電柱の上
散歩の途中、幼い息子が電柱の上を見ながら父親に尋ねた。
「ねえお父さん、何で電信柱の上にゴミ箱があるの?」
「ゴミ箱?」
父親は息子が指差す方を見ると、そこには円筒状の、息子がゴミ箱と間違う変圧器があった。父親は大笑いして言う。
「あっはっは…、なるほど、ゴミ箱ね。あれはゴミ箱なんかじゃないよ、変圧器って言うんだ」
「へんあつき?」
「そう、あそこで電圧を調整して、家庭に電気を送るんだよ」
「…」
「お前にはまだ難しかったかな。ともかく、あれはゴミ箱じゃないよ」
「…ふーん」
父親の説明に、息子は納得のいっていない様子で返事をし、二人はその場を後にした。
そこから丁度近くの電柱で電線工事をしていた作業員は、酷くなった花粉症の影響からティッシュで鼻をかむと、父親が変圧器と呼んでいた物体の蓋を開け、中にティッシュを捨てた。
ゴミ箱だったのだ。