退院~朝日side~
「ひな君~家に帰る準備して!」
「はーい」検査の結果が出て、本当は嫌だけど、ひな君を家に帰すことになった。
でも、ひな君が嬉しそうで良かった。
「ねぇあーくん。野球したいんだけど…」家に着いて早速、ひな君が口を開いた。
『野球したい』その気持ちは分かるけど、検査の結果が悪かったから、2ヶ月は激しい運動は禁止しないといけない。
「ごめんね。その事だけど…」
「嫌だ。嫌。絶対嫌…ゴホゴホ」僕の言いたいことが分かったみたいで、言う前に否定された。
「ひな君が野球したいって言う気持ちは分かるけど、2ヶ月。2ヶ月だけは我慢して!」
「2ヶ月!?駄目。甲子園が…ゴホゴホ」
「ほらな。少し話しただけで咳き込んでしまうくらい、ひな君の体は疲れてるんだよ?」
「そんなことない!甲子園…ハァハァ」野球をしたい気持ちと、息が上手く出来ない苦しさで、ひな君はパニックを起こしかけていた。
「ひ~な君、落ち着こう?ほら大きく深呼吸して?」
だんだんひな君が落ち着いてきた。
「だって2ヶ月じゃ甲子園が…」
「うん。ごめんな。でもひな君が苦しむ姿見たくないから…」
そう、今は6月の終わり。2ヶ月もしたら、甲子園が終わってしまう。
ひな君の夢は、チームを甲子園優勝に導くこと。だから、本当に辛いと思う…
「来年もあるだろう?今回は3年生に花を持たせてあげよう?ひな君は2年生なんだから…」
「うん…」ひな君は泣きながら承諾してくれた。
「ひな君は本当に凄いな。でも辛いよな?ごめんね…そしてありがとう」そう言って僕も泣きながらひな君を抱きしめた。
僕は甲子園で優勝することが夢である少年に、一番辛い選択をさせてしまった…
だからこそ…
絶対にひな君にこれ以上辛い思いをさせない。
そう誓った。




