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第34話――氷刃の領域――


訓練場の空気が変わっていた。

ヴォルドの周囲に広がる冷気。

それは単なる温度ではない。

魔力を含んだ冷気の領域だった。

ホークスはその中で分身を作り直そうとして――すぐに理解した。

(……消える)


チャクラで構成された分身。

それが、霧のように崩れていく。

冷気がチャクラの構造を乱している。

(魔力への干渉か?この領域じゃチャクラ分身は維持できない)

つまり。

選択肢は二つ。

魔力で分身を作るか。

分身を使わず戦うか。

ホークスはゆっくり距離を取ろうとした。

その瞬間

ヴォルドが静かに口を開く。

「……あまり距離を取ることはおすすめしませんよ」

次の瞬間だった。

空中に二つの魔法陣が展開された。

呪文式魔法陣。

白青の光が静かに回転する。

「アイシクルランス」

氷の大槍が放たれる。

一本ではない。

二本。

三本。

四本。

連続射出、氷の大槍で弾幕が形成される。

空気を裂いて飛来する氷槍。

同時に。

ヴォルドの背後で氷が凝縮していく。

巨大な刃。

氷の大剣が、ゆっくりと形を作り始めていた。


ホークスは即座に炎を放つ。

「フレイムウィング!」

炎の翼が氷槍を薙ぎ払う。

だが。

完全には相殺できない。

氷槍は炎を突き破り、なお飛んでくる。

「チッ」

ホークスは横に走った。

氷槍が背後の石壁に突き刺さる。

ドガン!!

訓練場に衝撃音が響く。


ホークスは走りながら状況を分析していた。

(あいつの戦闘は基本近距離)

だが。

問題はそこではない。

放たれている氷の大槍は一つ一つが必殺の威力を備えている。

ランク5相当の魔法使いでもなければ撃ち合いはできないだろう。

遠距離戦でもヴォルドが有利。

(結局――)

近づくしかない。

ホークスは黒い大剣を構え直した。

その瞬間。


ヴォルドの背後で氷が完成する。

一本。

二本。

三本。

巨大な氷の大剣。

空中に静かに浮かぶ。

ホークスの目が細くなる。

(先程の氷刃とは硬度が違う)

今までの氷とは別物だ。

魔力密度が段違い。

しかも。

ヴォルドはさらに氷を生成している。

(まだ増やす気か……)


ホークスは少し焦りを感じた。

(準備が整ったらまずい、少しでも崩さないと。)

氷槍を黒い大剣で防ぎながら接近する。

その死角。

ホークスの背後。

そこに魔力を集中させる。

分身生成。

魔力を使った分身。

チャクラではない純粋な魔力構造体。

同時にホークスは後退した。

黒い大剣を分身へ渡す。

分身が受け取り突撃。

その間に。

ホークスは右手の指輪へ魔力を流した。

遺物であるネクロマンサーの指輪。


床が黒く染まる。

影が盛り上がる。

「頼むぞ、お前達」

地面が割れた。

骸骨の騎士。

アンデッドナイト。

黒く染まった床から次々と出てくる。

鎧と剣を持つ骸骨騎士団がヴォルドを取り囲んだ。


ヴォルドの眉がわずかに動く。

(死霊魔法)

そしてすぐに理解する。

(ビオラ様の系統)

先代闇魔将。

ビオラ。

ヴォルドの胸に微かな痛みが走る。

だが。

彼は戦闘中だった。

冷静に観察する。

(ビオラ様のアンデッドナイトより質は高い、

それなりに数もいて無視はできない)

骨格の魔力密度。

装備の霊体構造。

かなり強い。

だが。

(だがビオラ様の召喚するアンデッドナイトより数は少ない)


ヴォルドの目が冷たく光った。

4本の氷の大剣が動く。

巨大な刃が旋回する。

ズガァァァ!!

アンデッドナイトが吹き飛ぶ。

骨と鎧が粉砕される。

その瞬間。

黒い大剣を持った分身が斬りかかった。

ヴォルドは長剣で受け止める。

ガキィン!!

金属音が響く。

同時に。

氷の大剣の一本が振り下ろされた。

分身が斬られる。

消える。

しかし。

その瞬間。


ヴォルドの右下から影が飛び込んできた。

ホークスだ。

ロングソードを構えている。

ヴォルドは瞬時に氷の大剣を二本動かした。

斬撃。

ホークスを斬る。


――だが。

その身体が揺らいだ。

歪む。

霧のように消える。

「……残像?」

ホークスの放った忍術のカゲロウは発動すると相手から見て半歩認識がズレて陽炎が見える


ヴォルドが気づいた瞬間には。

ホークスはすでに懐へ入り込んでいた。

ロングソードは先程のカゲロウの場所に落ちていて腰にある黒鉄の短剣が振るわれる。

「――!」

ヴォルドはとっさに首を引いた。

刃が首筋を切り裂く。

血が飛ぶ。

頸動脈への一撃。

紙一重で回避。

しかし。


ホークスの口元がわずかに歪んだ。

「やっとだ」

距離はゼロ。

ヴォルドの懐。

ホークスが低く呟いた。

「反撃開始だ」


第34話―終


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