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文句あるかっ!  作者: 凪沙一人
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双銃士の兄

 夕闇が迫り、リヴィエラは心細く思っていた。

「拙いなぁ。これじゃ敵が見えないじゃない。」

 残弾に問題はない。だからといって無限にあるわけでもない。魔王軍が、どの程度の規模で攻めてくるのか、検討もつかなかった。

「視界が効かないと敵の場所が分からないとは、不便なものだな? 」

「まったくだな。これで優良種とは笑わせる。」

 二つの声にリヴィエラは焦りを感じた。

「もう、アインの嘘つき… 。こいつら、協力して襲ってくるじゃん… 。」

 そうは言っても、嘆いてばかりいる訳にはいかない。相手が待ってくれるハズもない。耳を澄ましてみると周囲から羽音がする。鳥のものではない事はすぐに分かった。やがて雲間から月が覗くと、月明かりに照されたのは無数の昆虫だった。

「嫌ぁっ! 虫嫌ぁいっ! 」

 思わず大声をあげると、無数の虫の群れの中に一際大きな影に向かって引き金を引いた。だが、手前の虫に当たって届かない。カブトムシとクワガタの角を持つスカラベスが命じると虫たちが弾丸のようにリヴィエラ目掛けて飛んできた。リヴィエラは必死に避けながら、もう一つの声の主を探した。薄暗い月明かりでは視覚では見つからない。だが、耳を澄ましても昆虫たちの羽音しか聞こえてこない。

「なんか、腹立ってきた。虫なんかに負けてたまるもんですかっ! とっとと倒してもう一匹も引きずり出してやるんだからっ! 」

 リヴィエラは火薬玉を投げると撃ち抜いて爆発させた。虫の数からして、一つ二つでは効果が無いと踏んで、次々と投げては撃ち抜いた。

「これだけ減らせば、当たるはずっ! 」

 リヴィエラが再びスカラベスに銃を向けた瞬間、足元が盛り上がってバランスを崩した。

「遅いぞ、グノーメっ! 」

 アルマジロのような鱗甲とモグラの頭と爪を持つグノーメは気になるしていなかった。

「うるさいな。お前の子分じゃないんだ。俺の勝手だ。助けてもらっただけ、ありがたいと思え。」

 それだけ言うと再び地中へと姿を消した。一匹は空、一匹は地中。前後、左右の挟み撃ちならともかく、上下の挟み撃ちというのは経験がなかった。

「どうすりゃいいのよぉっ! 」

「相変わらず、賑やかな奴だなぁ。」

 嘆くリヴィエラに答えたのは懐かしい声だった。

「オ、オートン? 」

「兄さんを付けろ、兄さんをっ! 」

 プラント、エトワールの弟であり、リヴィエラの兄であるオートンは年が近い所為もあって呼び捨てにされていた。

「せっかくの再会が今生の別れだな。」

「まぁ、お前らとは、確かにお別れだな。」

 足元から飛び出したグノーメを軽くかわすと、宙を舞い、手にした武器を振り回すと残っていた虫たちを叩き落としていった。飛び出したグノーメの背にリヴィエラは発砲したが、分厚い鱗甲に弾き返されてしまった。

「なるほど。」

 オートンは何かに合点がいったようだった。

「シオンさんの知らせに例の武具が要るってあったんでね。こいつらの鱗や殻は、今のリヴィエラの銃じゃ通らないな。」

「オートン、シオンさんと連絡取ってたの?! 」

「あの人は世界中、誰が何処に居ても見つけてくるさ。」

 確かにシオンならありえるとリヴィエラも思った。だが状況は悠長な事を考えている場合ではない。飛び交う残った虫たちを避け、いつ飛び出すか分からないグノーメに警戒しながら、対応したければならない。

「ここは俺が戦うから、リヴィエラは隠れておいで。」

「冗談じゃないっ! オートンだけに任せておけませんよぉだ。」

 そう言うとリヴィエラは新しい弾丸を銃に込めて走り出した。昆虫も種類によるが甲虫の類いなら振り切れると踏んだ。地中も同じ、スカラベスとグノーメ以外を振り切ってしまえば勝負になると思っていた。だが現実はそう甘くなかった。救いなのは二対一ではなく二対二だった事だ。

「じゃ、こっちを早く片付けてリヴィエラを手伝うとするかな。」

 オートンは手にしていた武具を振り上げると二節三本の棒が一本になった。

「この三節棍は地属性でね。」

 そう言うと棍を地面に突き立てた。と同時にグノーメが吹き出すように飛び出した。

「なっ、何をしやがったっ! 」

 グノーメは立ち上がるが、何が起きたのか理解出来ない様子だった。

「一種の振動波ってやつ。細かい事は秘密だけどね。」

 再び地中に潜ろうとするが微妙に振動していて潜れずにいた。

「えぇいっ! 地中に潜れずとも、人間など物の数ではないっ! 」

 グノーメは体を丸めて体当たりを仕掛けてきたが、オートンが突き立てた棍に当たると弾き飛ばされた。

「な、何を… 。」

 グノーメの鋼のような鱗甲に亀裂が入っていた。

「硬い奴には振動に脆いやつが多いんだよ。」

 オートンは巧みに三節棍形態と棒状形態を切り替えながらグノーメを追い詰めていった。反撃しようにも触れるたびに鱗甲と言わず爪と言わず砕けていく。さらに地中という逃げ道も奪われ、どうする事も出来なかった。

「悪いが妹の世話もやかないと、兄姉がうるさいんでね。」

 棒状形態の武具を超振動させて振り下ろすとグノーメの体は砂となって崩れ落ちた。

「まだ、終わってないだろうなぁ。」

 やれやれという顔でオートンはリヴィエラの援護に向かった。


さて次回もリヴィエラ編の続き。無事にリヴィエラは武具を手に入れられるのか?

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