2
俺の今いる葉那の家は、俺の父親が設計したらしい。酷い話かもしれないが、親たちは俺たちが産まれる前から、こうなることを予測していた様だ。まさか、みんなが同じ年に産まれるなんて思ってはいなかっただろうけど。今ではその家にはるちゃんも加え、5人で住んでいる。それでも、まだ、大きな家の部屋は余裕があった。
「ただいま」
玄関を開けば、漂う食欲をそそる香り。今日の夕飯はハンバーグみたいだ。
「岩城君、お帰りなさい」
キッチンへ入ると、ハンバーグを焼くはるちゃんの隣で皐月が大根をおろしていた。最近、気がつけば、はるちゃんの側に皐月がいることが多い。葉那には涼がいるから仕方ないとしても、なんだが解せない。
「もう少しでできますので、葉那さんと椎名君を呼んでくれますか?」
はるちゃん自身はそれに気づいているのかわからないけど。綺麗に焼けたハンバーグを皿に盛り付けながら言う。俺は二人を呼びに行った。
テーブルの上に並ぶ色取り取りの食事。今日は和風ハンバーグ。ハンバーグの上にたっぷりの大根おろし、そして、刻んだ大葉が見目にいい。それから、サラダとコンソメスープ。本当に美味しそうだ。
「いただきます」
俺たちは両手を合わせて食べ始める。うん。いつもながら本当に美味しい。
「そうだ。はるちゃん。近いうちにお姉ちゃんが来るんだ。二、三日泊まるって言ってたから、ご飯お願いするね」
ふと思い出した様に葉那は言う。
「食事は大丈夫ですが……。葉那さん、お姉さんがいたんですか?」
はるちゃんは首をかしげる。今までそんな話は一度もなかったはずだから。
「違う違う。お姉ちゃんって言っても従姉妹だよ。私たちはみんなひとりっ子」
「ああ、そうなんですね」
はるちゃんは納得がいったと頷く。
「好き嫌いとか、アレルギーとかってあります?」
「大丈夫だと思う。はるが来る前は俺たちが作っていたけど、何にも言わなかったから」
それには涼が答えた。
「俺、海老フライが食べたい」
皐月の言葉にはるちゃんは苦笑する。皐月の海老フライのリクエストは週に一度は聞いている。
「本当に好きなんですね」
「那須の作る海老フライ美味しいから好き」
はるちゃんは苦笑を深くした。なんかそこ、二人だけの空気が漂っているんですけど。
「仕方ないですね」
はるちゃんはため息と共に言ったのだった。