甲子園2
僕はマウンドの土を慣らして、一球投げた。
『ストライク』
すぐにもう一球。
『ストライク』
「陽斗、これなら試合も大丈夫そうだな。体調もいいだろ?」
「あぁ。ボールのコントロールもバッチリだしな」
その時、放送が入った。
『嵐山学院の選手は、シートノックを始めてください』
「よし。みんな~シートノック!!」
『はい!』
「俺らはピッチング続けるぞ」そう言いながら圭はミットを構えた。
「はい!」
そして試合が始まった。
チームみんなで円陣を組んだ。
「みんな、絶対勝つぞ!」
『おぉ!』
僕らは後攻、守備からだった。
「陽斗、全力でこいよ。お前の凄さを見せてやれ!」
「うん!もう甲子園で投げられることなんて無いからな」
「確かに…。じゃあ後悔すんなよ!」
「はい!」
一球目はストライク。
二球目もストライク。
最後は空振り三振に討ち取った。
その後もしっかり内野ゴロに打ち取り、すぐに攻守交代することが出来た。
「みんな、絶対先制点入れるぞ!」
「おぅ~!」円陣から、僕らの攻撃は始まった。
そして、宣言通り、先制点を入れることが出来た。
0対1。
一点で止まってしまったが、この一点を守りきったまま、最終回に入った。
「陽斗、緊張すんなよ。いつも通りいつも通り」圭にそう言われ、落ち着いてマウンドに上がることが出来た。
ここまで来れたのは『奇跡』だ。
だけど…いや、だからこそ、この奇跡をもっともっと大きくしたい。
そう思いながら投げた。
ショートゴロ。中島がアウトをとった。そして、
「ナイスピッチャー」って言ってくれた。
2人目。
センターに上がった打球は、センターの藤嶋がきっちりととった。そして、
「ナイスピッチャー」って…
3人目。
相手も本気だった。
そりゃそうか。ここで点を取れなかったら夏が終わるのだから…
でも僕も本気だ。
最高の球を魅せてやる!!
僕は、ストレートで勝負した。
バッターは完全にタイミングが合わず、空振り。
球速は155kmだった。
2球目はカット。
『追い込んだ』
そして3球目。
気持ちを込めた一球。
カーンと甲高い音がした…
打球を見ると、ショート正面。
中島がしっかりとアウトにしてみせた。
『スリーアウト』
勝った。勝ったんだよね。
みんながすぐにマウンドに駆け寄ってくれた。
「陽斗、勝ったぜ。お前すげぇよ」
「ううん、みんなのおかげ。ありがとう」
一回戦突破。
あーくん、友ちゃん。僕頑張ったよ。応援ありがとう。
僕はみんなに感謝の気持ちでいっぱいだった。




