あの時の梨木柚香の心情 3
「あぁーっ、授業つまんないなぁ。時間経つの遅すぎだよ。早く終わんないかなーっ。」
今私が受けてる授業は、話が長いことで有名な先生の授業だ。
「白坂さんに会いたい?」
「や、べ、別に会いたいから早く終わってほしいってわけじゃ…まぁ、会いたいけど。」
「部室行ったらいるかもしれないわね。」
「次空きコマだから行くつもりだよー。」
「学年が違うと会う機会が少ないから、積極的に行動しないとね!」
「ま、まぁ、そだね。…みちるはさ、変だって思ったりしないの?」
「変?」
「私が、その…、好きだってこと。」
「誰を?」
「だっ、誰をって、からかってるでしょ。」
「ふふっ、ごめんごめん。柚香ちゃんは白坂さんのことがだぁい好きだっていうことを変に思わないのかってことね。」
「謝る気ないでしょっ!」
「ふふふ。そうねー。確かに、普通ではないのかもねぇ。」
「うっ…。そう、だね…。」
「でも、変だとは思わないかなー。」
「え、思わないの?」
「どうして変なの?」
「だ、だって…。」
「白坂さんのこと、ほんとに好きなんでしょ?」
「そりゃあ、もちろん。」
「だったらいいじゃない。好きなものは好きなんだもん。その気持ちを蔑ろにする方が変だって思うわ。」
「そう…なのかな。」
「私も、自分の気持ちがどうなのかってのが大事で、そういうのは関係ないって思うぞ。」
「光!?」
「あら、光くん起きてたんだ。」
「『くん』は止せって言ってるだろ。」
「だって似合うんだもの。」
「まぁ、それはおいといて。そうか、柚香は白坂が好きなのか。」
「そうなの!もうベタ惚れなのよー♪」
「もうっ、みちるぅ!」
「ははっ。まぁ頑張れよ。私は応援するぞ。」
「う、うん…。ありがと、光。」
「私も応援してるからね。」
「みちるもありがと♪とにかく今は、もっと仲良しになれるように頑張る!」
私は、授業が終わったらすぐに部室に向かった。
「白坂さんいるかなぁ…。」
「あっ、せんぱーい!」
「藤井さん!永谷さん!」
「「おはようございますっ。」」
「おはよーっ。…えっと、白坂さんは?」
「私たちは授業なので、1人だけ空きコマだった真菜実は部室に置いてきぼりです。」
「そうなんですよー!あっ!先輩、もしかしてこれから部室ですかっ?」
「うん、そうだよ。」
「あの子、1人ぼっちで寂しがってると思うんで、相手してやってください☆」
「ふふっ。何もしなくっても、梨木先輩が行くだけで元気になると思いますけど。」
「え?「じゃっ、アタシたちもう行きますねっ!」
「真菜実のこと、よろしくお願いしますね。」
「う、うん。じゃあねー。」
―――やった!白坂さんいるんだ!しかも1人で!!
柚香はいつの間にか早足になって部室に向かっていた。
「それにしても白坂さん、愛されてるなぁ。藤井さんなんかほんとのお姉ちゃんみたいだったし!」
部室に着き扉に普通に手をかけようとして、止まった。
「あっ、そーだ!せっかくだしちょっと驚かしちゃおっ♪」
今度は静かに手をかけ扉を開く。
「いたいた♪でも、寝てる?」
真菜実はソファに寝転がっていた。こっちを見てないのを確認し、そーっと近づき背後に立った。
「うぅ、寂しい…。」
―――!? なっ、ななななななっ!なんですか、そのめちゃくちゃ可愛いセリフーっ!!!
私は抱きしめたくなるのを必死におさえて声をかけた。
「私がいても?」
「うぇっ!?わ!わぁぁっ!あ、あのっ、おお、おはようございますっ!!」
「おはよっ。」
「梨木先輩、いつの間に入ってきてたんですかっ!!」
「さっき藤井さんたちと会ったんだけどね、『寂しがってるだろうから相手してやってください』って言われたんだ。それで、せっかくだから驚かそうと思ってそーっと入ってきたの。」
「せっかくだからってなんですか!っていうかもう!またあの2人は私のこと子ども扱いするー!」
そのふくれた顔がもう子どもっぽいよっ。もー可愛いなー!
「でもほんとに寂しかったんでしょ?」
「べ、別に寂しくなんかなかったですよ!!」
顔におっきく『嘘』って書いてあるかのような顔だよ。ふふっ、わかりやすいなぁ。
「さっき『寂しい』って言ってたよね?」
「うっ、そ、それは…。」
「ふふっ、私が来たからもう寂しくないよー。」
私は思わず頭をなでた。
「んっ…!」
顔真っ赤にして、可愛いなぁ。もう、この時間幸せすぎるよぉー!時よ止まれーーー!
こんなバカな願い事をしちゃうほど、今日も白坂さんは可愛かった。