あの時の梨木柚香の心情
「暇だなぁ。」
この時間は授業がなくて暇なので部室に来たのだが、結局誰もいなくて暇を持て余していた。
「お、暇つぶし発見ー。」
柚香はファッション誌を手に取り、適当にパラパラとめくり始めた。
「と言っても、雑誌なんかすぐ読み終わっちゃうし暇つぶしになんないよーっ。もぉ、誰か来ないのかなぁ。」
―――カチャ
「! 誰か来た♪誰だろーっ…。」
私は、入ってきた人物を見た瞬間胸が高鳴り始めた。
…ダメダメ、平常心平常心。自然にしなきゃ。
「あ、白坂さんと藤井さんだ!おはようっ。」
よし、大丈夫。
「おはようございます!先輩も来てたんですね。」
はぁー、白坂さんやっぱ可愛いーっ。 …私の神経もつかな、コレ。
「そうだよ!誰か来るかなーって待ってたのになかなか来ないから、この時間は1人かと思っちゃった。」
「ちょっと実希とおしゃべりしてたら来るのが遅くなっちゃって、待たせちゃってすみません。」
「ううん!来てくれてありがと。白坂さん。」
白坂さんが来てくれただけで、待ってた時間とか全部ちゃらだよー。
「ちょっとちょっと、アタシもいますよ先輩!」
「ふふっ、もちろん藤井さんもね。2人とも来てくれて嬉しいよー。」
「こちらこそ!先輩がいてくださって、超ハッピーですよぉ。ねっ、真菜!」
「真菜?」
「えっ、あ、あぁっ!うん、そうだね!」
こういうぼーっとするところも可愛いなぁ。
「それじゃ、せっかく2人が来てくれたことだし、部室にあるものの説明でもしようかな。どうせ今度の活動で説明しなきゃだし。覚えてる子がいてくれると助かるな。」
何かしてないと私の神経がもたないからね…。説明してたら少しは気は紛れるかもしれないし。というより、部活の先輩として教える責任があるもんね!
「…で、これはこうやって使います。」
! うはぁー、白坂さんその顔…
「……かわいいね。」
はっ!うわ、どうしよ!口に出して言っちゃった!
「!?え、えぇっ?」
わぁ、めっちゃ動揺してる。動揺してる白坂さんも…じゃなくて!なんで言っちゃうんだよー、私のばか。…いや、女の子に対して『かわいい』って言うのなんてよくあることじゃん。普通にしてればいいんだ。普通普通…。
「ん、なんかね、口が開いてぽけっとした顔してたから。」
「なっ、!?」
ふふっ、慌てて口隠してるー。顔真っ赤だよ。
「今隠したって意味ないでしょー。」
「う、うぅ、だって!」
目、うるうるだぁ。白坂さんの目ってまさに“少女”って感じで、すっごく純粋で綺麗な目してるんだよね。あと、白坂さんの困り顔は一種の兵器だ…。もうほんっと可愛いなぁ。ずっと見てたいよ。
私、ほんとに白坂さんのこと大好きだな。