しぼりかす
事件現場はひどい有様だった。
床は黒ずんだ赤い色の液体で埋め尽くされ、壁もまたバケツに入れたペンキをぶちまけたかのごとく床と同じ色に染まっている。
だが、それらがペンキなどではない事は現場に充満した臭いが示していた。ハンカチで鼻を押さえつつ、刑事達は現場検証を行っていた。
「ひどい臭いだな。一体、ここで何があったんだ?」
「この大量の液体は人間の血液に間違いないようです。ただ、何者かが出血した物なのか、血液そのものをばらまいたのかは不明ですが」
「殺人の可能性もあるわけか。しかし、ちょっと血の量が多すぎないか?」
「ええ。もしもこれだけの血が一人の人間から出たのだとすると、遺体は骨と皮だけになるのではないでしょうか」
「そうだな。ところで、ずっと気になっているのだが……」
「なんです?」
「床に転がっているねじれたビニールみたいな物、よく見ると人間の形をしていないか?」