先生
起きると、僕のベッドの隣であーくんと友ちゃんが僕の手を握ったまま寝ていた。
時計を見ると、夜中の3時で、僕はあーくんたちの手を解いて、周りを見渡した。
僕の腕には煩わしい点滴の管が3本付いていた。
僕はそれらをすべて抜いて、ベッドから降りた。
少しふらついて、歩けなかったから、車いすに乗って廊下に出た。
僕はタオルを使ってピッチングの練習をしていたが、すぐに息が上がってしまって、壁に手を付いて息を整えていると、
「陽斗君!?」そう言いながら少し遠くから涼矢先生が駆け寄ってきた。
「ハァハァ先生?」
「目、覚めたんだね。良かった…2日も眠ってたんだよ?って点滴抜いて来ただろ!!病室戻るよ」そう言って車いすを押された。
病室に戻ると、すぐにベッドまで抱えられて、点滴をし直された。
「もう先生これ邪魔なんですけど…」
「ちょっと我慢。ってか朝日たち起こす?」
「ううん、いい。ってか暇~先生…」
「うーん…じゃあ僕と話そうか。朝日たち起こさないように別の部屋行って…」
「はーい」僕が返事をすると、先生は僕を軽々と抱いて、車いすに乗せた。
それから僕らは、普通に世間話をした。
先生の愚痴を聞いてあげたり、僕の野球の話とか…
「そう言えば、僕、陽斗君の試合観たことないんだけど…」
「そーでしたっけ?」
「うん…」
「あっ僕甲子園で投げるんで、テレビで流れるんじゃないですか?」
「そうか!じゃあ絶対観るね」そう言って先生は笑った。
「陽斗君、ちょっと病院の巡回があるから空けてもいい?」
「了解で~す」僕はそう言って先生を見送った。
そして、さっき付けなおされた腕の点滴を見ると、やっぱり3本付いていた。
僕は何のための点滴か、点滴の表示を見て知った。
これを抜けば、発作がおきるんだ…
僕は甲子園で投げる。
優勝する。
だけど、僕の病気はそれを全力で阻止してくるんだ…
もう疲れた。
闘うのが…
そう思っている僕の手は点滴に延びていた。
そして、抜こうとしたとき、僕の手を温かいものが包んだ。
僕が顔を上げると、そこには…




