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第6話 ――魔法陣の基礎――


街外れの森は、午後の陽光に包まれていた。

カフェを出てからしばらく無言で歩き、二人は人気のない奥地へ辿り着く。

風が木々を揺らす。


カトレアが静かに口を開いた。

「さて。今のあなた、どこまで出来るの?」

ホークスは肩を回しながら答える。

「闇と火の魔法は安定して、魔法陣は……重ねがけはまだ不安定だが、一枚なら無理矢理安定させて使うことはできる」


カトレアは次の質問をする。

「分身の数の上限は?」

「四体まで。維持も問題ない」

カトレアは足を止める。

「分身に魔法は撃たせられる?」

その問いに、ホークスはわずかに眉を動かした。

「……試したことはない」

「それが出来るかどうかで、あなたの戦術は一段階変わるわ」

森の空気が静まる。


ホークスは視線を前へ向けた。

「まずは基礎からだろ?」

カトレアが小さく頷く。

「ええ、試しに魔法陣の文字ルーン威力フォース”で二枚作ってみて」


◆ 二重展開

ホークスが右手を掲げる。

水色の淡く光る半透明の円が空中に浮かび上がる。


土台フレームが構築され、 文字ルーンが浮かび、 薄い加工コーティングが包む。


そこへ、もう一枚。

だが二枚目の形成に時間がかかる。

魔力がわずかに揺らぐ。

円の縁が歪み、二つの陣が干渉する。

「遅い、しかもバランスが崩れてる」

カトレアは厳しい口調で言い放つ。

二枚の魔法陣は振動し、霧散した。


ホークスは息を吐く。

「やっぱまだ安定しないか」


カトレアはホークスに次の指示を出す。

「魔法陣を一枚だけ作ってみなさい、文字は威力”一つだけ」


ホークスは再び魔力を展開する。

今度は滑らかだ。

だが、数秒後――

パキ、と微かな音を立てるように消滅した。


カトレアが近づく。

「魔力が足りない」

ホークスはカトレアに

「いや、多めに注いでる」

「注いでるだけ。術式が荒いの」


彼女は空中を指でなぞる。

「魔法陣は三工程。土台、文字、加工。あなたは加工が甘い」

ホークスは黙って聞く。

「土台を魔力で無理やり固定して、文字も力で押し込んでる。だからコーティングが薄い」

「……自覚はある」

「その強引さはあなたの長所。でも細部でボロが出る」

ホークスは小さく息を吸ってカトレアに質問をする。

「じゃあどう直す。」

「土台と文字はそのままでいい。加工だけに集中しなさい。」


◆ 加工訓練

再び魔法陣が展開される。

今度は加工に魔力を厚く流す、陣は先ほどより小さくなった。

だが揺らぎが少ない、五秒、十秒。

先ほどの三倍は持続するがそれでもやがて消える。


「悪くないわ」

カトレアが言う。

「数を作って慣れなさい、そのうちコツも掴めるようになるわ」


ホークスは無言で何度も構築する。

大きさを変え、 魔力配分を変え、 加工の密度を試す。

森の空間に水色の魔法陣が生まれては消える。

カトレアはその様子を静かに見守る。


魔界で教えた日々が脳裏をよぎる。

そして、ウィンに授業をした日のことも。

自然と、口元が緩んだ。


◆ 一枚の完成

やがて、一枚の魔法陣が安定して浮かぶ。

歪みがなく、加工も均一、静かに回転している。

「……出来た。」


カトレアが近づき、陣を確認する。

「上出来。」

短い一言、だが確かな評価。

ホークスがわずかに目を細める。


「次は速度よ、もっと早く組みなさい。」

カトレアが簡単に言うのでホークスは少し不満げに答える。

「注文が多いな。」

「当然でしょ?。」


ホークスは再び展開を始める。

速くすると加工が荒れる、修正する。

また崩れる。

繰り返す。


カトレアは小さく息をついた。

(……まだ時間はかかりそうね。)

けれど、それが嫌ではない。

むしろ――


その時間が続くことを、どこかで望んでいる。

ホークスは構築を止め、ふと呟く。


「……次は、分身にやらせてみるか」

カトレアの瞳が細くなる。

「面白いわ。やってみなさい」

森の静寂が張り詰める。

新しい可能性が、今、試されようとしていた。


ーー第5話 終。



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