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近くて遠い。  作者: 芽以
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近くにいるのに手の届かない存在



「さぁーっ、この時間は2人だけみたいだけど、何しよっか?」


 先輩は私の頭をなでるのをやめて、立ち上がった。


 ―――何もしなくても、このままでよかったのにな。


 頭に残る先輩の手の感触を名残惜しく思いながら、先輩を見上げる。


「どうしましょうか。何かしとかなきゃいけないことってありましたっけ?」

「んー、今は特にないねー。映研部の活動が本格的に始まるのは、文化祭の準備にかかり始める夏頃だからね。」

「まだ5月の下旬ですもんね…。」

「暇だねー。何かすることないかなーっ。」

「…あ、そこに置いてあるマンガ、先輩のですよね。それ好きなんですか?」

「あ、うん!このマンガ、女の子の絵がすっごく可愛いんだー♪ほらっ。」


 先輩は私の横に座りなおしながらマンガを開いた。


「ほんとだ…、可愛いですね!」

「でしょーっ!これは4巻なんだけど、1巻から持ってるから貸してあげよっか?」

「いいんですか!?ぜひ、お願いします!」

「じゃあ、また明日持ってくるねっ。」

「はいっ、ありがとうございます。」


 梨木先輩の目、綺麗だなー。先輩と話してると、つい見惚れてしまう。ヘタレな私は、常に先輩の顔を見て話すなんてこと絶対にできないけど、今は向き合っているわけじゃないから、先輩が話しているすきに横から見ている。たまに目が合う時は一瞬ドキッとするけど、『目を合わせて話してますよ』風にごまかしている…つもりだ。


「あ、そういえば、この間実希や沙紀たちとカラオケに行ったんですよ!」

「えっ、いいなーっ、カラオケ!」

「前に先輩が好きだって言ってた曲、実希が知ってたみたいで歌ってくれたんです!」

「えーっ、ほんとー!?」

「はいっ。あれ、いい曲ですね!」

「だよねっ!!あーっ、実希ちゃんがそれ歌ってるの聴いてみたいなぁ。」


 最近話していて気づいたけど、私が『実希が~』とか『沙紀が~』とか言うので、先輩はそれにすごくつられる人らしい。だから普段は苗字で呼ぶのに、私と話している時は名前にちゃん付けになっていることが多い。


「実希、歌うまいんですよー。」

「そうなんだ!ますます聴いてみたいなっ。みんなでカラオケ行きたいねー。」

「行きたいですねっ!!今度時間が空いた時に行きましょうよ!」

「うんっ、行こ行こーっ♪白坂さんはどんなの歌うの?」


 つられているだけなので、当然私には普段通りだ。…私のことだって、名前で呼んでくれたっていいのになぁ。


「そうですねー。私はいきものがかりとかmiwaとか歌うことが多いですかね…。」

「っぽいねー!あー、みんなの歌聴くの楽しみだなーっ。」

「ですねー!他のみんなに声かけておきますねっ。」

「うん、よろしくー。早く行きたいなー♪」


 はしゃぐ先輩も可愛いなぁ。そういえば先輩、私と2人で話してる時は普通のテンションだよね…。他の先輩といる時は気を許してる分くずしやすいのかな。それか、普段から思ってるわけじゃなくてやっぱりその場のノリだったり?


 もしかしたら…って思うこともあるけど、それは『先輩もそうだったらいいな』っていう願望でしかなくて、好意を向けられてるのは嬉しいのに余計に先輩のことがわかんないっ!!


 同じ部活で、同じグループで、しかも今なんかは2人っきりで話してて、こんなに近くにいるのになんでずっと遠くにいるように感じちゃうのかなぁ。





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