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「璃子さん、俺。入ってもいい?」


 俺は璃子さんの部屋の戸を叩いた。


「唯?どうしたの?」

「璃子さんに話が合って」

「話?」


璃子さんは首をかしげながらも俺を部屋に入れてくれる。


「いきなり、どうしたの?」


璃子さんはベッドに座って俺を見上げた。いつもなら、その隣に座るんだけど、どうしても座ることができなくて、俺は入り口に立ったままだ。これからのことを思うと、顔を上げられない。覚悟を決めてきたはずなのに言葉が出なかった。


「璃子さん、俺……」

「うん」


そんな俺を璃子さんは急かさずに待ってくれる。告白ってこんなに勇気がいるんだ。今まで俺に告白してきた子たちはこんな気持ちだったんだ。なんかすごいな。たった一言なのに、その一言にこんなに勇気がいるなんて。


「俺……璃子さんが好きでした」

「ありがとね。それから、ごめんね」


俺は顔を上げる。璃子さんは優しく微笑んでいた。


「私ね、唯の気持ち、知っていたんだ。答えてあげられなくてごめんね」

「そんな……」


俺は首を振る。


「今回、来たのはね、葉那が心配なのもあったんだけど、あんたたちのことも心配だったの。あんたたちはね、私にとっては可愛い弟みたいなものだから」


弟。複雑な気持ちだった。


「早く新しい恋を始めてね。はるちゃんみたいに唯の本質を見てくれるような子」

「……はるちゃんはダメ……」


ぽつりとこぼれた言葉に璃子さんは苦笑をしてみせる。


「どうして?」

「……だって、皐月がいる」


俺の答えがわかっていたんだろう。璃子さんは大きくため息をついた。


「どうして皐月がいるとダメなの?はるちゃんと皐月、付き合ってるわけじゃないんだから、唯がはるちゃんを好きになってもらえるようにすればいいだけじゃないの?」

「だって、そんなことしたら、このままじゃいられなくなる」


俺の言葉に、璃子さんはまじめな顔をして言った。


「私がね、あんたたちを心配だって言った理由。それはね、あんたたちの世界が四人で完結していたところなのよ。死ぬまでこのままでいるつもり?世界は広いの。いつまでもこのままでいられるわけないでしょ。はるちゃんはね、あんたたちにとって新しい風なの。あんたたちの中にやっと吹いた外の風なのよ」


俺は何も言えなかった。そして、璃子さんはフッと優しい顔をする。


「この生活を壊したくない唯の気持ちもわからないわけではないのよ。この家、本当に居心地いいもの。あんたたちの親の気持ちが詰まっている家だもの。それを大切にしたいわよね。はるちゃんもそれをわかっているんじゃないかな。あの子はあの子で心配なのよね……」


最後の方は聞き取れないくらい小さな声だった。俺は聞こえていないふりをする。


「でも、やっぱり、はるちゃんには皐月の方がが合ってる。俺は、璃子さんに負けないくらいいい人を見つけるから」


俺に言えるのはそれだけだった。璃子さんはきれいに笑った。


「そうね。早く、私以上のいい人を見つけなさい」



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