予選大会
起きると、あーくんが僕の頭をなでていた。
「あーくん?ゴホゴホ…」
「ひな君、苦しくない?」
「少し苦しい…」って僕が言うと、あーくんは僕の背中をさすってくれた。
それでも僕の苦しさは改善されることなく、どんどん苦しくなってしまった。
「うぅ…はぁはぁ」僕は苦しくて、あーくんのズボンを強く握っていた。
あーくんは
「ひな君、大丈夫だからな」そう言いながら僕に薬を飲ませて、僕の背中をさすった。
少し楽になった頃には、もう試合が始まっていた。
僕は重い体を起こして車から出ようとしたが、あーくんに倒れ込んでしまった。
「ひな君、大丈夫じゃないだろ?携帯でも観れるからさ…」
「嫌だ。行く!!」
「じゃあこれ乗って」そう言いながら、あーくんは車から下ろしたのは車イスだった。
「ふえっ?」
「倒れたら辛いのはひな君だよ?」
「うん…」僕は素直に車イスに座った。
現在、0対5で勝っていた。
試合はもう4回まで終わっていて、今から5回の表、相手の攻撃だ。
菊池は打たせて取るピッチングで、相手を三者凡退に抑えた。
しかし嵐山学院も1点も取れず、6回に入った。
僕はこの試合に釘付けになっていた。
「ひな君、大丈夫か!?」って僕に呼びかけるあーくんの声で我にかえった。
息が苦しくて、心臓の音がうるさい。
「ひな君、ゆっくり息しような…」そう言われて深呼吸をしていると、だいぶ楽になってきた。
「試合終わったら病院だからな」
「うん…」
試合はもう7回だった。
この回を守り抜けば、勝つことが出来る。
ツーアウト。ランナーは二塁。ツーストライクまで追い込んだところで、菊池がストレートを投げた…
最後は三振だった。
そして、0対5のまま、1回戦目を勝利した。
勝利の歓声とともに、僕は意識を失った。




