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近くて遠い。  作者: 芽以
8/9

あの時の梨木柚香の心情 2


「みんな空いてるとこ座ってってー。」


 光が部員たちに声をかける。


「私たちはそこ座っとこっか。」

「うん。そだね。」


 白坂さんは…、あ、隣のテーブル行っちゃった。


「柚香ちゃん、どこ見てるの?早くメニュー決めなよ。」

「あ、うん。何にしよっかなぁ。」

「私はこれにしよーっと。」

「え、それおいしそー、あ、でもこっちもいいなぁ。」

「そんなに悩まなくても。柚香ちゃんはそっち頼んで、半分こしよっ。」

「ほんとに!?やったぁー、そうするー♪」

「ふふっ。柚香ちゃんって美人だし、澄ました顔してたらクールな感じにも見れるけど、実際はすっごく無邪気な可愛い子って感じよね。」

「な、そんなことっ…。み、みちるは、見た目すっごいほんわかしてて可愛いっていう印象だけど、めちゃくちゃしっかり者で安定してるよね。」

「そぉ?」

「みちるが動揺するとこ想像できないもん。」


 松野みちるは映研部の副部長。背は高めで、ゆるいウェーブのかかった髪をサイドテールにしていることが多い。第一印象は『癒し系』。いやもちろん実際に癒し系ではあるんだけど、子どもでもいるんじゃないかというくらい落ち着いていて、多少のことが起こったって微動だにしなさそうな安定感のある子だ。


「私だって、ちゃんと驚いたりするのよ。」

「んー、そういうことじゃないんだよねぇ。」

「何よそれー。」


 こんな他愛無い話をしながら食事も落ち着き、おしゃべりが中心になってきた。…が、そんな中私は白坂さんが気になって話に集中できずにいる。


 ―――白坂さん、笑顔可愛いなぁ。


「あ、そうだ、柚香ちゃん。」

「はわっ、な、何?」

「私、そっちの1回生とあんまり話したことないの。だから、簡単に紹介していってくれない?」

「うん、もちろんいいよっ。」

「ありがと♪」

「あっちにいるのが永谷さんで、あの奥にいるのが藤井さん。それで、その手前にいるのが、白坂さんだよ。」

「永谷さん、藤井さん、白坂さんね。」

「うんっ。白坂さんがもうさぁっ、やばいんだよーっ!」

「やばい?」

「うん!あの子、ほんっと可愛いんだよ♪」

「なるほどねぇ、あの子だったのね。」

「へ?みちる、何言って…。」

「さっきの『可愛いなぁ』は、その子のことでしょ?」

「な゛、さ、さっきの…?」

「さっき、隣のテーブルの方見ながら『可愛いなぁ』って呟いてたの、白坂さんのことでしょ?」


 ま、まさか私、声に出しちゃってたのー!?


「違うの?」

「い、いえ、違わないです。おっしゃる通りでございます…。」

「やっぱり♪確かに可愛いねぇ。柚香ちゃん、あの子のこと好きなの?」

「なっ!?なななな、そ、そそ、そんなっ、すすすっ、す、好きっとか、ある、わけ…。」

「あの子の可愛いところは?」

「そりゃあもうたっくさん!目きらきらだし、明るくって優しいし、ちょっとしたことで顔真っ赤になって目もうるうるになるし、笑顔最高だし、あのまぶしい笑顔でニコッと微笑まれたらもうっ、私…!」

「ふふっ、柚香ちゃん、やっぱり白坂さんのこと大好きじゃない。」

「はっ!」


 しゃべりすぎたー!う、うぅ、だって!白坂さんの可愛さを聞かれたら答えないわけにはっ…!


「白坂さん。」


 へ?


「ちょ、ちょっと、みちる!?」


「?はい。…?」


 うはぁーっ、白坂さんがこっち向いたー!


「柚香ちゃんがね、かわいいって。」


「へ?」


「ちょっ、みちる!な、何言ってるのよー!?」

「いやー、柚香ちゃんもわかりやすくて可愛いよー。」

「そんなこと聞いてないよぉっ。」

「あらら、白坂さん固まっちゃった。ふふっ、めちゃくちゃ動揺してる。」


 あぁっ、可愛いなぁ…。


「可愛い子だね。」

「うん、ものすっごく可愛い…。」

「柚香ちゃんは素直だねーっ。」

「だって可愛いんだもん。」


 そうこうしてる間に、他の子たちが席を移動し始めたので、私たちも移動することにした。


「ほら柚香ちゃん、白坂さんに近い方座りなよ。」

「むっ、無理無理!そんなことしたら私の神経がすりへっちゃうよ!!」

「えー、せっかくチャンスなのに、もうしょうがないなぁ。」


 結局私は、白坂さんとの間にみちるをはさんで座った。そしてみちるは、座る前に口を開いた。


「白坂さん。」


 ちょっと、松野さんー!?あなた、絶対ドSでしょ…。


「は、はいっ。」


 めちゃくちゃきょとんとした顔になってる!しかも、みちるが立ってるから必然的に上目遣いに…!


 こ、これはっ…これはっ…め、めちゃくちゃ…!!!


「かーわーいーいー!!!」

「な、梨木先輩?」

「あーもー!かわいいよー!」

「え、なっ、あの、その、えぇぇっ!?」


 はぁっ、やっぱり困り顔いいなぁ。


「ねぇ、私もう無理だぁーっ。かわいすぎてやばいよぉ!」


 私は、みちるの腕を掴んでひたすら悶えていた。



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