チェ、チェンジで!
短編です
うちの村の忌むべき因習。五年に一度の生贄の儀式。私はソレが恐ろしかった。いつ自分の娘を差し出すようにと言われるか気が気がじゃなかった。それでも、最初の頃は、旦那が村長ということもあり、難を逃れていたのだけれど、私が娘を生んだ五年前は、珍しく子供が豊富な年で、五歳までに一番病弱な子を捧げると村長を含めた年寄りたちの間で勝手に取り決めがなされてしまった。
娘はすくすくと育ち、健康そのものだったのだけれど、他の子どもたちも妙に元気で、病弱な子が現れない。そこで老人たちは、一度でも熱を出した子を生贄にする、と決めた。他の母親たちとの間に、緊張の糸が常にぴんと張っていたように思う。
4歳の頃、娘が森で遊んでいるときに足に切り傷を作って帰ってきたことがあった。子供の怪我だし、と思って甘く見ていたら、悪いものが入ったようで、三日三晩高熱を出した。
その後はほかの子供たちに病気の気は無く、うちの娘に白羽の矢が立った。旦那に抗議しても、老人たちの目が怖くて何もできない。私は意を決し、娘と共に村を出る計画を立てた。
娘が生贄になる日、小柄な私は、途中で娘と入れ替わることを決めた。幸い、儀式を行うのは、村長である旦那なのだから、もしバレてもどうにでもなる。
村のはずれにある洞窟で娘に隠れて待つように伝え、私はこっそり儀式の服に着替え、顔を隠した。
籠が運ばれて、神の祭壇として祀っている石碑の前に置いてけぼりにされた。これで神様に攫われて、子供は姿を消す。そして村に平穏が戻るらしいのだが、正直私はあまり信じていない。その証拠に、昨年は干ばつが酷く、今年は碌なものを食べられていない。神様ちゃんとしてよね!
周辺の気配を探って、人がいないことを確認して、私は駆けだした。あとは娘を連れて逃げるだけだ。
洞窟に着くと、入り口付近に旦那がいた。
「あんた」
「お、お前なんで!」
「説明は後よ、娘は!?」
「石碑の前じゃないのか?」
「洞窟に隠れている様に言ったのよ」
「洞窟に!?ここが神の宿る洞窟なんだぞ!?」
「えぇ!?」
旦那の話だと、旦那が村長になってからは、あの石碑の前に生贄を置いていくと言う名目で、よその村に逃がしていたらしい。この洞窟には何かが住んでいるのは間違いないのだが、ソレが神なのかを確かめるべく、旦那は洞窟に足を運んだらしい。
旦那が村長になる以前は、この洞窟に生贄を運んでいたんだとか。
「そんな・・・じゃぁ、娘はっ」
「しっ、何か出てきた!」
洞窟の中で蠢く影が二つ。大きなものと、小さなもの。何か楽しそうに話している様に見える。
「そうなんだぁ、神様って大変なんだね」
「もし、お母さんがきたら、ちゃんと言える?」
「うん、言えるよ!・・・あ、お母さん!」
大きな影の手を振り払って、嬉しそうに駆けてくる娘を、私は慌てて抱きしめた。大きな影は、毛むくじゃらの大男だった。
「これが・・・・神様?」
「あぁ・・・えっと」
「か、代わりの生贄はすぐにっ!そ、そそ、その代わり、うちの娘はどうかっ」
「あ、そのことなんだども・・・」
「あのね、神様ね、女の子よりおじさんが良いんだって!でもお土産もらっても、天気をかえたりはできないから、お土産はいらないんだけど、もし、くれるなら、もらうけど、本当は変えてほしかったんだって!」
「よく言えたねぇ、ありがとう・・・あぁ、丁度そこの・・・良い男のような・・・」
毛むくじゃらのカミサマの指さす方を見ると、そこには呆けた顔の旦那がいた。カミサマは旦那の顔を見て頬を染めたように見えた。
——さぁ、どうする?——
・・・俺!?




