしていた。
「お前か。まぁ、所詮はこの世界の生物をベースにした奴等では、あの程度という事か。」
「どちらにせよ、我々の世界を再興するには不要な生物。我らが一族の転移も順調に進んでおります。もはや要済みでございましょう、兄上? 」
「勇者一行を始末出来れば良かったのだがな。」
「なれば兄上、私がその勇者一行を始末して参りましょう。」
魔王の弟は魔王の返事を待たずに一瞥して部屋を出ていった。
「フッ… 奴が勇者一行を倒せばよし。敗れたとしても、勇者の龍気とやらが、我々魔竜の一族にどこまで迫る物なのか測るには、最適かもしれぬな。」
次回、魔王の城へ突入




