捨て猫(三人称)
部活の帰り道。彼女は捨て猫と出会った。
捨て猫はみかん箱から顔を出し、興味津々に足を止めた彼女を見上げている。
悪意のない瞳を真っ直ぐに向けながら甘えるような鳴き声をあげる捨て猫。
「かわいい~」
思わず彼女は捨て猫を箱から取り出し、抱きしめていた。
その感触が良かったのか捨て猫はさらに鳴き、顔をすり寄せる。
と、彼女の背後から新たな人影がやってきた。
「本当、変わらないわね」
その声に彼女は振り返る。すると、そこにいたのは彼女の親友だった。
「まさか、飼うとか言わないわよね?」
「え? それ以外にどんな選択肢があるの?」
意外という顔を浮かべて彼女は疑問を口にする。
すると、それを聞いて親友は溜息を吐いた。そうして親友は溜息を吐き終えると彼女に向かって次のような言葉を告げる。
「戻しなさい」
「そんな!?」
親友の言葉を聞いた瞬間、彼女は雷に打たれたかのように硬直した。
「お、鬼!!」
叫ぶように彼女は抗議を口にする。
「鬼でも悪魔でも構わないから、ほら行くよ」
けれども、親友には通じない。
親友は彼女の腕の中から片手で捨て猫を奪うとみかん箱の中に戻し、すぐさま彼女の手を引いてその場から去っていった。
「ああ、タマ二号~」
悲壮な顔を浮かべて捨て猫に叫ぶ彼女。
しかし親友はそんな彼女に対し、素っ気ない反応を返した。
「はいはい。大体、一号がいるんだから、それで我慢しなさい」
「だって、ボヨボヨに太って可愛くいないんだもん~」
ジタバタと暴れる彼女。それを親友は呆れながら引っ張るのだった。
全体的に見える部分を書くようにし、心理部分は表情などで出そうとしています。