部活の先輩
「それじゃ、部室行こっか。」
真菜実と実希は映像研究部だ。授業のない時間があれば、活動するわけではなくとも部室に顔を出し、仲間とたわいない話をしてゆるーい時間を過ごしている。
「あ、白坂さんと藤井さんだ!おはようっ。」
部室の扉を開いた2人が声のした方を見ると、ソファに腰掛けて雑誌を開いている先輩がいた。
梨木柚香先輩。
髪は肩にかかるくらいの長さの黒髪に、ふわっとパーマがかかっている。少し背が高くて、肌は日焼けなんて言葉を知らないように白く、目はくりっとしていて、まさに“美少女”だ。真菜実は胸が高鳴るのを隠しながら、いつもの調子で声をかけた。
「おはようございます!先輩も来てたんですね。」
「そうだよ!誰か来るかなーって待ってたのになかなか来ないから、この時間は1人かと思っちゃった。」
「ちょっと実希とおしゃべりしてたら来るのが遅くなっちゃって、待たせちゃってすみません。」
「ううん!来てくれてありがと。白坂さん。」
「ちょっとちょっと、アタシもいますよ先輩!」
「ふふっ、もちろん藤井さんもね。2人とも来てくれて嬉しいよー。」
「こちらこそ!先輩がいてくださって、超ハッピーですよぉ。ねっ、真菜!」
あぁ、梨木先輩可愛いなぁ。目とかキラキラしてるし。笑顔眩しすぎるし。しかもここにいるの3人だけだなんて、話し放題じゃん!この機会にもっと仲良くなれたり…。
「真菜?」
「えっ、あ、あぁっ!うん、そうだね!」
「それじゃ、せっかく2人が来てくれたことだし、部室にあるものの説明でもしようかな。どうせ今度の活動で説明しなきゃだし。覚えてる子がいてくれると助かるな。」
映像研究部はそれなりに機材がそろっており、まず使い方を覚えないことには活動できない。
「…で、これはこうやって使います。」
先輩がピタッと止まった。
「……かわいいね。」
ん?目が合った。えっ、私?
「!?え、えぇっ?」
「ん、なんかね、口が開いてぽけっとした顔してたから。」
「なっ、!?」
私は慌てて口を隠した。
「今隠したって意味ないでしょー。」
実希が呆れながらつっこむ。
「う、うぅ、だって!」
し、しまったー!すごいなーって感心しながら見てたら間抜けな顔にっ…!っていうか、
『好きな先輩にそんなこと言われたらテンパるでしょーっ!』
心の中で叫んだ。